人工知能と知的財産生産性

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

AI (人工知能)やロボットが発達すると製造現場やスーパーのレジ打ちに限らず、会社の意思決定者も合理化の対象になることが言われている。 第一の意思決定者はGMであるが、名前の通り事業に関連したゼネラル的事案に精通し、拡大・縮小の決定を経営者に上申する立ち場である。経験や部下の集めてきた情報を基に判断することだけでは不安。そこで上司が納得するネームバリューのある調査会社を活用することがある。横文字の認知されている会社がよく採用されている。調査会社が万能かといえば、調査できる対象者・ネットワークは限定されている。ある調査会社から教えて欲しいと依頼があり、雑談的に対応したことがある。後日、ある企業を訪問したとき「〇〇調査報告によると、あなたと同じような意見がありました。なるほどと納得しました。」と。顔は平然のフリをしたが、腹筋は笑いを抑えるのに震えていた。この会社を笑えないなぁ。当方の会社も横文字というフィルターに弱いと

AI時代ではこのような管理職、役員は失職する。ネットでは抽出できない生の声を自分で集め、信用できるか否かを判断できる能力があり、初めてユーザーの心を反映した方針を立てられるのではないだろうか。偉そうに言っても小生の検索入り口の一つはネット。先日セルロースナノファイバーのある機能をネットで検索した。アウトプット順番4位にあったのがコスモサイン合同会社の自分のブログ(笑)。 

さて、物づくりに重要なのは知的財産である。「だよね~」の商標登録などはAIを使えば、天文学的組み合わせで商標候補がアウトプットされ出願はできるだろうが、生産とはほど遠い位置に有る。防衛か嫌がらせである。AIは補助者であっても主役に決してなれないのが発明。ディープラーニングが進んで過去の整理は得意でも新規技術開発はできない。過去の特許・技術から「容易に類推できる発明もどき」はできても、それは発明特許の要件を満たしていないので直ちに特許庁から拒絶される。

工業的価値のある材料・成形法などは発明出願日から実用新案10年、特許20年と長く保護されている。特許に抵触した場合は損害賠償責任を負わされる。出願にあたり先行技術との差別・新規性、有用性など明確に記載し審査を受け合格すれば登録となる。出願はPCT(国際特許協力条項)を利用するケースが増加してきた。一旦PCTに出願し、状況見合いで各国移行する手順である。予備調査は日本特許庁が担当するので日本語出願できるのも有りがたい。アジア地区の各国特許機関は日本の特許調査・審査を高く信用しているので登録できる確度が高い。問題は欧州である。EU統合に伴い特許制度も変わるものと思いきや、「会議は踊る本場」だけに一向に決まらず、各国個別出願を余儀なくされる。これでは出願費用が問題で、次第に敬遠しつつある。EUにとっての物づくり・発明拠点が今後、色あせていくことであろう。米国がTPP参加した場合の知的財産の有効性は強くなると予想されるだけにEUも変わらざるを得ないと予想する。

では知的財産の生産性はどうかと問われると、これに対する答えがない

    研究開発者の側に特許明細書専門家が常駐して、実験結果が出たら出願準備

    研究開発者が先行文献調査、明細書も自分で作成し、仕上げを専門家に委任する

    弁理士事務所にA4一枚程度で要旨を説明し、作成~出願まで委託する

生産数では①が多い。実験の途中で明細書担当から比較例を増やして下さいなど注文がはいり完成度が高くなる。一方、技術の真意が伝えられず隔靴掻痒的文書になることもある。

    は研究開発者の負担が大きいことと、明細書作成になれていないので出願よりノウハウにしておこうなどの心理が働く。 しかし研究開発者の実力は確実に付く

③は資金に余裕があるか、社内に適任者いないので逼迫しているのかどちらか。

トータルで考えると研究開発者が明細書を書くことが好ましい。実験計画を立案するときから効率的である。但し、出願15件程度までは巧拙や成立成績を問わないことがポイント。徐々に特許出願のコツがつかめてくる。この時の上司は育成サポーターとして面倒をみることが重要である。いずれ世界のフィールドで大活躍することを期待して。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。