2018年 4月 の投稿一覧

理化研(和光)オープンキャンパス

先週土曜日(421日)はRIKEN(理化研)キャンパスオープンとあって和光市駅前から無料バスを待つ市民が長い行列。親子連れ、中高校生の団体などが解放された研究設備やセミナー聴講を楽しむ和光市あげての恒例行事。バスを利用しない場合は和光市駅から徒歩で行くのも楽しみの一つ。舗道にはH、He、Li、Be・・・周期律表の元素プレートが埋め込まれていて、辿って行くと理研に到着する仕掛けができている。ニホニウム道路と称する。途中にニホニウム発見を記念したモニュメントが当方も関係した企業の寄付により建立されてい

産業総合研究所、材料研究所と並んで国立研究所の一つである。平穏なキャンパスも、この日は若い学生・子供の流れが交錯する活気溢れる場に変貌する。木漏れ日の下や池の周辺でお弁当を拡げる風景に学生がサイエンスに興味を持って育ってくれると良いですねと案内役と話す。

最近ブームの脳科学研究棟には長い行列。一番キャンパスの遠い地区にある仁科RIBFに脚を伸ばす人も多かった。日本で初めて発見・確認された元素番号113ニホニウムの誕生現場を一目見たいのがその理由。地上2階、地下3階を貫く巨大な装置に驚く(写真注90度回転して下さい)。

自分の知っている周期律は精々4行目までであとは飛び跳び状態。自然界での発見はフランス、ドイツなど当時の化学先進国がリード。ウラン以後の超重元素は合成によるので大規模な加速器(サイクロトロン)・検出器を所有する国が占めている。米国、旧ソビエト、ドイツが競っている。日本は所有していた加速器が占領政策で東京湾に投げ捨てられるなど基礎研究するにも装置も予算もない状態からのスタート。よくぞここまでと感慨にふけるが説明員も力が入っていた。さぞ関係者全員が多くの苦労したのであろう。異なる元素の一方の原子核を1秒間に10兆個を片方の元素に当てて融合させようとしても、なかなか当たらない。100日、200日昼夜連続しても結果がでないこともあると説明されいたことが印象的。万々一の何乗かの確率で当たって融合し中性子を順次放出し崩壊して既知の元素に到達したことを確認することを数回実績をつまないと認められない気の遠くなる仕事である。

非常に高度なサイエンスを分かり易くするための工夫、簡単な模型などが容易されており、説明員の語り方も平易な言葉を使うなどキャンパスオープンに慣れている。市民からはニホニウムの発見で医療・新材料への展開はどうなりますか?と素直で直球質問があったが「分かりません」と。面白かったのは原子核を強く当ててはどうですか?との質問には、いやソフトに優しく当てるのがコツです。強いと相手が融合しないで弾き飛ばされるのでダメと。なにやら人間関係と似ていますねと笑い。成果の結論がでるのはきっと100年後。楽しみにしましょう。今後は119番に狙いを定め仁科RIBFの予算を集中させるとか期待しましょう

当方がかねてから興味をもっているのは中性子発生装置の小型化。橋梁、ビル、トンネルなど経年劣化を現在は超音波やX線の非破壊試験装置で実施しているものの、測定可能の厚みに限界がある。一方、中性子はコンクリート30cm奥の鉄筋の状態、水たまりの状態を鮮明に撮影することができる。問題は中性子発生装置と中性子を受け止める装置の小型化。2013年に大竹教授を中心とするチームは長さがおよそ10mまで小型化することに成功している。水から水素イオンを発生させ7MeVまで加速させBeに衝突させて中性子を発生させる。発生した中性子を受け止めるには鉛、炭素、高密度ポリエチレンの塊が採用されているが、それだけで20トンもある。なのでトラックに搭載して実用化するには更なる小型化と軽量化が求められる。5年経過した現在の状況は非開示研究棟で組立てをしているとのこと。建造物60年寿命問題までには間に合うことを期待している。 

理研は形式上縦割りの組織ではあるが、垣根がなく水平展開し易いダイナミック性を持っている。先端アカデミック、サイエンスの成果を民営化するDNAを昔の理研コンツエルンにみるように潜在的に持っている。この動きは今後大いに注目される。

 

 

 

人工知能と知的財産生産性

AI (人工知能)やロボットが発達すると製造現場やスーパーのレジ打ちに限らず、会社の意思決定者も合理化の対象になることが言われている。 第一の意思決定者はGMであるが、名前の通り事業に関連したゼネラル的事案に精通し、拡大・縮小の決定を経営者に上申する立ち場である。経験や部下の集めてきた情報を基に判断することだけでは不安。そこで上司が納得するネームバリューのある調査会社を活用することがある。横文字の認知されている会社がよく採用されている。調査会社が万能かといえば、調査できる対象者・ネットワークは限定されている。ある調査会社から教えて欲しいと依頼があり、雑談的に対応したことがある。後日、ある企業を訪問したとき「〇〇調査報告によると、あなたと同じような意見がありました。なるほどと納得しました。」と。顔は平然のフリをしたが、腹筋は笑いを抑えるのに震えていた。この会社を笑えないなぁ。当方の会社も横文字というフィルターに弱いと

AI時代ではこのような管理職、役員は失職する。ネットでは抽出できない生の声を自分で集め、信用できるか否かを判断できる能力があり、初めてユーザーの心を反映した方針を立てられるのではないだろうか。偉そうに言っても小生の検索入り口の一つはネット。先日セルロースナノファイバーのある機能をネットで検索した。アウトプット順番4位にあったのがコスモサイン合同会社の自分のブログ(笑)。 

さて、物づくりに重要なのは知的財産である。「だよね~」の商標登録などはAIを使えば、天文学的組み合わせで商標候補がアウトプットされ出願はできるだろうが、生産とはほど遠い位置に有る。防衛か嫌がらせである。AIは補助者であっても主役に決してなれないのが発明。ディープラーニングが進んで過去の整理は得意でも新規技術開発はできない。過去の特許・技術から「容易に類推できる発明もどき」はできても、それは発明特許の要件を満たしていないので直ちに特許庁から拒絶される。

工業的価値のある材料・成形法などは発明出願日から実用新案10年、特許20年と長く保護されている。特許に抵触した場合は損害賠償責任を負わされる。出願にあたり先行技術との差別・新規性、有用性など明確に記載し審査を受け合格すれば登録となる。出願はPCT(国際特許協力条項)を利用するケースが増加してきた。一旦PCTに出願し、状況見合いで各国移行する手順である。予備調査は日本特許庁が担当するので日本語出願できるのも有りがたい。アジア地区の各国特許機関は日本の特許調査・審査を高く信用しているので登録できる確度が高い。問題は欧州である。EU統合に伴い特許制度も変わるものと思いきや、「会議は踊る本場」だけに一向に決まらず、各国個別出願を余儀なくされる。これでは出願費用が問題で、次第に敬遠しつつある。EUにとっての物づくり・発明拠点が今後、色あせていくことであろう。米国がTPP参加した場合の知的財産の有効性は強くなると予想されるだけにEUも変わらざるを得ないと予想する。

では知的財産の生産性はどうかと問われると、これに対する答えがない

    研究開発者の側に特許明細書専門家が常駐して、実験結果が出たら出願準備

    研究開発者が先行文献調査、明細書も自分で作成し、仕上げを専門家に委任する

    弁理士事務所にA4一枚程度で要旨を説明し、作成~出願まで委託する

生産数では①が多い。実験の途中で明細書担当から比較例を増やして下さいなど注文がはいり完成度が高くなる。一方、技術の真意が伝えられず隔靴掻痒的文書になることもある。

    は研究開発者の負担が大きいことと、明細書作成になれていないので出願よりノウハウにしておこうなどの心理が働く。 しかし研究開発者の実力は確実に付く

③は資金に余裕があるか、社内に適任者いないので逼迫しているのかどちらか。

トータルで考えると研究開発者が明細書を書くことが好ましい。実験計画を立案するときから効率的である。但し、出願15件程度までは巧拙や成立成績を問わないことがポイント。徐々に特許出願のコツがつかめてくる。この時の上司は育成サポーターとして面倒をみることが重要である。いずれ世界のフィールドで大活躍することを期待して。

経糸・緯糸

中島みゆきの糸は結婚式披露宴での定番曲である。「♪なぜ めぐり逢うのかを私たちは なにも知らない。いつめぐり逢うのかを 私たちは いつも知らない。縦の糸はあなた 横の糸は私。織りなす布は いつか誰かを 暖めうるのかも知れない。」

意味するところは深く誰でもその通りだなぁと共感する。但し、ただ一つを除いて。それは「縦の糸、横の糸」である。技術屋としては「経の糸、緯の糸」と書いて欲しかった。シンガーソングライターは理解される言葉を使わざるを得ないことは分かっていても、歌がこのクダリになると違和感を感ずる。経緯の発音は同じ「たて、よこ」で地球儀の経線、緯度だと言えば分かる人が多かろう。

一番簡単な織りは平織りで経糸と緯糸が直交する形でシッカリした生地ができる。多少緩みが欲しいときは綾織りなど数十種類の織りパターンがある。日本のお家芸であった織物は特殊な事例を除いて中国を始め開発国にシフトしている。その結果 生地の多くはポリエステル製となった。

その理由は経糸にどの繊維を選択するかによって生産性が高く安価にできるかにある。経糸は原糸に撚りを掛けて繊維を束(撚糸)にして強度を高め、撚糸の束を捌いて(整経)必要なら糊付けを施す。これを織機の筬(おさ)に一本一本はめ込む、3~5本纏めて通すこともある。経糸の本数は織物サイズによるが何千本・何万本もある。この作業は半日から1日掛かりであることから、織機稼働中に一本でも切れたら生地はお釈迦で最初からやり直しとなる。そこで選択される経糸は切断し難い合成繊維で汎用ポリエステルが最も利用されている。ナイロンもあるが、湿度によって経糸の張力でクリープするので敬遠される。ナイロンのもっている特性はポリエステルファイバーの断面形状を工夫することで対応しているのが実態である。

合成繊維なれば糊付けが不要。緯糸はどのような糸でも適用することが出来る。コットン、麻(ラミー)で肌触り対応商品など。緯糸の送り速度は1秒間に10~20本と超高速(ウオータージェット方式)なので、現場の織機を見学してもサッパリ分からない。原糸・撚糸・整経 糊付けなど経て糸の自動装置は関東であれば東京都立産業技術センター多摩(西立川)で見学することができる。その他福井・愛知三河の工業技術センターでも各種織機を見学でき、一部研修することが可能なのでお試し下さい

さて、冬には暖かな肌着が定着している。どんな仕組みだろうか。メーカーは開示していないが生地に肌からの水分を吸着するときに発生する凝集熱(気体が液体に変化する際の運動エネルギーの差)によるものと推定されている。高い吸湿性材料繊維にはレーヨンや高い吸湿性を付与されたアクリレート系繊維が利用されている。吸湿した水分を肌着の外に追い出し、熱が長時間持続できるための織りパターンや他繊維との混紡など工夫がなされているのではと推測される。夏の肌着は肌と接触する層は高い吸汗性、中間層に汗を周囲に移動させる拡散層、外側に汗を速く蒸発させる蒸散層の多層構造など素材・織りパターンを組み合わせた商品が開発されている。

この多層構造をみていると人工歯の構造を多層構造にするとどのようなことになるのであろうか、コア層(歯床接触層)は噛合い圧力センサーとして神経への伝達層となり、その外側が弾性変形ループ復元性層、そして最外層が適度な硬度と摩擦摩耗特性のある材料になるのか。歯科医、技工の方々のご専門の立ち場から想像してみるのも面白い。実用化するには3Dプリンターだろう。何年か後の論文に「要旨、経緯、緒言、本文、纏め」として掲載されるかも。その時の経緯の意味は「いきさつ」。

熱硬化樹脂リサイクル

先週のブログではポリカーボネート樹脂の光磁気ディスクのリサイクルを採り上げた。この樹脂は熱可塑性樹脂に分類され、融点を持ちそれ以上の温度では軟化・溶融するので成形時には溶融温度以上で溶融体として射出成形、中空成形、フィルム・延伸成形などで製品化することができる。ポリエチレンやポリスチレン、ポリプロピレン、ABS、PET、ポリアセタール、ポリアミド(ナイロン)から歯科外科材料になりつつあるPEEK、PKK(ポリケトンケトン)などのスーパーエンプラもこの分類に入るので基本的にはリサイクルは可能

一方、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などは熱硬化性樹脂といわれ、加熱による溶融はしない。三次元架橋体である。フェノール樹脂は日本人には黒色の電灯ソケットで松下幸之助が開発したとなっている二股ソケットをフェノールとホルムアルデヒドを縮重合したベークライトで製造したことから馴染みがある。寸法精度がよく、難燃性、耐熱性を兼ね備えていた。現在は光ファイバー接続部品や機械部品のギアを金属をフェノール樹脂が置き換りつつある。前者は寸法精度、後者は厚さが5cm以上のギアであっても内部に空洞がなく、かつ摺動性があり軽量であることが理由である。

メラミンは食器や浴室介護部品として、エポキシ樹脂はガラエポ(ガラスエポキシ積層体)として電子回路基板にはなくてはならない樹脂。不飽和ポリエステルはガラス繊維複合によりプラスチック漁船、遊具、浴槽など広範囲に利用されている。SMCもこの範疇に入る。

ウレタン樹脂は低温衝撃に優れ、水による発泡成形も可能であるところから、自動車、家具の緩衝シート、冷蔵庫の断熱材として使用量は多い。最近は熱可塑性ウレタン樹脂も相当浸透しているが、架橋の熱硬化性樹脂の割合が高い

熱硬化性樹脂は再溶融できない。従って①サーマルリサイクル(燃料)②モノマーまで化学分解 ③熱可塑性樹脂の中に充填物として配合する。3通りが「リサイクル」がある。

②のモノマーまで分解すると、素原料として利用できる。手法としては超臨界状態、亜臨界状態での分解が知られており、多くの企業が研究開発を進め、パイロットプラントを建設して検証作業を進めている。

超臨界状態は固体・液体・気体ではなく、特定の圧力・温度条件下では液体でも気体でもなく気体の活発な分子運動と液体の溶解性の両方を有する媒体となる。(図-1http://www2.scej.org/scfdiv/scf.html) 水は374℃、圧力218気圧で、炭酸ガスは31℃、73気圧で超臨界状態になる。超臨界状態で処理することで結合が切断されなど反応の場として利用することがある。分解には触媒としてKOHなどを併用することもある。

超臨界は多くの分野で利用されているが、初期のころは超臨界反応槽の材質も劣化させることから金属材質の適性化研究がなされた。もしくは若干マイルドな亜臨界条件での開発が進んでいる。だがしかしながら、製品量と処理量のバランス(コスト面を含め)がとれていないのも現実であり、サーマルリサイクルか埋め立てがメインとなっている。

 

 

ウレタンは特に冷蔵庫の断熱材として抜群である。理由は発泡性に加え、複雑形状に合わせて賦型できることにある。このウレタンをスマートにリサイクルできないか研究者が福井大学の橋本教授が2007年に提案している。ウレタンも200℃以上・高圧超臨界条件でケミカル分解すれば不純物濃度が高いモノマーを得ることは可能である。但し、橋本教授はポリオールにアセチル基を導入しウレタンを合成した場合、常温で希薄塩酸処理により純度の良好なポリオールが回収できること見いだした。

 

③の熱可塑性樹脂への配合 

一般的に普及してはいない。理由は熱硬化性樹脂は異物であって、衝撃強度を低下させる。そのため、熱可塑性樹脂には例えばガラス長繊維で十分な衝撃強度を確保でき、その中に増量剤として配合できる製品に限定される。当方が25年ほど前にポリプロピレンのパウダーを水中に分散させ、同時にガラス長繊維を共存させて混合、乳白色に混合したころを見計らって抄紙方式で脱水・乾燥・加熱プレスをして頑丈なボードを製造したことがある。ある日不飽和ポリエステル製のヘルメットを粉砕して、この系に配合したところ、機械的強度は寧ろ向上し衝撃強度も満足することが判明した。コンクリートパネル適性も合格した

これは異種材料への配合であるが、同種材料系への配合が最も品質的にも安心できる。

具体的には歯科技工模型で利用されているウレタンディスクを微粉砕し、ウレタン原料に混合し重合したところ、収縮、外観、衝撃、強度いずれもバージン原料で製造したものと同等の品質を得ることができた。ウレタンディスクは欧州を中心に歯科技工では利用されているが、国内では高価であることから普及レベルは高くないが、切削残り分はディスクの全体からすると結構な量であることから、リサイクルによるコスト低減の可能性はある。