菌のスポンジ培養&蚊が好きな色

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サイエンス雑誌はエビデンスがあり有識者による査読があるので安心して読むことがわかる。(当時のレベル範囲内であることに留意しての前提ではあるが)。 雑誌記者の腕の見せ処の一つにタイトルで人を惹きつけることにあるとすると、今月の日経サイエンスには2つの記事に編集者の意図が生きた。何故か。科学に縁遠い人であっても、生活に密着した記事だったからである。(日経サイエンス8月号)

1つ目のタイトルは「細菌の培養は台所スポンジで」。微生物学で菌の培養といえばシャーレに寒天など菌の栄養となるものをセットし、そこに菌を置き恒温チャンバーにて2〜3日培養して、菌数の測定、顕微鏡による形態観察をする。そんな風景がTVで放映されているのはお馴染みだ。

タイトルにある台所スポンジが培地!?? 食器洗いはケミカル出身だけに得意の一つであるが、使用後は水切り、自然乾燥。スポンジの交換は1回/月程度。この文献通りだとすれば、食器から食器へと菌があれば移動させていたことになる。あ〜ぁ怖い。食器洗浄機での加熱処理が好ましいことがわかる。スポンジも見直さないといけない。

 

微生物学者の悩みは実験室では増殖しない細菌種をいかに培養するかであり、細菌の好みに合う棲家としてスポンジの多孔質が適していることを発見したとのこと。発泡体の製造には物理発泡と化学発泡があるが、いずれも孔のサイズは均一に見えても細菌から見れば多種多様サイズの部屋が用意されており選択の自由度が高いのか。孔の分布、孔が連通しているものなどある。弾性があり微細孔のウレタン発泡体は洗剤で落ちないところを擦ることで綺麗になる重宝しているが、使用後も再度使えるとあって、汚くなっても何故か保管している。皆さんのご家庭では毎回新品をお使いだと思うが、表面から半分程度を切り取り即捨てることにした。そういえば、最近は目が極めて粗い発泡体が出始めた。何か関連するのだろうか。

 

最近、知人が細菌撲滅研究に凝っている。分析を専門機関に依頼すると回答まで時間がかかり、高額であり、実験点数に支障をきたしていると相談を受けた。スポンジでの培養はできてもその後の処理が門外漢には無理。そこで思い出したのは熊本大学が微生物検査シートによる空中浮遊菌の検出した文献(Earozoru Kenkyu vol.30 2015)

当時はJNCのサニ太くんを使用していたが、今は食品用のMC-Media Padとして商品化されている。一般菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、真菌(カビ)、サルモネラなどの専用シートがある。

詳しくは同社HPを参照願いたい。100枚シート入り1万円前後と安いのも助かる。同社の宣伝ではないが、筆者は過去において、ケミカル他社の研究・技術者を横串で連結することをしていたことがあり、当時の仲間の業績なので取り上げた次第。

ところで、電車ではよく「抗菌」の文字を目にする。除菌、殺菌、減菌、消毒、無菌って区別していますか? 抗菌:菌が今以上に増殖しないようにすること。除菌:石鹸などで洗い流すことで菌数を減少する 殺菌:微生物を死滅させることであり量的な条件がない。消毒:人畜に有害な微生物(対象微生物)だけを殺滅する(生存微生物の数を減らすこと)、減菌:すべての微生物を殺滅、除去する行為でSAL10-6 の規格がある。無菌:生育可能な微生物が存在しない状態。医療関係者はこの区別を遵守している。注射器、手術器具などはγ線照射かEO(酸化エチレン)処理をして減菌、無菌状態にしています。筆者はγ線照射によるプラスチックの製品寿命と殺菌の両方を満足する材料を開発していました。注射器、輸液ボトル及びコントローラ、血液透析機器(ダイヤライザ)など。自分ではお世話にならないように願いつつ、毎日大量に生産され出荷する様子は強く記憶にある。

さて、2つ目の記事。タイトルは「人肌の色を求めて」。なんだ「色」がなければ艶っぽいのだが、サイエンスは事実を伝えるのが基本。

蚊は30m離れたところからでも人間の吐くCO2を感じたら、目の色が変わり(筆者の誇張表現で、ご容赦)、赤いものに特に反応し飛翔するとのこと。人肌も蚊には赤く見える。

一方で緑や青には反応しないとのこと。白も蚊の好みではないとのこと。

我が家の網戸は窓枠内収納タイプなので専門業者に修理を依頼した。皮肉なことに今年は蚊が少ないようだ。何故だろうか? こんなところにも隠れた要因があり研究のネタがあるのかも知れない。

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