2022年 7月 の投稿一覧

菌のスポンジ培養&蚊が好きな色

サイエンス雑誌はエビデンスがあり有識者による査読があるので安心して読むことがわかる。(当時のレベル範囲内であることに留意しての前提ではあるが)。 雑誌記者の腕の見せ処の一つにタイトルで人を惹きつけることにあるとすると、今月の日経サイエンスには2つの記事に編集者の意図が生きた。何故か。科学に縁遠い人であっても、生活に密着した記事だったからである。(日経サイエンス8月号)

1つ目のタイトルは「細菌の培養は台所スポンジで」。微生物学で菌の培養といえばシャーレに寒天など菌の栄養となるものをセットし、そこに菌を置き恒温チャンバーにて2〜3日培養して、菌数の測定、顕微鏡による形態観察をする。そんな風景がTVで放映されているのはお馴染みだ。

タイトルにある台所スポンジが培地!?? 食器洗いはケミカル出身だけに得意の一つであるが、使用後は水切り、自然乾燥。スポンジの交換は1回/月程度。この文献通りだとすれば、食器から食器へと菌があれば移動させていたことになる。あ〜ぁ怖い。食器洗浄機での加熱処理が好ましいことがわかる。スポンジも見直さないといけない。

 

微生物学者の悩みは実験室では増殖しない細菌種をいかに培養するかであり、細菌の好みに合う棲家としてスポンジの多孔質が適していることを発見したとのこと。発泡体の製造には物理発泡と化学発泡があるが、いずれも孔のサイズは均一に見えても細菌から見れば多種多様サイズの部屋が用意されており選択の自由度が高いのか。孔の分布、孔が連通しているものなどある。弾性があり微細孔のウレタン発泡体は洗剤で落ちないところを擦ることで綺麗になる重宝しているが、使用後も再度使えるとあって、汚くなっても何故か保管している。皆さんのご家庭では毎回新品をお使いだと思うが、表面から半分程度を切り取り即捨てることにした。そういえば、最近は目が極めて粗い発泡体が出始めた。何か関連するのだろうか。

 

最近、知人が細菌撲滅研究に凝っている。分析を専門機関に依頼すると回答まで時間がかかり、高額であり、実験点数に支障をきたしていると相談を受けた。スポンジでの培養はできてもその後の処理が門外漢には無理。そこで思い出したのは熊本大学が微生物検査シートによる空中浮遊菌の検出した文献(Earozoru Kenkyu vol.30 2015)

当時はJNCのサニ太くんを使用していたが、今は食品用のMC-Media Padとして商品化されている。一般菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、真菌(カビ)、サルモネラなどの専用シートがある。

詳しくは同社HPを参照願いたい。100枚シート入り1万円前後と安いのも助かる。同社の宣伝ではないが、筆者は過去において、ケミカル他社の研究・技術者を横串で連結することをしていたことがあり、当時の仲間の業績なので取り上げた次第。

ところで、電車ではよく「抗菌」の文字を目にする。除菌、殺菌、減菌、消毒、無菌って区別していますか? 抗菌:菌が今以上に増殖しないようにすること。除菌:石鹸などで洗い流すことで菌数を減少する 殺菌:微生物を死滅させることであり量的な条件がない。消毒:人畜に有害な微生物(対象微生物)だけを殺滅する(生存微生物の数を減らすこと)、減菌:すべての微生物を殺滅、除去する行為でSAL10-6 の規格がある。無菌:生育可能な微生物が存在しない状態。医療関係者はこの区別を遵守している。注射器、手術器具などはγ線照射かEO(酸化エチレン)処理をして減菌、無菌状態にしています。筆者はγ線照射によるプラスチックの製品寿命と殺菌の両方を満足する材料を開発していました。注射器、輸液ボトル及びコントローラ、血液透析機器(ダイヤライザ)など。自分ではお世話にならないように願いつつ、毎日大量に生産され出荷する様子は強く記憶にある。

さて、2つ目の記事。タイトルは「人肌の色を求めて」。なんだ「色」がなければ艶っぽいのだが、サイエンスは事実を伝えるのが基本。

蚊は30m離れたところからでも人間の吐くCO2を感じたら、目の色が変わり(筆者の誇張表現で、ご容赦)、赤いものに特に反応し飛翔するとのこと。人肌も蚊には赤く見える。

一方で緑や青には反応しないとのこと。白も蚊の好みではないとのこと。

我が家の網戸は窓枠内収納タイプなので専門業者に修理を依頼した。皮肉なことに今年は蚊が少ないようだ。何故だろうか? こんなところにも隠れた要因があり研究のネタがあるのかも知れない。

量子コンピュータにかける熱意

シニアの技術・研究者が定期的に集まって最新テクノロジーをセミナーする会がある。10人前後の小さな会である。

1年前に幹事から量子コンピュータのセミナーを依頼された渡邊氏は膨大な資料を力づくで整理し発表資料を作成。さてセミナー当日になって参加者の反応は氏の期待とは全く反対。参加者は全員が会社、大学等で活躍し今も現役並に活躍されているだけに日曜の夕方になると疲労もあり目を閉じる人もいた。当方も理解不能だが発表者とは1mの距離にいるだけに、眠ることはしないことだけに注力していた次第。誠に情けない。

参加者にIBMと特許裁判で活躍した専門家がおられ、参加者の理解にアシストになるように、短いコメントをするも、参加者の頭脳を励起することなく終了。

アナログ世界にどっぷり浸かり、30歳台からデジタルも0、1(00.01.10.11)の世界に対応してきた者にとっては無理。電子スピンは自己回転しながら方向は↑、↓でありながらその方向は2つだけでなく、中間に違う方向が数多くあり、それらの組み合わせた計算が同時になされる。化学専門家はスピンにはお馴染みだが方向は2つの意識が強い。方向は中間にいくつもあり・・・で躓き、計算結果を導くアルゴリズムが更にわからない。手法の一つアニリングは化学用語なので、なおさら理解不能の????マーク。

タイトルにある「量子コンピュータにかける熱意」はここから!

このセミナーを失意?のうちに終えた渡邊氏は凄い行動に出た。参加者がどこで躓いたのか、質問を分析して量子コンピュータの書籍を出版することに情熱を注いだのだ。原稿を書き、出版社周りをしては説明するも理解を得られずの日々が続いたとのこと。セミナー参加者は筆者を除いて国内トップクラス大学卒がメインにも関わらず反応しなかったのだから無理もない。でも量子コンピュータは世界を変えうる。その時、日本は・・・の情熱が氏の行動を支えていたと思う。

その努力が報いる日が来た。講談社サイエンティフィク社から「入門講義」として出版することを約束された。セミナーの時に参加者が理解できないところを例題として取り上げ、模範解答を記載することで理解し易い工夫がされている。編集者の力量を見る思いだ。

そして2021秋に出版。現在、増刷も進んでいる。7月の日曜日のセミナーは再チャレンジになった。参加者に書籍を無料配布。財布を取り出す人が続出したが氏の説明によると、奥様が理解できなかった人が入門書を出版するに無言の応援をしたのだから無料で受け取ってもらうべき」と言われた。凄いなぁ、この人ありて奥様も凄い。かくなる上は入門書とは言え筆者のレベルを超えて難解ではあるが、最後まで目を通すのが責任と感じた。アルゴリズの方法の一つアニリングの発明は日本。アニリング発明者の西森氏が本の帯を書いた。その通りだと思う。

高齢化の範疇に入らない=入っている意識がないから若者が到底できない活躍をやってのける。当日の出版記念に幹事の肝煎りで琉球舞踊を披露。琉球お菓子サーターアンダギーと量子コンピューターの本を手に家路に散っていった。サータアンダギーの割れ目の方向がランダムにあることに、確かにスピンの方向が多くてもありかと妙な理屈をつけながら。

貼る人工膵臓

最近、我が家の夕食で異変が起こった。ご飯が既にお茶碗に盛られている。従来、ご飯は自分で「よそう」スタイルだった。既に盛られているのは良いとしても量が少ない。よく言えば京都の料亭風、別の言い方では糖質制限食。幸いなことに家族は自分を含めて糖尿病、高血圧、心血管症などは患っていない。となると物価高の影響がついに来たかと長嘆息。

そんなに嘆かなくてもと言われるであろう。「健康に気を遣っている、予病の意味でも良い機会ではないか」の声が聞こえてきそうだ。

そんな中、近くの図書館で雑誌「日本医事新報 No5123 7月号」を目にした。タイトルは「緩やかな糖質制限の疑問に答える」北里大学・糖尿病センター長の執筆によるもの。

超要約すれば、1日の糖質量は70〜130g であり、毎食20〜40+間食10のパターンを継続すること(図―1)。さすれば体重は(文献中の図―3)のごとく変化する。肥満度が高い人ほど効果があり、痩せすぎの人は逆に体重は増加すると記載してある。毎食や間食にはロカボ(Low Carbohydrate)でありコンビニではロカボ食品があるらしい。

 

 

 

小生は英語を略するよりは「低糖質」と日本語表記したらと苦々しく思っていることと、コンビニには滅多に行かないので初めて知った次第。糖尿病患者や家族が医者に言われて知るような言葉は一般的に普及するには問題だろう。

そう、遅れているのかもしれない。最近流行(バズっている)のメタバースにもついて行けない。ビル・ゲイツやザッカーバーグは時代遅れと言われても、それすら追いついていないと反省なのか落ちこぼれ感が少しある。

話を戻して、「〜の範囲」があるのは人の活動状況(消費エネルギー、脳の利用度)の分布を反映しているのであろうか。脳の活動は糖質分解性生物のブドウ糖に依存する。そうか冒頭の白米の量は家族による小生の頭脳活性指数だったのか。

過剰摂取は中性脂肪としてお腹周りに蓄積される。浴衣姿では恰幅がいいねと言われたのは、はるか昔のこと。一方で高齢者はやや太めが長生きするとも言われている。

従って糖質量についての最適解は中性脂肪量、血圧、年齢などの要素を入れた分布が好ましいと思った。解を求めるにコホート研究に協力してくれる人数、個人情報と処理能力が問題であり、おそらく量子コンピューターを必要とするだろう。また上記文献の著者は糖質が抑制されれば肉には脂質が0だから満腹感まで摂っても良い。と記載されているが、これは脂質ご専門家の文献をチェックする必要はある。

早くタイトルのところを書け! それが頭脳の動きが遅い何よりの証拠。とお叱りを受けることは、枯れ始めている脳でもわかるので、次に糖尿病になった場合の新しいインスリンの投与について、これも最近話題になっている講演会から引用し紹介する。

研究者グループを代表して最先端医療技術紹介を東京医科歯科大の松元亮教授が「貼るだけ人工膵臓」を講演された。当日はZOOM講演でありスクショ禁止なので掲載はできない。その代用として、電気学会論文誌2012 年 132 巻12 号 p. 455-458に題名:「自律型インスリン投与デバイスの開発状況と将来展望」を掲載しているので要約から引用する。

「糖尿病は感染症ではありませんが、その急速な世界的流行は「パンデミック」と認識されています。インスリン依存性糖尿病の治療には、継続的かつ正確な血糖コントロールが必要ですが、現在の緩和治療は、ほとんど患者自身によるインスリン注射に依存しており、患者のQOLを損なうだけでなく、過剰摂取を厳に慎まなければならないインスリン量を正確にコントロールできず、重症低血糖を引き起こすことがあります。自己制御型インスリン送達システムの開発は、材料科学の長年の課題であり、グルコース酸化酵素と糖結合レクチンを利用することが、グルコース感受性の機能を取り付けるための有力な戦略である。しかし、これらのタンパク質は変性や細胞毒性があり、長期保存に耐えられないため、埋め込み型医療には適さず、現在も臨床応用には至っていない。本総説では、フェニルボロン酸誘導体化ポリアクリルアミドゲルを用いた完全合成の代替品開発の現状を概観する。」として

フェニルボロン酸のイオンと2種類のポリアクリルアミドを共重合してゲルを生成。その中にインスリンを内包さておく。表面に糖質(グルコースが近寄ると、直ちにインスリンを徐放して血糖値抑制させる仕組み。皮膚に塗布する仕方にも細かな突起物で固定と拡散を助ける工夫をされている。費用も安価で何より会食の前に一人席を外してお腹にインスリン注射する恥ずかしさはしなくて済むのは何より。

原理原則は次の反応式による。グルコースが近づくとゲルが収縮してインスリンを放出する仕組み。

松元教授はこの基本となる高分子ゲルについて2003年の高分子論文誌に投稿されており、現在のほぼゴールが見えるまで実に少なくとも20年以上の熱意で開発・研究をされている。彼らの最終目標は「貼るだけ病院」。研究は地道だが待っている市場は大きい。頑張ってほしい。

酷暑モード

先週は40℃超えの悲鳴が各地から報じられていた。その他の地域も35度近傍の亜熱帯。節電要請に協力するから、原発なんとかしろ!と叫んでみても時すでに遅い。休止中の火力発電の稼働を進めている。ドイツの天然ガス輸入できず、背に代えられず火力発電を稼働。環境先進国を自負するドイツがやるなら日本も止むを得ない。

今週は一転台風・温帯低気圧と太平洋高気圧のため豪雨と変化が激しい。歩数計で見ると3週間前に比較して6割にダウン。酷暑・大雨+それまでの体力消耗も影響している。マスクをしての酷暑は辛い。道行く人のマスク着用を見るに本当に日本人は耐えているなぁと感心する。 一足早い土用の丑を食したので頑張らねば。

節電要請を受けての駅のエスカレーター節電停止には本当に参る。誰だ!こんな地下深くに駅をつくったのだぁ! 延々と続く長い階段を下から仰ぐだけでゲンナリする。若者でも頂上に近づくにつれて速度は減速。大丈夫か投票日。熱中症対策の看護コーナーをセットする必要があるのかもしれない。いや、熱中症の危険がある高齢者はいかない可能性もある。リベラルの人が多い層だけに結果に反映するかもと素人ながら思う。関西風に言えば「知らんけど」。

酷暑は服装に影響する。クールビズが普及した現在だが、スーツが必要な訪問先があるのも事実。上着を手に持っていても鞄はリュックで背中に汗をかきながら傍目に気の毒だ。それに対してフリーの人、退職した男性では短パンを履いているのを見かけるが、申し訳ないが外人はサマになるが日本男子はそうでもない。短足・不潔感の毛脛の男性の横には女性は座りたがらない。そのような男性に限って足を組んで靴底を隣の席にむけている。まさに迷惑^3乗。

そんな中、東横線 武蔵小杉から長身イケメン黒づくめの男性が乗り込んできた。ガウチョパンツを着こなしている。なるほど、今は40代以上の男性はスリムタイプのパンツだが、若者はゆとりのあるパンツであるのは知っていたが、ガウチョ(ぱっと見、長いドレス風か、袴風)なれば脚部からの水分蒸発の効率が高くなって、スリムよりは快適になるのだろうと推測した。ガウチョは似合わないのはわかっているので、フレアワイドパンツに留まるかもしれないが、試してみたいと思う。その素材がリネンであれば買ってみたい。どうみても体操服の延長にしか見えないだろうが。

ここで思ったのは、縫製は日本から中国へ、そしてベトナム、カンボジアと移動して生産されている。亜熱帯地区なのだ。 日本が亜熱帯入りをしたのなら、涼しく過ごせて、その衣服を彼の地において着たいと思わせる商品ができないか。糸に加えて多種多様の織りの技術はまだ日本には健在。日本の縫製技術が活かされ繊維産業が国内回帰のきっかけになればよい。平織、綾織は海外生産にまかせておいて、経編(たて編み)はスポーツウエアでも発揮しているように伸縮性に富む、汗吸収(兼消臭)繊維を組み合わせることで快適ウエアができないだろうか。

政府の節電対策の一つに冷蔵庫の温度見直し、ぎゅうぎゅう詰め込まないこととある。特に海外スーパー(コ○○コ)は販売単位が大きい。これを冷蔵・冷凍しようとすると電気を消費する。本当を言えば、昔の商店街にあった量り売りであれば、使う分だけ購入することで冷蔵庫が小さくても生活はできる。スーパーに行くにはクルマが必要となるとLCAの面からできないが、駅前スーパー、コンビニは本来の利便性から言えば対応しても良いのだろうがフランチャイズが許さないのだろう。この業界にスマートで、そこのお店で買うことが格好良くステータスになるような仕組みを作れば案外ヒットするかも。これも酷暑モードの一つになろう。

前回のオイルショックに伴う節電では昼間及び11時以後のTV放送はお休みしていた。受信機も昔より4K,8K、有機ELの大電気消費タイプでかつ大画面。しばしTV放送局は昼寝をして頂くのが良いのであろう。キャスター、ゲスト、アナウンサーがクールビズでなくネクタイ着用背広であるのも気になっていたが、相当批判を浴びたのであろうかネクタイは無くなった。それでも熱い照明の下で汗をかかないのは相当の冷房がなされているであろう。だらだらと尺を取るだけのコメンテーターの話はカット。甲子園高校野球中継はしない。ラジオ放送かスマホ・PCで省エネする。それが嫌なら秋の大会にする。スポーツのラジオ中継はアナウンス技術を磨くにはもってこいの材料で、聞く方も想像力を高めるに有効だ。小野アナウンサーがNHK鳥取時代に「大きな当たり・・・・キャッチャーが取りました」なんて逸話を聞くに微笑ましい。

TVが低落しているのはコンテンツにある。この酷暑をうまく利用して見直すのも良いだろう。この文章がだらだらしているのも酷暑のせいと言い訳をしつつご勘弁を。