2021年 1月 の投稿一覧

コロナ第三波と身近なできごと

昨年の入試問題ににPCRに関する設問があった。いまどきの問題なのでメモした。(出典は現代数学2021、2月号)。

「PCR検査において、病気に罹っているとき検査結果が陽性になる確率は0.74,健康のとき陰性となる確率は0.999である。病気の人の割合いは1000人に一人であるとする。検査結果が陽性になった場合、実際に病気である確率は約何十%か」

簡単と言う人、若い時はスラスラできたが今は。。。の人とそれぞれでしょう。答えは末尾に記載しましたので参考にして下さい。

頭が柔らかくなったところで、今度は身体の運動などに関わることについて。皆様の仕事によっては表題の内容は該当しないとのお断りをまずしておきます。

次のグラフは昨年の2月から本年1月までの執筆者の月平均歩行数。個人データーであるので、勿論全体を表していない。その前の年は年間平均8800歩である。2月から低下がはじまり、第一波で外出自粛が発出されると4月は1700歩の最少記録をした。ビジネス相手方もクローズドしている状態で外出機会は極端に減少した。その後解除になると徐々に増え始めたものの、テレワークの浸透もあり2019年ベースには戻っていない。ズーム会議も会議はすれど実行となると相手方の勤務状態変化もあり、以前ほどのスピード感で物事が進まなかった。そうこうするうちに第二波、そして大型の第三波が来ている。

1月8日に1都3県に緊急事態が発出され、次々と事態宣言対象地域が拡大している。横浜も外出自粛規制対象となっているので、歩行数は減少している。しかし、第一波ほどに低下していないではないか! 出歩いている証拠ではないのか!とお叱りを受けるであろう。

実はビジネス活動による1月の平均歩行数は2500~3000歩であり、残りは居室内でのエクササイズによる歩数を足し算したものである。米国在住の人からの情報により始めたエクササイズであるが、ひところ流行った ビリーズブートキャンプほどの激しい動きではない。10分もやれば十分とのこと。物足りない感じで初日を終えた。歩数は1000歩稼ぐことはできた。目標は2000歩以上補完する必要があることから、サイクル2回とした。その日の睡眠時間は通常より大幅に延びた。坂のある土地柄だが妙に足が軽い。おおっ! 従来のビジネス、散歩の歩数で得られた感触と違うことに気がついた。因みにBMIは24なので肥満ではない、坂道をフウフウ言いながら登っていたわけではないが、エクササイズを取り入れてから軽やかになった。コロナ渦が運動音痴の筆者にもたらした良いことだと前向きにとらえることにした。

ZOOM(Teams)会議は決定しても実行が遅いと上述したが、良いことを先日見つけた。

それは技術者フォーラム会議がWEBで実施されたときのことである。講師の方の説明を聞きながらチャットで質問を書き込むと休憩時間に講師が回答をする。セミナー参加者は休憩できるが講師は対応に休憩どころではない。その質疑応答に誘導されて新しい質問が飛ぶ。リアル会議やセミナーでは質問者のところにマイクを持って行くのに時間を取られる。質問者の多くは「素晴らしいご講演で有り難うございます」と枕言葉がはいり時間が取られる。質問者の中には頭が整理されてなくあやふやな質問して返答に困る事態もままある。質疑応答も2~3件で終わるケースが多い。チャットでは挨拶不要、質問が整理されていることがあり、多くの質疑応答が可能である。なかなか便利である。

コスモサインもWEBセミナーを予定している。積極的なご参加と活発な質疑応答を期待しています。

コロナ渦が終焉しセミナー後の懇親会が早くできると良いことは言うまでも無い。

皆様におかれてもコロナ渦で変化したもの、普段気にしていないものが見えたなどあろうかと思われる。これを機会にカタスロフィ的に変化するのは何か?と前向きに考える時間をもらたと考えることも良いのではないだろうか。

冒頭問題の答え (2020年東大薬学系大学院試験問題のひとつ)

分子(1/1000 X0.74) 分母[ (1/1000X0.74) + 999/1000X(1-0.999)]

=42.5%。答えは約40%

空気清浄機としてのガソリン車

タイトル間違っていないか?と疑問を持たれる方、最後までお読み頂けると、さもありなんと思われるでしょう。

EVは排気ガスゼロ FCV(水素燃料)排気ガスはH2Oのみでトドの詰まり大気を汚染しないので歓迎されている。それに対してガソリン車は二酸化炭素、(ディーゼルの場合)窒素酸化物、PMを排出する。ガソリン車ゼロ宣言をする国が相次いでいる。日本でも2030年代にはガソリン車ゼロを目指すと政府が発表したとあって大騒ぎ。あまりにも自動車業界の反発が強いので「役所で使用するクルマは」。。。とやや後退気味に訂正したと聞く。自動車工業会はガソリン車の燃費向上を継続しており、EV、FCVの推進も実施と多岐に亘っての選択枝を広げて格闘中の時だけに、技術音痴の政府が勝手な方向に誘導するのは堪らんとのことだと思う。レジ袋廃止と同じ無智な空気感でやられてはならないと思ったのであろう。

そうは言っても、ガソリン車を将来製造するのは厳しいだろうと多くの人が見ているなかで、エッ!? と驚くべきことが粛々と進んでいることを知った。それは

「大気を清浄化するエンジン車」の開発である。 将来のガソリン車は空気清浄機?とでも表現するのか?

EV,FCVは大気汚染はしない。今回の開発目標は吸気の空気よりクリーンな空気にして排気するというもの。指摘されて目が覚めたのは「確かに大気汚染がなければの条件を満たせば、あとはwell to wheel 問題(クルマ製造LCAを含む総合環境負荷)に焦点が絞られる。このような発想は全くしていなかった。驚いた。

でも、驚くのは早い。2017年 幼稚園児の描いた「空気をきれいにする車」を取り上げて当時考えられる技術を集合するとして東工大村上准教授(当時)が提案していたのだ。

 

2015 年度「機械の日・機械週間」絵画コンテスト受賞作品「空気をきれいにする車」。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原油・シェールガスはまだまだ潤沢にある。直接ガソリンを燃焼するエンジンはトータル熱効率では優れている。熱効率50%を越えるクルマも発売されるようになった。

では「大気を清浄化するエンジン車」のキモは何かと言えばリーバーンエンジン構造、セラミック被覆点火プラグなどエンジン本体の開発に加え、最も重要な働きをしていているのは排気ガス処理触媒である。一酸化炭素、低分子量炭化水素、窒素酸化物、PM(微粒子)を還元トラップする触媒(TWC&4WC)である。

欧米では極寒時スタートでも触媒能力が発揮できるよう触媒を予めヒーターで加熱するなど細かい配慮の後処理を組込んでいる。このシステムは自動車用内燃機関技術研究組合で自動車メーカーと官学一体となって開発を進めている。図はイタリアフィアットの試作車である。

(2021.2月号日経Automotiveより)

究極は大気を元の大気より綺麗にするが、当面の目標は2030炭酸ガス70%カットとのこと。多分、落ち着く先はFCVとエンジンとのハイブリッドなのかもしれない。水素社会はクルマ以外でも次期インフラとして充実されることもあり、水素とエンジンが持つそれぞれ特徴を相互補完したクルマになるものと予想される。愉しみだが、早くして欲しい。

触媒は小中学校で習ったのは自ら変化することなく化学反応を推進するというもの。確かに1世紀前の化学産業では分子を結合させるために高圧・高温の条件が必要だった。高圧法低密度ポリエチレンの名前がついているように圧力は2000~3000気圧を必要とした。それが精々5~20気圧、常温~60℃で規則正しく結晶となる定圧法低密度ポリエチレンができている。肥料で欠かせない原料のアンモニアはハーバーボッシュ法(温度600℃、圧力200~1000気圧)が長く適用されてきたが、最近では定圧法が開発されている。これが可能としているのは触媒にある。今、欧州を中心に合成ガソリンの研究がなされている。原油ではなく水素と一酸化炭素をコバルト・鉄触媒で合成ガソリンを製造するにはフィッシャー・トロプシュ法を利用している。さて、この研究と通常のガソリンを利用するにはトータルLCAではどうななのか、両方のレースが見物である。

触媒の開発は途方もない探索が必要であるが、量子コンピューターと計算機化学の進展により従来より効率よく最適触媒の種類及びその形態が指定されるのではないだろうか。それにより環境改善と豊かな生活の両立ができるとしたら化学者としては非常に嬉しいことだ。

大豆と納豆菌

目覚めの際のルーチンの1つ加わったのが香木を嗅ぐこと。匂いを感じ、珈琲の微妙な味が分かり、熱は平熱。咳、息切れ 呼吸苦 寒気 筋肉痛 関節痛 下痢 頭痛 鼻水 くしゃみ 倦怠感 咽頭痛のチェックリストに有無を記録する。あたかも機械の始業・就業点検や薬事管理点検のようでもある。(コスモサインの社員は全員PCR検査して陰性を確認)

さて、朝食の定番に納豆がある。納豆業者に叱られるが、筆者は正直なところ納豆が非常に美味しいとは思わなかった。栄養があり善玉菌が、、、、、と医食同源の原料との理解だ。子供のころ関西・北陸地区を中心とする西日本で生活を送れば納豆とはほぼ無縁だった。幼児のころの絵本なので信頼性はイマイチだが、富士川の合戦で源氏の急襲を受けて、ノンビリと大豆を煮ていた平家が驚いてムシロに巻いて逃げた。それが納豆の始まりと書いてあったのを覚えている。今でいう納豆はお店になかった。水戸の藁に巻いたお土産を見て“これが納豆?”の雰囲気だった。京都で納豆といえば大徳寺の納豆。大徳寺納豆は真っ黒で匂いが強烈で“薬”として中国から渡来したのであろう。毎日食前に乗ることはない。

社会人となっての初勤務地が三重県四日市。社員寮に入居。朝食・夕食は社員食堂。フォッサマグナを境に地域分けすると、東日本地域からの人が6割、西日本地域が4割。納豆はテーブルの中央に大きな容器に山盛りに置いてあり各自取る。卵と刻みネギも添えて。納豆を攪拌する回数とチカラの入れ具合で、東日本か西日本出身かを見分けることができた。ネット検索すると攪拌回数と旨み成分の関係を実験した事例が紹介されている。3点満点で味を評価すると、攪拌しないと1点、20回攪拌でで1.8点 100回で2点 400回で2.3点 だそうで投稿者は400回攪拌を推奨(できるか!)。攪拌すれば納豆菌の量が増える訳ではない、ネバネバが大豆から剥離して表面の膜を形成することでセンサーに感じやすくなっていると考えた方が合理的で、体内に入れば同じ栄養素量だと言えば、また納豆業界の人から叱られそうだ。

京都大学が大豆と納豆菌について研究し10月に学会誌に投稿したことが昨年の11月2日にプレスリリースされた。タイトルは「大豆と納豆菌のせめぎ合いの仕組みを解明 ―生きた大豆は納豆菌を嫌い、納豆菌は死んだ大豆が好き」

生きた大豆は納豆菌を振り掛けても繁殖することなく拒絶する。芽が出てもやしとなる。煮るなり長期間放置すると大豆は死に、その細胞膜を納豆菌は栄養として取り込み内部に浸透するメカニズムを明らかにした。「納豆菌は死んだ蒸大豆に応答して大豆を栄養源として生育するために、遺伝子発現を変化させていることがわかりました。」と凄い様子が記載されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波及効果と今後の予定について著者らは次のように記述している

「本研究により、大豆は納豆菌 枯草菌の増殖を抑える抗菌物質を産生していることが示唆されます。足のにおいの原因として、枯草菌などの細菌の存在が指摘されています。今後は、大豆から抗菌物質を単離同定し、どのような細菌に対して抗菌活性を示すのかを明らかにすることにより、大豆抗菌物質の薬剤への応用が期待されます。一方、蒸大豆に対する納豆菌の生理作用を追究し、その成果を高品質な納豆の製造に繋げる予定です。また、納豆菌の細胞表層構造の変化に伴う洞穴の形成機構を解析することにより、細胞の膜ダイナミクスと洞穴の生理的意義を明らかにします。」

さすが京大。納豆の研究を踏まえ、メカニズムをベースに抗菌物質への展開を睨んでいることは頼もしい。高品質納豆生産が味覚に繋がると納豆消費量が増え、結果として健康寿命がネバネバ成分のように延びるのであれば大歓迎だ。子供のころ食しなかった納豆だが今は毎日の食卓にある。

「京大発表論文

タイトル:Bacterial inducible expression of plant cell wall-binding protein YesO through conflict between Glycine max and saprophytic Bacillus subtilis

著 者:Haruka Sugiura, Ayumi Nagase, Sayoko Oiki, Bunzo Mikami, Daisuke Watanabe, and WataruHashimoto

掲 載 誌:Scientific Reports」

環境対策の短期・中長期テーマ

皆様、明けましておめでとうございます。旧年中はコスモサインをご愛顧頂きありがとうございます。本年も何卒宜しくお願いいたします。

日本海側のお客様におかれては除雪作業をしつつのお正月だったのではないでしょうか。関越道でトラックが豪雪で動けないことが年末の話題になった。同じ光景が2018年の北陸道であった。東京では降雪5センチで交通網がズタズタになるような脆弱さを露呈する。日本海側の降雪量は豪雪となると一夜で90センチ積雪になることもあるが都市生活は大きな影響はなくなっている。昭和38年(サンパチ豪雪)以来融雪設備(散水)の拡充や雪下ろし頻度が少なくなるような建築の推進などインフラ拡充により格段に住みやすくなっている。新潟大の親子二代に亘る教授のカーボン利用による道路や屋根ヒーターの息の長い研究も地方に根ざしているテーマだ。

一方道路となると、一台でもストップし渋滞発生中に豪雪が来ればクルマは閉じ込められる。燃料メーター、バッテリーメーターを睨みながら救援を待つことになる。ガソリン車やHEVには給油支援は可能でもEV車は厳しい。ホッカイロ、寝袋とスコップを持参することをお勧めする。スコップは何故かと言えば車内にいるとエコノミー症候群になるので車外で体を動かし救援自衛隊の方々と一緒にワークする為。食料と蔵書を積み込み読書三昧でその時を待つのもありか。給油問題はEVもFCVも同じなので、そこは道路側での改善が求められる。

2050年排出ゼロ宣言があってから環境ニュースが俄然多くなった。暮れの12月28日の日経によると社長100人のアンケートでは自社で達成可能9割との記事が紹介された。その手法として(1)次世代再エネ発電 (2)水素の活用技術 (3)電池の高効率化 (4)デジタル技術を活用した電力ネットワーク (5)電動モビリティとある。 普通ならこの記事を素直に読み、「非常に心強い回答である。それを達成する蓄積技術や手順を保有しているからこそ言い切ることができるはずだ。」と反応をしたであろう。だが、日本の半分は降雪の気象条件下にあることを考えると、違うソリューションも用意しないと不完全ではないかと考えられる。それとも社長は記者が用意したアンケートの中で選択するとの条件で回答したのかも知れない。本当の社長なら「これらの項目にはない重要な要開発の技術がある」と答えたと思う。質問した記者のレベルが問われるものと思われる。

次世代再生エネルギー発電の主力が太陽光発電だとしたら日本海側の冬期は発電量が低下する。電動モビリティも降雪には弱い。太陽光発電の蓄電・電池の高効率化がリチウム電池(固体も含め)に依存するならば、現在の40ドル/KWHを政府目標の20ドルにしてても尚高い、かつ全世界とのリチウム取り合いになると資源枯渇問題が懸念される。

揚水発電やフライホールに加えて圧縮空気によるエネルギー保存&再生電力に注目されると予想する。雪国秋田出身の首相ならでは指示を省庁にされてはどうかと思う。新潟出身の田中角栄は列島改造論と唱えた。その発想の背景は雪国であっても経済発展するにはどうしたら良いのかを考えたことも含まれている。

小生がもし首相なら2050年と2100年の計画を出しなさいと指示するだろう。恐らく2050で達成したインフラは2100年では通用しない事態になることは予想される。バズワードに駆られて走りだすと落とし穴に落ちる危険がある。長期的な視点が必要だと考える。

列島改造によって新産業都市ができたものの、グローバル化で地盤沈下したのと同じ道を歩みかねない。寧ろ日本への逆の流れを起こさせたい。折角の正月においては視点を遠いところに馳せるのもよいのだろう。

今の技術の延長の2050には日本海の荒波を利用した潮流発電や暴風でも稼働する風力発電や温泉地区での地熱発電もあるだろう。抜本的な技術で2100年を迎えるには、例えばプルサーマル、核融合、マントル発電などが思いつく。過去検討したが技術未達でペンディングになっているテーマもある。再度取り上げるには覚悟が必要だが、それこそ民間企業ではなく国のお仕事だ。大学が官民提携しないと研究室が維持できないような今の独立法人大学システムではなく、長期的な視点で大学に取り組ませる予算措置と人材の態勢を敷くことが官に求められる。

今後の歯科・歯科技工の世界も例外ではない。どのようになるのかと受動態で待つのか・どのようにするのかと能動的に動くのかエキサイティングなテーマであり考え提案し実行できればと考えている。