2018年 7月 の投稿一覧

熱線反射

連日の猛暑。「命に関わる暑さです。不要な外出はしないで下さい。」このナレーションが流れない日がない状態。汗腺の数が少なく孔径が細い幼児~中高生、および高齢者は特に注意が必要とのこと。駅などでスーツにネクタイの高齢者を見掛けると無理をしないでと声を掛けたくなる。その駅で通勤途中のサラリーマンが熱中症で緊急搬送されるのを目撃した。寝不足も原因になるのだろう。昼の能率上がらない仕事を自宅に持ち帰りカバーしたとしたら気の毒。

地球温暖化説は間違い・嘘であるとご高説をたれる一部の大学教授、マスコミ関係者の言われることを否定する証拠を自分は持ち合わせていないが、この猛暑・酷暑それに伴う豪雨が続けば地球温暖化説に大きく傾いた上で有効な対策をするのが大学公的研究機関及びこれをビジネスに結実させるべく研究開発をする民間企業が本来あるべき姿だと思う。温暖化を否定して何もしないで人の命が失うのは堪えられない。

日本の温度変化は100年間で気温は図に示すように右上がりで1.19℃上昇している。(日経記事引用) 周囲の海の温度も高くなることから、飽和水蒸気濃度も高く、雨量が増える流れは理解できる。それでは何故温度上昇するのか? 炭酸ガス濃度は産業革命以来増加し続け400ppmまで到達。だから炭酸ガスが主原因を唱える人が多い。もし炭酸ガスがなかったら地球の温度はどうなるかご存知だろうか? 答えはマイナス18℃。宇宙と同じ。地球の平均温度が15℃なので合計33℃が炭酸ガスの温室効果となる。太陽からの熱線を炭酸ガス層が反射して地球の温度をキープしている結果である。当然ながら地球の熱を宇宙へ放熱する際には炭酸ガス層は断熱材となる。

太陽光は紫外線~可視光~近赤外~遠赤外のスペクトルを有しているが、熱線となるのは近赤外~遠赤外である。この領域の光を吸収する化合物は多々知られているが反射する化合物は限られている。日傘や駐車時の反射シートなどはアルミ蒸着シートが利用されている。但し、可視光は通さないので透明な熱線反射日傘は(価格見合いで)実用化されていない。可視光を通すが近赤外・遠赤外を遮蔽する化合物として20年以上前までの輸入車のサイドガラスが緑色をしていたことで分かるように銅化合物が利用されたいた。透明な樹脂に配合しても熱線遮蔽効果はあるが、国内の自動車メーカーが要求するレベルまで配合すると可視光透過率が低下しまるでサングラスカーのようになって好ましくないことがわかった。いまは往年の外車の緑色ガラスを今はみることがない。UVカットガラスは自動車に限らず、車両、建築物に利用されているが、熱線反射には輝度ガラス、偏平形状の雲母、アルミ粉末などを配合するケースがあるが、所望の透明性にはならない。

正解がなかなかない中、液晶での対応が試みられている。25年ほど前、ジーイープラスチック(GEP)がコンセプトハウスをNY州オーバニーに建設し話題となったので見学した。地下のボイラー廻りはエンプラ発泡断熱材(これはGEP得意の変性ポリフェニレンエーテル)だがキッチン廻り、窓廻りは実は日本メーカーからのコンセプト提案であり窓については二重ガラスで液晶がサンドイッチされていた。スイッチオン・オフで遮光・透明と変化する。カーテン代わり。現在の航空機の窓にも採用されている。しかしながら透明ではない。液晶をコレステリック系(螺旋構造の分子)とし、極薄層とすることで透明性が確保できる特許が出願されている。コレステリック液晶では(詳細割愛するが)熱線反射率が50%なので、螺旋の反対回りのコレステリック液晶と混合することで透明性を高めることが報告されている。

街を歩けば、ミストシャワー設備が徐々に増えてきた。蒸発潜熱を利用しての打ち水の応用である。先日、京都駅前でバス待ちをしているとバス停の上にミストシャワーが稼働していた。但し、冷却効果はイマイチ。何故かと見上げるとバス停の屋根が透明樹脂(PMMAPC)で熱線が通過しており熱バランスが取れていないのだろう。京都市バスの色は薄緑なので、ここは銅イオン化合物を混合した樹脂を利用するのがベターだろうと考えてバス待ちをした。一方、ゴーヤや蔓で熱線反射に利用している工場がある。樹木は高さ10メートルを超えても水をポンプのように汲み上げて上部の葉まで運んでいる。葉の表面から水分を蒸散させている。室温近傍で水が蒸発させることを樹木、植物は何気なく実行している。慶応義塾の佐藤春樹教授はこれにヒントを得て多孔質のセラミックスを冷却システム利用の提案をしている。樹木、植物は熱線反射と水分ミストによる熱線反射及び蒸発潜熱の3役を果たしている。

地球規模でこの植物を乱獲して砂漠化しているのは人間。図は年々緑が後退して砂漠化ししている地域と緑化維持している僅かな地域(日本などごく少数)。炭酸ガス問題・・・石化・・・樹脂・・・レジ袋。。。。短絡する前に留まって考えて欲しい地球環境。砂漠の緑化(これも日本企業が健闘)と短期的収益狙いのプランテーションについては抑制することが必要と思うが如何だろうか。

 

ストロー問題に思うマーキング

某国の鉄道線路にそって白色物が延々と続く光景が話題になったことがあった。白色製品は発泡スチレンの弁当容器。用が済めば窓から捨てるのが通例だった。そこで対策として発泡ポリスチレンを弁当容器に使うのは止めようと話題になった。今回、欧州ではストローを中止するという。理由は海洋汚染だそうだ。ストロー廃棄量と海洋汚染物の量的バランスが確認されない中での立案だろうが、この二つの事例はどこかオカシイ。廃棄物処理インフラの整備と捨てないで分別するマナーの徹底があれば済むことなのにと思う。ワールカップが終了したが、日本からの応援団は試合の勝負にかかわらず清掃し、ゴミを持ち帰ることが話題になった。ワールドベースボールでも話題になった。話題になるということは、裏を返せば、ゴミを散らかしても清掃業者の仕事を作っているのだから何が問題?と考える方がカノ国では普通なのだろう。その清掃が機能していないことを重々知っている立ち場から、とりあえずストローは止めようと考えたと推察できる。次はプラの蓋かショッピングバックが俎上に上がるだろう。これを延々と続けるつもりなのか、それとも立ち止まって何故こうなるのかを考えるのか。イエローカードを出す相手が違うのではないだろうか。

狩猟ベースの国の成り立ちに由来する癖なのか、同じ場所で次の作物を作るために廃棄物の有効利用、適切な処分をしないと生活が成り立たない農業国由来なのか、それとも教育レベルの問題なのか。恥の文化が武士とは言わず庶民も江戸時代に全国で800もの寺子屋を通じて教育され江戸時代に訪れた外国人の記録に驚くべき清潔さと記載されている。長い歴史が関係しているのだ。ここは表面的なことだけでなく、深掘りして欲しい。

ストローはポリプロピレンのホモポリマーで高速異型押出法で成形されるが、そのため分子量は低く、添加剤は最低現配合されているだけなので廃棄されて太陽光が長時間あたると3級アルキルであるプロピル基が脱離してラジカルが生成、これが連鎖反応により分解に至る。分子量は低下して極端には風化により粉になることは容易に想像できる。加色もされていることからリサイクルは出来ず焼却が現実解である。

一般にリサイクルには、原料が何か、できればグレード名まで分かると便利として10数年前から大阪のコンパウンドメーカーの社長の提案で材料メーカーも参加した研究活動が継続している。

ペレット1粒でも即座に分かる。高度で時間の掛かる分析装置ではなく、紫外線スペクトルが測定できる小型装置があればいい。材料別に指定された複数の紫外線吸収剤を配合しておけば、紫外線スペクトル測定器には複数のピークがあたかもバーコードのように読み取れ、予め登録してある材料名が特定できる仕組みとなっている。紫外線吸収剤は人間の目では無色に見えるので着色も容易である。食品向け包装など特定の紫外線吸収剤を配合できないことはあるが、工業製品の材料特定には大きな価値がある。 ストローは上述のようにリサイクルは出来ないが、この仕組みを使用して特定樹脂製品にマーキングして「海洋汚染物質排出国ランキング」を提唱してはどうか。横軸に人口、GNP、焼却炉、分別規制有無などをとりプロットすると改善目標が明確になると思うがどうだろう。グローバル生産・物流だからやっても無意味と貶すのではなく、このような取り組みをヒントに改善案がでることを期待している。

自動車の潮流

西日本豪雨で被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。皆様のご安全と一日も早い復興を祈念しております。

さて、国内自動車生産台数は510万台。たしかに米国を始め世界各国で現地生産しているから徐々に国内生産台数は減少している。これは理解できる。都市交通が発達しカーシェアリングに抵抗がなくなっている若者のクルマ離れが言われて久しいので尚更だろう。

ところで、中国の生産台数は2800万台!エッいつの間にこの台数? さすがに驚きます。年配の人の「サニー、カローラ競争」「隣のクルマは小さく見えます!」のCMを覚えておられる方からみると高度成長時代に年収が徐々に増え、ついにクルマを買えるところまで来たと感嘆に耽るまもなく、「いつかはクラウン」のCMが刷り込まれると、そうだなぁ~頑張らなくては!と。特に第一次ベビーブーマーの人々が「おぉ~モウレツ」に煽られて頑張った姿が想像できる。

6月発売のカローラの国内販売販売台数より海外輸出分が多いので製造ラインを海外と共通化するとして車格をBからCへ変更し姉妹車種も整理。その結果5ナンバーから3ナンバーに変更となった。「あのカローラが3ナンバー!」 クラウンの姉妹車マジェスタなど3種類を統合してクラウン1車種に絞り込まれた。これも時代の趨勢か。

その中国、大気汚染問題、部品点数が少なくて組立てが容易、電池産業の大型育成で自動車後発でも覇権を握ることが可能とあってEV車に特化している。黒電話の時代を経ないで携帯に移行したように、自転車からいきなり自動車に突入したように思える。自動車学校ではエンジンの仕組み、駆動システムを学習し筆記試験を受け、クラッチの使い方ができないと坂道発進で合格できなかった時代があったのに、EV車は遊園地のバッテリーカーを運転するような気分で目的地までの移動手段として利用できる。それで十分ではないかと。

EV車。三菱自動車が開発したのを皮切りに日産自動車が国内では先行している。トヨタ圏はPHV(プラグインハイブリッド)で対抗しているが、ガソリン使用には違いない。メリットは長距離運転が可能。EV車も走行距離を伸ばしてきたがどうやら300kmあたりとなると、俄然脚光を浴びるのがFCV(水素燃料電池車)。EVでは高速充電でも30分を要するのに対して水素チャージは約3分程度でガソリンと変わらない。水素ステーションがあれば何処までも走行できる。問題のステーションの数がネックのようだが政府の肝いりで2020年までに最低限整備し、2050までには充実させるとの方針がある。欧米を含む世界の自動車関係者によれば2050年にはFCVが主流になるとの予想もある。そうなるとEVと異なり、高度で複雑な技術体系になることから、技術覇権は日本が握ることになる。頑張れニッポン!

さて、自家用車より深刻なのは物流業者。バスに乗るとバス運転者募集を良くみる。トラックもバスも運転手のなり手がいない。アマゾンなどを利用者が急増するなか従来の運転手募集だけでは追いつかない時代になってきた。IOT活用での効率的運用が必要となっている。国内トラック・バスのトップ日野自動車はコネクト技術所有のVWと組んだのが象徴的である。日野レンジャーは過酷なサファリラリーで何回も優勝しているハードに強い会社である。エンジンは20万キロ超でも故障がないくらい頑丈。日野自動車はコネクトに移行しつつあるトヨタ圏ではあるが、物流の事情はそれを待っていられないのであろう。往路では荷物満載でも復路が空にはならないよう物流情報と車の位置情報をコネクトして効率を上げるなど種々の提案がなされている。

今、政府も支援する中でトラックの運用の方法として面白いのがトラックの縦列走行。先頭には運転手がいるが、2番目、3番目は無人運転の方式。これにはトラック間の情報やり取り、処理能力などが必要である。荷物の荷下ろしも考えないと運転手一人で3台分のデバンが必要では大変だ。でも、そう考えるのは頭が硬直している証拠かもしれない。その時は気の利いたロボットが活躍するだろう。

JST歯科領域新技術説明会から

国立科学技術振興機構(JST)は大学・高専及び公的研究機関でのシーズ研究を企業のニーズ創出に連結するための技術説明会が殆ど毎週のように東京・市ヶ谷JST別館にて開催されている。医学、生化学、薬学、化学、生物、環境、IOTなどのテーマが高い頻度で報告されている。昨日(73日)は歯科領域のトピックス6テーマについて発表がなされた。この中から、筆者の驚きと興味本意で選んだ3テーマを紹介する。尚、発表資料は1ヶ月以内にJSTホームページにアップされるので、詳細はそちらを参照願いたい。

(1)        iPS細胞を利用した骨誘導性骨補填材の作成技術(東北大 江草教授)

記憶が定かではないが3年ほど以前のJST説明会では日大からハイドロアパタイト、βリン酸三カルシウムを発泡させて埋設すると骨細胞が吸着成長すると聞いて、なるほどと感心したことがある。

今回の発表はそれでは骨誘導性に欠ける問題点があるとしてiPS細胞をバイオエンジニアリングで人口骨を作成し、凍結乾燥して埋設する技術を開発。経過時間見合いではハイドロアパタイトの周辺に繊維質は観察されるが、iPS細胞凍結乾燥品では骨が成長していることが明確になった。

但し、この実験はマウスであって、人間に応用するには培養期間の短縮が課題であるとのこと。実現できれば歯溝骨の回復、インプラント、整形外科など応用は広い。特筆すべきはPMDAの見解では医療機器に該当するとのことで、非臨床POCに繋げる可能性がある。

いよいよ本命登場と言った感がある。江草教授にエールを送りたい。

 

(2)        唾液メタボロミクスによる歯周組織と前身の健康測定法の開発 (大阪大学 久保庭准教授)

WHO勧告によれば全数の歯について歯周ポケットを測定することになっている。一本の歯の周囲6点測定し総合計をPISAとしているが、これは時間も手間も何より患者が4mm深さまでプロービングされるのは悲痛過ぎる。

これを久保庭准教授は唾液の成分の中に歯周病細菌が存在する筈としてバイオマーカーの策定を試みている。歯肉縁上の食品由来のメタボロミクス(代謝産物)をプラーク処理で除去して、重度歯周病の物質とPISAを比較すると良い相関が得られている。プラーク無しでも特定物質(カタベリン、5-オキソプロリン、ヒスチジン)の組み合わせをマーカーとすることで判定はできるとの由。

この技術は一般検診項目に採用されると、潜在患者の発見、しいては重篤な病気発見が可能になると期待される。是非WHOへの逆輸出をして欲しいものだ。

(3)        歯科矯正治療時間を短縮させる薬剤の探索 (新潟大 柿原助教)

ご専門の方にはご存知でしょうが、素人の筆者は「言われてみればそうだ」と納得の発表。歯列矯正には歯を動かそうにも今存在している歯溝を構成している骨を動く方には破骨細胞を活性化させ、動いた空間は骨芽細胞で埋める必要がある。

歯の移動を促進するための化合物378、既存抗がん剤、標的分子が明白な阻害剤の中からスクリーニングして分化促進化合物8種類を抽出。新潟大ではROCK(Rh0-associated coiled-coil kinase)を用いて破骨細胞分化や骨芽細胞分化促進を確認している。物理的歯列矯正と併用することで短期間治療が期待できる。マテリアルを一応専門としている筆者としては、矯正材料面での組み合わせができれば実用化がさらに近くなるかもしれないと考えながら聴講した。非常に今回の新技術発表は刺激になった。