コーヒーの成分が大腸がん細胞の増殖を抑制を考える

またコーヒーの話かとお嘆きの方に新しいコーヒー効果情報をお届けしますのでご勘弁を。京都府立医科大学と関西医科大学が表題をリリース(2026.03.17)

要約を引用。

コーヒーの摂取と大腸がんのリスク低下との関連を示す疫学研究の背景にある分子メカニズムの一端を説明する成果です。

コーヒーに含まれるポリフェノール成分「カフェ酸」がヒト大腸がん細胞の増殖を強く抑制することを発見しました。

ケミカルバイオロジーの手法により、カフェ酸が大腸がんの予後不良に関わるリボソームタンパク質 RPS5 に直接結合することで、がんの増殖を制御するメカニズムを発見しました。

コーヒーといえばポリフェノールのクロロゲン酸と理解されている。双方の分子式を見ると、カフェ酸とクロロゲン酸もポリフェノール化合物であることがわかる。

 

 

 

 

カフェ酸が初めからあるのではなく、クロロゲン酸が胃や腸で加水分解されて生成するものであるとのこと。確かにクロロゲン酸の分子式の右半分がカフェ酸の素であることがわかる。実にオシャレな命名をしたものだ。

効能の写真では

左;2種のヒト大腸がん細胞(HCT-15、 HCT116)が紫色に染色されている。右;カフェ酸の投与により、がん細胞は ほぼ消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機作については論文をチェックされたい。

ブログとしては「欧米ではコーヒーを4〜6杯飲んでいるのに大腸癌が多いのはなぜか?」「日本人は多くても3杯が好ましい理由」に関心がある。

鍵は食生活と遺伝子の違いか。

欧米化激しい日本だが、米国の方が赤肉、加工肉の消費が圧倒的に多く、食物繊維が少なく肥満、運動不足の生活スタイルが大腸癌を加速させている。そこにコーヒーが体にいいとか言いつつ砂糖たっぷり添加する飲み方ではカフェ酸が活躍するにも出番が少ないのだろうと推定。おそらく無糖で10杯ぐらい飲まないとカフェ酸の効果はないのだろう。笑い事ではない、日本でも米国の後追い食生活をしている。だったらコーヒーを多くすれば良いのでは?と思うものの、遺伝子がそもそも違うのでそうはならない。

1 肝臓でカフェインを分解する酵素 CYP1A2 の活性の違い。

日本人は遺伝的にこの酵素の活性が低い、あるいは標準的な「遅い代謝型」の割合が高いので、1日に4杯以上飲むと、血中のカフェイン濃度が下がらないまま次の杯を重ねることになり、自律神経の乱れ、不眠、動悸、不安感などの副作用が出やすくなること。

2 骨密度の低下リスク(カルシウム排出)

カフェインには利尿作用があり、その際にカルシウムも一緒に体外へ排出される。もともとカルシウム不足になりやすい日本人。骨粗鬆症の原因にもなる

3 日本人は胃粘膜が比較的弱いので胃炎などの原因になりやすい。

ということで、食事の後にコーヒーを頼む一種のおもてなし文化があるが、本音をいえば、直後に飲むのではなく、1時間後が好ましい。また空腹時に飲むより“お3時”的に(甘くない)おやつと一緒にするのが好ましい。

なお、欧米人では肥満は仕事能力が低いとみなされているので、日本食を取り入れかつ運動をしている。その結果、大腸癌は減少している。今の日本は逆行している。ファストフードショップが満員になっていると。余計な心配をしてしまう。自分でも何年か前は同じだったので偉そうなことは言えないが。

ダンゴムシは食べた鉱物の構造を体内で作り変えて外骨格に

このタイトルを見て驚いた。そして最後は生物に学ぶ次世代材料への貴重な報告と気がついた。 筑波大学が2026.03.19にリリース。

ダンゴムシに炭酸カルシウムを含まない(例:石英)と含む鉱物を舐めさせたところ、炭酸カルシウムを含む鉱物を舐めたダンゴムシの背は厚く固く、そうでない石英では薄い結果を見出した。ここで疑問に思ったのは甲殻類が成長する時に脱皮をするが、脱皮時に殻が硬いと脱皮できるのだろうか?と。それを思いつつ文献を読み進む。その結果、炭酸カルシウム含有鉱物を舐める→外骨格殻を硬くするメカニズムの中間体として非晶性炭酸カルシウムとして貯蔵しておいて、キチンやタンパク質で構成される型の中に充填して結晶化させるとある。非晶性炭酸カルシウムは柔軟・水溶性だから型への移動が容易。この逆に脱皮する時は骨格にある結晶性炭酸カルシウムの何割を非晶性炭酸カルシウムがいわば潤滑剤として利用してスムーズに新しい骨格へ引き継ぐ仕組み。実にすごいメカニズムなのだ。材料として金属、樹脂にも応用できると考えられる。

剛直/柔軟の多層構造体。ダンゴムシよ誰に習ったのだ?と聞きたくなる。

文献の図を引用する。

 

 

 

 

 

 

 

カルサイトは石灰岩や大理石などに広く見られ、アラゴナイトはサンゴや貝殻などに含まれている。と文献中に紹介されている。

試薬として購入する炭酸カルシウムの粉末とホタテ貝の粉末とは結晶構造が全く違う。機械的強度(剛性)を高める時にはホタテ貝の粉末を樹脂に配合するのは理にかなっているが、化学式ではCaCO3で同じなのに、どうして形態が異なるのか不思議だった。

ダンゴムシ:子供に愛されながら嫌われキャラの二面を持つ。だが、脱皮の時の風景を調べたら実に面白いので紹介する。脱皮は前半・後半に分けて行われている

一気に脱ぐと、全身が柔らかい無防備な時間が長くなり、乾燥や外敵に対して非常に脆弱になる。半分ずつ脱いで硬化させることで、常に「動ける部分」や「ある程度硬い部分」を確保し、生存率を高めている。 また元の殻を食べて炭酸カルシウムの濃度が同一になるようにしている。炭酸カルシウムのリサイクルを生命の必要性から実施している。 今はリサイク時代?いや太古の昔から生物は必要に応じて実行していたのだ。

ということで、柔よく剛を制すのではなく、柔が剛を作り、剛も変化し柔となり次の脱皮成長へと繋げる。そして最後はリサイクルも行う。なんとも現代が参考にすべきところ多々ありと感心した。

レジスタント・スターチ

腸内環境にはレジスタントスターチが良いとの声をよく聞く。 またレジスタントスターチかぁ?と言いつつ、その意味をぼんやりというか明確に理解していないで過ごしてきた。英語やカタカナで表現すると理解されない面もある。そこで自分なりに考えることにした。

腸内細菌(特にParabacteroides)の餌になるものとしてレジスタントスターチ、水溶性食物繊維、ポリフェノールがある。レジスタントスターチとしては冷飯、ジャガイモなどがある。水溶性食物繊維はお馴染みのオートミール、もち麦、ごぼうやオクラなどがありポリフェノールはココア、緑茶など読者の方々が多くの品種をご承知。

Parabacteroides goldsteine種は肥満抑制、血糖値改善のいわゆる善玉菌だけに“腸まで届くエサ”が重要になってくる。

自分は学生時代から社会人まで高分子材料に関係してきたこともあり、スターチ(澱粉)も高分子の仲間と考えている。プラスチックも高分子であるが主に石油由来を原料として重合により製品化されるのに対して、バイオ高分子はトウモロコシなどのバイオ原料由来である。デンプンもまたアミロースやアミロペクチンという長い鎖からなる天然の高分子材料で分類から言えば結晶性高分子。

結晶性樹脂の代表はポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなのであるが、結晶が溶融する温度までは非常に硬い材料で結晶が存在しているので不透明。一方、非晶性樹脂としてはポリススチレン、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどがあり透明である。お米は不透明なので結晶性高分子に分類されるのは理解されるでしょう。おかゆにすると水分子が分子をほぐすことで、透明性が増加する。そんな荒っぽい説明。

さて、

お米を炊く前に洗い、浸水、脱水、再度浸水、加熱の工程の中で澱粉は親水性なので非晶部分が膨潤(米粒サイズが大きくなり)、セルロースの分子の間に水が浸透することで、結晶が解け、乾燥した米粒であれば約230℃で分子が変形するところ(これをガラス転移点という、その温度では分解が同時進行する)、水が存在することでこのガラス転移点が炊飯温度以下になってふっくらと炊き上がる仕組み。(α化)

これでお分かりの通り、暖かいご飯の分子は結晶していないランダム分子構造であるから、胃や小腸で糖に容易に分解されてします。 ところが元々結晶性樹脂であるから、冷却されると再結晶が起こる。(β化)

結晶成分は胃では酵素の歯が立たないほど硬いので分解されずに腸内細菌が待つ腸に送られて徐々に善玉菌で分解されることになる。 胃では分解されない(抵抗性があるとの意味でレジスタントと呼称しているのだ)

これを理解すると折角の部分的に結晶化している“おにぎり”を電子レンジで温めることは勿体無いと思う。元に戻る。昼に作りだめしておいたパスタを冷蔵庫に入れて夕食の隅に置くことは理にかなっている。

ここで高分子屋から一言。冷却速度がポイントになります。 エッ!と驚かれる人がいると思いますが、窓ガラスは常温でもゆっくり分子が動いている。製造する時の冷却速度があまりにも急速度なので一応固化はしているものの本来の固まる温度を通り過ぎているので(過冷却という)分子は動いている。本来のガラス転移点に戻るまでは何千年もかかることから実用的に問題がない。 この話をおむすびに例えるならば「冷飯なら冷凍庫に」はこれと同じで結晶化が進まないで固まるだけに終わっている。なので腸までは届かないで胃が冷えるだけに終わる。その前に歯が立たないが(笑)このましい温度は4℃前後ですのでご参考まで。

深海底からレアアース。なぜ?

南鳥島6000m海底からレアアース泥を取り出したニュースは大きく報じられた。

なぜ南鳥島? なぜ深海? と改めて思った。10年前に東大が報告した当時は正直ああそうか的な印象だった。その後地道にパイロット規模まで開発されたことに頭が下がる。でも先の疑問は残ったままだ。そんな時にこの疑問に応えているかは門外漢だけに断定はできないが、面白い文献を見つけた。

信州大学が2026.02/24にリリース「深海底の泥にREE が濃集する鍵は魚骨類中の炭素にある?! ~魚骨類中のアパタイトにおけるREEと炭素の分布と存在形態から その関係性を探求~」 である(注REE:rare-earth elements通称レアアース)

概要と深海にレアアースが沈着し高濃度化するメカニズした図があるので紹介。

 REE(希土類元素)は、自動車をはじめとするハイテク産業において、不可欠な金属として知られています。近年、日本の南鳥島周辺で採取された深海泥には、魚の骨や歯の破片が含まれており、これに希土類元素(REE)が高濃度で濃集していることが明らかになりました。魚骨類にREEが濃集するメカニズムを解明することができれば、海水などの流体から効率的に希土類元素を回収する技術の開発に貢献することが期待されます。したがって本研究では、このREE泥中の骨片類にREEがどのように濃集しているかを詳しく調査しました。

アパタイト中の炭素がレアアース(炭酸塩)を引き寄せ、海底の温度、加圧(500〜600MPa = 5,000気圧〜6,000気圧の条件下でコラーゲンが分解しレアアースが残るメカニズムを提案されている。

歯科に関わる関係者であればこの500MPaの数字に敏感になるかも。CAD/CAM冠を成形する時の圧力と略同等である。緻密な構造体ができる成形法。

話は横道にそれた。

アパタイトは歯科には象牙成分として熟知しているところだが、骨もアパタイトが主成分であり背骨においては増血機能もあることから非常に重要である。その周囲に(炭素を含む)コラーゲンが緩衝材として存在している。

 

図ではレアーアース泥の中からアパタイト100%の歯と骨のCa,P,Y(カルシウム、リン、イットリウム)濃度を示している。確かに骨の方にレアアースが存在していることがわかる。

 

 

ここまでの説明で海底5000~6000mの温度は1℃前後。その温度でコラーゲンが分解するはずがない。人間の体温でも分解しないではないか。と疑問を持つ。

どうも南鳥島の今は現在の場所に存在するが、約3,500万年前〜4,000万年前には海底火山があるところからプレートに乗って流れてきたとの説を聞けば、なるほど海底火山では100〜500℃の熱水が噴き出しているのでコラーゲンは即分解するであろう。

魚が豊富で海底火山があるところは約3,500万年前〜4,000万年経つと新しいレアアース採取場になるのだ。壮大だが多くの人はそれを見ることはない。

それを待つことは現実的ではないので、大昔海底火山活動がありプレートの動きから現在ありそうな地域を探している。小笠原、ハワイ、チリ沖などは日本の試採取結果を注視していることは考えられる。 ロマンがありますね。

 

宇宙天気予報

太陽フレアとは何? 野球解説者の小西徳郎が生きていたら言いそうなフレーズ “なんと申しましょうか 野球ならビックイニングとでも言いましょうか黒点集中による爆発ですかね?” 呑気な話ではない

非常に大事なことを京都大学が教えてくれた。2026.02.06

太陽活動が地震の引き金になる可能性―電離圏と地殻の静電結合モデル―

要旨を引用すると

太陽フレアなどの太陽活動が電離圏に電子数密度の変動(電離圏擾乱)を与えるほど大きい場合、地震発生そのものを促す可能性があることを示す新たな物理モデルを提案しました地殻内の破砕帯と電離圏が「巨大なコンデンサ」のように電気的に結合していると考え、太陽フレアなどによる電離圏の電子数密度の変動(電離圏擾乱)が、地殻内部に電気的な圧力を生じさせる仕組みを理論的に示しました

事例として次の2つを紹介されている。驚きです。

  1. 2024 年1月1日早朝に大規模な X クラス太陽フレアが発生し、同日の夕刻(日本時間)に気象庁マグニチュード 7.6 の能登半島地震が発生しました。
  2. 2025 年 12 月 8 日の午後2時頃 X クラス太陽フレアが発生し、同日の深夜(日本時間)に気象庁マグニチュード 7.5 の青森県東方沖地震が発生しました。

電磁気に詳しい人は次の図を参照願います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電気に詳しくなくとも知っておくべきことを自分なりに考えた。まず、太陽フレアが発生すると強い電磁波(X線、紫外線など):約8分で地球に到達

高エネルギー粒子:数十分〜数時間で到達

コロナ質量放出 (CME: Coronal Mass Ejection):巨大なガスの塊。1〜数日で到達

この結果、

通信・GPS障害: 電離層が乱れ、航空無線やカーナビの精度が悪化する。

停電: 強烈な磁気の乱れが送電網に過電流(誘導電流)を流し、変圧器を壊す。

人工衛星の故障: 放射線によって衛星の電子回路がダメージを受ける。

最も身近な被害はGPS,通信障害、停電でしょう。

自動運転の車が出たとしても、位置情報が大幅にズレ、衝突・大渋滞が発生する。地図帳が読めない人はお手上げ状態。 物流トラックはストップ。 宅配ビジネスもスマホのナビで運用しているので届かない。

停電になると、家庭では冷暖房、IH調理器、電子レンジが使えないので、ポータブルガスコンロとボンベの用意の他、お湯だけで食べることができる食料に頼ることになる。 Suicaも利用不可。自動精算も不可。現金支払いの世界に戻る。もちろんEV車は動かない。 こんな状況でもマルチパーパスが有効なのかとトヨタ説が浮かぶ。

大袈裟ではなく、太陽フレアの周期は11年サイクルなので決して絵空事ではない。

一昨年に日本海側特に石川県ではオーロラが観測されたことが話題になったことがあった。今、宇宙天気予報の高度化が進められているとの情報もあり、「今日はGPSに頼らないで、地図帳を持参してください」「△△には〇〇を準備」などのアナウンスがされるかも知れない。

地震は地球内部のプレート衝突によるものは常識で下ばかりを見ていた。しかし、それは結果であって原因が遥か上の宇宙とサンドイッチされたコンデンサーの中に我々は存在しているとの見方の視野の広さに驚いた。地震の予測が今以上に精度が上がることを期待する。地震災害最小化策として、この研究に国家資金を投入してほしい。

暑い日の増加が高齢者認知症リスク増加

知人の企業が中近東に進出するにあたり、開所式に招待したいとの話があった。滅多にない機会だけに「もちろん参加」と返答。その1週間後に「最近の日本が酷暑とはいえ、中近東の暑さには耐えられないし、認知症になる恐れがあるのでやめた方が良いのでは」と連絡があった。

その人は次の文献を見たからと根拠を示してくれた。 東京科学大2026.01.08 リリース。「暑い日の増加が高齢者の認知症発症リスクを長期的に高める可能性 −気候変動時代に求められる高齢者の暑熱対策を示唆−」

このブログでも認知症と取り上げる機会が多いので、早速文献を見た。

要旨を引用すると 全国6万人を3年間追跡した結果、5〜9月に暑い日が合計30日あると、翌年の認知症発症リスクが40〜150%増加することがわかった。その影響が数年にわたり持続する可能性があることが示されました。

これまでの研究では、加齢に伴う体温調節機能の低下により、高齢者が暑さによって熱中症や脱水症状などの健康被害を受けやすいことが知られていました。本研究はこれに加え、気候変動によって増加する暑い日が認知症発症の増加にも寄与する可能性を示した点で重要です

 

 

 

 

 

 

 

図1. 暑い日の数と翌年の認知症発症・認知症発症または死亡のオッズ

理由は記載されていないが、逆にいえば熟知の理由なんだろうとは思う。

例えば、以下のことが挙げられる。

1)極端な高温(熱ストレス)にさらされると、脳内で炎症が起き、アミロイドβやタウといった異常タンパク質の蓄積が促進されること

2)夜間の気温上昇(熱帯夜)は睡眠不足になり、老廃物(アミロイドβなど)の排出を阻害すること

3)高齢者は喉の渇きを感じにくく、脱水症状から微細な脳梗塞や血管へのダメージを蓄積しやすい傾向があること

猛暑でなくとも2)3)は自分も感ずるところがある。水分を摂りなさいと耳タコ状態ながら白湯の味気なさから規定量摂取することは困難だ。

対策として 白湯にリンゴ酢、レモン果汁、梅干しの追加をしているが、AIによると生姜、鰹、昆布出汁も有効とのこと。 是非お試し下さい。

最後に妙な疑問があるのは、赤道直下の人々に認知症にならないのだろうか?

結論は「問題なのは「絶対的な気温」よりも、「本来の気候から大きく外れた異常な暑さ」だそうです。気候変動による急激な環境変化に、個人の身体や社会インフラが追いつかないこと」。赤道直下の人々にとっては温度が急激に変化することはないことと、昼寝(シエスタ)を設けることで無理をしないことなどもあり上手にカバーしているのだろうと思われる。

認知症レベルの数値化

国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)技術報告会で認知症の数値化として簡易にして精度の良い測定法を開発している発表をweb聴講した。

その前に、75歳以上の高齢者ドライバーは免許更新の前に認知症及び、運転能力の確認がなされるのでその風景を紹介する。認知症テストはA〜D組のイラスト集からなり、1組につき16枚の絵が相互脈絡なく描かれている。テスト会場ではA〜Dのどれかが選択され、スクリーンにその図が映し出され、受講者はそれを記憶する。覚えたところで記憶を消すような単純作業をしたのち、イラストを記憶しているかのテストがある。

16枚の絵は相互関係全くない。スクリーンを初めて見て、見た記憶を消すための作業をしたのちに元の見た絵を答える。結構厳しい。

ただし、抜け道がある。イラスト64枚は「今年のテスト」としてWEBで知ることができる。受講者は事前に64枚のイラストを色々工夫して記憶して会場に来られているのだ。涙ぐましい努力にも関わらず、テストが始まると会場は「う〜ん」「えっと何だっけ?」の声があちこちから出る。この風景からお分かりのように認知レベルを正確に数値として表現できるのは非常に困難。完璧に認知症ではないとは言い切れない事情も説明した通り、イラストを覚える語呂合わせを考えた知恵の差なのかも知れないのだ。

イラスト認知テストで合格すると運転技能観察を受ける。その時に見て驚いた。

坂道や段差乗り上げの途中でストップすべきところ、乗り上げ越えてしまう人。曲がる際にセンターラインをオーバーする人。一時停止が甘い人。このような高齢者が通常の道路をバンバン走行しているのだ。 この原因が認知症にあるとしたら、認知症測定をイラスト記憶方式から、より客観的に観察できるツールが必要だと思っていた。

認知症の検査として2つ紹介する。

2014年にノーベル賞を受賞した手法は脳内の嗅内野の変化をゴーグルVRで観察し定量化するものであった。(MIG株式会社導入) 発症20年前から予測が可能とのこと。

今回のJST報告会において、熊本大学・中村教授が発表した技術は6軸加速度センサーを腰につけて10m歩行をした際の歩行信号から認知症(特に中間領域M CI)の数値化が可能との報告。 発表資料からポイントを引用する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この両方の技術ポイントを表にした。

 

 

 

 

 

 

 

相互に補完したシステムが最適だと思う。認知症に関する医薬、または健康食品がある。これらを服用、摂取した効果を知るには、中村教授法がわかりやすいと思われる。装置が簡単だけに、いろんな場面で適用されると期待。

運転免許更新時に10m歩くほどで認知レベルが判定されるであろう。またVRとも組み合わせると医療機関にかかる前の健康検査としても有意義になるであろう。

JST報告会で発表者のお名前を見て驚いた。三菱化学(現ケミカル)で計算化学研究所長を務める傍ら東工大(現東京科学大)教授を兼務し、その後は理化研で特別研究室を立ち上げ、現在は熊本大学の教授の中村振一郎氏。 都度思う「彼は天才」

室内温熱環境と血圧の季節変動

冬の朝はできるならもっと寝ていたい。布団からモゾモゾ手を出してスマホで外気温度をみる。あぁ今日は気合いを入れて行かなくては!と覚悟する。次に室内温度と湿度計を見つつ起き上る。 室内温度が14〜16℃を示すと手は自動的にリモコンの暖房ボタンを押す。これが冬の朝の定番Cueその1。

読者の中には16℃だと!? 冗談言うな、もっとこちらは寒いぞ!とお怒り声が聞こえてきそうだ。建築基準が2022年に変更になり2030年に建築するときは省エネ基準変更に伴う断熱等級7が必須になるようだ。

断熱=省エネだけと考えがちだが、パナソニックホームと大阪大学が血圧の季節変動が起床時の温度と関係があるとの文献を発表した。これは日頃、血圧の基準値変更に一家言ある小生としても目を通さざるを得ない。

「パナソニック ホームズと大阪大学大学院医学系研究科の共同研究が国際誌に掲載 室内温熱環境と血圧の季節変動に関する研究成果」2026.02.04

要旨が表にまとめられているので、引用する。

 

 

 

 

 

 

 

研究者が以下のようにコメントを出している。

冬は心血管疾患の発症が多く、特に気温の低下による血圧上昇がその原因の一つであると言われて います。寒冷時での血圧上昇に関しては、生体が体温維持のために交感神経を活性化し、また熱放散抑制 のための血管収縮が生じるため、結果として血圧上昇をきたすことが知られています。

理由はわかった。低い寝室温度下でギリギリまで寝ていて急に起き上がり動いたら体としては、行動に対しては血流を多くする必要がありつつも収縮状態の血管では全体として高血圧になり末梢細い血管には血流が届かなる理屈になる。 次の図は非常に参考になる。

 

 

北海道では樹脂製窓枠の2重窓が一般的だが、北陸・京都あたりも普及してきた。だが全館暖房には程遠く、個別の暖房に依存しているご家庭が多いと思われる。タイマーで起床時には暖房されるようにするのがせめてもの対策。

 

 

 

 

 

ところで、文献の研究者が言われる交感神経とはわかっているようで自分は正確に知らないので調べた。それによると、自分の意志とは関係なく、24時間休まずに内臓や血管の働きをコントロールしている「自律神経」というシステムがあり、交感神経はその司令塔の一つで「体を活動モード(戦うか逃げるか)に切り替えるスイッチ」とのこと。 もう一つの司令塔は副交感神経。

交感神経: 運動中、仕事中、恐怖やストレスを感じた時など、エネルギーを消費して活発に動く時に働く。

副交感神経: 食後、睡眠中、リラックスしている時など、体を休めてエネルギーを蓄える時に働く。

 

 

 

 

 

 

 

忙しいビジネスマンは常に交感神経を酷使していませんか?

酷使すると反動がありますので時々は休憩や休暇を取ることも必要でしょう。

とは言え、悠長なことを言っておられない人もいることも事実。働いて・働いて・働いて・働いて・働いて・・・・わかり過ぎるほど分かるが、そこまでしたのは誰なのか。反省して・反省して・反省すべきだとは思うが、それが自分もその一人だと気がついたので副交感神経が命ずるところにより「今週はここまで」。

納豆の東西違いと糸引きレオロジー

この1週間、京都の家内の実家にいた。当方は毎日の朝食に納豆を摂っているので、普段は納豆を摂らない家族が気を利かせて納豆を用意してくれた。小粒でやや硬めの豆で撹拌してもネバネバ糸曳きが少ない。一方でやや甘い。

原料は同じく大豆には間違いがないが、まず5ミリほどの小粒が目に入る。なぜ小粒か?と聞けば小粒ほど表面積が大きいので納豆菌が多く付着する。なるほど。なぜ硬いのか? 大豆を蒸す時間を豆の弾力を見ながら調整するとのこと。蒸す時間が長く、発酵温度が高いとアンモニア風味がする(風味がボケる)らしい。知らなかった。水戸藩納豆と京公家納豆の違いとも言えそうだ。尤も公家が食していたのは大徳寺納豆だと思われるが、やや苦味が強く味噌に近い。一度京都を訪れたなら小粒納豆と大徳寺納豆をトライされたら文化の一端に触れるかも。

ここから、巷間言われていることにやや疑問に思っていることを取り上げる。

納豆を「100回、極端に500回混ぜると納豆キナーゼが増える」と宣う人がyou tubeなどで多く見かける。以前このブログで少し触れたが、

1)納豆キナーゼ量は工場での発酵処理工程でほぼ決定され、撹拌で増加することはない。物理化学で整理され、納豆キナーゼが増えるのは俗説。

2)糸引きはγポリグルタミン酸がメインでこの分子の間に擬似架橋成分の多糖類の一種であるフラクタンとの水素結合やイオン相互作用で架橋したように絡むことによる。納豆キナーゼではない。

3)それでは納豆キナーゼとは何か? AIに聞いた。

 

 

 

これでスッキリした。 そこで遊び心で 糸引きについて実験をしてみた。

・多糖類の代表である砂糖を配合。結果 強い糸引きが簡単に得られた

・お酢(りんご酢)を配合すると撹拌により空気を巻き込み、太い糸引きが得られた。

面白いので皆様その他をトライしてはいかがでしょうか。

糸引きの撹拌工程は食感改良にあるのだが、擬似架橋や架橋は工業材料に多く利用されているのは熟知の通り。納豆を撹拌しながら手応え(弾性率G‘変化)を想像するだけでも面白い。

擬似架橋を生成するには温度が重要な因子となることから、当方は冷蔵庫から納豆パックを取り出したら、約30〜40度程度の温水の上に浮かべる。その後に撹拌すると10回程度で強い糸引きが完成する。冷蔵庫から取り出し直後だと100回に相当する。これも皆様 本当かと試してみては如何でしょうか。

物理化学的にいえば、γポリグルタミン酸の分子間距離を広げ、フラクタン分子がその間に浸透し擬似反応する図が浮かんでくる。

γポリグルタミン酸のガラス転移温度は20度。この温度以下ではガラスのように分子が動かず硬い状態、20度以上では分子がクネクネと動きやすくなる。分子間距離も温度が高くなるほど広くなる。フラクタンが入りやすくなる。当方の実験温度と概ね一致する。但し、65度以上では納豆キナーゼが分解するので要注意。

自然は凄いことを実にサラッと(否ネバリ強く)教えてくれる。実に愉快ではないか。

乳幼児への絵本の読み聞かせ効果

東北大が36,000組の母子データを解析し、絵本の読み聞かせ頻度が高いほど3歳時点での発達スコアが高いことを発表した(2026.01.09)。 読み理解する能力が高くなる。その通り。と思って内容に目を通すと、意外な機能が発達していることがわかり、恥を知ると同時になぜだろうか?と考えた。

近くの市立図書館では別棟を乳幼児専用読み書き専用に改造。毎日ベビーカーが並んでおり、中では親子で絵本を前に読み聞かせしている風景がある。開所式にたまたま遭遇したが従来の乳幼児・低学年ゾーンから切り離して別棟を新改装した理由がこの文献で分かった。

まずは文献の発達スコアの事例を紹介する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほとんど読み聞かせがないより、週に1〜4回でも効果があることがわかる。

コミュニケーション、問題解決、個人―社会のスコアが高いのは理解できるが、粗大運動、微細運動って何? それが読み書き頻度に依存している理由は? について、文献を離れて考えた。

粗大運動とは全身を使った大きな動きであり、読み書きの中で聞き手(乳幼児)は絵本の人物、動物などの動き・身体イメージをして、いわゆる「真似っこ」していると言われている。絵本には「走る」「ジャンプする」「動物が動く」といった動作が数多く描かれている。子どもは読み聞かせを通じて、これらの動作を視覚と聴覚で同時に理解する。

鏡のように反応する脳に加え、小生は日本語に豊富な擬態語、オノマトペ(擬音語)が大きな役目を果たしていると思う。

ザァザァ、シトシト、シンシン、ドスンドスン、ぴょんぴょん、パクパク、モグモグ、など、言葉の響きに合わせて動きに強弱をつけると、脳が運動のイメージを把握する。

絵本の中で動物がザブーンと飛び込んだ、木に登ったなど方向を認知することで空間認知能力も向上するのはわかる。

次に、微細運動とは? 調べたら、手や指先、手首などの小さな筋肉を使い、「つまむ」「ひねる」「書く」といった細かく精密な動作を行う能力のこと。とある。

つまりは粗大運動を経て、箸を上手に使う、鋏を使う、積み木を壊さずに高く積み上げるなどが相当する。 なるほど理解した。 小学1、2年生と積み木で高いビルを作る競争をした。 丁寧に積み上げる途中で筋交を入れる工夫をする子、一気に高く積み上げバランス悪くやり直しする子。自分も仲間に入れてもらい組み立てたが、遅い!と指摘されてしまった。

単なる立方体の棒だが、丸い形状の汽車を作る工夫する子。これらを見ると頭脳がどうのこうのと言う前に、乳幼児時代の読み書きを通じて立体空間認識が大きく作用していることを理解した。 この調査では母子とあったが、最近は父子も読み聞かする風景が多くなっているように見ている。 微笑ましい光景だ。

先日、ある人と、論理的教育に重点おいている国が優れているのか?と議論したことがあった。その時の結論は情緒・人への配慮・和の心底があって、必要な論理能力を身につける方が全体としてパワーがあるのではないかと結論した。