喉元過ぎればでは済まない事件が丁度1年前の2024年1月15日に発生。紅麹事件が発生した日である。この一年間に被害に遭われて亡くなられた人、元の健康体になかなか戻らない人などの実態を日本腎臓学会のお医者様が地道に経過フォローしている。悪玉コレステロールは諸悪の根源だとして紅麹サプリメントを摂った人の気持ちは十分にわかる。
今は悪玉、善玉の区別は意味がないとも言われているが、当時は悪玉・悪玉・悪玉の風潮が強かったので服用した人に同情する。製薬の名前がついているのでサプリも医薬品並みにGMP管理されていると筆者も思っていたが、サプリの管理はGMPより低い基準の食品扱いであることに当時驚いた。
原因は青かび由来のプペルル酸だと厚労省も結論されたが、ブルーチーズ業界にとっては迷惑な結論だったかも知れない。当時、慌てて結論を出した感を思った。本音を言えば1年間原因を追求した結果があればと思う。結論が同じでも構わない。追求する姿勢が信頼を回復すると思う。
さて、日本の研究 リリース資料を見てみよう。
題名 日本腎臓学会会員へのアンケート調査により紅麹関連製品摂取後に生じた腎障害の実態を解明
報告者 大阪大学 掲載日:2025.01.06
内容 紅麹関連製品接種後に生じた腎障害の実態について日本腎臓学会が中間報告に加えその後の調査を実施し実態を詳細の検討
その結果 ファンコニー症候群が腎臓障害の主要な病態であること
接種中止によりファンコニー症候群の多くは改善したが腎機能障害は残存した
ファンコニー症候群の補足説明を引用する「腎臓の機能を理解するに非常な解説がされているので引用します。「腎臓の基本的な機能単位は「ネフロン」と呼ばれ、一つの腎臓に約100万個存在します。このネフロンは、「糸球体」と「尿細管」という二つの主要な部分から構成されています。尿の生成過程では、まず血液が糸球体で濾過され原尿となります。この原尿には、糖やリンなど、生体にとって必要不可欠な成分が含まれています。そのため、これらの重要な成分は尿細管、特に近位尿細管において再吸収され、体内に戻されます。近位尿細管に障害が生じると、本来体内に戻されるべき成分が尿中に漏出してしまう「ファンコニー症候群」という状態になります。」
この解説でなるほどと納得。勉強になります。
調査の総括を図1に示されている。腎機能はほとんど初めから変化がなく、機能障害のままであることがわかる。最後の腎病理初見の項に至ってショッキングである。
研究者の初見として「本研究成果により、紅麹関連製品摂取後に生じた腎障害の病態および摂取中止後約2か月時点での転帰が明らかになりました。フォローアップ調査においても、腎機能障害(eGFR < 60ml/min /1.73m2)が持続している患者さんが多く存在しており、長期に経過を追う必要性が明らかになりました。」とある。
ここで見方を変えて、なぜ小林製薬が事故を起こしたのかを勝手ながら想像した。小林製薬といえば、ネーミングが分かりやすい、印象に残ると消費者は好意的であった。しかし「熱さまシート」「サカムケア」は2001年をピークに成熟しており、後継の有力商品は乏しくなっていた。超大手スーパーがドラックストアを傘下に収めるようになり、仕入れ価格も厳しくなっている背景があるのだろう。株価は麹菌事件発覚の2024年3月にストップ安になっているが、その前から低下傾向は止まっていない。アジア通貨不安やジェネリックの競合の中で、麹菌をM&Aするに際して甘くなったのではないかと勝手ながら推察した。
我々歯科業界に携わる関係者として毎年薬事監査を受け、5年に一度の上位薬事監査を受けて事業を遂行しており、薬事に関する意識はあると自覚をしてはいるものの油断をするとトラブルを発生しかねないと他山の石ならぬ肝に命ずる次第。