PM2.5関連2つの文献から

PM2.5に関する文献を見たので紹介する。

1つは「PM2.5が日本の労働供給量を低下させていることを統計・観測データから実証 ~大気汚染削減が経済的便益をもたらす可能性~ 2025.07.28 広島大学、東京大学」

要旨は次のとおり

  • 微小粒子状物質(PM2.5)による大気汚染が、日本において労働供給量や出勤日数を低下させていることを統計データ分析することにより実証。
  • 仮に月間平均PM2.5濃度が1μg(マイクログラム)/m3上昇すれば、月間労働時間が一人当たり0.5時間減少(研究対象期間の日本の平均は13.5μg/m3)、これは全国年間あたりで7,600億円の損失に相当。
  • 先進国における比較的低水準の大気汚染であっても顕著な経済的損失が発生しており、さらなる大気汚染削減によって顕著な経済的便益が発生しうることを示唆。

なるほど経済面からのアプローチは斬新に映った。

だが、具体的な健康被害の内容を知りたくなった。一般的には長期、短期による曝露により疾病は変わるようだ。

・長期曝露による影響: 死亡率、特に呼吸器系や循環器系の疾患による死亡率が増加

・短期曝露による影響: PM2.5濃度の急激な上昇が、喘息の発作、心臓発作、脳卒中のリスクを高めることも確認されている。

労働者及びこれらの疾病をもつ介護は労働時間を短縮せざるを得ない。それが労働供給量として評価される時、PM2.5濃度と統計的実証されたとのこと。

  • WHOの2021年のガイドライン: 年平均5µg/m³、24時間平均15µg/m³。 閾値はなく低ければ低いほど良いとのこと。
  • 各国のPM2.5実績。カナダ: 約6 日本: 約9 アメリカ: 約7 イギリス: 約9 フランス: 約10 ドイツ: 約10 イタリア: 約14 G7でもWHOガイドラインを超えている。BRICS諸国は、中国: 約38(近年大幅に改善) インド: 約50 ロシア: 約9 南アフリカ: 約20 ブラジル: 約11である。
  • 最近便利な衛星観測では次の通り。

これらの数値は平均であり、工業地域、都市部、農村などにより異なり、かつ都市部匂いても自動車走行量の多い道路に面した居住では高いだろうと推察できる。因みに自室を測定したところ1〜2μg/m3  でAQI(大気質指数)では良好なので安心していた。

ところが、PM2.5の数値だけでは健康被害は整理されないとの文献が出た。この文献は最初の文献を見た時から具体的に何が作用しているのか知りたかった内容でもある。

PM2.5の構成成分であるブラックカーボンが 急性心筋梗塞のリスクを高める可能性 ~全国7都道府県・4万件超を対象とした疫学研究の成果~ 2025.09.05 東邦大学、国立環境研究所、熊本大学

PM2.5を構成するブラックカーボン、水溶性有機化合物、硫酸イオン、硝酸イオンの濃度を 7 都道府県(北海道、新潟、東京、愛知、大阪、兵庫、福岡)を対象とし、2017 年 4 月から 2019年 12 月までに急性心筋梗塞と診断された 44,232 例 を解析。(構成成分ごとの平均濃度と全体に占める割合は、ブラックカーボン 0.2μg/m³(3.1%)、水溶性有機化合物 0.7μg/m³(6.6%)、硝酸イオン 1.0μg/m³(8.9%)、硫酸イオン2.9μg/m³(23.7%)

  その結果

総 PM2.5 濃度の上昇に伴い急性心筋梗塞による入院件数が有意に増加することを明らかにしました。さらに、PM2.5 の主要構成成分の一つであるブラックカーボン(黒色炭素)(※1)についても同様の関連が認められ、心筋梗塞発症の新たな環境リスク因子となる可能性を初めて示しました。

(図 1:総 PM2.5 および構成成分の IQR 濃度上昇と急性心筋梗塞リスクの関連)

 

 

(図 2:ブラックカーボン濃度の IQR 上昇と急性心筋梗塞リスクの関連)

 

 

 

 

 

著者らは

「ブラックカーボンが心筋梗塞に関与する可能性のある仕組みとして、肺での炎症や酸化ストレスの誘発、血液中への微粒子移行の促進、腸内細菌叢(さいきんそう:細菌の集合体)の乱れ、自律神経や副腎機能の不均衡など、複数の経路が推測されています。」 と述べている。

この図は非常に示唆に富んでいると思う。

 高齢より若い人の方が。 性別では男子が、体格指数は低い方が、糖尿病を併発しているほど、脂質異常性(中性脂肪や悪玉コレステロール)がない方が(??)、喫煙歴がある方が、ブラックカーボンの増加率に対して心筋梗塞リスクが高くなる。

最初の文献において世界のPM2.5の数値と二番目の文献 心筋梗塞リスクを対比することにより、日本より過酷な環境で多くの人の労働力供給量も減少の負のスパイラルにあることを想像することができる。もちろん心筋梗塞以外の疾病も含まれるであろうことは推察できる。課題はわかった。化学技術者の出番だ。期待している。

植物性タンパク質 増加技術

1日に摂るべきタンパク質は体重の1.2倍。日本人は平均10%不足しているのが現状。シニアになるほど肉を摂るべきとは言うが簡単なことではない。年金生活では限度がある一方で畜産国においても地球温暖化影響で飼育を止めるところも出てきた。

タンパク摂取において需要供給両面で黄色信号が続く中、ノーベル賞相当の研究発表があった。

牛の飼料として利用されているトウモロコシ。 1年間飼育した場合のタンパク質はトータル餌のトウモロコシ1kg換算で5g。 それに対してトウモロコシを麹菌で発酵させると124g。発酵時間処理は4日と非常に驚くべき報告があった。お米も同様とあって、昨今の飼料米(古古古米)問題も貴重なタンパク源となるのではないか。

文献を紹介しよう。「日本の伝統食品”麹”を応用したタンパク質増産技術の開発 – 穀物を発酵させることで簡便にタンパク質を倍増 – 」2025.08.01 農業・食品産業技術総合研究機構

超要旨を引用する米およびトウモロコシにアンモニアや尿素等の安価な窒素化合物、その他の無機塩類、麹菌の胞子を混合して30°Cで静置し、4日後に培養物に含まれるタンパク質の量を評価しました。その結果、発酵前の米およびトウモロコシに比べ、タンパク質の量がそれぞれ2.3倍、1.6倍に増加しました。また、米やトウモロコシのタンパク質は、構成するアミノ酸のうち、必須アミノ酸であるリジンの比率が低いことが知られていますが、麹菌の発酵によってリジンの比率が高まり、タンパク質の質が向上することも明らかになりました。」

メカニズム及び効果は下図の通り

 

 

スケールアップが待ち遠しい。 日本のみならず、米国、中南米などの穀倉・牧畜産業に寄与することで人口ネックの地球を救う役目を麹菌が働く実の有益なことではなかろうか。

ところで、麹菌は日本酒(ついでお酢作り)、漬物などに古くから利用されている。筆者は毎朝の味噌汁には酒粕を配合。これにワカメや豆腐その他を入れている。酒粕に含まれるタンパク質の量は100gあたり15g前後とタンパク源サポート役としては十分に活用している。炊飯の白米の6倍に相当で良質な植物性タンパク質である。酒粕にはレジスタントプロティンという体内で消化されにくいタンパク質も含まれており、腸内を通過する際に余分なコレステロールを吸着する作用があると知られている。 この生活を少なくとも5年は継続している。久々にお会いする人からはお腹の出っ張りがやや小さくなったと言われることもある。“やや”にはお世辞のニュアンスも窺われるが、当の本人は気に入っている。酒粕には美肌効果があるようだが、そもそも荒れ果てた元が悪いので効果は不明(笑)。

EU自動車ルール

EUの自動車を巡る新ルールはEUに輸出する自動車メーカーおよびバックアップの研究機関にとって非常に多忙な夏を送っている。EUは次世代環境に良いエンジンはディーゼルだとしたものの、排気ガスデータが嘘と米国から指摘された。そこでCO2排出ゼロの電気自動車なら文句は言わせないとして、ガソリン車(ハイブリッドを含む)を1930~35年には廃止すると宣言し、BEV車を製造し補助金付きで市場に流した。

やがてEU各国の資金が底をつきそうになると補助金廃止。そこに安価な中国製BEVが登場するとあっという間に市場を席巻。補助金がなくても購入できる車体価格。欧州自動車メーカは二つの対策を出してきた。ここでは非関税障壁を取り上げる

・関税 対中国 従来の10%を最大45%に(対日本は現在10% 7年かけ0%、対EU,米国への関税0)

・EUのグリーン・ディール政策(イコール非関税障壁)

これらの影響を大きく受けるのは日本、中国。そしてEU国民。日本・中国はわかるが、なぜ理想的な環境を作るための規制がEU国民を苦しめるのか? それはとどのつまり、これらの諸政策が実現した時の車両価格を想像するだけで納得できるだろう。

 BEV新車価格及び電気料金維持費で家庭の可処分所得をオーバーしており、さらにリサイクル費用・クルマ設計・新ライン償却費 が価格に転嫁される。長期にそれまでのエンジン車やハイブリッド車を保持していると「リサイクル社会に適さない人だ」と言われかねない。やがてEU域内の自動車工場停止、社員リストラ 社会貧困化につながる懸念もある。

米国車はEU市場では販売量がごく僅かなので対策は何もしない。それどころか米国トランプ大統領はCAFÉ(自動車メーカーの平均燃費を規制する制度)GHG(温室効果ガス)規制の今後の計画は見直し(廃止の方向)で動いている。BEVのカーボンクレジットで巨大な利益を獲得したテスラは今後クルマを製造するより、溜め込んだ100兆円を自動運転などのソフトに注ぎ込む模様。

クルマメーカーは種々の規制を設けられてもパスできる技術・資金・経営方針を十分活かしてクリヤーできるか、それともクルマ製造をやめソフト開発企業に転身するかのどちらかに絞られるであろう。 もっともEU国民は冬場のBEVに閉口し、日本勢のハイブリッド車の販売量が増加。さらに日本の軽自動車が紹介されると、これだ!と一種のブームとなっている。

クルマに限らず、理想実現には衣食住(+医職)を満足してからの話だろうと思う。 地球温暖化は確かにある。中国、日本、インド諸国は猛暑に襲われている、但し欧州は逆に冷夏。温暖化の原因は単なるCO2のみではないが、無理やり自国の都合に良いようにルール変更するのはアングロサクソンの特徴といえば言い過ぎだろうか。

脚の筋肉量の観察と維持には

酷暑となれば男子たるものビジネス以外ではショートパンツも致し方ない。昔はスネ毛モウモウが今は脱毛処理を若い人はしている。一方、中高年となるとそれがないだけに不潔感あり状態。電車でその人がいたら空いていても横には座ることを躊躇する。超高齢者となるとまるで身欠ニシン状態か骨皮筋右衛門状態の人もおられる。心配なのは超高齢者の脚だ。脚だけでなく腕、肩も筋肉が少なく、血管が浮き出ているので、点滴するには便利だなぁと眺めているほど。点滴の前にフレイルとなりいずれ歩行も具合が悪い状態になるだろう。

ふくらはぎが細くなったら筋量減少のサイン —世界初!ふくらはぎ周囲長の変化と筋量の変化の関係性を縦断的に検討— の文献がある。2025.06.26 明治安田厚生事業団、早稲田大学、上智大学、桜美林大学

 

 

 

 

 

(補註:DXA法(デキサ法)は、骨粗鬆症の診断に用いられる骨密度測定法の一つで、X線を用いて骨の密度を測定)

ふくらはぎ周囲長さの変化で筋量変化がわかるというもの。多くの人は「そりゃそうだろう」と思う。骨粗鬆症の診断に病院に行くまでもなく、脚を見れば筋肉の有無はわかる。調査するならば相関が取れたあとの解析として変化が少ないか増えた人はスポーツとか食事の特徴は何か、減少している人の生活状態とはどのような関係があるのなど追求があって欲しかった。

本年が戦後80年だけに少し真面目な話。思うのは南方の戦線で降伏捕虜となった男の痩せた写真だ。見た目、筋肉は限界まで削ぎ落とされている。食・医薬品の兵站(供給路)が立たれ、精神的に追い詰められた環境の結果だ。良い過去のデータがある。 戦後の食(タンパク質)の改善があり身長体重が増加した。筋肉量維持には食ファースト。二番目がスポーツだろう。

 

高齢者でもふくらはぎ部がハリがある人に出会うと、初対面にも関わらず質問してみる。毎日10kmジョギング、階段を何往復などトレーニングしていることを認めてもらったとあって嬉しそうに教えてくれる。 それに対してウオーキングは人並みにしているものの、我がふくらはぎは皮下脂肪膨潤状態。 なんとかならないか調べた。

ものの本には「ふくらはぎの筋肉量を増やすためには、ふくらはぎの主要な筋肉である「腓腹筋(ひふくきん)」と「ヒラメ筋」を効果的に鍛えることが重要です。」とある。 ご参考まで。 ちなみに You tubeには多く紹介されている。https://www.youtube.com/watch?v=VJ0evXb_J7w

ふくらはぎを鍛える筋トレメニューを以下にまとめた。まとめたら自分も行動しないといけない。でも一人ではしない言い訳でいつか止める。ただ、このブログをお読みの方がやっておられると想像すると続きそうな気がする。

  1. カーフレイズ (Calf raise:「ふくらはぎを持ち上げる運動」)

立った状態で行う「スタンディングカーフレイズ」と、座った状態で行う「シーテッドカーフレイズ」がある。

  • スタンディングカーフレイズ: 主に腓腹筋に効果がある。
    1. 壁や椅子の背もたれに手を添え、足を肩幅に開いて立つ。
    2. ゆっくりとかかとを上げてつま先立ちになる。
    3. かかとを上げきったら、1〜2秒キープする。
    4. ゆっくりとかかとを元の位置に戻す。
    • 回数の目安:10〜20回を3セット。
  • シーテッドカーフレイズ: 主にヒラメ筋に効果がある。
    1. 椅子に浅く座り、膝を直角に曲げる。太ももにペットボトルやダンベルなどの重りを乗せるとより効果的。
    2. かかとをゆっくりと上げてつま先立ちになる。
    3. かかとを上げきったら、1〜2秒キープする。
    4. ゆっくりとかかとを元の位置に戻す。
    • 回数の目安:20回を3セット。
  1. ドンキーカーフレイズ

上体を前傾させることで、より腓腹筋に強い刺激を与えることができる。

  1. 膝の高さ程度の椅子や台に両手をついて前傾する。
  2. 背筋を伸ばしたまま、かかとをゆっくりと上げる。
  3. かかとを上げきったら、1〜2秒キープする。
  4. ゆっくりとかかとを元の位置に戻す。
  • 回数の目安:10回を3セット。
  1. アンクルホップ

ジャンプを繰り返すことで、ふくらはぎの瞬発力を鍛えることができる。

  1. 足幅を拳1つ分ほど開けて立つ。
  2. かかとを浮かせたまま、膝を軽く曲げてつま先で地面を蹴るようにジャンプする。
  3. かかとは浮かせたまま、つま先で着地する。
  4. この動作を連続して繰り返す。
  • 回数の目安:10回を3セット。

CCS(二酸化炭素・回収・貯蔵)その2

3年前の環境展ブースでCCS! CCS!CCS!と若い説明員の叫ぶ声に釣られブース前に足を止た。パネルにもCCSのだけの記載で略語の内容が記載されていない。まさか来場者にCCSを知らない人はいないだろうの態度に驚いた。若い人にありがちだが。

そこで何?と質問したところCO2を地底に送り貯蔵するシステムだと教えてもらった。 概要は理解したが、この若い人の情熱先行だけでは広い理解を得られるのか疑問を持った。今年の展示会では説明される人がシニアの方で詳細に最近の情報を教えていただいた。 苫小牧の実証プラントにおける実験データ、海洋への影響など実用データが蓄積され実証プラントが成功していることも反映しているとみた。

詳しくはパンフレットの一部を紹介する。 同時にCCS稼働・実験数は圧倒的に米国が進んでいることに驚いた。 アメリカファーストで環境問題は後回しだと勝手に思っていた。意外や意外。 その進んでいる米国から意外な報告があり、東京大学が原因追及した。

意外な報告とは予想より早い時間で貯蔵が進んでいる。それに対して東京大学は地底の火成岩(多くは玄武岩)とCO2が水を介しないで瞬時に反応固定するメカニズムを発見したとのこと。 文献:「火成岩がCO₂を瞬時に固定:新しい鉱物化メカニズムの発見」発表:2025.07.14 一旦CO2は地下水に溶解してから数百年かけて玄武岩と反応するものだと言われていたことを、先端的な分子動力学シミュレーションを用いてCO₂と玄武岩の反応を原子レベルで解析。 反応式をご参考まで。じっくり眺めると面白い。

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、東京大学では大気のCO2が貯蔵される濃度について報告がなされている。

文献;大気中のCO₂を地中に貯留するには“CO₂純度70%” がカギ!
 ―貯留可能なCO₂の純度限界を分子レベルで解明― 発表:2025.07.17

苫小牧の実証プラントでは石油精製プラントからのガス中の不純物をアミン処理などにより除去したCO2を貯蔵埋設しているが、大気中のCO2をダイレクトに地中貯蔵埋設できないか、これもシミュレーションした結果、最低70%あれば可能とのことで、100%にしなくても良いとなると経済的にメリットがある。これも有用な研究だと思う。

話は冒頭の展示会ブースでのプレゼンの仕方に関して、先週開催の宇宙展で思わぬ人に出会った。

京都大学教授(現在は龍谷大学)。人工衛星を木材で作るとして小型見本を前に説明を始められた。将来地球外に居住する際に木を植林するか地球から運んで建築物を作るのだと。 誰しもそんなバカなと思いつつ先生の話に引き込まれる。現在の人工衛星が落下するときに燃えずに(ディブリが)地球(赤道軌道上)にドーナツ状に浮遊する。落下衛星の数は数十万にも及ぶ。アルミナは燃え尽きると思いきや燃え尽きず、太陽光を反射することで極冷感の地球環境も想定される。20年後にもその危険が訪れるとの話になると、木材で人工衛星を製作する本当の意味を理解した。教壇や研究室で若い人に接するときに、思いを理解させることに工夫をされたのであろう。お見事。

シニアこそ楽器を始めよう

このブログで時々出てくる仲間内の話。 企業・大学を定年退職した後も活躍をされている人の集まり。最新技術の発表+飲み会がパターン。筆者には年齢とレベルが違いすぎるので参加資格はないが、飲み会の会計など世話役で加わっている。平均年齢は80歳を超えているが、皆さん非常に元気。過去の話ではなく最新技術をこの会で知るとは不思議な思いさえ覚える。次世代半導体、立体映像技術、量子コンピューターなどの発表など若い人も顔負け。でも活躍されている人に共通点がある。1つはスポーツ 特にテニス 2つ目は楽器演奏を嗜まれている。楽器ではマンドリン、オカリナ、三線(沖縄三味線)。若い時から継続している訳ではなく、仕事一筋でできなかったのを退職で余裕が出た時から始めた人が多い。個人的に先生に師事しての練習と気合が入っている。

そんなとき、継続は力:高齢期に始めた楽器練習の効果―4年の追跡研究で見えた脳・認知機能維持― 京都大学が2025,06,30発表。

超要旨は高齢期(平均年齢73 歳)に始めた楽器練習を継続することが、4 年後の認知機能、脳構造、脳機能の加齢による低下を防ぐことを示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで、ワーキングメモリとは、一時的に情報を保持しなから、その情報を処理・操作する脳の機能のことです。会話、読み書き、計算、買い物、料理、物事の段取りなど、私たちの日常生活や学習におけるあらゆる認知活動で、情報を保持しながら処理するワーキングメモリの機能が欠かせません。しかし、ワーキングメモリは加齢による影響を受けやすく、高齢者では若い時に比べたワーキングメモリ機能の低下が一般的です。

Right putamenとは

統計的には人数を増やす必要があるように思えるが、これでも途中でやめた人より継続している人の方がワーキングメモリが高いことは確かである。かつMRI画像で右半球の被殻の灰白質体積の減少が少ないことで裏付けされている。

でもなぜ楽器練習を継続することができるのか、それとも止めるのか。そこが知りたいが、この文献の研究範囲ではない。そこで継続している人の意見を聞いた。

まず挙げられたのが、精神的な充実・向上心。サークルなどへの参加による社会的なつながり、何より重要なのは発達途上を家族が許して(我慢?)いることとのこと。

途中でやめる理由を想像するに 目が弱くなり楽譜が読めない、指、肩、足がスムーズに動かない、先生との相性がネック、先生への謝礼金や楽器購入の金銭的余裕ないなどだろう。

もう一つ、戸建てで隣人に迷惑をかけない居住。蛙が共演するような環境ではなく都会のマンションなどではどうしても「上手になりはったですね〜」と嫌味を言われるとやめざるを得ない。

そんなこともあり筆者は吸音・遮音の新コンセプトを作り開発を進めている。なぜなら、筆者の部屋にはピアノがあるのだが単なる置物化している。ピアノにも申し訳ないのだ。

カフェインと運動パフォーマンス

コーヒーとウオーキングが習慣の筆者。コーヒーは2〜3回/日。多くは作業の始めか終わり。何ら間違っていないと思っていた。ウオーキングは酷暑時間帯を避けるか帽子か日傘を刺しながらの状態。見た目はカッコ良くはない。

今回の文献を見て驚いた。タイトルは「暑熱下では運動中のカフェイン摂取によりパフォーマンスが向上する」 筑波大が2025.6.25にプレスリリースした。

超要約すると①運動前にカフェインを摂取すると、運動時の過換気(呼吸)や脳血流量が減少する。② 運動中にカフェインを摂取すると、①の問題はなく、運動後半に更に強い運動においてパフォーマンスが向上する可能性を見出した。

というもの。何故、運動前にカフェインを摂取すると具合が悪いのかの説明もなされている。それによると「暑熱下での運動前にカフェインを摂取すると、深部体温上昇に伴う過度な呼吸(高体温誘発性換気亢進)や、それに起因する脳血流の低下反応などの生理的ストレスが増大する」

なるほど。納得した。図がわかりやすい。だが、実験条件を見て驚いた。

気温35℃では運動、外出は抑えるのが普通。外出・運動する際には途中でコーヒーを摂取すれば良いのか?とハヤトチリは厳禁。この実験ではトータル30分の運動である。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでコーヒー1杯中のカフェイン量をチェックする。淹れ方で変わるが大凡は以下の通り。

種類                  1杯あたりの量              カフェイン含有量

ドリップ              150ml                         約90mg

インスタント       2g(お湯140ml)           約80mg

缶コーヒー           1本(約185g)             90~160mg

エスプレッソ       1杯(約30ml)               50~75mg

この文献は体重1kg当たり5mg 摂取。 体重が60kgであれば300mg のカフェインとなる。これをドリップコーヒーでは3.3杯 500ml を摂取。エスプレッソなら128ml となる。コーヒーでは満腹状態になって、摂取後の運動は厳しい。

なのでカプセルになるのだろう。1カプセル当たり100~200mg含有が一般的。接種の容易さの反面。1日の摂取量は上限400mgなので要注意。仕事で頑張る必要があると言って短期間に過剰接種すると、めまい、心拍数増加、吐き気、震えなど不具合があるので要注意。

「過剰頑張りは無駄どころか健康にもよろしくない」「集中はせいぜい30分」と勝手な言い訳を作り、このブログ作成も30分に近づいてきたので(本当は20分)、コーヒーを淹れることにした。

尚、夏場の外出に携行必須は水。PETボトルに水と天然塩を入れシャッフル。天然塩は知人からよく頂く奄美大島の加計呂麻(かけろま)の塩。これだけでも実に美味しいが、少量のオリゴ糖を配合するとスポーツドリンク風になる。お試し下さい。PETボトルをラッパ飲みすると口内雑菌が付着することから、使用後は洗浄・殺菌が必要なのでご注意されたい。

株主優待の誘惑?

6月〜7月にかけての株主総会が開催され株主には配当の連絡がある。株には疎いがお客様との縁もあって少しだけ所有している。今回、配当のお知らせと同時に株主優待の紹介があった。製薬・食品関係であれば特価で購入できるなどが優待であるのだろう。運輸関係では無料乗車券などを知人は利用されている。

今回の案件は、配当とは別に優待として各種グッズのほかに現金をスマホwalletに入れると言うもの。スマホ所有していない人は対象外。たまたまsuicaをwalletに入れていたので応募することにした。当該会社独自のクレジットカードは所有していないが利用できるとガイドに記載があったので早速作業開始。

案内状が来た日に早速トライしたがアクセスできない。魅力あるグッズ・サービスは若い人には人気だけにアクセスが集中しているのだろう、深夜までアクセスできない。若い人は25時でも起きているのだろうとして諦め。 午前5時に起床しアクセス。アプリをインストール、スマホ・ウオレットに紐付けをすることができた。

ただ、パソコンやスマホに習熟していない高齢者はこの段階で諦める人が出るであろうほどに厄介な作業。 この段階ではまだ優待金額は振り込まれない。当然のことながらカード会社・銀行との紐付けが必要。続けて作業をする。

ここでも対象カードがなくても可能と記載があり、その手順に従って進めるが元に戻る循環ループで先に進めない。結局、カードを申し込む必要があるのが結論。 上手い!見事な罠。 株発行会社一体のカード会社に誘導されてしまった。今後そのカードを使用する機会がないとも言えないこと、維持費考えるといずれ逆転するのだが。優待金額に目が眩んだ。

わかっちゃいるが、ここまで来たからには止められない。カードを作り、後の操作を実行。漸く振り込み作業のコード番号が送られてきた。コピペするも動かない。手入力だ。アルファベットと数字の組み合わせからなるコード番号。 ここでトラブった。0とO,(ゼロとオー) 1とI及びl (イチ、アイ、エル)のフォントが紛らわしい。多分これだろうとトライしたがトライ数の規定数に達したとしてアクセスできなかった。24時間後に再トライで漸く振り込み完了。

この操作を通じて、① 優待の形だが、企業はその後にカード使用による利益を上げることができる。 ② スマホ所有していないか、操作に不慣れな高齢者(高齢者ほど株所有数が多いと思われる)は諦める。その分 優待金は企業から出て行かない。手続きは厄介だけど憎めない企業であることは確か。③今はスマホ取り扱いになんとかついていっている。だが、たとえば高性能ダイヤモンド半導体が民需化されると通信能力が圧倒的に変化し、次世代スマホは従来とは恐らく違うシステムやアプリが適用されるであろう。

ついていけるか自信はないが、認知症予防には有効かも。一方で、今回の作業時間に対しての優待額のバランスは良くない。その時間で他に有益なことをすれば優待の金額を超えたのではなかろうかと反省。それはデジタル音痴の言い訳にすぎないのだが。

培養肉

大豆を原料とした代替肉について以前このブログで記載した。横浜地下街にあるお店で食べた唐揚げは本物と見分けがつかない繊維筋と味。これには驚いた。一方で当時はカツ豚などでは本物とはやや違うなぁと思った。その後は試していないので、ブログを書くにはエビデンスが必要とあって確認をしてきた。その結果は唐揚げメニューは健在だが、カツ丼は豆腐カツカレーになっていた。ユーザーの声を反映したのだろうと推察。 その一方で 牛肉、豚肉の味を求めるには再現は時間がかかるとみた。

そのようなとき、植物性原料由来の代替肉を猛追するであろう技術が東京大学から発表があった。

培養肉の「味成分」は熟成で増加――分化と熟成がもたらす遊離アミノ酸変化を解明し、味制御へ――  リリース2025.05.23

超ベテラン寿司職人などは経験的に知っているのだろうが、旨み成分の遊離アミノ酸の経時的変化をLC-TOFMS(液体クロマトグラフ飛行時間型質量分析による微量測定技術を活用してFAAsの動態を精密に捉えた点で新規性がある。筆者もLC-TOFMSを別の実験で分析依頼をしたことがあり、その性能には驚いた。

早速本文からポイントを引用する。(下線部)

本研究では、ウシ筋肉由来の細胞を用いて、分化や熟成といった工程が細胞内のFAAs量と組成に与える影響を、最新のLC-TOFMSにより詳細に解析しました。まず、筋芽細胞(myoblast)とそれを分化させた筋管細胞(myotube)を比較した結果、分化によって細胞内のFAAs量が一時的に減少し、タンパク質合成が促進されることが示されました(図1)。しかし、その後4〜14日間にわたって低温下で保存する熟成工程を経ると、タンパク質が分解され、FAAs量が再び大きく増加することが明らかになりました(図2)。特に熟成過程では、苦味系・甘味系アミノ酸の顕著な増加が観察され、これらが熟成に伴う味覚成分の強化に寄与していると考えられます。

 

 

 

 

 

 

ここで改めて「培養肉」とはなんぞや? 文献注釈には「動物から採取した細胞を体外で培養・分化させて作る肉。環境負荷や倫理的課題を低減できる持続可能な食肉代替品として注目されている。」とある。

 

読者の皆様は元の動物(牛・豚)を殺傷しないのなら本当に有益だとお考えだと思うので、本当にそうなのか調べてみた。

培養肉は、動物を屠殺することなく、その体の一部から得た細胞を体外の管理された環境で育てて作るお肉。基本的な流れは「細胞を採取」→「増やす」→「育てる」→「組み立てる」というステップ。

  1. 細胞の採取(バイオプシー)

まず、生きた牛からごく少量の筋肉組織を採取。これはバイオプシーと呼ばれ、局所麻酔をして行うため、牛への負担は最小限に抑えられる。採取する量は、ゴマ粒数個分程度のごくわずかな量。この小さな組織片の中に、筋肉の元となる筋幹細胞(サテライト細胞とも呼ばれる)が含まれている。

  1. 幹細胞の分離

採取した筋肉組織から、目的の筋幹細胞だけを酵素などを使って丁寧に取り出す。筋幹細胞は、筋肉が傷ついた時に新しい筋線維を作る能力を持つ特別な細胞で、培養肉生産の「種」となる。

  1. 細胞の増殖

分離した筋幹細胞を、培養液が入った「バイオリアクター」と呼ばれる大きなタンクの中で育て、数を増やしていく。

  • 培養液: 細胞が成長するために必要な栄養素(アミノ酸、糖、ビタミン、ミネラルなど)が豊富に含まれた液体。これに「成長因子」を加えることで、細胞分裂を活発に促す。かつては牛の胎児の血液(ウシ胎児血清)が使われていましたが、コストや倫理的な観点から、現在は植物由来成分や微生物が作り出す成長因子など、動物由来でない代替品の開発が進んでいる。
  • 環境: バイオリアクター内は、牛の体内と同じ約37℃に保たれ、衛生的な環境で細胞が効率よく増殖できるように管理される。

この段階で、ごくわずかな細胞が、理論上は数千キログラム分のお肉になるまで増殖する可能性がある。

  1. 筋肉への分化

十分に数が増えた細胞を、筋肉の細胞である筋線維へと変化させる。これを分化と呼ぶ。分化を促すために、培養液の成分を調整したり、細胞に穏やかな電気刺激を与えて筋肉の収縮を模倣したりする。このプロセスを経て、細胞は細長い筋線維へと成熟していく。

  1. 組織の構築

分化してできた筋線維を、肉らしい食感や構造を持つ立体的な組織へと組み立てていいく。この時、足場(スキャフォールド)と呼ばれる、食べられる素材でできた立体的な構造物が使われることがある。

  • 足場の素材: ゼラチンやコラーゲン、またはコンブや大豆など植物由来の成分で作られた、網目状やスポンジ状のもの。
  • 役割: 細胞がこの足場にくっついて成長することで、バラバラだった筋線維がまとまり、肉本来の弾力や歯ごたえが生まれる。

また、筋細胞とは別に培養した脂肪細胞を混ぜ込むことで、お肉の風味やジューシーさを再現する研究も行われている。

  1. 収穫と仕上げ

最後に、出来上がった肉の組織をバイオリアクターから収穫。初期の培養肉はミンチ状のものが主流だったが、技術の進歩により、ステーキのような厚みのある構造を作る研究も進んでいる。収穫された培養肉は、通常の肉と同様に調理して食べることができる。

以上のプロセスを経て、1頭の牛から採取したわずかな細胞から、大量の牛肉を生産することが可能になる。

この補足説明はいかがでしたでしょうか。 展示会の外でビーガンメンバーが肉を食べないよう声高く訴えている風景を見る。今回の培養肉の製造プロセスを知ることで、考え方や行動が変わるのではないか期待。但し、コストについては調べた範囲では不明。 牛のゲップで地球温暖化の原因である炭酸ガス発生量の3割を占めるとの話もあるので、コストカットへの補助金に捻出しては如何かと思った。 スキャホールドには大豆など植物性素材も利用となんだか「ハイブリッド」がここでも通用しているのは面白い。

ギグワーク

偶にバーガーショップに入ることがある。カウンターには店内用、持ち帰り用、に加えてフードデリバリ用と区別されて商品が置かれていく。フードデリバリの人の強靭な脚を見ると相当の運動量をこなしていることが分かる。同時に、このジャンクフードのデリバリで一体収入はどうなっているのか?も余計なことながら思う。また、この仕事を続けても身につく技術はないはずなので、然るべき職業に就いた方が良いがとこれまた余計なことを思う。

そんな時、とんでもない文献が発表された。タイトルは「景気変動とギグワーク 銀行データで見えた新しい就業のかたち」 (早稲田大学 2025.6.27リリース)

その前に、筆者が知らなかったワード:ギグワークのギグ(Gig)とは音楽用語で「一度だけの演奏」を意味する「Gig」と「仕事」を意味する「Work」を組み合わせた言葉。雇用契約のアルバイトとは異なる。 恥ずかしながらギグをギガバイトならぬギガワークと読み違い。

文献のポイントは

  • みずほ銀行口座(匿名加工)を持つ個人がどのような預金残高でギグワークを開始したか
  • ギグワーク開始時点での預金残高が10万円未満。コロナ禍では女性や中高年も就業していた。とのこと

ギグワーカーはみずほ銀行だけに口座を持っているだけではないだろうとツッコミしつつ、預金口座10万円以下ではなんとか即刻換金できるフードデリバリなどに参入するのも分かる。 AIにギグワークの収入について聞いてみたところ、諸条件はあるが副業としてなら5万円/月。 本業としては30万円〜50万円だとのこと。結構の額だが、都会ならばこそ利用機会に恵まれ、土日もなく、雨の日もなく働いた数字とのこと。 病気になってはいられない。厳しい。

ちなみにギグワークにはこの他に配達代行 運転代行 家事代行 写真撮影 引っ越し作業 ポスティング(チラシ配り) 単発バイト 記事ライティング イラスト作成オンラインレッスン コンサルティング カウンセラー 翻訳などがあるとGai work社HPに記載があった。 レベルが違うが確かに単発であればこの範疇に入るのか。

以前なら出前はお店の人が配達をしていた。それを部分代行しているだけと言われればそうだろう。しかし単に配達とは言えない業態もある。それは家庭で祝い事をするときに料亭から料理をとることがある。料理はもちろんのこと食器の取り扱いも習熟した料理人が運んで配達先の家庭でセットする。ただし少し前までは。

インバウンドが増えたことで家庭お祝い程度サイズの市場規模には経済的合理性が低いと判断され、特に京都では姿を消した。調理人の仕草を真似しながら膳を整える楽しみがある文化が消えたのは至極残念。

それにしても、驚いたのは銀行の個人資産管理状況を垣間見たこと。住宅資金調達する際の判断として、預金額はもちろん将来の返済能力が判断材料となる。その際に入金振込先としてギグワーク利用会社が相当の割合を占めていたら、如何なことになるのであろうか。

シニア層が足らない年金をギグワークで補填と考えても継続が困難だろう。先日、朝7時に有人のガソリンスタンドで給油した。「15リッター、アプリ支払いでお願いします。」係の人は65〜70の人で動作が遅いのはしょうがない。確認の返事は「ハイオク満タン入れまーす!」 ボケなのか本当に聞こえなかったのか? ボケでこちらが乗ってきたらシメタものか。でも、アプリ支払いで係の人はフリーズ。時代にあう技量知識が求められる。 ギグワークも甘くはない。