2020年 11月 の投稿一覧

化粧品を科学する東京都・SUSCARE設立

化粧品メーカーのポーラが美肌県グランプリ2020を発表した。それによると総合1位は石川県、2位秋田県、3位山梨県が入ったとある。部門別にもトップの県が紹介されている。それによると

石川(水分量、コラーゲン) 鳥取(皮脂毛穴レス、エイジング毛穴レス、ホルモンバランス、透明感)島根(肌ポテンシャル) 新潟県(しみレス) 青森県(キメ) 宮城(黄ぐすみレス) 広島(ニキビレス) 沖縄県(ストレス耐性) 宮崎(タフ肌) 島根(肌ポテンシャル) 北海道(皮膚バランス)

情報の真偽はここでは問わないが、石川県に縁のある知人にこの話をすると理由を詳しく教えて頂いた。申し訳ないが大幅に端折ると。①湿度が年中高い。②紫外線量が少ない。③発酵食品(かぶら寿司、大根寿司、フグの糠漬け、魚汁醤油、日本酒等々)④加賀百万石の伝統文化に培われた生活習慣も関係(お茶やお花などの稽古事)らしい。愛妻家ぶりが覗えます。サイエンス面から興味ありヒントになる。

さて、冒頭のポーラの調査について、統計処理するに十分なサンプリング数は?どうやって調べたのか?、判断指標は何をつかったのか? そこが知りたい。 人口流動の激しい都会を抱える都道府県の名前がないのは先天的な要因と後天的なものの区別がつきにくいのは確かなので除外しているのか。

化粧品の業界では定性的・感性的な表現が使われる。美肌調査にある多くは皮膚表面の形態で判断するのが多いようだが、門外漢にはサッパリ分からない項目もある。講演会で質問があったのは「もっさり感」をどのように評価したらいいですか?というもの。業界内では通じる言語が沢山あるようだ。今まで科学的アプローチをしてこなかった訳ではないだろう。多分に競争相手に手の内を開示しないことが絶対だとの会社方針もあるだろう。

日本の化粧品はインバウンド商品として競争力がある。知財が重要視される今後に「もっさり感」では特許要件(新規、進歩、実用)を満たさない。そこに化粧品を科学の目を通して理解することを助ける支援組織が作られた。東京都産業技術センターにSUSCAREを発足させたのだ。(ゆりかもめテレコムセンター駅前)。4月オープン予定がコロナ渦で11月11、12日に開設記念講演と設備見学会があったので参加した。 三密対策もあり応募者数が限定されていたが、ラッキーなことに参加が許可された。大手化粧品メーカーには装置など整備済みであろうが、SUSCAREの設備をざっと紹介すると、培養、分光分析、レオロジー(粘弾性)測定、エマルジョン分析、粒子分布、小角X線回折による結晶や層の配向などが観察できる。研究員も充実している。

数値化することでAIデーター蓄積が可能である。中小企業が新規材料をベースに化粧品業界に進出するには便利な設備である。東京都は中小企業には利用料金が(装置にもよるが)半額であることも嬉しい。幾つか事例紹介をする。

水分 皮膚の含水率深度分布 (in vivo 共焦点ラマン分光 レーザー波長671nm)により測定。皮膚深層の水分測定で角質の層厚み結果を報告。この事例では15~18ミクロンと評価できる。

これを共焦点レーザー顕微鏡1.5ミクロンの層毎に角質層にあるメラミン濃度を測定して、この結果、角質層厚みは18.4ミクロンと判明した。

この共焦点レーザーラマン分光や形態観察は化粧品の組成物が皮膚のどこまで浸透しているのかを調べることも実施している。

*化粧品の塗りごこち

冒頭の「もっさり感」に通ずるのか、乳液の塗り心地を評価する方法として動的粘弾性測定装置を使って評価している。2枚の円盤状の中に乳液を夾み、一方のディスクを固定して反対のディスクをゆっくり回転させると、乳液の粘度は回転速度につれて低くなり、一方乳液のプリンプリン性とでも言うべき弾性は2枚のディスクの中で反発する力として検出できる。手の上に乳液を落としたときは動かないので剪断速度がゼロだが、乳液の(ジェル)弾性はある程度高い、それを手で延ばしていく速度で乳液のは粘度は低下して、弾性も変化する。ある乳液の事例(図が示されている)。塗り心地の外に化粧品の流れやすさなども同測定装置で評価できる。

筆者はコロナ対策のアルコール消毒に手が荒れたので皮膚科を受診。保湿クリームと軟膏を処方してもらった。ところが、薬剤師から、クリームを先に塗り、後で軟膏をと言われた。クリームは保湿の為だけでなく、軟膏の粘度調整(浸透助剤)としての作用で併用しているのだと理解した。面白い。この併用の場合の粘弾性は気になる。配合比率によっては単なる加重平均ではなさそうだが?レオロジーオタクと言われそうなのでこの辺で。

SUSCAREでは30にものぼる事例を紹介している。東京都産業技術センターのHPをチェックされたい。

経験値がサイエンスの言葉に翻訳されることで新規材料開発している異業種からの化粧品へ参入もありうる。素人の発想だから許されるならば、アトピーと深い関係のあるランゲルハンス細胞層の形状や組成変化を共焦点レーザーラマン&その他の装置で観察され、免疫を阻害しない相乗化粧品が可能ならば医薬・化粧の境界が交流促進され発展するのではないかと思うが如何であろうか。

日本建築とクルマにひかれても平気な甲虫の類似点

先日、奈良斑鳩に出張した。先端ナノ材料開発に必要なテストを実施するため装置のある斑鳩の会社を訪問。京都からのクルマルートを紹介すると大原野インター(京都縦貫道;京大桂キャンパス近く)から大山崎で名神に乗り→八幡京田辺から新名神→城陽から京奈和(和までは未開通)大和郡山→斑鳩。 いつの間にか京都南部から奈良へのアクセスが高速道路で繋がっていることに驚いた。斑鳩といえば法隆寺。聖徳太子ゆかりの寺院。金堂、五重塔、夢殿など世界最古木造建築として世界遺産になっている。小学2年生のとき訪れた記憶がある。聖徳太子は同時に何人もの話を同時に聞き分けることができることに驚き、十七条憲法発布をした日が筆者の誕生日とあって親近感があった。(余談だが国民の祝日案になったときもあった)。 木造建築の極意は釘を使うことなく「ほぞ」で組み立てる。

製材の立体交差や木材を継ぎ足して長い長尺物を作るときは複雑なほぞ形状をつくる(金剛継)。宮大工はノコギリ、各種形状のノミ、カンナ

を駆使してピッタリ接合させる。墨打ちで粗々の切削形状は製材に描くものの、最後の数ミクロンの調整は職人の腕に依存している。奈良は地震が少ないとは言えないが最古の木造建築が現存している理由は木材の高弾性結晶セルロースをリグニンで接着した繊維の配向による強靱さと、揺れを緩衝させる「ほぞ」部が大いに寄与していると思われる。

 

さて、その「ほぞ」を持っている甲虫を紹介する記事があった。車にひかれても無傷。「ディアボリカル・アイアンクラッド・ビートル(悪魔の鋼鉄甲虫)」10月20日の記事によればhttps://nazology.net/archives/71860

「アメリカ・カリフォルニア大学の研究チームは、この頑丈さの秘密を解明するため、外骨格の構造をナノスケールで詳しく調べました。その結果、2枚の前翅(昆虫の前部の翅)が互いにくっついて、インターロッキング式に組み合わさっていたことが判明しています」

 

 

 

 

 

“インターロッキング”って日本建築の上述の「ほぞ」そっくりに筆者は思えるが如何でしょうか。 「研究チームではX線を用いて圧縮中の構造変化をリアルタイムで調べてみると、パズルのような接合部は、圧力に応じて固く組み合わさるのではなく、ゆっくりと剥離して衝撃を和らげ、壊滅的なダメージを受けないようにしていた」と報告しています。更に3Dプリンターでインターロッキング形状を作り高い強度と耐久性が実証されたとのこと。 キサイラス氏は「この構造や生物学的システムを応用すれば、より強固な人工材料を開発することも可能でしょう」と指摘しました。インターロッキング構造の実現により、ネジや留め具を使わない頑丈な自動車や建造物の開発も期待されています。」

ちょっと待って! 日本では推古天皇のころ(607年)には法隆寺に代表される建築で利用しているのですが、、、サイエンスにも掲載されたこの文献の査読者に日本人が存在していれば、インターロッキングは1600年前から日本にあったと指摘し、インターロッキングが作動するための潤滑剤があれば分析しておけば、さらに有用だとアドバイスをしただろう。多分蛋白質の量が関係すると推定されるが、化石原料に依らない潤滑剤の開発になるかも知れないのだ。

肝心の先端ナノ材料の実験は前半は50点の成績。実験前の根拠のない期待値75点を下回った。テストを実際に担当された方とデーター解析とアイデアを組み合わせ夕方になり90点をマークすることができた。きっと「和を以て貴し」と聖徳太子が囁いてくれたのだろう。

ワークマン女子とEコマース

近くにワークマン女子のショップがオープンした。人気だとは聞いていた。ワークマンと言えば軍手の束や、独特の鳶のユニフォームなどを陳列してあるモノトーンのイメージの店だった。最近では扇風機内蔵の上着など進化系も多いとか。でも女子との繋がりは想像していなかった。作りがシッカリしているのが作業衣の原点だとして、色彩などデザインの味付けすれば女性に受けるはずと考えた経営者は大したものだと思う。

近くのお店はオープン以来1ヶ月だが、整理券が入店には必要とあって人気。整理券は店内の密対策でもあるのだが、年配の男も並んでいるので聞いてみたら、少ないが男物もあるのだとか。筆者は気後れするタイプなので並んで整理券をもらう度胸はなく、店の外から見ていた。(写真)。

それだけでも商品がワークマン店舗イメージとは違い女性が普段着に利用しても良いようなデザインと見受けた。実際、買い物袋を手に店から出てくるリアル買い物である。

 

従来のアパレルは対象的に特に紳士物には厳しいようだ。アメラグチームを抱えたこともあるレナウンは倒産した。バーバリーとの契約を継続できなかったSANYO商会は残りのマッキントッシュ、スコッチハウスなどで生き残るべく店舗整理しつつEコマースにチカラを入れると発表した。だがEコマース万能とは行かないと思う。画像でみる商品では柄は分かっても質感(手触り、温もり、ストレッチ性など)は分からない。リアルショップで購入することが出来る地域ではショップで購入することになる。Eコマースでは買い物が記録されるが、リアルでは採寸データがあり試着する手間が省けてパンツの長さ調整をしておいてくれる。また最近はスーツではなくてもビジネスでブレザーが多くなってきた。そうするとセンスの無い男はチグハグなコンビネーションとなりがちだが、リアルショップではユーザーの持ち物を把握しておりマッチする提案をしてくれる。

結局、Eコマースもリアル店舗の両方が充実する必要があるのが現状のようだ。若者の買い物パターンといえばネットで調べるか、リアル店舗で品物をチェックした上でアマゾンなどEコマースで購入。リアル店舗で初めて商品をみて購入するのは今や年配者と区別していた。ところが、若者は商品に関する知識はネット検索などで十分に持っていて、あとは実際のお店がどこにあるか調べて出向いているとか。若い人に聞いてみたいところであるが想像するに?

  • 買い物は友人、家族とワイワイ愉しみながらしたい。画面だけで購入は早いがなんとなく味気ない。
  • テレワークで閉鎖空間で長い時間居ると、気晴らしが欲しくなる。
  • 商品知識は十分あり店員さんに聞くことはない。大型店舗でも店員は少なく聞けない。あとは触ってみて、持ってみて重いのかを最終チェック。
  • 新規参入した見知らぬショップや新商品も序でにみることができる。
  • チョットしたテレワーク中の菓子類なども買える。テレワーク頑張りへの自分ご褒美。

などであろうか。

一方でEコマースで購入で、 おや?と思ったのは「無地のボトル」。どこのメーカーか分かって購入しているのでPETボトルの表面に商品名記載のPETシュリンクフィルムでラップする必要はない。(コカコーラの“いろはす”など)PETフィルムを剥がして瓶・缶収集するゴミの日に出すには面倒な作業がなくなる。包装容器法によりPETボトルをリサイクル際に作業員の方が選別して、PETフィルムやラベルを剥がすことは不要となるだけに、これからのBottle to Bottle のリサイクル比率が高まる時には有意なことである。

 

芋で発電?

3Rと聞いてReuse , Reduce, Recycle 。その他にある?と言うのが普通だが、若者は違うらしい。Reality , Real time , Remote ソニーの3R Challengeテクノロジーを指すようだが3Rの同じワードだけに紛らわしい。テニスや野球のチャレンジではお馴染みの「人間審判の紛らわしい判定」をデジタルで処理することは既に馴染みになっている。ピッチャーの投球フォーム、手の握りからベースに届くまでのボールの回転が事細かに画像化される。ヤクルトは既に採用しているとのこと。さすが南海ホークス時代にブレイザー監督からthinking baseballの神髄を教えられた野村元監督がヤクルトに根付かせた証拠なのだろう。今年は間に合っていないようだが期待しよう。CEATECの模様は別の機会にして本題へ。

芋、イモ、さつまいも。“ひらがな”で表現すると焼き芋のほっこりした雰囲気になるから不思議だ。これと発電と同関係するのか? 菅首相は所信表明演説で2050年にはカーボンニュートラルで排出炭酸ガスゼロを達成するとの方針を明らかにした。このブログでは森林面積が旧来測定値は間違っており、実際は1.7倍も多いことが分かり、森林の炭酸ガス吸収量が日本は多いことを紹介した。 では、この森林から木材を伐採してチップに加工しバイオ燃料として発電に利用したらカーボンニュートラルになる筈だ!と考えた。平成12年 固定価格買い取り制度(FiT)がスタートしたことで三重県は木材バイオ発電所を紀勢地区に建設した。

しかしながら、木材チップの入手が継続しないことになり停止した。原料のサプライチェーンが切れては何ごとも成功しない。また、山から伐採し、トラックで輸送し、チップに加工するまでにエネルギーを消費する。それとの差し引き(LCAでは負荷)で具合が悪いと報告している文献がある。

近畿大学・鈴木高広教授は森林が固定する太陽光エネルギーを計算している。要約すると

年間木材増加率 68百万m3(水分50%)=34百万m3トン(比重1として)

木材発熱量   20MJ/kg     山林固定する日射エネルギーは

=34×10^9 X20MJ/kg   =68 億MJ   ・・・・(a)

一方で日本の発電は 石炭消費量  5.04 兆MJ 石油消費量7.81 兆MJ 天然ガス5.00 兆MJの合計17.88兆MJ (b) なので (a)は3.8%を代替しうるが上述のように木材運搬、乾燥工程、及び発電効率が25%と低い。 (化石は42~45%)

その上、日本森林全熱量 52兆MJ(c)なので、(c)/(b)=3 となり、日本の森林は3年で丸裸状態になる。 植林に50年かかるので、間に合わない。

困った時は“さつまいも” 享保の大飢饉を救った“さつまいも” 280年後の脱炭素エネルギー飢饉を救うか!? 近畿大・鈴木教授の提案に注目したい。(化学装置 10月号p75-79,2020)

露地栽培平均収率 2.4    kg/m2 (固形分33%)乾物熱量 17.5  MJ/kg

∴ 芋熱量 13.9  MJ/m2茎・葉2 kg/m2 (固形分12%)

 トータル  18.1  MJ/m2   

5月~10月 積算日射エネルギー3000 MJ/m2 とすると、芋の日射エネルギー変換率=0.6 % (太陽光発電は約19%) 森林からの変換率0.05%の10倍。 木材をチップに加工するより遙かに粉砕化は容易と思われる。

大量生産に対して先生が提案しているのは「多層栽培と日陰や痩せた土地でも栽培できるので太陽光発電パネルの下の地面で栽培する。多層栽培を和歌山で実施しているとのこと(図)

いも掘りは幼稚園・保育園の土に馴染む空きの風物詩であり、多層栽培は思いもつかなかった。ヒントさえ貰えればいろいろな応用を考えるのが日本人。冒頭のCEATECと農業がリンクして効率的な“さつまいも栽培収穫自動化”のようなシステムができるか

 

 

 

?楽しみだ。いや、それだけではない。スイーツでも愉しめるぞ。

 

【謝辞】近畿大学 鈴木教授様から参考資料を頂きました。有り難うございました。