2019年 9月 の投稿一覧

ガラスは液体?。樹脂高速切削とガラス転移点

いきなり、ガラスは固体ですか?それとも液体ですか? と問われると「硬いので固体」「いや、そのような質問されるからには逆の液体だろう」と両方の返事が返ってくる。

 以前なら、ガラスは液体!これが正解だった。ガラスは酸化ケイ素が結合した化合物であり、溶融状態から冷却されてガラス板やガラス瓶になる。冷却過程で溶融ガラスの粘度が極端に高くなって分子がちょっとやそっとでは動かない状態になって“留まっているような状態”。

 酸化ケイ素自身が剛直で、そのネットワークなので液体といえども剛直で透明な性質を利用して、製品として利用している。 ガラス本人にとっては何万年の間にジワジワと流動を継続するつもりなので、その意味ではガラスは液体である。 

ガラスに限らず、金属や樹脂にも溶融状態から冷却によりあたかもガラスのように分子の動きが制約されて硬くなる温度領域があり、その温度をガラス転移点と言う。PET容器に熱水を注がないように注意書きがあるが、一般的にガラス転移温度が65℃付近にあり、この温度以上のPET分子はあたかも液体のような動きになる(ゴム領域)ので容器として形状維持ができないことを示している。 

ポリカーボネート樹脂は自動車ヘッドライトやDVDなど寸法精度がよく透明性があるが、それもガラス転移点温度が145℃と高く、通常の温度領域ではガラスのように硬く、透明性が維持できることを利用している。

因みに、ポリカーボネートの成形温度は280~300℃近傍であるが、極端に380~400℃で長期間溶融状態をキープすると、分子が規則正しい結晶構造をとり、白色となることが知られている。

本来は結晶性樹脂であるが、分子鎖が剛直なために、結晶のような規則性折り畳みが出来ないので、通常の成形では分子はランダムになった状態で冷却されてガラス状態になる。 通常の成形温度、冷却条件では結晶化しない“非晶性樹脂”として、ポリスチレンや歯科材料に採用されているPMMA(ポリメチルメタアクリレート)がある。PMMAのガラス転移温度が90℃近傍なので、体温や熱い食事をしたとしても歯と利用するに十分な剛性を維持できる。

 一方、ガラス転移点温度以下の温度(普通は室温)でかかる製品を切削しようとすると、射出成形、金型内での流動ムラなどの履歴があり、製品中に残留応力があるために、極めて低速で長時間をかけて切削することを余儀なくされる。

今後、フルデンチャー入れ歯を樹脂化するには、口腔サイズをLL,L M Sのニアネットシェイプでモデル型を成形し、そこから切削するアイデアがある。ニアネットとすることで、顎と接触する凹部は切削する必要がない。しかしながら、成形の残留応力と切削時に発生する応力で樹脂は応力解放すべく、クラックを生ずる。これが厄介である。 筆者は材料の分子運動、流動パターン、型内配向、残留応力発生を解析して、高速切削可能なソリューションを提供している。(特許登録済み)

 話を戻して、最近、ガラスは液体にあらず、固体にあらず説が出てきた。(文献:池田昌司氏現代化学2019年10月号P52) 詳細はチェックされたい。

液体にしてはランダムと思われている形態に、やや規則的に凝集しているドメインの存在が確認され、コンピューターで変位を与えることで、本来は液体であれば応力が伝搬しないはずだが、そのドメインからある距離のところに伝搬することが示唆されている。(同紙・図参照)

 

著書らはマヨネーズやシェービングクリープ中の空気泡の構造との関連にメスを入れて追求するとのこと大いに期待しましょう。 

 

 

 

 

 

筆者は最近大ブームのナタデココはデンプンの水和凝集体であるが、これはゲルなのか液体なのか、秋ともなれば栗と白玉のぜんざいの白玉もゲルなのか液体なのか、そちらの方が食いしん坊の筆者として興味がある。

便乗・環境ビジネス

FB仲間から大阪のホテルに宿泊したら,Water Earth Group の国連世界食糧計画(国連WFP)公認のペットボトル飲料水が部屋に置かれていた。「生分解性のPETボトルで10年以内に自然に分解してPET樹脂としてリサイクル可能」とのこと。宿泊者は疑問に思い電話をしたが、確たる返事はなかったとあって、FBに投稿した。

この文章をお読みの方は直ぐにお分かりのように矛盾しています。即ち生分解するのは微生物がPETを食料として食べ、分解して最後にはPETの原料に戻すとあるが、これを人間に置き換えてみると、例えば、ステーキを食べたら、中間品を経て最後にはステーキに戻る。と同じ意味である。どこが「リサイクル可能?」と突っ込みを入れたくなる。国連WFP、生分解と並べ権威があるような似非科学環境ビジネスにこのホテルも乗せられたか乗ったか分からないが、このような非科学的な情報が一人歩きすることは危険である。ストローを紙製にしたら環境改善はまだ可愛い方であるが、これは許されない。

それでは、全くの非科学的な根拠かと言えば、ある限られた条件ではPETは生分解する。この研究者に筆者は論文発表直後にお会いしたことがある。その時の研究者は何故か元気が無かったのが印象的だった。「PETを微生物分解できる!」凄いセンセーショナルな話題で、日本人学者がなしえたことは凄いことだと思っていただけに拍子抜けした。

論文Science, 351, 1196-1199 (2016)に詳細記載してあるが、PET以外の餌がない状態で生分解する菌を発見し、発見場所にちなんでIdeonella sakaiensis 201-F6株と命名された。この細菌のゲノム情報を基盤としてPETを分解する酵素を探索したところ,PETからモノヒドロキシエチルテレフタレートをおもに遊離する活性をもつ酵素が同定された.さらに,遊離のモノヒドロキシエチルテレフタレートをテレフタル酸とエチレングリコールとに加水分解する活性をもつ酵素も同定された。と論文要旨に記載されている。

研究者の業績としては高い評価は勿論あるが、これが実用となると話は別である。即ち、
1)地中に餌はPET以外に多く存在する。
2)途中の分解で微生物がやめた時、それまで生分解した中間化合物は環境で認可されている許容量以下であるのか?
3)最終的分解物を微生物から分離し、精製、重合モノマーとして処理するエネルギー(LCAライフ・サイクル・アセスメント)として合理的であるか?
4)10年も特定コンポストで炭酸ガスと水にまで戻るまでの土地など日本ではありえない。
5)炭酸ガスと水に戻る前に、エチレングリコールとテレフタル酸の段階でストップさせるのか?

などを考えると、実用性とは異次元の世界であると言わざるをえない。2)について、帝人がケミカルリサイクルのパイロットまで建設し、検証実験をしたことがある。ケミカルリサイクルは技術的には可能となったものの、中間化合物の取り扱い問題があること、さらにPET樹脂をケミカルリサイクルするよりはマテリアルリサイクルがLCAにも有利だとして、この検証実験の結論で纏められている。

筆者はホテル側の善意の誤解だろうとして、バイオ由来のPETを生分解PETと勘違いをしたのではないかとの推測に基づいてコメントをしたが、本気でWater Earth Groupが行っているのなら10年間の経過報告をして欲しいものだ。日本の学者が分解菌を発見し発表したのは2016年で世界で初の出機事だったから、現在まで4年しか経過していない。

我々メディカルに関わる人間としては、科学的根拠、フィールド実験検証を通じての証拠を積み重ねる慎重さが求められ、歯科医療に携わる全ての人がその高い意識でいる。それだけに、今回の記事には呆れた。

話は脱線するが、関西では“阿呆”はどことなく憎めない可愛いところがあるが“バカ”と言われると怒る。関東では逆である。バカの語源は仏教の“バーハッ”の当て字“馬鹿”だとか聴いたことがある。その意味は“無知”。相手が無知だとして進めるビジネスはどうかと思う。一方、頑なに過去・現状に固執するのも考え物で、本当に頭の良い人は全方位に興味をもち、愉しく前向きに積極的に勉強するとのこと。なので、この日本人の論文をどのように活用するのが良いのか考えることが本当に環境を考えている人なのだろう。

炭酸同化作用とCO2問題

子供の頃からずっと今まで、植物は空気中の炭酸ガスを吸収しその光合成反応の生成物として酸素を放出する。恥ずかしながら疑うことはしなかった。その“常識?”に待ったをかけることが出てきた。アマゾンの森林火災を切っ掛けに、森林破壊により地球の再生酸素の20%が喪失するとの話題があり、これに対してサイエンスの面から否定したニュースに接したからである。

このニュースによれば、確かに植物は炭酸ガスを吸収し光合成により糖を蓄積する。そこまでは正解。ただ光が当たらない夜間はどうかと疑問を投げ掛けている。答えは日中に蓄積した糖を分解するために植物は酸素を消費するとのこと。大まかに言えば、昼発生した酸素は夜間で消費するのでプラスマイナスとなって酸素増加はない。一方、大気は80%の窒素、20%の酸素、炭酸ガス0.5%、その他成分となっており、通常の植物の光合成による酸素バランスから大気中の20%もの酸素濃度になるはずがないとも指摘している。

実は海洋中の植物プランクトンも光合成をしており、全体の酸素生成量の70%を占める。この植物プランクトンも微生物により分解するために酸素を利用するのであるが、分解する前に埋設されてしまえば、生成量が蓄積されて20%になったとのこと。即ち地球が誕生以来の海の植物プランクトンによる蓄積作用によるところが大きい。

この文献にそれこそ、NHKのチコちゃんではないが「ぼーっとしてるんじゃない」と怒られたようなものである

地球の砂漠化が激しくとも、大気中の酸素濃度に変化がないのは、大きな蓄積酸素によるものである。植物の主な役目は葉から水の蒸散による地球温度調整作用と炭素固定化にある。

炭酸ガスは地球の防寒着的役目をしている。もし、炭酸ガスの層がなければ地球の平均温度はマイナス15℃以下である。過剰にあれば温暖化が進行する。なので、炭酸ガス濃度を制御するかが課題となっている。

対策として

  • 炭酸ガス固定化 大型植林と植物由来のバイオマスの利用(バイオマスを焼却してもカーボン量は変わらないとの考えに基づく)
  • 炭酸ガスを枯渇した油田層や深海に放出する
  • 炭酸ガス固定化の派生ではあるが、炭酸ガスポリマーの合成

がある。バイオマスの利用は最近急激に成長してきた。セルロースナノファイバーは日本の期待の材料として東大が触媒による開繊技術の開発を、京大が耐熱性のある材料(コンパウンド技術を含め)で先頭を走っており、実用化面では第一工業製薬、日本製紙、王子製紙、大王、中越パルプなどが開発を競っている。また、バイオ樹脂として最近実用例が増加しているのがイソソルバイトを原料とするポリカーボネート樹脂である。非常に外観が美麗であることからペレットに顔料を分散させておけば、塗装品と変わらないとあって自動車内装材として、また耐光性の実績がつけば外装材にも応用が進んでいる。自動車にとって塗装は焼き付けのためのエネルギーがバカにならないので、塗装レスは願ってもない材料といえる。従来のバイオ材料は既存材料とよくて品質が同等狙いながらコスト高が敬遠されていた、この樹脂はコストを塗装レスと相殺できるメリットで伸びている。今後、単なる“バイオ”原料では市場は受け入れないので、この傾向は好ましい。

 

 

 

 

東京大学では炭酸ガスとブタジエンと反応させて、ポリラクトンを合成したと発表している。(2004年)このプロセスも面白い。柔軟な分子鎖と剛直な分子の組み合わせはどんな物性を有しているのか、適用しうる市場は何か、興味がある。

 

 

 

 

2004年にミカンの皮にあるリモネンと炭酸ガスを反応させた樹脂をコーネル大学が発表し6.6million$のベンチャー資金を集め起業化したが、その後の消息を知らない。市場が単なる環境によいだけでは物性(品質・コスト)が採用のポイントになるだけに、厳しいとも言える。

炭酸ガスを利用した樹脂開発は単なる出発原料としてだけでなく、リサイクルできない製品は焼却することになるが、廃棄物のもつエネルギーを利用(エクセルギー)して廃棄物をガス化させ、ついでモノマーを合成し、最終的に樹脂にする循環系を完成させるためにも必要である。

従来の3Rとの比較をした文献があるので紹介する。(CO2固定化技術マップ2005年より)

 

 

 

 

 

②の地球、海中、海底への埋設・拡散についてもコストと海への環境アセスメントが不十分なのであろう2005年に構想が発表されて以来、進んでいるとの情報を知らない。ここにも炭酸ガスを発生して工業を維持拡大を図る国家間の問題があるだけに容易には進まないのだろう。

 

アフリカ会議とヨコハマ

先週、横浜みなとみらいパシフィコではJapan-Africa会議が開催されていた。今回が7回目。会議そのものには参加できはしないが、各国及びアフリカビジネスに参画したい国内企業のブースを見ることはできる。アフリカは現在人口13億。これが25億に増加することが予想されている一大市場に成長する残された地域である。

会議の主目的はアフリカ地域の自立のための支援活動(シビル・ソサエティ作りに)にあり日本政府の後押し、民間企業の協調により東南アジアなのでの成功パターンをアフリカに適用しようとするものである。

(国内企業展示内容の変化)

前回はアフリカ諸国が日本市場に紹介したい商品などの展示が多くあったが、今回は見られず、アフリカ諸国が日本企業の現地進出を促すブースに変貌していた。焦点が明確になってきたと言える。前回までの文化紹介、お祭りなど派手さはなかった。あくまでもビジネスに徹している。一方、日本企業は前回と変わらずアフリカが必要とする商品・技術・インフラ整備などを展示していた。だが、おや?と思ったのは前回目に付いたアイテムが陰を潜めている。例えば緑化灌漑事業やマラリア蚊を防ぐ蚊やは利益がでない事業になっている。なぜならば、日本企業はアイデアをだし、現地化に苦労して立ち上がる。そうすると中国、インド企業が類似商品で製造拡販をしていく。日本としては知的財産が確立していないか、確立していてもお構いなしの国からの攻撃にはお手上げなのだ。ここから、アフリカと協調成長していくためには工業所有権など意識した独立した技術開発力を付けるための日本政策も必要だと感じた。

今回政府は2兆円規模の支援を約束したが、留学生など交流を含むソフト面もあるようだが、是非、産業育成面もあれば良いがと感じた。 中国は巨額の借款で港湾設備開発など実施しているが、産業がそれに伴っていないので、返済できず領土長期借用の形で進出している。借款はそれが目的であるが、歴史でみると長続きしない。

 アフリカに限らないが、容易に真似されるような機械・装置では通用しない。2番手にやられる。なので、真似をしようにもできない材料・素材のビジネスが有効だろうと思われる。国内企業でそれを展示PRする企業はなかった。申し訳ないが、明日儲かる商品。そして翌日にはひっくり返される商品。うーん。これに2兆円か???と長嘆息した。

 (横浜が会議開催のためのインフラ)

筆者はアフリカには行ったことがないが、魚や花卉ビジネスの商社と関係したこともあり、多少の知識はある。今回こられたアフリカの方々の服装は男女とも正装で気品がある方々。さぞ本国でもそれなりの上級国民であることは間違いがない。会議が終われば積極的に市内観光。不案内だろうと思い、幾つかご案内したが、できないこともあった。それはアフリカの言語でかなりを占めるフランス語となると、面食らった。彼ら彼女らが頼りにしているスマホはフランス語表示。発音を聴いても、文字を見ても、直ぐには分からない。しどろもどろで対応した。街の表示も英語・フランス語・スペイン語だけで良いのかも知れない。中文は略日本語で十分。彼らは日本の何でも興味を示したが、面白いのは電柱に貼られている表示。海抜*m 、住所、避難場所指示、宣伝パネルなど撫で回しながらワイワイ。当方の日頃の感覚との違いが分かり納得。電柱は都市風景を壊すとか、道路交通に邪魔とあって電柱地下埋設が進行中(極めて遅いが)であるが、進めば逆に殺風景になったとの声が聞こえそうだ。

 今回の会場となったパシフィコは展示場と大会議場からなる設備ではあるが、大会議場といえども今や世界規模の会議としては小さくなってしまった。展示場はお隣の東京ビックサイトが南ウイングを新設したこともあり、小規模展示場に成り下がってしまった。今回の会議も展示場を仕切って利用したが、いささか見栄えが良くない。そこで、パシフィコに隣接して北ウイング(名称はノース)を急遽建設中、かつホテルも建設中で来年オープン。あとは、どのような会議体を誘致するか民間出身の女性社長の腕に期待したい。

今回、展示場に入るにはQRコードを読み取り、ダウンロードして必要項目を記入して受付に渡す仕組みになっていた。スマホがないと入れない。筆者もやってみた。だが、、、、アクセスが集中するので次ぎの工程に行かないで立ち往生。結局、名刺だけ渡してなんとか対処してもらった。通信インフラの遅れが指摘される。新設設備が完成するころは5G元年。こちらも急ぐ必要がある。

 (観光都市横浜喫緊の話題)

横浜市政を揺らしている問題はIR(カジノ)誘致問題。反対の言い分は良くわかる。博打もどきで家庭崩壊や風紀の乱れは避けたいとの主張だ。

一方横浜の国際貿易港の地位は国内5位に転落(イメージでは2位だと思われているが)福岡や名古屋港の後塵を拝している。国内産業基地としての価値が低下しているから当然である。

幸なることに横浜と羽田は狭い海を挟んで目と鼻の先。羽田国際線ターミナルから外国人パスポートを持った客人だけ特別のボートで山下埠頭まで運び、日本人は参加できないようにすることで可能性はあるように考えるが如何か。

横浜の中心部に関内駅がある。 明治の貿易地域として“関”の“内側”の特定場所を指定し川を仕切りに関外(今の伊勢佐木町)の歓楽街と分離していた。通行するために吉田橋があり、山の上から外国人の振る舞いをチェックしていた。横浜には昔の知恵があるのだから有効に利用してはどうか。

また横浜から羽田には蒲田経由の面倒なアクセスよりは、長期的には直結アクセスを建設するぐらいの大きな構想が必要だと思うがどうだろう。