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セルロースナノファイバーで目指す歯の再生医療

九州大学の研究グループは、樹木由来のセルロースナノファイバー(CNF)を表面リン酸化することで、ヒト歯髄幹細胞の培養に成功し、硬組織への分化を達成したというプレスリリースを発表。

この研究は、歯の再生医療において課題であった動物由来成分や自家歯材への依存を解決する可能性を示した。CNFにリン酸基を導入することで、細胞接着・培養特性が向上し、外来の分化誘導因子を加えることなく硬組織分化を誘導できることを発見。

この成果は、歯科治療の可能性を広げ、天然多糖ナノファイバーからのバイオマテリアル開発に役立つと期待されています。研究成果は学術雑誌「Carbohydrate Polymers」に掲載されました。プレスリリース2025.04.18

筆者の研究の一つはCNFの製造技術開発であり、プラント建設まで携わった。用途の一つは医療関係を考えていただけに非常に興味があるリリースであった。

歯科関係者には詳しい説明は不要なので超要約の図を示す。

 

 

 

 

 

 

 

補足説明をすると

ヒト歯髄幹細胞(hDPSC)は、歯の再生治療に有望な細胞源だが従来の培養足場材料は動物由来であることが多く、免疫原性が懸念され、入手可能性に問題があった。CNFはスギノマシン社のNFi-sをベースにリン酸化試薬(リン酸水素二アンモニウム、尿素を濃度を変えて反応しP-CNFを製造。

未改変CNF上で培養した細胞は、接着不良を示し、スフェロイドを形成し、生体適応性が低いことを示す一方、中程度のリン酸塩含有量(0.54〜0.78 mmol g-1)のP-CNFスキャフォールドは、細胞接着を有意に改善。 培養中のP-CNFの形態や結晶性がリン酸含有量でどのように変化するかもCNF研究開発者としては非常に興味がある。その一つの図を引用する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この研究結果の応用は広いと思われる。歯科材料に関わるものとして注目していきたい。

尚、先週のブログでEU自動車関連 非関税障壁として3案件を紹介した。今月開催された「人とクルマのテクノロジー展」において、ブレーキ摩擦粉問題を取り上げた企業があった。従来の金属ブレーキから熱硬化複合材料を適用することで大幅な削減したことを発表。規制をしても日本企業はクリヤーすることで自動車産業を強化してきたが、今回も対応したことは素晴らしい。

EUの自動車をめぐる非関税障壁戦略

トランプ大統領のMake American Great Again戦略の一つに関税がある。一方 EUはカウンター関税で対抗するが、重厚な非関税障害で自国(特に)自動車産業を防衛しようとしている。

既に発行している環境基準はEuro7 ,これから適用されるのがELV、そして俎上に上がっているのが炭素繊維の三本柱。

米国よりも日本および日本車叩き的な要素があるのは確かにある。 次世代環境対策としてのクリーンディーゼル推しが痛恨エラーで頓挫し、ハイブリッドでは日本に勝負にならないと判断しEVに舵を切ったものの、中国車に席巻されそうになると、出てきたのがEVを含めたEuro7

さらに長距離走行可能のEVにはより大型(重量)バッテリー搭載が必要で、車両の重量削減には高強度・低比重の炭素繊維複合材料が出てくると考えて、そこを抑えようとする戦術。炭素繊維では日本3社(東レ、帝人、三菱ケミカル)が50%超のシェアを有していることから、これらを排除したいと考えたのだろう。

まずはEuro7の内容を紹介(2024年5月発行)小型新車は2027年11月適用

1)規制対象物質の拡大: ブレーキダストやタイヤ摩耗による微粒子、バッテリーの耐久性なども規制対象。

2)粒子径の小さい粒子 (SPN10) の規制導入

3)すべての燃料・パワートレインへの適用: ガソリン車、ディーゼル車だけでなく、電気自動車 (EV) を含むすべての車両に対して統一的な基準が適用。

4)その他、耐久性基準の強化、リアル・ドライビング・エミッション (RDE) 試験の拡充、オンボードモニタリング(OBM) の義務化: 車両に搭載されたセンサーで排出ガスの状況を常時監視し、超過が検知された場合にドライバーに警告するシステムが義務化。 ブレーキダストやタイヤ摩耗微粒子については継続審議のようだが、巨大タイヤメーカーや巨大機器メーカーがYesとは言い難いだろう。海洋マイクロプラスチックスが理由。

日本ではトヨタなどは正式にクリヤーしたとの公表はしていない。

次にELV(End-of-Life Vehicles:使用済み自動車)指令というものが存在し、リサイクルに関する目標値が定められている。

現在有効なELV指令における主なリサイクルに関する目標は以下の通り。

1)再利用・リサイクル率: 車両重量の85%以上 再利用・リカバリー率: 車両重量の95%以上 (リカバリーには、マテリアルリサイクルに加えてエネルギー回収も含まれる)これらの目標は、2015年1月1日以降に適用されている。

2)2023年7月には欧州委員会からELV指令を改定する規則案が発表されており、今後さらにリサイクルに関する要求が強化される可能性があり、この規則案では、特に以下の点が注目されている。

新車への再生プラスチックの使用義務: 新車に使用されるプラスチックの25%以上を再生プラスチックとし、そのうち25%は廃車由来+その他由来のものとする。

この規制案は現在欧州議会と理事会で審議されており、今後の動向が注目されている。現在、日本では戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一つのテーマとして産官学が協力して推進している。最近YouTubeで活動の一端を紹介されているので参照されたい。

25%配合と簡単に言うが、廃車の材料は数年前当時の技術が適用され、その後の使用により劣化が進行した材料である。これを現在の要求される強度、外観、そしてこれからの寿命を担保させるには、単なるバージン材料との混合ではできない。

そのための新技術開発が必要になる。 法案を作るのは良いが、それを受ける技術面において、本当の当該国の底力が試されるのである。ここでも日本のこれまでの底力が維持されていれば安心できるが、技術の継承、発展するための投資などが課題になるだろう。

次に炭素繊維

EUは炭素繊維を「有害物質」とみなし、使用を制限または禁止する動きがあるその理由として

「リサイクルの困難性: 炭素繊維複合材は、リサイクルが非常に難しいとされています。一般的な熱硬化性樹脂を用いた炭素繊維複合材は、一度硬化すると再溶解が困難であり、リサイクル技術もまだ確立されていません。

環境への懸念: 廃棄された炭素繊維は、自然環境中で分解されにくく、長期間残留する可能性があります。また、焼却処理を行うと、有害な物質が排出される懸念も指摘されています。

健康への潜在的リスク: 炭素繊維の微細な繊維が空気中に飛散した場合、人体に吸入されると呼吸器系の疾患を引き起こす可能性が指摘されています。皮膚に付着した場合も、刺激となる場合があります。」

これらの理由から、欧州連合(EU)を中心に、炭素繊維を「有害物質」とみなし、使用を制限または禁止する動きが出ています。特に自動車産業においては、軽量化のために炭素繊維の使用が広がっていますが、廃車時のリサイクルの問題から規制の対象となる可能性が議論されている。

以上のように視野の狭い審議メンバーならではの理由が述べられているが、日本の炭素繊維複合材およびリサイクルの現状を知らないか、知っていても知らないふりをしているかのどちらかであろう。

反論すると 炭素繊維複合製品は例えば熱硬化材料であるエポキシを炭素繊維に含浸し熱硬化させる。よって硬化後は加熱しても溶融はしない。それは正しい。だが、日本では元の繊維状態でリサイクル技術が完成しており、現在は航空機からの再生繊維として民需用途に利用されている。

さらにナイロン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂と炭素繊維を複合化する技術も福井、石川などの工業技術センターを拠点に実用化されており、リサイクルも可能となっている。

リサイクルの破棄するとき粉砕しか方法がない場合において繊維屑は発生するが、それが人体への影響については想像の範囲であって実態を反映していない。根拠が薄い。

理由としての環境は大事であることは筆者も共感している。がしかし、航空機は炭素繊維による軽量化が燃料排気ガス面でもアルミより優れていること。風力発電のブレード、C/Cコンポジットの工業製品も環境面で必要性がある。身近なところではドローンも炭素繊維による軽量化は懸架物積載量にも関係する。宇宙産業には高熱にさらされても伸縮しない材料が要求されるが、ピッチ系炭素繊維はそれに利用されている。など多面的でバランスの取れた視点で材料をどうするかを考える必要がある。

もし、そうでないなら、全体的に地盤沈下を待つことになる。規制にはカウンターソリューションが必要なのは言うまでもない。マルチパーパスを唱えて成功している事例を見るまでもなく。

ただ炭素繊維問題は俎上段階であり、トレースできるものは対象外との情報もあるので、今後の動向をウオッチしてゆきたい。

高齢者の逆走

逆走が増えている現状の中で、65歳以上の高齢者による逆走が特に問題視されている。認知症が一因とされることが多いが、それ以外にも様々な要因が影響している。筆者は指摘されてはいない高齢者故に事故る原因があるのでははないかの視点を考えた。

一般的なシニア層の特徴として以下の6点が挙げられる。

  • 視力の低下
  • 運動能力の低下
  • 薬の副作用
  • 道路や交通ルールの複雑さに追随できない
  • 心理的要因 慣れない道路では過剰緊張ゆえの要因
  • 道路標識の劣化 シニアがわかる表示方法と言えるか

だが、そのほかに長年の運転経験の過信も原因である可能性はないか。

65歳以上、とりわけ75歳以上の人はモータリゼーションの立ち上がりからの経験者でもある。運転に関しては(体力の衰えを差し引いても)ベテランである。ベテランであるからこそ勘違いをするのではないか?との疑問が筆者は思う。

モータリーゼーションの立ち上がりの道路を考えてみよう。当時は道路幅が狭く国道といえども片側1車線が普通だった。交差点で信号が設備されたが、片側1車線での逆走は多分0に近いだったはず。高度成長の都会では片側2車線、大都会では3車線が敷設されたが、都会の交通量が多いのが幸いして信号停止による停車が見えることから逆走はしない。

これに慣れたベテランドライバーが交通量の少なく複数車線道路の交差点で右折するときに一番左のコースに車両が停止していないと、てっきりそのコースが正常コースと勘違いして走行することになるのでは無いか?と思うのである。そのような事例はコンビナートの道路によく見る。

精油・石油コンビナートには片側3車線が多く、中央分離帯の幅が3車線分ぐらい広いところもある。理由はその下に高速道路が敷設されているようなところがそれに該当する(国道16号京葉コンビナートなど)。交差点の信号は遠いところにあるので、信号機は別の道路に対しているものだと勘違いをしやすい。

筆者もこの道路を右折するには同乗者に確認を都度している次第。同じコンビナートでも国道23号線(名四国道 名古屋―四日市)では都市間交通とあって交通量が非常に多いので、そのような勘違いはない。遠すぎる信号機の場合、道路に方向ペイントを太くしておいた方が良いと思う。

東北道でのIC平面交差を逆走した事例はこれらとは違うものの、料金所で間違って出てしまったのをリカバリーするために再度入ったところで、先ほどと同じ方向に行けば良いと勘違いしたのも、昔からの道路事情(一般道路で渋滞している時は住宅街の中をバイパスをして元の道路と同じ方向に行けば合流できるハズとしたの)と同じ感覚だったのではなかろうか。

片道1車線でのベテラン故にその後経験したこのない新しい道路システムに適合しなかった。あくまでも推定。 最近のカーナビには逆走検知システムがあり、警告音やフラッシュなどで知ることができる。長年乗り続けることが経済的にまたは物を大事にするシニア層の車での最新カーナビ搭載は極めて少ないと思われる。そしてまた、過去にカーナビを信じて妙な道に入ってしまったことがあり、カーナビより自分の感を信ずるようになってしまったのもあると思う。自分の経験から他の人もあるのだろうと思うのが根拠

最後に日本の道路種類と単線・複数車線の割合を参考までに紹介(データー元が複数大量にあるので割合比率は条件加味した仮定数字)

加齢ととともに薄くなる肌をビタミンCが予防

昔のシニア層より今のシニア層は圧倒的に若く見える。デパートで店員が「お若いのでこれがお似合いです」と言うのは単なるビジネス上のお世辞ではない。店員に聞いたところによると、肌と姿勢で判断しているとのこと。TVで「私って幾つに見える?」と大阪の中高年女性は言うシーンが映し出されると、確かに肌に艶があり、弾力性がある。

皮膚の構造などについては、このブログでも記載したが、今回、東京都健康長寿医療センターとロート製薬の研究員が「年齢とともに”薄くなる肌”をビタミンCが防ぐ可能性」を発表した。(2025/4/30リリース)

超要約(下線部引用)

加齢により、表皮は薄くなる

・ビタミンCは、細胞増殖に関連する遺伝子のDNA脱メチル化を介して、表皮角化細胞の増殖を促進する

・DNA脱メチル化は、遺伝子のオン、オフを決定するエピジェネティクス制御の一つ

・皮膚でのビタミンCの役割に「エピジェネティクス制御による細胞増力」が加わり、年齢とともに薄くなる肌への新たなアプローチとなる可能性がある

 

 

 

 

 

 

ヒト培養表皮を用いた研究により、ビタミンCが取り込まれると表皮の厚み、細胞の増殖、およびDNA脱メチル化の指標である5-ヒドロキシメチルシトシン(5-hmC)が増加することが示されました。また、DNAマイクロアレイおよび全ゲノムバイサルファイトシ-ケンス解析により、細胞増殖に関連する12遺伝子の発現がビタミンCにより増加することが判明とのこと。加齢に伴い表皮が菲薄化するのを防ぐのに、ビタミンCが有用である可能性があることが示唆。

参考までにビタミンCの化学分子構造を示しておく L―アスコルビン酸が通称で正式な名称は(5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-[(R)-1,2-ジヒドロキシエチル]フラン-2(5H)-オン 一度には覚えられないが、野菜・果物は自然と合成することに驚く。

ちなみに野菜ではパプリカ、ブロッコリー、ピーマン、ジャガイモ、サツマイモが果物ではキウイ、レモン、ミカン、イチゴ

などに多く含まれている。 ビタミンCといえばレモンと思いがちだがパプリカはレモンの3倍。意外にもジャガイモにも対レモン30%だが存在していることに驚いた。高温の油で揚げるポテトチップスのビタミンCは分解するか調べてみたら、おおよそ160〜180℃でビタミンCの熱分解温度190℃より低いことがわかって安心。ふりかけ塩の方が心配かも。

とはいえ、過剰摂取は腎臓にとってよくない。尿路結石の原因の一つと言われている。ここでもバランスの取れた食事が肝要といつもの結論。 徐々に夏日になってきた昨今、日傘が目立ってきた。紫外線による皮膚の劣化対策ではあるが、それほど強くない紫外線の日射では日傘を使わない方が賢明と書いた。理由は60歳を超えると一気に皺が増えることが報告されているからである。皮膚の体積が減ると物理的にシワになるのはわかる。信じるか信じないかはお任せする。

最後に化学結合に関する研究でノーベル賞をとったライナス・ポーリング博士は晩年突然にビタミンCが生体内反応に重要な機作をするとの発表をされた。ビタミンCが現在でも100mg/日が基準であるところ、2〜3gを摂ることでスペイン風が抑えられたはずであると主張された。生化学分野から異端児された。常時摂取と必要時の瞬間摂取とは切り分けてみるのもアリかと医薬面の素人ながら思う。