2018年 12月 の投稿一覧

歯科医の感性、クルマ設計の感性

歯科医の感覚は凄い。事例を挙げる。歯科医が歯科治療で訪れた患者の口腔をチェックする課程で、口腔癌の疑いありと診断。専門病院を紹介したところ一命を取り留めたと知人から聞いた。おそらく生針検査を歯科医がする訳がないので、患者の息や唾からの臭いが歯槽膿漏由来の口臭ではないと感じたに違いがない。最近、北九州市立大工学部の李教授が口腔癌患者と健常者の吐く息や唾からの揮発成分を分析することで、口腔癌マーカーの可能性を研究していることを知った。

この研究は実は大変な労力と根気が必要で、揮発性の僅かな成分を濃縮する装置の開発も伴うのでMEMSMicro Electro Mechanical Systems工学的知識と技量が必要とされる。歯科・医学と工学の学際での相互協力があって成立する。

まず、健常者A群でも息の中に数多くの成分VOCがある(体内の代謝経路を介し細胞から分泌され、血液を介し、呼気や唾液、尿などの体液中へ転送され、生体内の生化学的変化を反映)。癌患者C群にもVOCが存在する。その両方に共通しているB群もある。対象者から採取した唾液をゼオライト膜を通して濃縮・高感度処理をしてGC-MSガスクロマト質量分析法にてスペクトルを採取。C群だけに存在するVOCを特定している。

 

これの実用化には課題がありそうだが、糖尿病は呼気からアセトンが、肺がんは呼気からブタノールが、大腸癌は呼気からノナナールが検出されマーカーになり得るとの先行研究があることから、簡便な方法で安価にスクリーニングできることは非常に意味がる。

話が堅くなった。誰でが好きなクルマの話題でリラックス。

自動車愛好家にとって興味深いクルマが発表になった。日経記事を抜粋する。

「タジマEV1214日、東京大学で電気自動車最新テクノロジー成果発表会を開催した。そのなかで田嶋伸博会長兼社長は「環境だけでなく、走りでも安全面でも電気自動車の良さを証明したい」と述べ、6種類のEVモビリティを出していく考えを明らかにした。」

2輪後4輪のハイパーEVだ。6輪独立制御で、自社開発のモンスターバッテリーとモンスターモーターを搭載。その最高出力は2020馬力、0-100km/h1.95秒「モンスターE-ランナー コード6」全長は4850mm、全幅は2100mm、全高は1190mmで、重量は1950kg。一体価格はいくらになるのか、当方が心配することはない。当方の車庫には寸法でアウトの苦しい言い訳がある。

 しかしながら、クルマに詳しい諸氏にとって、2004年に慶應義塾の清水名誉教授が開発したクルマは車輪の数が8個、ホイールインモーターで最高速度が370km/hr超であった。クルマの名はElica 。覚えておられるだろう。

 

 この14年間に何が、どう向上したのか、製造工程が合理化されたのか、バッテリー、モーターを自社開発されたのか、クルマを買えないが興味はある。先のブログでEVやハイブリッドの特徴は低速時の高トルクで立ち上がりが速いとは書いたが2秒を切るとは凄い。モンスターを人間のスキルで制御するには無理がありそうだ。安全を謳うからには、そこには配慮されている筈と想像する。

筆者がこの発表でこれ良いなぁと感心したのは車椅子である。不幸にして歩行に障害がある人が外界と自由に交流できるツールとして車椅子は必要である。しかしながら電車に乗るには駅員の方の補助板の助けを借りる。これが無ければ、もっと自由に動けるはずだと。

当方では車椅子を開発している業者、大学関係者にはキャタピラ内臓の車椅子を開発して貰えないですか?と依頼していた。今般の仕様の詳細が不明ではあるものの、コンセプトが活かされることを期待している。それには軽量にしてパワフルなモーターとバッテリーが必要。田嶋EVが可能になれば障害をお持ちの方には福音となる。また海外からインバウンドの人に対しても人に優しいテクノロジーを見せることもできる。これが技術者の感性だ。

原電とそよ風発電

東北大学が12月12日にリリースした内容はインパクトがあった。 「福島原発事故後に周辺地区で捕獲された野生猿の血液・骨髄細胞の結果―血液・骨髄細胞数が内部被曝線量と逆相関を示す。」逆相関とは被曝量が増えると血液・骨髄細胞数が減少。捕獲した猿の生活地域別、個体別の区分けを慎重に実施し対象となる猿を95匹抽出。「内部被曝線量が最小1.9μG/日~最大219μGy/日)中央値が76μGy/日だった。その結果、末梢血液中の白血球と血小板数、骨髄中でこれらの血球の元となる骨髄系細胞と巨核球が内部被曝線量と逆相関にある」と発表した。なにより図のように血液中の核の数とサイズの変化に驚かざるを得ない。猿の動きや外観からは健康状態に異常を認められないとしつつも、低被爆線量であっても長期間浴びた場合の生物への影響を解析する上で貴重な研究報告。

しかしながら研究チームは低線量を常時浴びているイラン・ラムサールでは平均10mGy/年被爆の環境下でも顕著な放射線影響は報告されていないことから、馴化や適応もあり複雑であるとして慎重な研究継続をするとのこと。研究者の姿勢として凄く立派である。

科学に謙虚に真正面から向き合うことが人類・成獣・植物、大きくは環境に対して必要であることを改めて認識した。原子力発電は科学に基づいて稼働している。ただ、周辺インフラ整備には科学を軽視してコストを重視をした。科学的根拠に基づく勧告に従って津波対策・非常用電源など措置を採っておれば、これほどの結果にならなかった。科学に依存する一方で科学を無視した。言っても聞かない東電経営者連中にはお天道様が差配したのかも知れないが多くの尊い命を失い、日本中を混乱させた。村の鎮守の場所は過去津波の被害がない場所に建立されていることを、誰か一人でも関心があり、何故だろうと考え行動していればと悔やまれる。日本特有の組織の同調圧力とか空気もあるかも知れないが、経営者のトップの仕事は同調空気を作らない風通しの良い組織をつくることにある。

あれは原電の話。もう過去の話。。。と片付けるには貴重すぎる結果。これから些細なことでも人間にとって健康・快適なテーマに結びつけるために、何があり、どうすれば良いかの5W2Hを考えるのは意味がある。歯科関連において線量が圧倒的に低いコーンビームCTによる歯列顎形状の特定技術の開発、海外を飛び回るビジネスマンの飛行中被爆する線量対策としての航空機材料の開発などが挙げられる。

 週末になってポーランドで開催されていたCOP24の報道があった。京都議定書、パリ協定と名前は浸透。先進国のみ実施の京都議定書から、途上国も取り組むと変遷。CO2削減を産業革命時点+2℃以内(1.5℃以内がゴール)。詳細がこれから明らかになるので、論評は差し控えるが素人の直感では(自国ファースト政治などもあり)相当厳しいと想像する。

今後迎えるMaaS (Mobility as a service)や5G世代社会を支えるのは電力。その発電を脱炭素で賄えるのか。太陽光、風力など供給量変動の大きい自然エネルギー利用に対して火力、原電がベースロードとしてミックス構成を変える必要がある。北海道地震による長期停電、ソフトバンクの通信トラブルのようなことが電力において発生したら国は持たない。つい最近、京成線内の夜間電気工事の遅れで、接続している翌朝の京急は運休や部分運行と混乱。僅かな時間でも電力が停止するととんでもない混乱を招く。大きい技術開発は政府・公的機関・民間企業にお任せして大いにお手並み拝見をしよう。

 ただ個人レベルでも意識を持ってそよ風程度だが環境への試みをするのもありか。ポリシリコン価格暴落で太陽光発電メーカーが不振になったり、電力買い取り制度問題で個人的にも影響をうけている太陽光発電。投資コストが少なく発電が確保できる風力に着目。(最も効率が良いのは地熱発電だが観光産業との兼ね合いで進展していない。) 約10年前に仲間で日曜に集まって「そよ風風力発電」を合い言葉に風力発電用ローター(羽)の形状検討をした。ローターは剛直な紙を折り紙で製作した。出力には換気扇を利用して起電力を測定した。手先の器用な人、電気に精通している人、デザインが得意な人、発想が人とは違う人の四人が集まった。ローターの回る周速と発電量の関係はローターのデザインに依存する。理論値があり、当時の市販されているローターは得意領域の風速に合わせて製品化されていた。そよ風領域はなかった。

会議室を日曜限定の臨時工作室に転用していろんなデザインのローターを折り紙でトライする内に次第に風洞実験で確認価値がありそうだとの運びとなり、風力発電で有名な足利工大でテストをした。その結果、ローターの回転(周速)と発電量の理論値ラインに乗ることが分かった。(ループウイン社公開の発電効率の図上にプロットした)

ビル風は勿論、人が通り過ぎる時の風でも発電する。この10年の間に風力発電から撤退した企業がある一方で羽を巨大化して海洋風力発電に力を入れる企業と2極化している。当時の折り紙形状のアイデアを製造するには厄介な点があったが、現在、当方も関係する3Dプリンターを利用すれば可能だと考える。 原電と規模では比べものにはならないが、そよ風発電が大きな風を起こす時がくることを。

労働人口(定年延長・海外労働者・AI)三つ巴

事件や事故で被害者の年齢と職業を報道するたびに例えば「○○さん。75歳。無職」と紹介される。マニュアルに名前・年齢・職業を言うことが決められているにしても「無職」がなんとなくマイナスイメージを醸し出すのは如何なるものかと都度思う。75歳でも仕事に従事していないといけないのか?と。 しかしながら、それが冗談ではなくなるかも知れない。政府は企業に定年延長を指導し、年金支給開始を70歳からに設定すれば30万円/月給付するとの構想を発表している。65歳以後も健康で「職業」に就くことができる人は限られている。皮肉的だが、会社の空気を読んで仕事に邁進し成果を上げた人ほど、社内外の付き合い、空気抜きとして酒は必需品だ。 

仕事ができる人ほど定年前から種々の病気を潜在的に抱える人がいる。会社の健康診断で全く問題ないと発言をしようものなら「仕事していないからネ。」と陰口。高度成長時代は特にそうだった。仕事ができたが健康を害している層。健康ではあるが仕事ができない層。いずれも70歳を迎えるには厳しい。 

話は飛躍するが酒党には辛口のデーターがある。アルコール摂取積分値が120kg(人により200kg)に達したらいろいろな疾病がでるとの報告がある。これを200ccの罐として換算するとビール 10,000  ワイン4,800 日本酒 4,000罐 。 連続飲酒で蓄積した場合の数字なので、蓄積しないように休肝日が必要だが、それにしても少ない量で発症の危険があるということ。閾値に達したら発症する花粉症と同じと考えれば納得がいく。

話を戻して労働者人口問題へ。政府の年金給付70歳開始構想を批判するのは簡単だ。国の立場からすれば年金バランス解消もあるが、なによりも労働人口の減少対策が重要と考えているだろう。65歳以上も貴重な労働者として働いて下さい。それが国の衰退を決めるとして協力要請している。

人口の増減と国の経済力は強い相関関係があり、特に高齢者1人を何人の若者で支えるかの比率が低下すると国は衰退する。日本に限らず中国も同じ。飛ぶ鳥落とす勢いの中国は人口減少による経済停滞の危惧、社会不安対策もあり一人っ子政策を廃止した。効果がでるのは20年後。それまで民間債務残高29兆ドルもの借金漬けバブルが弾ける危険がある。すでに始まっているとの情報もある。

労働人口対策としてロボットやAIが補完するから大丈夫との見方があるものの20XX年まで待てる体力のある企業と、待てないで労働者不足倒産の危機に瀕する企業もある。海外労働者入管法改正法案が国会を通過した。具体的細目は省令で決定するとのことなので、白紙投票しろとの野党の抗議は分からないでもないが、それなら政権時代に統治システムを変更すれば良かったが、しなかった。

今回の海外労働者入管法で対象となる職種でロボットやAIでは代替可能なものか、独断と偏見で考えてみた。 入管法では14業種が対象となっている。

*外国人技能実習制度(技能検定試験に合格で3年の在留資格)

*特定技能1号(最長5年滞在可能だが家族帯同は不可)

*特定技能2号(追加予定 条件では永住可能)

ここで、AI や IOT、ロボット化など開発が進むロードマップを読んで滞在期間を決めているのでは?と推測する。

現在の代替率0%の業種であっても開発が進めば割合が50%まで削減できるならば労働人口問題は一つのソリューションを得る。逆に言えばイノベーションのネタでもある。

【介護職】介護パワースーツなど補助装置、リハビリ自動化、新モニタリング装置で介護負担の軽減

【農業】除草剤頒布の頻度を少なくする除草剤及びドローン利用による農作物管理から出荷検査など

【ビルクリーニング】 クリーニングする必要のない表面コート剤の開発。光触媒の進化とコート剤の自己組織化による表面ナノ凹凸撥水防汚材料

【自動車整備】 外板修理程度しかするアイテムがないほど電子化が進み、整備自体が縮小するだろう。補修部品を自動車販売店傘下かタイアップしている3Dプリンターで製造

【宿泊業】 ハウステンボスの事例のように受付フロント業務はロボットが置き換え、客の車管理もAIが請け負う。お客様が外出時にクルマ手配をスマートにこなしていた優秀なドアマンも顔認証とリンクしてクルマが立体駐車場から自動搬送されてくる。

【産業機械製造】多軸CAM、3Dプリンターで現在の金属加工業から変化する

人口減少、高齢化社会のモデルケースとして日本は注目されている。一方、ドイツ、フランスでの外国労働者による就職機会が奪われている社会問題は深刻さを深めている。 注目されると組織を挙げて対応する日本の企業・社会文化。ここは全体の空気を読んで活躍できる特にシニア層に期待しましょう。

FCV,EV ,MaaS

何十年前の雪国での風景として、石油ストーブの周りに保護柵があり、洗濯物を置いていた。湿度調整も兼ねていたのだろう。でも洗濯・乾燥するたびに徐々に変色していく。何故か。それは灯油の燃焼から発生している窒素酸化物が原因である。繊維や染料と反応して褐色気味の着色物質が生成するのである。これを業界では「ピンキング」という。

日本で製造している樹脂・繊維製品は添加剤配合なども洗練されており、ピンキングや黄変が発生しないが諸外国で生産される材料では対処されていないことが多い。製品が輸入されてピンキングが指摘されることがある。そのとき思い浮かぶのが冒頭の石油ストーブ。倉庫内のフォークリフトは?と聞くとエンジンでアタリ!日本ではFCV駆動フォークリフトが浸透している。倉庫のような閉ざされて空間でエンジン動力源のフォークリフトが走り回ることで発生する窒素酸化物が貯蔵製品を徐々に汚染させている。

日本は特に食品関係の倉庫では匂い問題もありFCVがパワートレイン。EVでは充電時間が長いが水素供給時間は3分程度と短い。域内走行なので供給装置問題もない。水素タンク耐圧は35MPa(350気圧)と低いこともあり普及している。

 これが自動車適用となると適用車種はトヨタ、ホンダに限られ、ベンツも時々アドバルーンを上げてはいるが、EVとは比較にならない普及度。メリットは走行距離、水素燃料チャージ時間はあるが、未解決課題も山積している。材料では水素燃料電池の触媒(白金)代替の開発、水素タンクの合理的製造法の開発などがある。タンク圧力は70MPaと高く、金属製では水素腐食で使えないので内側は高密度ポリエチンタンク、外側を炭素繊維で何重にも巻く構造となっている。バウムクーヘンのように真ん中の空洞の部分は見かけタンク大きさよりかなり小さい。 ちなみにプロパンガスタンクは2MPaで高張力鋼板の溶接。

炭素繊維製造は日本の得意技術である。だが、、、、材料メーカーのテリトリーではないこと、またクライアント先との競業避止もあって下流の製品化はしない。下流は中小企業が多い。これを突破する製品化技術が必要。樹脂タンクの層構成、炭素繊維巻く機械(口部などの巻き方など工夫が必要)の開発などが挙げられる。

インフラでは誰でも指摘している水素ステーション設置数が少ない、ステーション設備・維持管理費用が高いなど悲観的な事例を挙げる人が多い。FCV走行距離が650kmで多くは日帰りには問題がないが、どっこいEV車が当初の170kmから400kmまで改良が進んできたこともあり、FCVの走行距離だけではメリット幅が狭くなった。

Well to Wheel(油田から車輪)までのエネルギーロスが多いのも指摘されている。EVが効率が良いとも。でもEVは電力が存在しての話。原電は削減、化石発電も抑制され太陽光、風力など変動電力に対して水素は発電量調整バッファーの役目があるとしたら水素社会とEVは共存すると考えるのが自然ではないかと思う。

FCVもEVでも低速時のトルクが高い特性がある。トヨタがハイブリッド車を開発した動機はなんと0→100の立ち上がり速度であって、スポーツ感が味わえることを目的とした。それはモーターの低速時の高トルクにある。エンジンでは速度と共にトルクが高くなり、低速は苦手である。 で、イラチなドライバーはEVステーションで待つことができない性格だろうと思う。そんなユーザーにはFCVが適しているかも知れない。(ステーション問題がクリヤーになったら)。

 パワートレインの将来はどうのこうのとの講演や記事は多い。その多くは2030~2050年頃には。。。の前提付きながら、現在の状況範囲内で述べている。技術の進歩状況を外部からは見えないからである。トヨタやホンダがHEVやPHEVを独占しているのは鉄壁な知的財産であり、財産蓄積中は当然のことながら外部には発表しない。(注:FCV仲間を増やすため公開特許の利用を許可している。但し、もの作りにはノウハウや技量が必要でこれは各社公開はしない)

トヨタの次年度の組織変更が発表された。FCVは残っている。これの意味するところは何なのか。想像を逞しくするのもありだと思う。クルマを含むインフラ全体も視野に入れていく中でFCVEV,エンジンなどパワートレインの座席が決まる。その答えが徐々に表面化してきた。

 トヨタがソフトバンクと組んだMONET TechnologiesMaaS(Mobility as a Service サービスとしての移動体) の動向がパワートレインを左右しそうだ。アプリからあらゆる交通手段の最適化による利用が可能で決済も行われる。Suicaも存在するかどうか瀬戸際になるかもしれない。台湾に出張した家族がウーバーを利用したが非常に便利で驚いたと話している。また横浜みなとみらいを中心とした観光地域ではアプリからバスを呼び出す実験が行われている。徐々にMaaSに向かって動いている。