このブログで温暖化にはCO2と同時にメタンに注目する必要があると書いた。スポット的にはシベリア永久凍土が温暖化で沼地になると大量のメタンが排出されるだとか、牛の反芻ゲップに課金する国など限定的ニュースはあったが、全体を捉えた情報が少なかった。ところが、さすが日本。国立環境研究所 海洋研究開発機構はアジアの地域を緯度・経度で25kmに区切りそれぞれの地域のメタン発生を1970年から2021年にわたって調査。この度
「ボトムアップ手法によるアジア地域のメタン収支評価 ―地表データの積み上げによりメタンの放出・吸収源を詳細に分析―」が報告された。詳細は同報告書をご覧ください。
結論は以下の図が詳細を語っているのでチェック願いたい。湿原や野外火災など自然起源に加えて化石燃料採掘や廃棄物埋立など人為的起源による各因子を具に評価している。
アジア全体を総括すると
1)「自然起源」(湿原 28.5 Tg,シロアリ放出 2.4 ,野外火災 3.0 火山など6.8 土壌の酸化吸収-6.3Tgで合計34.3 .「人為起源」農業 40.7 家畜32.9 化石燃料採掘 46.4、都市交通9.4 廃棄物放出 33.1 合計162.6 であり自然起源より人為的起源が約5倍メタンを発生していることがわかる。(Tg [テラグラム] = 1012 g)
2)地域別特徴
東南アジア、東アジア、南アジアは桁違いに人為的排出が多く、西アジアは石油掘削における排出が特徴となっている。アジアの中では日本は水田減少と廃棄物処理が優れていることから低い排出量となっている。
図2 (右図)ボトムアップ手法で開発されたアジア地域のCH4収支マップ。(a) 合計収支、(b) 総放出に対する人為起源放出の割合、(c) 自然起源放出の2000年から2021年までの変化、(d) 人為起源放出の2000年から2021年までの変化。
廃棄物とメタンはどのような関係があるのか気になったので考えてみた。メタンガスは、有機物が酸素のない状態で分解される際に発生するもので、嫌気性消化として知られている。これは埋立地や家畜の糞尿、その他の廃棄物で発生する可能性がある。廃棄物が増えると、嫌気性消化に利用できる有機物の量も増える。これがメタン生成の増加につながる。さらに、廃棄物中のアンモニア濃度が高ければ高いほど、メタン生成の割合も高くなる。これは、アンモニアがメタン生成バクテリアの基質となるためである。
繰り返しになるが、廃棄物が増えるとメタン発生量が多くなる理由をいくつか挙げると
*嫌気性消化に利用できる有機物が増える。廃棄物が増えると、嫌気性消化に利用できる有機物の量も増える。有機物は、メタンを生成するメタン生成菌の主な基質だからである。
*廃棄物中のアンモニア濃度は増加する。アンモニアはメタン生成バクテリアの基質となるため、廃棄物中のアンモニア濃度が高ければ高いほど、メタン生成速度が速くなる。
*廃棄物の温度が上昇する。廃棄物の温度が上昇すると、メタン生成率は上昇する。メタン生成菌は温度が高いほど活発になるためである。
*廃棄物の含水率が高くなる。廃棄物の含水率もメタン生成速度に影響する。メタン生成バクテリアは生存するために水分を必要とするからである。
如何ですか? ここまで読まれた人は日本で気をつけるべきは“食品廃棄物”だ!と気が付かれたであろう。 不法投棄は決して許さず、分別して腐食菌の餌にならないうちに焼却処分にするか、家庭での堆肥化にすることが好ましい。家庭でも調理ごみの減容化を目的として処理装置が出始めたが、狭いキッチンでは置き場所に問題があるようで普及はイマイチのようだ。だが、意識の高い日本人。このような几帳面な調査分析をする国柄らしく、地味なようだが価値ある環境プライドで各国をリードできればと考える。