会社のOB会に出てみると現役続行している人は5%前後おられる。職種は営業職が多い。AI時代においても、営業の一面では「この人から買いたい」が動機としてあるからだろう。技術系はコンサルや顧問をされても3年以内には辞めているのが実態。

営業職は相手が人間だけに“つぶしが利く”のに対して技術の進歩に以前の技術を持っていてもその価値寿命が尽きる。過去の情報はAIが詳しく教えてくれるので、多くの技術者は活用が限定される。皮肉なことだが、失敗情報はAIでは得られないので、失敗を多く経験した技術者はそれなりに存続する。失敗の理由が時代が早すぎた出会った場合は、今になって追いついてきたなどの理由では失敗を経験した技術者は価値がある。 ここまでの話は一般的である。営業職も技術系も既存組織の会社に属して活動。宮仕えの相手が変わるだけといえば身も蓋もない。

それでは、OBとなってから起業した人はどうなのか? 幼いときに家業の雰囲気で育った人に対して、サラリーマン家庭に育ち、それなりのコースで勉強して企業に入社した人とは少し異なる性格を持っている。現役の企業の中では、それほど目立たなくても卒業した時に、幼いときの経験がなぜか復元して起業に走る。幼い時から子供でも家業の中では一員としてサポートするのが当たり前。

OBになったら幼少時代に経験した何らかの因子が作用したのだろうか起業する人がいる。自分でも本当の理由がわからない。百人一首の『瀬を早み岩にせかる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ』なら楽しい子供の頃の再現になるが、そうではない。なぜか?

その疑問に答えてくれそうな文献がある。「脳を作り変える」ではなく「幼い頃の埋め込まれた要因が目を覚ます」に近いのだが。

幼い頃の社会経験が脳を作り替える 〜意思決定を支配する神経ネットワークを発見〜 名古屋大学 2025.10.09 リリース

 

 

 

 

テストは線虫を用いて、餌を探すときの行動パターンが、幼虫期の飼育環境によって変化することを発見した。特に、幼虫期に個体密度が高い環境(=餌の競合相手が多い環境)を経験すると、神経回路状態に持続的な変化が生じることを明らかにした。として要約は以下の通り。

  • 線虫成虫期の意思決定は、幼虫期の社会経験に大きく左右される。
  • 意思決定を支える仕組みは、多くの神経細胞が段階的につながった神経ネットワークである。
  • 神経ネットワークの接続には「ギャップ結合)」と呼ばれるチャネル構造が必要である。

線虫ではあるが、どこか人間にも当てはまるような気がするではないか。戦後のベビーブームの小学校では1クラス60人・6クラスが普通であり超高密度状態。世間は高度成長前の(線虫テストでは餌に飢えた)状態。それが高度成長の爆発要因になって各界で活躍した。 現在の状況と比較すると雲泥の差だが、それが幼児〜成長時代に自動的に神経ネットワークのギャップ結合の結果だとすれば、非常に面白い。

なお具体的な実験の仕方・整理の仕方を学ぶ別の目的のためにこの文献に目を通されるのをお勧めする。