2023年 7月 の投稿一覧

病は気から・サイエンス裏付け

昔から「病は気から」と諺や言い伝えがあり実例は山ほどある。ところで気になりませんか? 「気の存在場所とその証明は?」。 夏休みのラジオこども相談室に質問してみたらどうでしょう。ハートマークを両手で作るなど“気”は心臓にある・・・と今や信ずる人はいない。心臓の器官が気分をコントロールしてはいない。愛しい人に出会ったときに心拍数が高くなるのは結果であって、どこの器官が心臓に激しいビートをするように命令しているのか?

先日、図書館でNature ダイジェスト版を手に取った。タイトル「病を制し、健康を手にいれるカギは脳?」 How the brain control sickness and health  vol 614 2023.2.23  Diana Kwon タイトルの終わりに?があるので確定ではないにしてもn数を重ねた実験結果を紹介しているのだろうと記事を読んだ。ダイジェスト版なのでエビデンスは記載されていない。

ポイントを引用する

1)病原体に感染していなくても脳の視床下部にあるニューロンを活性化させることで疾患症状を呈することを実証。(Catherin Dulac ハーバード大)

2)視床下部の上に、感情や身体感覚の処理に関わる島皮質があり、ここのニューロンが過去の腸炎に関する記憶を保存していて、脳のこの細胞を刺激すると免疫反応が再活性化(Tamar Koren 2021) 。(下線部は筆者の注目点)

図は免疫系の細胞(緑)と連携する脳の神経細胞(赤)

これだけでも「エ〜?」だ。続けて癌がどうなっているか文献中探した。

3)肺癌と皮膚癌のマウスを使ってVTA(腹側被蓋野)のニューロンを活性化すると癌は縮小した。VTAが活性化することで、通常は免疫の活動を抑制している骨髄の細胞を抑え込み、免疫系が癌と戦えるようにしている。とのこと。 (ふくそくひがいや:wikpedia)      

 

ぜひ 今回判明した機作をベースにヒトでの細胞を操作して腫瘍の増殖をコントロールすることを期待。

臨床への応用が待たれるが、すでに研究者Ben-MosheとRollsらは

磁気パルス(径頭蓋磁気刺激)、音波を使う集束超音波治療法などの既存の脳刺激技術を利用して癌や自己免疫疾患などの免疫調整を考えているとある。

この文献では多くの事例が詳しく紹介されているので一読をお勧めする。ただし、3〜4回読み直ししないと、厚い頭蓋の小生には理解ができなかった。磁気パルスや超音波にしても個人によって刺激を受ける波長・振幅など差があるのだろう。最後の治療・臨床に落とし込むには忍耐作業が必要だ。伴侶を選ぶに当たって、(イケメンとか身長が・・収入が・・学歴が・・等あれこれ理由をつけるものの)、子孫繁栄できうる免疫力を持った相手と結ばれたいと自動的に選別している説もあり、面白い研究分野である。

ここで面白いと思ったのは、都市の設計、工場事業所の設計など広範囲に関係するのでは?と思いついたのである。いわゆる今はDX、AI 。製造工場では整然と装置が並び、ロボットが原料搬入・取り出し自動倉庫へ保管と合理化が進んでいる。だが、システムと管理は人間である限り、“健全な気”でないと製品は不具合(疾患)を生じる。手作業なら尚更だ。巷間マイナンバーの紐付け記入ミスに対する監査のニュースがある。あるのは仕方がないが、まずは殆どの%は正常であるとして、それまでの労を労った上で、緊張させていた雰囲気の“気”に対して気づかなかったと正直に言えばほとんどの人は納得するだろう。叱責・罵倒は逆効果。「組織の罹患も気から」なのかな?

肌の老化防止 有酸素運動と筋トレ

「私って幾つに見える〜?」と聞くのは大阪では普通の会話。実年齢より若い年齢を言わないと失礼だし、わざわざ聞くのはきっと何かをやっており自慢をしたいに違いない。そこで判断する根拠に挙げるのは「お肌の艶が非常に良いので・・・おそらく・・・○歳ですね」と答える。実年齢より10歳若いと言われた方は満面の笑み。回答した方はホッとする。ズバリ当てられると気色を失う。そんな風景は幾度となく経験する。東京ではあまり経験しない。年齢当てはたり聞いたりすることは礼を欠いているのであろう。大阪では会話のきっかけの一つに過ぎないのだが。コミュニケーション能力は大阪の方があり楽しい。ちなみに小生の答えはいつも「昨日、学校を出られたんやから・・・」ほとんどの人が笑顔になる。

加齢に伴い皮膚は劣化するので年齢の目安にはなる。シワ、シミをはじめ血色、疲労感漂う肌で判断する。「え〜っ!」と驚いたあと、何か秘密があるのですか?と聞くと待ってましたとばかりに話を始める。ためになることもあるだけに面白い。ウオーキング、ジョギング、エクササイズ、睡眠時間、食事やサプリメントなどもある。もちろん肌に合う化粧品も関係するのだろう。

そんな中、化粧品メーカーのポーラ化成工業が立命館大学とのコワークで面白い研究を実施し発表があった。我が社の化粧品には肌を若返る○○○成分に着目して若返り肌化粧品を開発したとの発表だと思いきや、思いっきり内容が違うレポート。逆にポーラは凄い会社だと思った。(日本の研究.com)

ポイントをまとめると

日頃、座って仕事をしがちな40〜50代の女性60人に対して、週2回*4ヶ月にわたって、有酸素運動グループ、筋トレグループに分けて血液成分変化、皮膚の弾力性、真皮構造変化、真皮厚み変化をチェック。その結果を図示した。原文にはないが理解のため日本語で注釈をつけた。

有酸素運動はアンチエイジングには良い効果をもたらすことは従来わかっていたが、筋トレの効果は確認されていなかったとのこと。それが筋力トレーニングは加齢により薄くなる真皮の厚さが改善されることがわかった。文献では詳細分析が行われているので元文献を参照されたし。有酸素運動と筋トレは、サイトカイン、血清中のホルモン、代謝物などの因子の循環レベルに異なる影響を及ぼし、筋トレは真皮ビッグリカン(BGN)を増加させた。皮膚の老化に対するATとRTの異なる影響を示し、RT誘発性の皮膚の若返りに関与する重要な要因を特定。

 

これによると 有酸素性運動と筋力トレ―ニング(レジスタンス運動)は、どちらも皮膚老化を改善するが筋トレの方がBGNの効果により真皮厚みが増加(改善)することがわかる。

 

 

有酸素運動も筋トレも同時にやれる方法を考えてみた。 筋トレ=ジム通い? それは費用面、スケジュール面がある。特に年金暮らしのシニアは厳しいだろう。テナントビル、地下街にカイロプラックテックお店やジムがやたら目立つ。 ショップ店員が配るビラに“本日なら片側500円” とあったので、入会せずに遠目で眺めたところ、片方の肩こり、片方の脚マッサージ的なもので本当に片側なんだと笑いつつ納得。でも筋トレとは違う。しかしながら 神戸、横浜、長崎、東京(山手)にお住まいの方なら、有酸素運動と筋トレは幸か不幸か同時に行なっているのだ。その地域は坂が多い、それも相当な急坂。京浜東北線・東海道線は断崖が海に落ちるわずかな土地に敷設されているので、大森駅を降りると海岸段丘の坂・坂が待っている。

横浜には“尻こすり坂”なんて名前の坂もある。上品な横浜山手には乙女坂・アメリカ坂があり、駅伝で有名な権太坂は尻こすり坂に比べれば平地。初めて尻こすり坂を目にするドライバーは大丈夫かなぁと覚悟が必要。それにしても坂の名前で大凡のイメージができるのも面白い。

(参考)有酸素運動強度の目安として心拍数変化があり、心拍数から運動強度を求める方法としカルボーネンの式:運動強度(%)=(運動時心拍数-安静時心拍数)÷(最大心拍数-安静時心拍数)×100。最大心拍数は、「最大心拍数=220-年齢」高齢者の場合は、「最大心拍数=207-(年齢×0.7)」を採用。 終日パソコンをしていたら運動強度0%の計算になる。説得力ある指標だ。坂を登った時の心拍数を計算してみると80%。実際は積分値になりスマートウオッチが代用できる。

今回は運動と肌についての論文をベースに記載したが、その他にもっと重要なのは、明るく笑顔を絶やさないで、人と交流するのが大好きな性格の人は若く見える。 眉間に皺を寄せて難しいことを考える人も社会には大事だが、一方で会話が楽しく、仲間とつい今日は2万歩も歩いちゃったわ〜と明るく語るシニアが好ましいと思うがいかがでしょうか。

バイアス情報と沈静化

インボイス制度は法人・個人営業を問わず取引に伴う消費税取扱を明確にするための制度で10月1日からスタートする。登録にあたりマイナンバーを記入。現在、世間を賑わせているマイナンバーである。筆者はマイナンバーに不信感はなく、どちらかと言えば毎年の確定申告も無しになってほしいのが本音。むしろインボイス登録をe-TAXでパソコンから申請した場合のセキュリティの方を心配した。パソコンを開けると昨日は○件を駆除したと表示されるからである。

マイナンバーカードが騒がれる発端は紙の健康保険証が廃止されることに気がついた時からであろう。意図的か又は単なる不安かのどちらかで反対している。不安は情報過疎から来るもので、明確な説明があったかどうか記憶にない。分かりやすい広報活動がなされていないところに問題があると思う。マイナンバー登録におけるトラブルの多くの内容は家族が同じ銀行通帳で登録したとかで、件数も7000件程度とマイナンバー登録者数から見れば0.1%未満。他人家族通帳紐付けはあってはならないが、その対策作業を透明化することで沈静化すると思われる。

問題は意図的インフルエンサーによるバイアス情報の拡散。某新聞で大きく記事で取り上げられている。進学校の名前をつけた芸能人がマイナンバーカードを返納したことなどtwitterで賑わっている。その高校出身の同僚がいたが、芸名変更してくれないかなぁと言っていたのを思い出した。

マイナンバーそのものはカードを返納しても個人番号として存在する。出生や帰化届と同時につく。カードなしで例えば医療機関を利用する際にはそれ専用の職員を用意することで全体コストを押し上げることは取り上げられていない。紙の保険証では年間500万件のトラブルがあると甘利氏の発言が本当だとしたら「そんな無駄は排除せよ!」と声が出るはずだ。マイナーカードのメリット・デメリットを表にして政府・マスコミが分かりやすく世間に浸透させればIQが高く、教育を受けた日本人であれば“案外どころかやはり”の判定をするだろう。バイアスに罹患するのは帰納法的考察が苦手(要するに直感で判断と他人任せ)の人に多い。

意図的バイアスの一つがBEV一択戦略。

環境にはBEVとの掛け声にオールパスウエイを言う企業を“遅れている”としていた風潮。それがどうやらバイアス雲がちぎれ違うシーンが見え始めた。EV一強路線のVWがEV車の生産調整に入った。30%以上の削減を発表したのだ。不確実情報ではあるが上海VWの責任者は過当競争BEVでは収益が得られないとしてエンジン回帰の発言をしたようだ。EV生産調整の発表でもエンジン搭載工場の稼働率は維持するとあったので、ざっくりエンジン、PHEV, FCVで会社存続=収益確保。要するに売れる車を製造するとの結論。トヨタに周回遅れでついていく社員の気持ちを察すると気の毒。あの時の経営トップのバイアスがなければ・・・と。

筆者は過去VW車を2代利用したが、ディーゼル排気ガス不正が発覚した時(2015年)に他メーカーに切り替えた。繰り返しになるが、約15年前までは環境に良いのはディーゼルであると称してドイツを中心にディーゼルエンジンの排気ガス競争を繰り広げていた。ガソリンに比べ安価な軽油であることもあってトラックに限らず乗用車にも搭載されていた。当時の日本車はSUVのラインナップは少ないこともあり、欧州勢が日本車叩き攻勢をかけるところにもなっていた。石原知事のディーゼルトラックPM問題が一気に焦点化するとトラックでは排気ガス燃焼の触媒搭載とアンモニア水注入方式でクリヤーしたが、乗用車のトヨタはHEVを中心に移動していった。タイミング的にはドイツでは不具合が発生。ディーゼルエンジンの排気ガス不正問題が明るみになったのだ。HEVを追随したのはホンダ。日本勢のHEVは燃費にも環境に優れていることもあって急伸長し消費者に信頼されていった。余計なことを言えば、車が停止状態から動き始める時の速度はエンジンにとって苦手なところがあり、モーター駆動であれば一気にそれが解消される。スタートダッシュによく、トルクが必要なときはエンジンが駆動する実に便利なハイブリッドなのだ。HEVはモータースポーツ車に適しているクルマ。シニアが本来乗る車ではないのかも知れない。プリウスのギヤチェンジシフト表現が違うことを暴走事故の理由にあげる人はいる。だが、スピード感覚が若い時のエンジンに慣れ親しんだノロノロ起動とは違うことの認識が甘い所為ではないかと筆者は思っている。

ドイツVWのようにその場凌ぎの手法で乗り切るようなことに対して、トヨタの全個体電池を利用してBEVでも1400km走行は可能とか、FCV, 水素エンジンもありの環境に良いための手法追求はすると予め発表しておくことが、耐久消費財を購入する側にとって「開発は時間がかかるものだ、それまで期待して待っていよう」となるのが普通。筆者の推しは半固体電池APB(all plastic battery)。

サイエンスは嘘をつかない。バイアス同調圧力に屈しやすいのが人間。コロナ明け以来展示会などでの交流が盛んになっている。バイアス排除には情報化社会だからこそface to faceが従来以上に重要になっていると思う。

温室効果25倍のメタンをどうする?

このブログで温暖化にはCO2と同時にメタンに注目する必要があると書いた。スポット的にはシベリア永久凍土が温暖化で沼地になると大量のメタンが排出されるだとか、牛の反芻ゲップに課金する国など限定的ニュースはあったが、全体を捉えた情報が少なかった。ところが、さすが日本。国立環境研究所  海洋研究開発機構はアジアの地域を緯度・経度で25kmに区切りそれぞれの地域のメタン発生を1970年から2021年にわたって調査。この度

「ボトムアップ手法によるアジア地域のメタン収支評価 ―地表データの積み上げによりメタンの放出・吸収源を詳細に分析―」が報告された。詳細は同報告書をご覧ください。

結論は以下の図が詳細を語っているのでチェック願いたい。湿原や野外火災など自然起源に加えて化石燃料採掘や廃棄物埋立など人為的起源による各因子を具に評価している。

 

 

 

 

 

アジア全体を総括すると

1)「自然起源」(湿原 28.5 Tg,シロアリ放出 2.4 ,野外火災 3.0 火山など6.8 土壌の酸化吸収-6.3Tgで合計34.3 .「人為起源」農業 40.7 家畜32.9 化石燃料採掘 46.4、都市交通9.4 廃棄物放出 33.1 合計162.6 であり自然起源より人為的起源が約5倍メタンを発生していることがわかる。(Tg [テラグラム] = 1012 g)

2)地域別特徴

東南アジア、東アジア、南アジアは桁違いに人為的排出が多く、西アジアは石油掘削における排出が特徴となっている。アジアの中では日本は水田減少と廃棄物処理が優れていることから低い排出量となっている。

図2 (右図)ボトムアップ手法で開発されたアジア地域のCH4収支マップ。(a) 合計収支、(b) 総放出に対する人為起源放出の割合、(c) 自然起源放出の2000年から2021年までの変化、(d) 人為起源放出の2000年から2021年までの変化。

廃棄物とメタンはどのような関係があるのか気になったので考えてみた。メタンガスは、有機物が酸素のない状態で分解される際に発生するもので、嫌気性消化として知られている。これは埋立地や家畜の糞尿、その他の廃棄物で発生する可能性がある。廃棄物が増えると、嫌気性消化に利用できる有機物の量も増える。これがメタン生成の増加につながる。さらに、廃棄物中のアンモニア濃度が高ければ高いほど、メタン生成の割合も高くなる。これは、アンモニアがメタン生成バクテリアの基質となるためである。

繰り返しになるが、廃棄物が増えるとメタン発生量が多くなる理由をいくつか挙げると

*嫌気性消化に利用できる有機物が増える。廃棄物が増えると、嫌気性消化に利用できる有機物の量も増える。有機物は、メタンを生成するメタン生成菌の主な基質だからである。

*廃棄物中のアンモニア濃度は増加する。アンモニアはメタン生成バクテリアの基質となるため、廃棄物中のアンモニア濃度が高ければ高いほど、メタン生成速度が速くなる。

*廃棄物の温度が上昇する。廃棄物の温度が上昇すると、メタン生成率は上昇する。メタン生成菌は温度が高いほど活発になるためである。

*廃棄物の含水率が高くなる。廃棄物の含水率もメタン生成速度に影響する。メタン生成バクテリアは生存するために水分を必要とするからである。

如何ですか? ここまで読まれた人は日本で気をつけるべきは“食品廃棄物”だ!と気が付かれたであろう。 不法投棄は決して許さず、分別して腐食菌の餌にならないうちに焼却処分にするか、家庭での堆肥化にすることが好ましい。家庭でも調理ごみの減容化を目的として処理装置が出始めたが、狭いキッチンでは置き場所に問題があるようで普及はイマイチのようだ。だが、意識の高い日本人。このような几帳面な調査分析をする国柄らしく、地味なようだが価値ある環境プライドで各国をリードできればと考える。