歯科医の感性、クルマ設計の感性

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歯科医の感覚は凄い。事例を挙げる。歯科医が歯科治療で訪れた患者の口腔をチェックする課程で、口腔癌の疑いありと診断。専門病院を紹介したところ一命を取り留めたと知人から聞いた。おそらく生針検査を歯科医がする訳がないので、患者の息や唾からの臭いが歯槽膿漏由来の口臭ではないと感じたに違いがない。最近、北九州市立大工学部の李教授が口腔癌患者と健常者の吐く息や唾からの揮発成分を分析することで、口腔癌マーカーの可能性を研究していることを知った。

この研究は実は大変な労力と根気が必要で、揮発性の僅かな成分を濃縮する装置の開発も伴うのでMEMSMicro Electro Mechanical Systems工学的知識と技量が必要とされる。歯科・医学と工学の学際での相互協力があって成立する。

まず、健常者A群でも息の中に数多くの成分VOCがある(体内の代謝経路を介し細胞から分泌され、血液を介し、呼気や唾液、尿などの体液中へ転送され、生体内の生化学的変化を反映)。癌患者C群にもVOCが存在する。その両方に共通しているB群もある。対象者から採取した唾液をゼオライト膜を通して濃縮・高感度処理をしてGC-MSガスクロマト質量分析法にてスペクトルを採取。C群だけに存在するVOCを特定している。

 

これの実用化には課題がありそうだが、糖尿病は呼気からアセトンが、肺がんは呼気からブタノールが、大腸癌は呼気からノナナールが検出されマーカーになり得るとの先行研究があることから、簡便な方法で安価にスクリーニングできることは非常に意味がる。

話が堅くなった。誰でが好きなクルマの話題でリラックス。

自動車愛好家にとって興味深いクルマが発表になった。日経記事を抜粋する。

「タジマEV1214日、東京大学で電気自動車最新テクノロジー成果発表会を開催した。そのなかで田嶋伸博会長兼社長は「環境だけでなく、走りでも安全面でも電気自動車の良さを証明したい」と述べ、6種類のEVモビリティを出していく考えを明らかにした。」

2輪後4輪のハイパーEVだ。6輪独立制御で、自社開発のモンスターバッテリーとモンスターモーターを搭載。その最高出力は2020馬力、0-100km/h1.95秒「モンスターE-ランナー コード6」全長は4850mm、全幅は2100mm、全高は1190mmで、重量は1950kg。一体価格はいくらになるのか、当方が心配することはない。当方の車庫には寸法でアウトの苦しい言い訳がある。

 しかしながら、クルマに詳しい諸氏にとって、2004年に慶應義塾の清水名誉教授が開発したクルマは車輪の数が8個、ホイールインモーターで最高速度が370km/hr超であった。クルマの名はElica 。覚えておられるだろう。

 

 この14年間に何が、どう向上したのか、製造工程が合理化されたのか、バッテリー、モーターを自社開発されたのか、クルマを買えないが興味はある。先のブログでEVやハイブリッドの特徴は低速時の高トルクで立ち上がりが速いとは書いたが2秒を切るとは凄い。モンスターを人間のスキルで制御するには無理がありそうだ。安全を謳うからには、そこには配慮されている筈と想像する。

筆者がこの発表でこれ良いなぁと感心したのは車椅子である。不幸にして歩行に障害がある人が外界と自由に交流できるツールとして車椅子は必要である。しかしながら電車に乗るには駅員の方の補助板の助けを借りる。これが無ければ、もっと自由に動けるはずだと。

当方では車椅子を開発している業者、大学関係者にはキャタピラ内臓の車椅子を開発して貰えないですか?と依頼していた。今般の仕様の詳細が不明ではあるものの、コンセプトが活かされることを期待している。それには軽量にしてパワフルなモーターとバッテリーが必要。田嶋EVが可能になれば障害をお持ちの方には福音となる。また海外からインバウンドの人に対しても人に優しいテクノロジーを見せることもできる。これが技術者の感性だ。

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