2019年 3月 の投稿一覧

ブラインドサッカー

先週のブログで土砂降りでも前の走行車、併走車、追い越し車を正確に把握するにはミリ波、LIDAR, カメラ情報を総合して、もっともらしい位置決めをすることを三菱電機が発表したと報告した。先週、横浜みなとみらいを散歩していたらブラインドサッカーを普及するための活動をしている風景に出会った。

子供から大人まで目隠して僅か1.5m先にあるゴールに向けてサッカーボールを蹴る。目隠しをする前にボールの位置、ゴールの位置を確認してから目隠しをする。そして、ゴールの裏側でスタッフが手を叩く。その方向に蹴ればよいのだが、まぐれを含めても成功率は低い。夏場のスイカ割りでも見事に割るシーンは少ない。京都五条坂にある地主神社の婚活成立占い(二つの置き石間を目を閉じて歩き到達できるか否かをみる)でも成功率は低い。それほど健常者の耳(三半規管)は必要機能を残して退化しているのかと思う。

 ブラインドサッカー神奈川県チームbuen cambio yokohamaのキャップテンに話を聞くことができた。ブエン・カンビオとは「良い変化」の意味だと。この行動を通じて障害者への偏見を解消した上で明るい協奏社会を創りたいとの思いがこもっているのだろう。若い人が参加しているのは好ましい。またスポンサーとしてANAがついている。これは爽やかな会社イメージに相応しいと感じた。国策航空行政に負けずと自主独立で頑張ったANAの生き様に思いを馳せた。

 話が散漫になった。ブラインドサッカーではボールの中に鈴が入っており、音を頼りにボールの位置を検知する。またパスをするにはチームメイトの声を認識して、その方向に蹴り出す正確な足技が必要だ。相当の3次元位置決めセンサーを耳に、そして脳での処理を瞬時に行う。当然相手もいる。声の主を区別することも。そして激しい衝突により鼻を骨折するようなこともあるとのこと。さぞスポーツの醍醐味に良い汗をかくだろう。ルイ・アームストロングのon the sunny side of the streetなのだ。障害があろうが、まさにGold dust at their feet. life is complete.なのさ。と。

 神奈川ではチームは1つ。全国でも20チームと少ない。試合は勿論、練習風景も是非見たいと思って、同チームの練習グラウンドに見学に出向いた。選手、サポーターが軽めの体操をしたあと、フォーメーションの練習から入る。晴眼者でも球出し先の確認や攻撃するさいのスペースの取り方など基本はあっても臨機応変にフォーメーションを変える必要がある。さて、どうやったら可能なのか?と疑問に思っていたら、ネット裏から番号を大きな声をだしているスタッフに気がついた。ゴールキーパーからの指示もある。

イチ!! ナナ! ゴッ!と。休憩時間にスタッフに尋ねた。それは、コートを9分割や12分割してそのコマの数字の場所にボールがあるとか、その位置に入れ!との指示とのこと。これとボールの中にある鈴の音と立体位置を確認していることになる。因みにゴールも9分割して、どのコマを狙え!との指示があるとのこと。これには驚いた。

さて、準備ができたところで試合が始まろうとしていたら、キャップテンから小生にお呼びがかかった。ランドマークの活動を視て来ましたと挨拶すると、プレイヤー、スタッフ、サポーターの歓迎の拍手があり、まさかですが、試合に参加して欲しいと。一瞬ポカンとしたところ、壁をお願いしますと。壁とはグラウンドに白線はあるが、プレイヤーは白線をみることができない。そこで、晴眼スタッフが壁となり白線を越えそうになったときに壁として跳ね返す役目。両サイドに4名の壁が必要。1名がハーフコート分の約25mを担当する。 

立っていれば良いのかと思いきや、25mをプレイの進行に追随して動く壁となることが求められる。なので、ラグビーの線審のように走り回る。さらに壁際では攻守の激しい球争いがあるので、つい壁であるはずだが、球が白線内にあっても脚で蹴る衝動に駆られた。何回かやってしまった。球のスピードと回転が尋常ではない、卓球でサーブの回転を読ないとあらぬ方向にピンポン球が飛んでいくように、ブラインドサッカーでも壁は良く見ていないとゲームを壊しかねない。

7分クオーターの4回で1ゲーム。全日本の経験した選手。流石にこの選手が球を確保したら、鮮やかな球コントロールとスピード。凄い迫力で思わず、本来無口であるはずの壁が人間であるだけに唸ってしまった。実に愉しい壁を経験した。2ゲームめも壁を担当。単に走るというより、カニの横走に似て手を広げて高速横移動(と本人のつもり)と徐々に様になってきた。トップレベルでは無回転として鈴の音が消すこともあるとのこと。想像すらしていなかった技を駆使していることに驚いた。

試合の模様を撮影できれば、、、とグラウンドに来たものの、壁を愉しんだことで撮影することをつい忘れた。毎週日曜に定期練習をしているとのこと、HPをチェックして参加されては如何でしょうか。肉体的な良い汗と、皆さんと交流することでの精神のリフレッシュ。きっと良い経験をされると思います。

香りと発毛センサー

アロマテラピーは副作用が少なく、ストレス抑制効果、殺菌効果あるいは認知症の改善効果等、幅広い効果が報告されている。富山大学 第二外科講師・長田氏はヒバ精油の揮発成分中に食道がん、胃癌、大腸癌、乳癌に対する抗腫瘍効果効果が存在することを確認し、ヒバ精油を用いた新しい治療法の確立をめざした研究を行なっている。昨年秋に発表し、その一部をブログに取り上げ紹介した。檜の香りはリラックス効果があるのは経験しているが、まさか檜葉油の揮発成分が癌に抗体効果があるとは想像もしていなかった。

 ところが、同じタイミングでドイツから白檀の香り成分が薄毛抑制効果があると発表された。こちらの論文をわかり易く解説した抄録が現代化学3月号に新村氏が紹介している。メカニズムの完全解明一歩手前とはいえ、人間、いや哺乳類、魚に至る生物の精巧緻密なセンサー及び制御システムに驚いた。

気が早い人は白檀となれば、お線香の原料だとして、浅草寺や成田不動尊の参拝客が常香炉の煙を頭や体に掛けているのはその為か??。。と考えるか、それとも日本香堂の株を買うか。しかし天然の白檀は効果がないと論文は冷静である。白檀と同じ香りのするサンダロアという化合物である。天然には存在せず、スイスの会社が合成し香水に利用されているらしい。 サンダロアと白檀の香り成分サンタロールの分子式を記した。 

 

 

サンダロアは毛根細胞にあるOR2AT4という嗅覚受容体の一種によって受取られ. OR2AT4はサンダロアと結合し,活性化されることもわかったサンダロアを振りかけることによって,毛髪の成長を促進するIGF_1の発現量と分泌量が増大した。とのこと。

 この記事で知らなかったことは「鼻腔の天丼部分には,嗅上皮とよばれる,嗅神経細胞がびっしりと並んだ組織がある。嗅覚受容体は,嗅神経細胞の膜上で発現してぃる。嗅覚受容体

に匂い分子が結合すると,受容体が活性化し,その情報は脳へと伝えられる。ヒトでは,嗅覚受容体は約400種類存在する。それぞれの受容体はさまざまな匂い分子に結合でき,1種類の

匂い分子は複数の受容体と結合できる。私たちは,400種類の受容体のうち どの受容体が活性化されたかとぃう組合わせによって,数万種類ともいわれる多様な匂いを認識してぃるのだ。」 臭いの分析装置がない理由がこれだ。

 熱分解ガスクロマトグラフで揮発成分を分析しても臭い成分を特定できない。そこで研究室は違うが友人が発明したのは熱分解ガスクロと自分の鼻を並列につなぎ、官能検知した瞬間の熱分解ガスクロマトグラフに現れたピークを臭い成分と決定した。発表した時はサイエンスに遠いと評論する人がいた。だが、これが精一杯の正解に近いやり方だったのだ。精一杯と書いたのは、臭いは単一成分だけではないからだ。

嗅神経細胞が鼻の天井以外に皮膚表面にあることも知らなかった。,角膜,心臓,,肝臓,,精巣,卵巣にもあることも。香り成分が皮膚の特に毛根のあるところのOR2AT4と結合することで、化膿が早く治癒することが知られている。 

この記事を見ての個人的感想であるが、脱毛美容はどうなんだろうか? 暴論・妄想の誹りを免れないが、魚は目だけでなく臭いを皮膚で感じて餌と判断する。とすれば、今問題の海プラは魚が餌ではないと判断する臭い成分を配合することもありか??とも考えた。

 さて、話は飛び、自動車の衝突防止センサー。前走行車に一定の距離を保ち走行する。停止も自動。横に併走する車の存在も知らせてくれる。とても便利である。カメラ、ミリ波レーダー、及びLiDAR(赤外線レーザー光)を利用している。しかしながら、土砂降りの雨となると性能が低下することが知られている。そこで、三菱電機では、それなら3つの手法で測定し、最も確からしい数値に変換することで回避できると悪天候に対応可能な車載向けセンシング技術」発表した。 臭い成分を400のセンサーの組み合わせで特定する生物に比較するには小さい歩みであるが、理にかなっている。 図は三菱電機発表資料抜粋。

エネルギー展より

太陽光発電などエネルギー関連の展示会がビックサイトで開催された。東西展示棟フルの展示会。東棟1~3は主役が展示するところで、今回は太陽光発電関係。4~6は風力、火力、資源リサイクル関連。西棟は水素・燃料電池、二次電池である。

 人気を反映した混雑具合は二次電池>水素関連>>>太陽光発電の順。太陽光発電は閑散で拍子抜けした。電力買取り価格の低下、海外メーカーばかりで日本は代理店の形では、現在のシリコン半導体での太陽光パネルは終わった感が漂っていた。光変換効率の高い半導体(先週ブログのパワーデバイス)が適用できる時まではステイなのだろうと。その時は国産メーカーの復活が期待される。

 二次電池は新開発情報満載で注目を浴びていた。日立造船は固体電解質として硫化物系材料を用いた全固体Liイオン2次電池「AS-LiB」を出展した。全固体リチウム電池は発火危険性がない、高温、真空でも利用可能とあって、宇宙を始め幅広い利用が想定されている。筆者の関係では病院の予備電源として特に有用だと考えられる。

この展示会の直前に東芝は急速充電が可能で、長寿命の新型リチウムイオン電池を開発したと明らかにした。 レアメタルの「ニオブ」を材料の一つとする酸化物を電池の負極に使い、高容量化を実現した。 充電6分・走行距離320kmが可能とのこと(日経)。水素燃料FCVの水素ガス注入速度が約3分なので、いい勝負になる。

 古河電池は正極材にリン酸鉄リチウムのフィルム電池を小型モジュールに充填した開発品を展示。繰り返し疲労が少ない、熱暴走しないなどの特徴がある。EV車に必要な電力まで小型が可能であれば面白い。材質は開発品なので、ポリプロの鉛蓄電池ケースを利用していたが、実際は難燃性が必要である。PPS(ポリフェニレンサルフェート樹脂)が好適と考えているが、耐衝撃、耐熱、寸法安定性、バリ無し成形と課題が多いのも事実。筆者は数年前にこれらを解決した発明をし登録された。その事もあって、ああ時代がやっと追いついてきたか!と感激した。(写真参照)

 水素燃料電池についてはタンクの開発が継続している。自動車は軽量が必須。トヨタは樹脂層タンクの上にガラス繊維/炭素繊維/ガラス繊維のロービングでぐるぐる巻きで軽量化。円筒部をロービングで巻くのは誰でも予想ができるが、口部とタンクの底の丸い部分をどのようにして巻くか、これには繊維の多軸経編み(たてあみ)が利用されていることをフランスの会社がビデオ紹介していた。日本の方が経編みの機械は得意だけに改良はあるだろう。

結婚式でよく謳われる中島みゆきの「たての糸は。。。よこの糸は。。。」は経の糸と緯の糸。が正式な名称。

一方、ホンダは水素バリヤ特殊アルミを採用している。価格は炭素繊維巻きより安価であるが、重いのが欠点。水素ステーションは重量より耐圧が課題である。日本製鋼所はコバルト・モリブデン配合の鋼材を開発している。

 EV車もFCV(水素燃料電池車)も白金触媒を利用している。白金 高価な上に資源がかぎられている。そこで白金代替の研究を進めている東北大の藪准教授は錯体化合物に可能性を追求している。 開発中ではあるが、既に白金よりサイクル性、メタノール被毒がない、製造性に優れる等の特徴が報告されている。業界へのインパクトは非常に大きい。

 写真はトヨタ・ミライの水素ポンプと燃料電池 、 古河電池モジュール、

自動車動向及び新半導体の登場

球春を告げるオープン戦が始まった。日本ハムは二年目清宮の活躍した直後に戦線脱離、後がない斎藤佑樹の力投、中日新人根尾君のデビューと話題豊富。今年ほど監督交代が話題になったこともない。実績のある監督、高いコミュニケーション能力で2軍優勝をもたらした監督など。トップダウンで球団改造を図る巨人と選手のやる気を引き出すことに巧みな阪神矢野の試合は楽しみだ。

 不幸にしてCEOの乱暴狼藉やりたい放題で準備不足のチームがある。日産ルノー三菱自動車連合である。自主トレは各社実施しているだろうが、合同チームとしての開発は暫時休止せざるを得ないであろう。う開発や営業の現場としては離婚希望の声も聞こえてくる。

横浜駅から日産本社ギャラリーまでは遊歩道で直結していることもあり、散歩がてらに歩く。都度、新聞記者、カメラ陣が今日は張り付いているのか?をつい見てしまう。 いつもはE-Power車種が所狭しと展示してあるところが、先々

週の土曜日はステージに模様替えされてジャズコンサート会場に変身。大勢の観客の視線を浴びて山中千尋トリオの演奏。さすが日産だけに洗練されたステージ、音響、照明効果、ナレーションなど一流。山中千尋のパワフルなピアノに圧倒される。 小柄な山中さんのどこに凄いパワーがあるのかと感心した。

 おそらく聴衆はホールぎっしりの500人ほどいた。なんだか、戦う日産部隊への慰問ではないかと一瞬頭をよぎった。ジョージガーシュインのメロディなど演奏の終わりは出身群馬の八木節のフューチャー。民謡がジャズに変化するように横浜地元の日産も変化するように鼓舞しているように聞こえた。軽快なピアノ、ドラム、ベースのトリオの息のあった演奏は3社連合もかくあれとも示唆しているのか。

 そんな3社連合をよそに自動車業界は変化を続けている。ホンダの英国工場閉鎖は脱EUとは違うとは言えタイミングが重なり6000人解雇問題が英国経済に深い憂慮をもたらしている。一方、米国ではGMが2工場閉鎖を決めてトランプと対立している。メキシコからの再関税問題や、米国でのセダン販売は既に30%台で、従来のプラットホーム稼働率は低下し工場維持が困難な理由である。その分SUVにシフトし、かつトランプの環境規制緩和があり、パワフルなガソリンエンジン搭載となっている。ドイツはディーゼルへの回帰が必ずあると、このブログでも予想したが、アウディがディーゼル車を日本でも発売、これをみてイタリア・アルファロメオが自動車メーカーとしての存在価値はディーゼル車だとか妙な理由をつけて、これも日本へ持ち込むと発表。 スポーツカー人気もあり、トヨタはスープラやレクサスのスポーツ仕様も発表した。スープラに関しては生産台数が少ないこともあり、企画、設計はトヨタが担当するが、そのほかは、エンジン、組み立てはトヨタ以外の海外メーカーとのコワークで対応しているなど、なにがなんでも単独での生産よりは合理的な方法にシフトしたことが注目される。レクサスは炭素繊維複合材料により軽量化がなされている。

ここまでは、筆者の予i想通りである。しかしながら、専門外のところで予想が外れたことがあった。それはパワーデバイス。シリコン系から炭化ケイ素や ,窒化ガリウム に移行すると1年前の半導体の常識をお伝えした。 パワー指標を基準のシリコンを1とすると炭化ケイ素が340倍、窒化ガリウムが870倍だからである。 レクサスに炭化ケイ素を搭載して、順次量産車に適用するとの計画がある。ただ、炭化ケイ素ウエハー製造能力があって量産車適用は相当先になるとの観測が出てきた。

予想が外れたのは超大型新人の登場である。 トランジスターには電子を足らなくしたP型と電子をあまらせているN型との組み合わせが必要だが、P型として酸化ガリウムが、N型として酸化イリジウムをそれぞれミスト(霧状)に基盤に吹き付けて反応膜を生成させるという合理的な製造法を京大が開発。シリコンの3444倍高い効率を示すことが発表された。京大ベンチャーのフロスフィアが実用化検討を続けている。さて、これが実用化されるのが早いか、炭化ケイ素のウエハー製造能力整備が早いか、競争が繰り広げられる。どの半導体でも日本がトップで、自動車、電子産業などのもの作りに大いに貢献することは間違いない。

トヨタは炭化ケイ素の実用化を、グループ企業のデンソーはフロスフィアとの共同研究を実施しており、EVの立ち上がりには遅れをとったとしても抑えるところはシッカリ抑える。生産台数はVWにトップを譲ったものの、長期戦略は流石である。

写真はミスト法膜形成法及び直径4インチのサファイヤ基板上に Ga2O3薄膜を形成したもの(フロスフィアWEBより)