「ノンアルコール飲料の提供で飲酒量が減少することを世界で初めて実証」の文献を見た。(筑波大学2023/10/05)。 要旨の冒頭に「過剰なアルコール摂取は世界的な課題の一つで、国連の持続可能な達成目標(SDGs)にも含まれています。」とある。正直にいえば実は知らなかった。
日頃、SDGsといえば脱炭素が主役だけに意外だった。【目標3“すべての人に健康と福祉を”】に該当するとのこと。厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」によると、「節度ある適度な飲酒量」は、1日平均純アルコール量約20g程度であるとされている。
思わず缶ビールのアルコール表示を見た。350ml 缶で15.4g。ということはSDGsを信望する人は1.3缶/日が上限となる。一週間まとめれば9本は飲めると勘違いしてはいけない。肝臓はアルコール・アルデヒド分解器官であり処理能力を超えると故障し健康に悪影響する。背広の胸にSDGsのバッチをつけている人は缶ビール1本で我慢しているのであれば立派。そうでないなら、そ〜っとバッチを外すだろう。
前置きはさておきポイントを抜粋。
参加者(123人)を2分。好みのアルコールをそれぞれ選択して12週間。一方には12週間の内3回ノンアルコールを提供。アルコールだけのグループには終了後にノンアルコールを提供する仕組み。(図参照)
この図を見ると (1)ノンアルコールを併用していたグループはアルコール量が減少しており、テスト期間が終了後はやや増えてはいるものの、概ね少量で推移している(2)期間中アルコールのみのグループは期間終了後にノンアルコールを提供されるとアルコール量は低下の傾向を示している。
両方から、この文献の言わんとする「ノンアルコール飲料の提供で飲酒量が減少することを世界で初めて実証」ことは分かった。
世界で初めてとは大袈裟な表現だと呑兵衛なら言いそうだ。初めの頃のブログでは民族により、日本でも地域によりアルデヒド分解能が異なることを書いた。アルコール限界量は個人差が大きい。アルコールバッチテストでの分類ができることが好ましいのではないだろうか。大過剰アルコールを無理に勧める習慣は消えつつあるが、依然として過剰レベル。とてもではないが20g/日で収まるレベルではない。
アルコール耐性のあるドイツでも日本のノンアルコールが歓迎されている光景を見た。ビールをアルコールと認識していない国民なので、ノンアルコールでもビールと同じ風味であれば受け入れているのかも知れない。ひょっとして本物より別の飲み物として利用されているのかも。日本の抹茶を買い求めるインバウンドを見ると彼の国の人もバリエーションを拡大してみたら美味しい飲み物を発見した・・そのようなことかも知れない。が結論は彼らの健康も促進していることから見ると大いに良い傾向である。
次の図はノンアルコール量とアルコール量の関係。ノンアルコール飲料が増加するにつれてアルコール量は減少している。
実に面白い。理由にはノンアルコール製造技術の進歩があり、アルコールの肴にも、それ以外の料理にもマッチングさせたこともあるだろう。
一方で面白くないのが財務省か。強かな財務省だけにご懸念に及ばぬようだ。2026年からビールも発泡酒、新ジャンルの酒税は一律35円に統一される。チューハイも発泡酒類として酒税がアップ(350mlで35円)。。。この流れで酒粕はもちろんノンアルコールも新ジャンルに知らず知らずの間に組み込まれるかも。そんなことはないだろうが、もしそれが通用するようならとてもその案は呑めない。
だが、なぜ節度ある適度な飲酒量なのか? 根拠はあるのは当然だろうが、最近、岡山大学からマウス段階ではあるが有益な研究が報告されている。(プレスリリース2023/6/29)「ノンアルコールビールを経口摂取したマウスでタバコに含まれる肺発癌物質に起因する肺腫瘍が有意に減少」
要旨は「マウス肺癌モデルにて、ノンアルコールビールやアルコールを除いたビールを餌に混ぜてマウスに食べさせておくと、肺発癌物質による肺悪性腫瘍の発症数が有意に減少し、うち約 2〜5 割(15 匹中 3〜8 匹)のマウスには悪性腫瘍が発生しなかったことを明らかにしました。」
このような研究があってのSDGsご指導があるのなら納得もするところではある。岡山大学の研究継続に期待したい。