2022年 1月 の投稿一覧

崩し文字と発音

前橋に行くべく格安切符をJRみどりの窓口で購入した。申し込み用紙に駅名、列車名、時刻など記入し窓口に渡した。駅員さん黙ってしまった。俯いて2分。駅員さん顔を赤らめて曰く「この字はなんて読むのですか?」。ハッと気がついた。つい崩し文字で記入していたのだ。でも高崎経由○橋のところは前橋しかないだろうにと思いつつ、「楷書で書かなかった方が悪い」と謝った。

スマホには崩し字はないからなぁと思いつつ、核家族でないから高齢者が書く文字を見ていないのだと。街で見かける暖簾にある崩し文字は読み飛ばしているのだろう。パソコンの前のワープロが出始める頃から請求書は手書きがなくなった。現在はパソコンであるが出荷記録と紐付けされて発行されている。

それ以前は手書き。月末になると膨大な請求書と封筒宛名書きを手書きする商店を見ていた。小さな商店でさえだから会社では尚更の事務処理労力があったと思う。検算は暗算が好ましかった。その時の文字はスピード勝負なので崩し文字が多い。中には正規の崩し方ではなく、独自書式?の文字もあったが、受け取る方もそれで不便だと言うことはなかった。

今、“あんざん”と打ち込むと“安産”がヒットしてくる。“暗算”でさえ使用頻度が少なくなってきた。三丁目の夕日の当時、算盤、習字、ピアノ、日舞を習う塾があったが、やがて進学塾と英会話塾が大きな比重を占めるようになった。英会話は人気があった。将来の就職に有利と考えたのであろう。

筆者は中学1年の時、夏休み集中英語学習に学校から行かされた。外人教師からアメリカの代表的な名前の名札をつけられた。違和感と抵抗感があり、辞書を引きひきながら親から貰った名前で呼んでほしいと文書を書いて渡した。そんな訳で英会話は上達しなかった。外人教師から指名される頻度がグッと低下したのだ。(と苦しい言い訳)。長じて、会社で外国からのお客様が研究所に来られる時の挨拶文は依頼されることがあった。中学時代の出来事が役に立ったのかも知れない。

ある米国の学会で発表することになった。米国では学校で習ったイギリス風英語は地域によってはさっぱり通じないことを経験した。受付のお嬢さんから「この人何言っているのかわからない」と指摘された。このお嬢さんの発音は崩し文字のように聞こえた。筆者の後ろにいた老紳士が「この人の話はわかる。それは。。。」と通訳していただいた。他民族国家で出身地のお国ことばに加え米国の地域による修飾で多様な言葉の崩し連結(リエゾン)であることを知った。それなら独自の崩し英語ではどうかと試した。

リズムとイントネーションがそれらしくさえあれば変な方言だとして通じる、分からない方が悪いと開き直った。明治の留学生の辞書にあるカタカナ英語は崩し口語。文字からの英語教育よりは現実的だったのだ。桂文珍の落語に登場する老婆がアメリカでバスから降りる時には“揚げ豆腐”と言えば良いと笑わせるところがある。アイ・ゲット・オフではバスは止まらないだろう。

話は脱線した。話を戻して、駅員「新幹線は東京からで・・」当方「いや大宮と書きましたけど」。もう駅員は完全に動揺している。気の毒なことをした。蕎麦屋、寿司屋などで見かける崩し文字・変体仮名など読めると格好が良い場面は多くはないが、その場でさりげなく対応できると大人の気品を感ずるのは事実ある。ある人は大人の色気とも言う。

崩し文字に出会った時にAI翻訳で調べて知識として加える。些細なことだろうが親交する幅が広がる可能性がある。第一楽しいではないか。と偉そうなことを言っても古文書を読解できるには程遠い。博物館では楷書の解説文を読んでいる自分。他人のこと言えない。

地球温暖化予測でノーベル賞を受賞した眞鍋氏は“好奇心第一”と話された。陽の目を見るかどうかに関係なく継続するタフネスさも重要だろう。日本の大学の細々たる予算は研究継続できない状況にある。日頃の水遣り・栄養が重要だ。ある日突然変異して研究が成功した例はごく僅か。地道な支援が重要であろう。

それには崩し文字だの、崩し話し言葉を含むコニュニケーションスキルも必要だ。

炭酸同化作用vs.火山噴火

トンガの海底火山噴火の以前にブログ原稿を仕上げていたが、事情は一変した。

ブログ前半は平穏な時に書いたものである。*印までの少々のお付き合いをお願いする。

炭酸同化作用は小学校で教えられた。植物は空気中の炭酸ガスを気孔から吸収し、水と光により酸素と有機物を生成する。いわゆる光合成である。だから植物、林、森、山林を大事にしましょうと教わった。小学校の高学年になると葉の気孔は裏側にある理由は雨に濡れて塞がらない、炭酸ガスの比重は重いので下にあると聞いた覚えがある。随分、昔のことなので不確かではあるが。

今、温暖化対策として脱炭素(炭酸ガス抑制)に向け一斉に動き出している。植物の言葉・発言を聞く手段を今は持っていない。あるとすれば、順調に育っている。萎びて枯れている。のYes, Noの結果でしか判定できない。

一方、植物工場が登場して20年以上経過した。張り切り過ぎて計画が甘く失敗に終わった事業もあれば、着実に進めている企業がある。“工場”と銘打つからには、品質管理が重要である。効率良い生産性のために、水質、水量、炭酸ガス濃度、風量分布、温度管理、光照射の波長とその分布、病原菌などサイエンス要素が満載で、かつ農業エキスパートの知恵も必要とする。

では、炭酸ガス濃度は植物工場ではどうなのか? ネット検索したところ植物工場建設会社 https://i-m-a.jp/?page_id=966)には工場内の風の分布にもよるが大凡1,000ppmが最適濃度だと記されている。次から次へと炭酸ガスが流れる風であれば700ppmでも生育するとのこと。

今、地球の炭酸ガス濃度は400ppm。植物に発言権があるとすれば、「窒息しそうなので、もう少し増やして欲しい」「野菜や豆も、植物を餌にしている肉も口に入らないぞ。」と優しい囁きから、脅しまであると想像した。

*以下、この調子で書いたが、アップする段階で発生したのがトンガ海底火山噴火である。火山灰は成層圏まで達したことから地球全体を覆うことになるとの解説がなされている。工場の屋根に遮熱塗料を施して工場内の冷房省エネを図ることが20年以上前から施工されているが、この塗料の中には鹿児島・桜島の噴火で採取されたシラスバルーンが含まれている。今回のトンガ火山灰も同様だとするならば地球は遮熱・遮光される。0.5℃は低温化するのではと言われている。過去に事例がある。タイ米を食べたあの時である。1993年の噴煙による凶作でタイ米を輸入したことがあった。

そこで冒頭の植物の光合成である。光量減少、低温化となると植物は成長しない。植物成長に影響するCO2濃度について、従来通りに規制することにストップがかかることも予想される。3〜5年後には元通りになると推定されるのでCO2増加を野放しにすることはないが、その間を活かして、より実効ある技術開発をしたいものである。少なくとも太陽光発電は主役にはならないことは明らかになった。名脇役にするにしてもリサイクル環境を整えてからだ。BEVよりガソリンエンジン延命の方が賢いかもしれない。電力インフラが不十分の食料補給地域が凶作に見舞われたら、BEV推進をしている国に対して素直にはなれない。全ての人が困難な時でも等しく負担する、少なくとも気遣いをすることは当然だろう。

地球は人の頭で考え・対策できるようなシロモノではない。自然を頭では理解しているつもりの人間に噴火は「奢るな人間、本当の自然を正しく見ろ!」との警告だとしたら謙虚に聞き入れて本物の対策をすることだろう。

無意識の固定観念

親子四人が電車に乗り込んできた。1歳 4歳 7歳に母親。降りるまで1時間ほどかかるから今のうちに宿題をやったらと母親は長女に話しかけ、素直にカバンからノートを取り出して始めた。素直な子だなとトイ面の座席から眺めていた。そこから意外な展開に。宿題の内容は母親の車両の1/3の範囲の人には聞き取れるような声でわかった。形の違う長方形が2つある。これを本棚に収めるにはどうすれば良いか? 方眼紙に答えを描くのだができない。

母親は“ここがタテで、ここがヨコで、これが奥行き” 。“これをこうすると これがタテで。。。。”  長女はますます混乱して、宿題いやだと言い始めた。もう読者はお分かりになったと思うが、長女は長方形のそれぞれに固有の名前がついており、方向を変えても名前は変わらないと信じている。ああこの子。本当は頭がいいと思った。親はなぜ子供が理解しないのか、それがわからない。

でもこれを笑えないのは大人も同じ。1970年当時にFortranの初心者向けプログラミングとしてBASICがあった。例えばA=A+1 がわからずに、縁がなかったと諦める人が出たのだ。自分はプログラミングできなくても世間を渡れると妙な理屈をつけて。今、小学校でプログラミングが必須科目になっている。妙な区切りをつけた一人・筆者には、その事情が理解できない。量子コンピューターのプログラミングには携わることは1億分の数人だろう。原理を理解していれば十分だと思うが如何か。

話は転じて、大企業で定年を迎え、再就職やコンサルをする人が増えている。年金支給開始までの稼ぎはもちろん、その年金もあてにならないとなると少なくとも70歳まで継続を希望することになる。だが、大企業同士の合併でもみ○ほ銀行のように時間がものすごく長く、被害を出しながら継続している典型的事例がある。一方で大企業から中小企業へのシフトとなると、長年ついた垢(常識と勝手に解釈している)を本人は無意識に主張しているシーンをよく見聞きする。シフトした会社も高齢化が進んでおり、同じような年齢(経験の差)同士で理解し合うのは困難だろうと思う。

脳細胞は毎日寝るたびに更新されているはずだが、この垢だけは残るのか、残そうと必死にバックアップしているのか脳科学専門家に聞いてみたい。バックアップは男の方が女性より容量が大きいのか、こだわりが強いようだ。女性は過去より明日に重点をおくのに対して、男はそうではない。町内会長でもいいから名誉が欲しい生き物。

体の健康のためならウオーキングや各種エクササイズをみなさんは実践されておられる。だが、精神的な更新はウオーキングだけでは不足。比叡山延暦寺の千日回峰行なら別だが働きながらでは無理。とすると座る・座る・座る・只管打坐が必要な時代になってきたのかなと思うこの頃。

そういえば高校時代に永平寺でのミニ修行の行事参加があった。スティーブ・ジョブズなど新世界を切り開くリーダーは禅を重視している。永平寺において3時半起床、掃除、座禅などは記憶に残っているが、2日や3日では禅が分かるはずもない。しかし、今にして思うと人生の先で必要となるであろう“固定観念という垢を落とす”ことの重要さを教育の場で教えられたのは確かに貴重だ。今こそこの類を含む教育の国債を発行してはどうだろう、恐らく何十倍ものリターンが期待できるだろう。その場合でも単なるプログラミングができる、英語が話せるようなものではないことは勿論だが。

今年の目標 “精度”

年末年始・いやその前のクリスマスパーティを含め1ヶ月は特に女性による調理やもてなしには頭が下がる思いだ。男も料理をする時代になったものの、テキパキとおせちを作るとなると邪魔者になる。大掃除をやることで存在感を僅かに示すだけとなる。だが、ちょっと待って欲しい。大掃除をしながら、この作業をしなくても済む方法はないだろうか?と考えるのもありではないかと考えるならどうだろう。例えば窓拭き。戸建ての2階の窓なら普通に拭ける。一方、超高層マンションとなれば、それはできない。内側と外側に磁石のついた器具を利用している人もいるだろうが、プロ並みの仕上がりには到底及ばない。超高層マンションならずとも、デザイナーマンションと称する建屋は清掃に適しているとは縁遠いものだ。筆者と仲間は秘策を思いついた。今年はこの秘策を表舞台に出すことを一つの目標にした。目標も精度よく明確に。朧げに2030年とは言わない。

いくつかのテーマを新年にあたり掲げた。共通するテーマは“精度”。受注〜出荷〜アフターフォローとして精度ある対応とは何だろうか。日頃のお客様からの声に精度よく反映させることに尽きるのだが、それを精度よく受けて行動に移すことを肝に命じて。

以前のブログで歯科技工の工程はいくつかのユニットから構成されており、各工程での公差(誤差)の累積がトータルの公差(誤差)になることを紹介した。そのための各ユニットの精度を上げることが重要である。単なる仮定の計算であるが、工程1の公差が20%だとして、工程2の公差も20%であるとしたとき、工程2終了後の累積公差は?と統計処理の専門家から問われた。20+20=40%の最悪ではないが、現実は二乗和平方根の28%が最もありうるとのこと。その公差は工程数が増すにつれて大きくなることは間違いない。

工程1が印象採取にあり、その精度は石膏の膨張率に依存しているとした場合、膨張率の低い石膏グレードを選択することになる。できれば膨張も収縮もしない0%がベストだ。実際の石膏技工に筆者は疎いので的外れかもしれないが、モデル作成時のノコギリ切削、カービングにおいてひび割れ、クラックが起きないこと、水に何度もつけての切削は面倒なのでしないなども含めた目標を置いた。それなら膨張率0%、切削・カービングが容易で切断面がピカピカの光沢を持ち、かつ圧縮応力が低下しないようなものができないか高硬度汎用石膏をベースに実験したことがある。結論は実験室ではあるが出来た。一丁目一番地の精度改善としては候補技術になるだろう。

本年はその他の工程・製造における精度改良材料が可能か検討することになろう。“なろう”と精度がない表現は許されないので期中での見合いで再掲する。

話は転じて、高名な陶芸家から年賀状を頂いた。そこに書かれていたのは“感覚の世界”に生きる芸術家の矜持・考え方が表現されていた。それも突き詰める精度。技術とは対極にある世界であるが共通するものがあると鈍い頭脳でも理解した。一見、芸術は精度・公差とは無縁であると思っていた自分は無知だと教えられた。追い求めギリギリまで追求して到達した世界観を陶芸で表現しているのだ。

今、脱カーボンとして、火力発電ダメ、原発ダメ、太陽光・風力も頼りにならない、ガソリンエンジン廃止と論ずる人の勢いは強い。しかし全部ダメダメとなった世界を想像出来ない人はどうやら昨年末で置いてきぼりになったと言えそうだ。最近のCO2回収火力発電、モジュール小型化原発、太陽光・風力エネルギー保存の新しく安価な方法、バイオガソリン・水素エンジンなど解決策が提案されているこの頃風景が変わりつつある。日頃、ギリギリ・ミリミリの考え方・技術など精度を追求開発しているからこそ表舞台に出すことができる。

正月3が日は国の祝日。祝日を増やそうとした時に候補になったのは聖徳太子が制定した十七条憲法発布の日(4月3日)。筆者の誕生日なので、いつも気になる憲法である。“和を以って貴しとする”は誰でも知っているが、相手の名誉を尊重し、決して貶すことなく議論を徹底的にしなさいと説いている。 由利公正の五箇条の御誓文の“万機公論に決すべし”と合い通ずるところがある。

精度ある議論を尽くし決まったら即行動に移す。新年にあたり“本年の目標は精度”と肝に命じた次第。