このブログがアップされる頃には旧聞になるが、横浜地下鉄ブルーライン(湘南台―あざみ野)の始発電車(6両編成)の5両が脱線し復旧まで4日を要した。線路保守の為の装置を線路上に置いたまま始発電車を迎えた。完全なポカミス人災であるが、単独作業ならあり得る。チーム作業なので全員がポカをするとは考えられない。多分、誰かが、いつものようにしている筈だ。との思い込みが始発電車を通すまでの限られた時間では、奇妙な空白ができたのだろう。複数による指差呼称により「ヨシ!」とするのが普通。同じ横浜のシーサイドライン無人車両逆走事案が重なり、より安全を求める声が高くなった。
対策はそれぞれ原因が違うので異なるが、地下鉄の場合は、JRのように検査軌道車を走行させるなどのチェックも必要だろう。地下鉄は車両とトンネルの間が狭いので線路に車両を持ち上げる作業が困難を極めたとのことで、東急、JRの応援でやっと回復。JRの経験が大きく貢献した。
化学プラントは危険物・可燃物を高圧・高温の条件下製造。24時間連続運転している。2年に1回プラントを止めて定期修理を1~2ヶ月実施する。それまでのチェックandメンテナンスが徹底しているので大規模事故は発生していない。生産性は産業の中で最も高いのは徹底した制御装置と綿密な現場チェックである。デジタルとマニュアルの複合システム。ピストンや攪拌モーターなどは集中制御室でモニタリングできるが、それだけではダメとして例えば長さ1.5mの細い鉄の棒を耳と装置にあてて異常音を検知する。それもあって定期修理を3年に1回にすることができ、生産性が更に向上する。生産性と安全性は一体なのである。
化学プラントに限らず工場・事業所を訪問するとき横断歩道では右ヨシ左ヨシと指差呼称を訪問客であってもする。時々街角でシニアの方が小さく指さしをしている風景に出会う。微笑ましい光景であるが、最近の交通事故を鑑みると効果的かも知れない。漫画家のはらたいら氏が横断歩道を渡りはじめは左側、終わるころは右側と冗談を話していたことがあった。確かに暴走車の被害を少なくする工夫というか本能的センサーが必要かも。
自動車メーカーの本社事業所を訪問した。この会社の中に工業高校が併設されており、実践的な教育がなされている。この校舎の前に幾つかのメッセージパネルがあり、その一つを紹介する。
さわありながら、人とロボットが生産現場で一緒に働くことになってきた。協調ロボットが出てきて久しい。隣りあわせのロボットと一緒に作業する。今のロボットは極端なモノでは人にあたると停止する。なので人とロボットの間に仕切りを置いている。少しロボットが進化して、ある距離になると止まるようになってきた。これは先週のブログでも掲載さいたToF (Time of Flight)の採用により距離測定精度が向上したことによる。
以前のお掃除ロボットは障害物にあたって方向を変えていた。それが今は障害物の距離を測定してあたらずに向きを変えることになっている。但し、対象物の色が黒であると障害物にあたる。なぜならばToFは赤外線を対象物に射て反射時間差で距離を測るが黒い物体は赤外線を吸収するので効果がない。そこでロボットとの仕切りをなくし、かつ作業衣が黒に近い色彩であってもロボットの動作が制御できる装置を開発した研究者がいる。福岡大学・辻聡史助教である。彼はToFセンサーと静電容量センサーを組み合わせ近接する距離によって、ロボットアームの速度を多段階に変化させ、あたる直前に寸止めする装置を提案し幾つかの事例でその効果を発表している。ToFセンサーがX軸、Y軸方向に対して静電容量センサはZ軸に対応することから全方向に利用できる。協調ロボット以外にヒューマノイドや無人搬送に、身近なモノでは車椅子など応用例を挙げておられる。課題もあるが、実用化に期待しましょう。でもヒューマノイドに適用したらそれこそ人当たりのよいロボットで本物の人間より重宝されるかも(笑)。人当たりの良い人は時にキレることがあるがヒューマノイドは電池が切れない限り大丈夫。なんだか手塚治虫・鉄腕アトムの世界に一歩近づいた。