2025年 1月 の投稿一覧

印刷物の認知パワー

街を歩けばティッシュ配りが相変わらずいる。寒い時期なのでつい手を出してしまう。タダで配る訳がない。クーポンなどの印刷物が少なくとも1枚入っている。それが今までの普通。ところが、今日もらったティッシュにはクジが入っていた。当たりくじであれば、クーポンのお店に行って何か物との交換になるはずだ。当方のティッシュは3等だったのでお店に行くことはやめた。もしお店に行けば、交換物を渡す際にお店の目的商品を説明・誘導するだろう。相当に強い宣伝効果がある。

一方で、ほとんどの人がスマホを所有しており、頻繁に商品紹介のニュースが入ってくるが、抽選ボタンを押しても殆どが“残念”なので、ほとんど無視しているのが実態ではなかろうか。少なくとも自分は余程の強い興味があるニュースがあれば別だが実際はない。

新聞購読者数が減少する中、新聞の厚みは極めて薄くなっているが、折り込み広告は減少していない印象がある。今時 電車内で新聞を広げる人は高齢者。先日目の前の老人が週刊誌を広げたのには驚いた。だが、その新聞、週刊誌の裏側の記事を自然と目が追っている自分がいることがわかった。スマホのデジタル媒体より目に止める“認知作業力”が大きいとも言える。

そこで思い出したのが上智・早稲田・神奈川大・東京国際大が富士フイルム協力のもと「印刷版クーポンの有効性を大規模実験で検証~デジタル化が進む販促戦略に一石を投じる結果~」を2025.01.23にプレスリリース 要点は

  • 印刷版クーポンとオンライン・クーポンが消費者の行動反応に与える影響の違いについて大規模実験を実施。
  • 印刷版クーポンの方が5倍以上高いクーポン償還率。
  • 特にブランド・アタッチメント(ブランドへの愛着)が低い顧客において印刷版の有用性は高い。

文献らしい表現に理解し難いところあるが、次の図を見れば納得

 

一回でもオフライン(印刷物)で受け取ると二回ともオンラインで情報を受けとるより5倍以上の効果があるとのこと。この具体的な結果に、ティシュ配りは印刷コストや、配るアルバイト費用があるものの、効果があるからこそ継続する理由があるのだと理解した。これは販促担当としては十分頭に入れておく必要があると思われる。

顔出しリアル面談、電話、faxがデジタル社会になっても重要だと。

 

個人的ではあるが、年賀状仕舞いが増加した。また自分もそうだがデジタル年賀の割合が50%となった。出す方は便利だが受け手の印象はどうかと、この結果から思う。皆様はいかがお考えでしょうか。

有機米は浸透するか

ファミレスでは「白米にしますか?雑穀米にしますか?」と聞かれる。iPadでメニュー注文時にご飯の種類をインプットする。お客は健康のためだとして雑穀米を選択することは普通になった。だが、白米の中でも有機米にしますかとは聞かない。ファミレスサイドから見ると有機米の供給量が少なく、価格は高いとなると聞かないのは当然か。環境及びユーザーの健康のため有機米栽培をされている農家は除草・防虫対策など苦労があるにも関わらず生産量(=消費量)が伸びていない。 お客サイドから見れば環境は利他的であり協力したい気分が多少あったとしても、最後の結果は価格とブランドで選択しているのが実態。

自動車に置き換えた時、リサイクル原料を適用した製品であったとしても、ユーザーは従来品と同等品質にして同等価格であるかどうかを見ている。リサイクル利用はLCAからは歓迎すべきところあるが、ユーザーから見れば利他的。品質を落としていいとは言っていない。そこがリサイクル事業の困難なところ。バージン材料での製品化の時に大企業は先端技術を駆使して開発製造しているのに対し、物性を落としかねない材料との混合物で、開発技術体制がやや劣る企業がバージン並みに物性を維持するには先端+更なる先端技術が必要で実質単独企業では困難。大企業が支援する仕組みが好ましい。

話を戻して有機米について三重大学がモニター調査をした。 消費者は米の情報も”味わっている”?!食味評価と購買意欲を向上させる栽培情報の不思議な効果         (2024.12.13 )

超要約は

1)有機栽培に関する情報提供により、同じ米でも食味評価が約 13%ポイント向上

2)生産者情報の開示により、再食意志が約 12%ポイント増加

3)食にこだわりが強い消費者ほど、有機米への評価が厳しいという意外な発見

4)環境意識の高さは必ずしも有機米の評価に結びつかないことも判明

詳しくは次の図を参照してください

三重大によると積極的に有機米であること、米袋に生産者の顔がわかるようにしたら需要は伸びると結論しているが、3)4)の調査結果はそれだけでは不十分。

しかしながら、2025年のインフレ率は14%が見込まれ、その一方で所得が多少上がっても所得税率枠から結局手取りは頭打ちが現実的になるほど、大学の結論通りにはなかなかならないのだろうと予想される。

主婦の財布引き締め策もあるだろうが、白米を美味しく炊き上げるコツをお持ちなので、味や米の艶のコントロールができるからもあってなおさらではなかろうか。

日本が変わる時は外圧か、病原菌など流行がきっかけとなる。有機米については害虫防止薬事噴霧による残留農薬による漁業量の減衰、最終的に個人の疾病に関係がありそうだと判明することがあれば、意識は変わる。その意味で時間はかかるだろう。

紅麹事件に思う

喉元過ぎればでは済まない事件が丁度1年前の2024年1月15日に発生。紅麹事件が発生した日である。この一年間に被害に遭われて亡くなられた人、元の健康体になかなか戻らない人などの実態を日本腎臓学会のお医者様が地道に経過フォローしている。悪玉コレステロールは諸悪の根源だとして紅麹サプリメントを摂った人の気持ちは十分にわかる。

今は悪玉、善玉の区別は意味がないとも言われているが、当時は悪玉・悪玉・悪玉の風潮が強かったので服用した人に同情する。製薬の名前がついているのでサプリも医薬品並みにGMP管理されていると筆者も思っていたが、サプリの管理はGMPより低い基準の食品扱いであることに当時驚いた。

原因は青かび由来のプペルル酸だと厚労省も結論されたが、ブルーチーズ業界にとっては迷惑な結論だったかも知れない。当時、慌てて結論を出した感を思った。本音を言えば1年間原因を追求した結果があればと思う。結論が同じでも構わない。追求する姿勢が信頼を回復すると思う。

さて、日本の研究 リリース資料を見てみよう。

題名 日本腎臓学会会員へのアンケート調査により紅麹関連製品摂取後に生じた腎障害の実態を解明

報告者 大阪大学 掲載日:2025.01.06

内容 紅麹関連製品接種後に生じた腎障害の実態について日本腎臓学会が中間報告に加えその後の調査を実施し実態を詳細の検討

その結果 ファンコニー症候群が腎臓障害の主要な病態であること

接種中止によりファンコニー症候群の多くは改善したが腎機能障害は残存した

ファンコニー症候群の補足説明を引用する「腎臓の機能を理解するに非常な解説がされているので引用します。「腎臓の基本的な機能単位は「ネフロン」と呼ばれ、一つの腎臓に約100万個存在します。このネフロンは、「糸球体」と「尿細管」という二つの主要な部分から構成されています。尿の生成過程では、まず血液が糸球体で濾過され原尿となります。この原尿には、糖やリンなど、生体にとって必要不可欠な成分が含まれています。そのため、これらの重要な成分は尿細管、特に近位尿細管において再吸収され、体内に戻されます。近位尿細管に障害が生じると、本来体内に戻されるべき成分が尿中に漏出してしまう「ファンコニー症候群」という状態になります。」

この解説でなるほどと納得。勉強になります。

調査の総括を図1に示されている。腎機能はほとんど初めから変化がなく、機能障害のままであることがわかる。最後の腎病理初見の項に至ってショッキングである。

研究者の初見として「本研究成果により、紅麹関連製品摂取後に生じた腎障害の病態および摂取中止後約2か月時点での転帰が明らかになりました。フォローアップ調査においても、腎機能障害(eGFR < 60ml/min /1.73m2)が持続している患者さんが多く存在しており、長期に経過を追う必要性が明らかになりました。」とある。

ここで見方を変えて、なぜ小林製薬が事故を起こしたのかを勝手ながら想像した。小林製薬といえば、ネーミングが分かりやすい、印象に残ると消費者は好意的であった。しかし「熱さまシート」「サカムケア」は2001年をピークに成熟しており、後継の有力商品は乏しくなっていた。超大手スーパーがドラックストアを傘下に収めるようになり、仕入れ価格も厳しくなっている背景があるのだろう。株価は麹菌事件発覚の2024年3月にストップ安になっているが、その前から低下傾向は止まっていない。アジア通貨不安やジェネリックの競合の中で、麹菌をM&Aするに際して甘くなったのではないかと勝手ながら推察した。

我々歯科業界に携わる関係者として毎年薬事監査を受け、5年に一度の上位薬事監査を受けて事業を遂行しており、薬事に関する意識はあると自覚をしてはいるものの油断をするとトラブルを発生しかねないと他山の石ならぬ肝に命ずる次第。

肺疾患と腸内細菌叢

長いお年末年始の連休が終わり職場に活気がみなぎってきました。本年もコスモサインを昨年同様ご愛顧されますよう社員一同気を新たにしております。何卒よろしくお願い申し上げます。このブログは主として健康関係の情報を収集して徒然なるままにアップしております。皆様にとって常識的なところは多々ありますことお詫びしつつ継続して参りたいと考えております。

さて、腸活と脳はリンクしていることは昨年も多くの文献があり、このブログでも取り上げました。今回は喫煙による慢性閉塞肺疾患が腸内細菌叢と関係している文献が年末にリリースされたことを取り上げます。肺の昨日は空気から酸素を取り入れる気―液反応器官ではあるが、気液反応と腸内細菌叢がどのように関係しているのかは予想外だった。

早速文献を見てみよう。(2024.12.26 慶應義塾大、東京農工大)

1)題名 腸内細菌叢とそこから産生される短鎖脂肪酸の慢性閉塞性肺疾患(COPD)への関与の解明に成功 -食物繊維に着目した新規治療戦略開発への期待-

2)目的 腸管と肺疾患の関連、腸内細菌叢および腸内細菌によって産生される短鎖脂肪酸が実際に 慢性閉塞肺疾患に関与しているのかを明らかにする。

3)結果 (注:原文を当方が整理しております)

3-1)喫煙者および非喫煙者の採血検体を用いて、喫煙者では血液中の短鎖脂肪酸濃度が減少しており、同濃度が肺機能と相関していることを明らかにしました

3-2) マウスモデルを用いた実験から、喫煙に曝露することで腸内細菌叢が変化し腸内細菌によって産生される短鎖脂肪酸も減少していることを明らかにしました

3-3) マウスモデルに対して食物繊維を補うことで体内の短鎖脂肪酸が増加し、気道炎症および肺気腫が抑制されることを明らかにしました

3-4) 反対に抗菌薬を投与し腸内細菌を駆逐することで短鎖脂肪酸は著明に減少し、気道炎症および肺気腫が増悪する

具体的データについては元文献を参照されたい。一部を引用します。

 

 

 

最後の図は衝撃的。短鎖脂肪酸が減少するのは理解したが それが肺細胞を破壊するとは驚きだ。てっきりニコチンが肺胞に付着して酸素吸収を減少させるのだろうと思っていたことの小学生並みの考えを恥ずかしく思った。

極端に言えば、喫煙者はそばにいる非喫煙者の肺を破壊している行為であると言える。“道連れ無知キラー”  不幸にして副流煙を吸ってしまったら食物繊維を多く摂る必要がある。欲を言えば、タバコ1本に対して食物繊維をどれだけ摂るべきか参考データがあればとは思うが、無責任な予想ではタバコ1本でブロッコリー大束1個ぐらいだろうか。それより禁煙が手っ取り早いのはいうまでもない。

ふと思うにタバコが日本に入ってきたのはコロンブス時代に欧州経由の16世紀。それまでの日本人は清澄な空気と植物由来食事により、少なくとも肺細胞が破壊するようなことはなかったのであろう。今回の文献が浸透して脱タバコの社会になるには、今がピーク超えの21世紀とすると、あとどのぐらいの期間が必要なのだろうか。