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英単語練習タイミング 

早稲田大学など5大学から発表があったのは「英単語の練習、脳科学で最適なタイミングを探る ―記憶定着は対話「前」、意思疎通の促進なら対話「後」の練習が効果的―」である。2025.10.06リリース

2つのスパイ漫画を片方は英語で説明し、受け手は聞いた通りに漫画絵を描く。その時に双方の頭にfNIRS(エフニルス/機能的近赤外分光法)装置を取り付け、脳のどの部分が活性化しているのかも同時に調べたもの。

日本人英語学習者 80 名(40 ペア)を対象に、語彙練習のタイミングが学習成果と対話中の脳活動に与える影響を検証したとのこと。このスパイ漫画図を英語で説明するには相当英語レベルが高いと(自分を基準にすると)思われる。冗談ではなく、自分であったら単語は別としてどのように説明したら良いのか当惑して脳活動は停止したままだろう。当然、相手方は何を言っているのか分からないままテスト終了となるであろう。2つの漫画を図示するので各自トライしては如何でしょうか。

論文の超要旨は 本研究は世界で初めて、英単語でのコミュニケーション活動において、単語練習を活動の「前」に行うと記憶の定着が進み、「後」に行うと対話中の脳活動がシンクロし相互理解を促進するという、練習のタイミングによる効果の違いを明らかにしました。

確かに、対話前に単語・熟語・専門用語などを複数回繰り返し声を出して覚えるとその後も覚えているものだ。自分の経験で何だこりゃ?的な熟語を40年前に風呂に浸かりながら何度でも口にしたので今でも覚えている。その熟語は翻訳辞書では出てこない。多分、幼児かスラング言葉だったのだろう。また初めての海外学会発表の時に恥をかいてから英語を真面目にやらなくてはと奮起したこともあった。上達はしなかったが講師の話すイントネーションをそっくり真似すれば通じることを知ったところで、自分の英語マスタードタバタ劇は終わってしまった。今は、そのうちに優れた瞬間翻訳機が出てくるだろうと待っている。

 

ここで、この文献を読むうちに違うことを思いついた。それは説明をする手順の違いで情報の伝達(精度、理解速度)に違いがあること。当然と言えば当然だが、代表的なのはクッキングの伝え方に見ることができる。すなわち、材料Aグループ、調味料Bグループをリストアップ、次に料理の手順(処理方法、時間・温度)。次に盛り付け、最後に味の評価とPDCAの流れ。

言葉を前・後に覚えてもこの順で説明をすることがポイントかと。多くの技術論文はこの流れで読者・研究者に理解をしてもらうことがパターン化されている。 多くの会議では「結論を先に述べよ」と言われるが、要するに「今日の献立はこれです」と紹介するのと、文献内容を凝縮してタイトルとするのと同じ。

これを丁寧にするのが日本流。ディーゼル排気ガス不正発覚したら即EVが結論だとして猪突猛進して壁に衝突した欧州。メニューにガソリン車の熱効率50%を目指して研究を続行しBEVよりCO2排出量を削減可能性が見えてきたこと、ハイブリッド技術の磨き上げ、BEV向け電池開発、FCV、水素エンジン継続などマルチパーパスの料理を用意しておくのが日本流。今これが各国の経済・社会事情に合わせて受けている。この冒頭の文献は英語学習者(相手も英語学習者)同士の結論だが相互のレベルの違いを理解して話すことの方が脳は活性化され。伝えるための技術、質問する技術など相互にとって有効だろうと思う。

英単語学習タイミングと脳の活動の論文から随分話が飛躍した。辞書を引き引きの会話でも、翻訳機を利用しながらの会話でも、相手がこの人は真剣だと感じてもらえれば、ポイントのところは理解しようと努力するものだ。自分の経験で言えば「わかったフリ」をして質問しなかった時に、他の人が質問してやっと理解した恥ずかしい経験がある。スパイ漫画を受け取る人がどのような質問をすれば話す人を助けるのかを考えた時、脳の活動が活発になっているはずだ。

海溝プレートからのプレゼント

先のメールで長崎大学発表の内湾の塩濃度と魚生殖についてアップしたところ、「日本の土地は世界61位、海岸線の長さは6位。これをどう思うか?」のメールを頂いた。拙ブログをお読み頂いたことに感謝しつつ、これにお応えすることは浅学では困難なことあり、その旨を返信した。だが海洋国家の日本の将来をぼんやり思うには良いテーマかと思った。

フィリッピン海溝に沿った海底火山から島を形成。南鳥島の海底にはレアアースが、成長続く西之島には金の埋蔵など、その他海底にはマンガン塊が多く存在しており、先端産業にとっては嬉しいところ。これらの情報は多くがすでに知られており採掘技術の発展を待っているところである。そのような時に、北海道大学が

南関東の世界最大ヨウ素・メタン濃集の謎を解明~沈み込み帯でのヨウ素のフラッシュ蒸発と移動集積~ 2025.10.2 発表した」

南関東(特に千葉県)では天然ガスが商業ベースに乗っていることも多くの人が知っている。今回はヨウ素・メタンがなぜこの地域か解明した文献である。

その前に

ヨウ素と聞いて“なんだヨードチンキ?”と思った人は昭和前半の人。今はポビドンヨード(商品名:イソジン)。前者はヨウ素をアルコール希釈。後者はヨウ素をポリビニルアルコールで希釈したもの)。ヨウ素の利用先について先に記載をすると

工業用途(〜現在)

液晶ディスプレイ:偏光板の製造(ヨウ素含有。偏光板は液晶ディスプレイ(LCD)の主要な部品で、特定の方向の光だけを通すことで画像を形成。ヨウ素を含む(ヨウ素含有ポリビニルアルコール)

触媒:化学反応を促進する触媒。特に、酢酸の合成プロセスでは、ヨウ化メチルやヨウ化ロジウムが利用。

半導体 半導体製造プロセスにおけるエッチング剤として利用される

工業用途(将来は)ペロブスカイト太陽電池、電子部品、センサー、フィルターなどへのヨウ素含有高分子材料が研究され実用化しつつある。

医療におけるヨウ素の利用

消毒剤、甲状腺疾患の治療と診断 (甲状腺ホルモン構成要素)

造影剤 ヨウ素化合物は、CTスキャンやX線撮影においてコントラストを高め、病変部をより鮮明に映し出す

今後の医療分野では

ナノ医療: ヨウ素を内包したナノ粒子は、がん細胞を標的とする新しいタイプの造影剤や、放射線治療を補助する増感剤として研究されている

次世代の診断・治療薬: 放射性ヨウ素を標的分子と組み合わせることで、がん細胞にピンポイントで放射線を照射する分子標的放射性医薬品の開発が進んでいる。

前置きが長すぎる。北大に失礼だ!との声が聞こえた。 北大発表のポイントを引用すると(下線部)

フィリッピン海プレートが南関東帯水層に多量のヨウ素、メタン、水素を供給。沈み込む海洋堆積物の地震破壊に伴う液体ヨウ素の気化(フラッシュ蒸発)。プレート三重点での広大な帯水層の形成とヨウ素、メタンの濃集。

南関東地下の上総層群帯水層(図 1)には世界のヨウ素埋蔵量の約 65%(約 400 万トン)が濃集し、水溶性メタンの産出量も世界最大です。しかし、なぜこのような莫大な量のヨウ素がメタンと共に同帯水層に濃集しているのか不明。これを解明した

説明図が非常にわかりやすい。以下 転載する。 化学でお馴染みの相図(温度・圧力による固体・液体・気体マップ)を参考に見ると一層の理解がされるので試して下さい。

 

 

 

 

 

 

日本列島は太平洋プレートとフィリッピンプレートの押し合い・潜り込みによるカタストロフィ的に圧力解放=地震発生と災害をもたらす元凶である、その一方でプレート下の資源(今回はヨウ素・水素)をフラッシュ蒸発させている。プレートとして申し訳ないプレゼントなのか。我々は地震発災回復・予防に係る予算と工業、医薬面での収益バランスが取れるように利用すべきであろう。

ラーメン過剰摂取弊害?

以前は山形大学(米沢)に1回/月 行くことがあった。ほとんどは横浜からの日帰り往復(クルマ移動)。昼どきになると「じゃあ行きますか?」と山形名物「山形ラーメン屋」の暖簾を仲間とくぐる。上杉鷹山が殖産奨励したウコギ入りラーメンも食したことがある。独特の苦味は癖になる人もいるだろう。夜になれば懐見合いで「米沢牛」もあるだろうが、数多く訪れてもその機会はとんとなかった。牛肉米沢どまんなか弁当をお土産に買って帰る程度。

ラーメンは現在1000円超えが多い、1500円もある。副菜で餃子をつけると2000円。いつの時代の話と笑われるだろうが、175円時代を知っている身から見ると1000円超えは堪える。ラーメン以外に考えるようになってもバーガーはあれやこれやで1000円超え、かつ土地特有の特徴はない。いかに山形の人はラーメンが好きなのか。いや山形に限らずラーメンには依存症的なものが潜んでいるからであろう。

それに水を刺すような論文を地元の山形大学および県立栄養大学が「ラーメンの過剰摂取が一部の人々の死亡リスクを高める可能性」を発表 2025.08.18

超要約は以下の通り 方法:40歳6,725名を対象としその後を追跡調査

結果:   摂取頻度     死亡率

月1回未満  18.9%    統計的優位差なし

月1~3回   46,7%    統計的優位差なし

週1~2回   27.0%    統計的優位差なし

週3回.        7,4%      1.5倍

サブグループ解析では、「週3回」群は、男性、70歳未満、および麺類のスープとアルコールの50%を摂取した群で死亡リスクの上昇を示した。(具体的なデータ表をコピペするには鮮明性に劣るので元論文を参照されたい。)

原因の一つとして著者らは食塩の過剰摂取を挙げている。米沢は工学部があるところなので、米沢ラーメンの塩分・脂質・タンパク質など分析をしてもよかったのでは?と思う。学生の懐事情からカップ麺では栄養不足は認識しているので、豚骨にしろ脂質・タンパク質がより満足であろうラーメンにある意味頼っているところはないだろうか。本論文は典型的な文系のコホート調査であるが、対策を知りたかった。

自宅から駅に向かう徒歩1000歩の間にラーメン店が7店舗ある。路地にはもっとあるかも。全国チェーン系、家系が1店舗。残りは特徴を前面に訴えて頑張っている。和風スープを強調したもの。ラーメンとは思えないモダンな店舗など工夫を凝らしている。1000円超えでも納得させる方法であろう。原料価格・水・光熱費高騰、人件費など圧迫で廃業が続く業界にあって採算取れるレベルが1000円どころかそれ以上の価格が本音ではあろう。人材募集の張り紙時給1200円がいつまでも窓に貼ったまま。時給1500円にならないと人は来ないのだろうか。労働環境が察しされる。

オープン時間を22時としている店もある。飲み会あとの締めにラーメンを欲しがる癖を利用している。アルコールにより糖質が消費され血糖値対策として炭水化物を摂らざるを得ないとの理由をつけてだろう。

当方が思うには麺とスープの量は減量にして、チャーシュー、卵、モヤシをマシマシが(料金見合いで)栄養バランスが摂れる配合ではなかろうか。店の方も汁なしが助かるし、常連客はそれもわかっていて汁なしラーメンを注目する風景を見る。

50年前当時の話だが、京都北白川のラーメン店は標準メニューがチャーシュー盛り盛りトッピングで麺や汁が見えないほど。割り箸を入れ麺を引き上げようとしたら箸が折れたことがあって驚いた。今は懐かしい。辞書によると「拉」ラーとは引き延ばす意味だそうで、文字通り麺(メン)を引き上げ伸ばした本来のラーメン。今は客離れしないかドキドキしながらラ価格引き上げが課題。頑張ってほしい。 ラーメンには一家言(いっかげん)ある人が多くおられようが、摂取頻度を減少する方が寿命は拉びる(延びる)としませんか。

呼気成分から疾病を知る

知人の犬はコーヒーが好きで主人が飲み終えるのをそばで待っている。ところがある日、カップを舐め終わったところで主人のある部分に鼻をいつもよりこだわって寄せてきた。知人はその時アット気がついた。健康診断で引っかかっていた箇所だった。その後病院の検査・通院して寛解した。あの時の犬は主人の何の匂いを感じていたのか?

犬の嗅覚は人間の1000倍。 例えば糖尿病患者からアセトン臭がすることが知られている。前回のブログで記載したが、ブドウ糖が不足すると脂肪を肝臓で分解して補給する。その時の反応性生物の1つがケトン体。これが肺から呼気として排出される。

そのほか、腎臓病患者からはアンモニア臭。肝臓病からカビ臭がVOCとして検出できると言われている。近年、犬をガンセンサーとして研究しているようだ。一般的なガス成分分析のガスクロマトグラムでは精度不足だが、それが可能となれば成分が明確になり、発生部位の特定が非侵襲性で特定できるのは非常に貴重だ。

今回、京都大学と慶應義塾が「息から病気を検知する―鉄の匂いが教える肝臓の異変―」を発表 2025.09.22

 それによると、

「私たちの体の中では、鉄の働きによって細胞が壊れる「脂質の酸化」が起こることがあります。これが進むとフェロトーシスと呼ばれる細胞死が起き、肝臓などさまざまな病気の原因になることが知られています。ところが、これまでフェロトーシスを体の中で直接調べるには、肝臓の一部を取り出すような体に負担の大きい検査が必要でした。フェロトーシスが進むと「鉄の匂い分子」として知られる特殊な物質がガスとして細胞から放出されることを発見しました」とある。ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)を進化させたものと推定する。

患者にとってきつい肝生検をしなくても良いのは非常に有益。かつ患者数対応も可能と良いことずくめだ。肝臓に蓄積された脂質が酸化することで生成する1-octen-3-ol と 2-pentylfuranはMASLD患者(Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)、肝硬変患者の域には多く含まれていたと記載されている。

 

冗談だがメタボ気味のご家庭には2-pentylfuranの臭いに敏感な犬を飼うのもありかも。

さて、筆者も含めて、フェロトーシスならないためには。脂質の過酸化を抑制することになるが、庶民レベルで対応できるのは食材。参考までに抗酸化物質含有物について調べた。

・ビタミンE: アーモンド、ひまわりの種、ほうれん草、アボカドなど。

・セレン: グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)酵素の構成成分。ナッツ類、魚介類、肉類に豊富。

・ビタミンC: ビタミンEの再生を助ける働き。柑橘類、ブロッコリー、パプリカ、いちごなど。

・ビタミンK: 緑黄色野菜(ケール、ほうれん草など)、納豆など

逆に好ましくないのは、加工食品や高脂肪食。ジャンクフードなど

わかっちゃいるけど加工食品やジャンクフードは時間がない時はつい手が伸びる。そこが体を労るのか、虐めるのかの違い。昨日シャツを買う時に採寸したら反省すべき事態に。“ご参考まで”は筆者に投げかけられた言葉だった。

糖新生と運動能力

糖新生と聞いて「空腹時に筋肉からブドウ糖を緊急取り出すもの」と流布されている説を信じていた。高血糖も怖いが低血糖も怖い。筋肉からブドウ糖の供給は低血糖対応だと思っていた。今回の以下の文献を見ると半分当たっているが、半分は間違いであることがわかった。それどころか肝臓が脂肪からグリセロールをブドウ糖に、筋肉内の乳酸からブドウ糖に新生するメカニズムと運動能力が明確に記載された文献に接して、ぜひ読者の方々と情報を共有したいと考えた。

肝臓の糖新生が運動能を決める!‐新たな運動持久力向上法、肥満・サルコペニア対処法へ‐東北大学 2025.09.19

  発表のポイントを転載すると

  • 肝臓でブドウ糖を産生する糖新生では、運動の強さごとに、ブドウ糖を作る材料を使い分けることで、運動中のエネルギー供給が維持されていることをマウスを用いた実験で明らかにしました。
  • 肝臓の酸化還元反応を促進させ糖新生の効率を上げると、運動の強さに関わらず持久力が上昇することが分かりました。
  • この仕組みは、運動能の向上法や肥満を改善し、サルコペニア(注 4)を予防する手法につながることが期待されます。

 

図 1. お腹が空いた時や運動中などに備えて、ブドウ糖を作り出すことで低血糖を防ぎ全身にエネルギーを届ける仕組みは糖新生と呼ばれ、主に肝臓で行われる。特に運動中は大量のブドウ糖を使うため、糖新生の働きが非常に高まる。

 

 

図 2. 運動の強さに合わせて、グリセロールや乳酸からの糖新生の流れを促進させることは、運動能向上や肥満やサルコペニアの予防・治療につながる。

 

 

 

ここで、乳酸や脂肪のグリセロールから肝臓でブドウ糖ができる反応が論文では詳細記述されている。 乳酸やグリセロールからブドウ糖への反応には興味があるので次の式で表現した。図3(間違いあればご容赦ください)

普通の化学プラントではこの反応は容易ではないが、肝臓は精密反応をしていることに驚く。乳酸やグリセロールの分子構造からブドウ糖の構造に身体からの信号を受けて生産するとは驚く。

と同時に、肝臓・腎臓は大事にしないといけないと思わざるをえない。また、ウオーキングにおいてダラダラ距離を歩くのではなく、インターバル走法が良いと言われるのも、今回の説明で理解をした。

自分の筋肉量を知りたくないですか?

筋肉ムキムキ・マッチョであるほどトレーニングやプロティンを獲る努力の結果、どれだけ筋肉量が増加したか知りたいだろう。いや高齢者は反対にフレイル・サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)、いずれ歩行困難・寝たきり介護状態にはなりたくない。そのような状態に至る前の予防には筋肉量・筋力・身体能力が必要だとは聞いている。筋力や身体能力は測定可能だが、筋肉量の測定はCTスキャンだろうと思っていた。

体脂肪率、BMI、シックスパック状態が目安にはなっていても、本当の筋肉量の指標ではない。シニアは筋肉量を知ったところで、何をトレーニングすれば筋肉量が回復するのか知りたいところ。

科学技術振興機構が9月4日に開催の新技術説明会において福井大学・学術研究院医学系部門の大西講師が発表された内容が当方には新鮮に映った。筋肉量を簡易に推測できるのである。また何をトレーニングすれば良いのかのヒントは東北大学が「武士の所作の中に脚力を強化できると」発表。これも非常に面白いので、2つを合わせて紹介する。

その前に、大西講師の資料からフレイル・サルコペニア症状の筋力・身体能力について記載があったので、まずはこれをチェックする。筋力を握力で判定。男28kg以下、女性18kg以下。身体能力は歩行速度1m/秒以下、腕組みして5回椅子立ち上がりテスト: 12秒以上を指す。 シニアの方、この段階で如何ですか?

ご存知だと思いますが、横断歩道の信号は歩行者が1m/秒で渡り切れるとしてセットしてあるので、1m/秒以下では横断仕切れない状態。よく街で見かけますね。筆者も腕組み椅子立ち上がりは椅子の高さが低いと自信がない。

さて筋肉量の簡易評価法について特許出願されている(特願2025-040043)現時点では未公開だが、発表資料では実際の開発された推定式の被験者実績との相関精度は0,944と非常に高い。 その式を抜粋する。

< 特願2025-040043 体組成推定プログラム及び情報処理装置 >

  • 除脂肪体量=α1 ×年齢+β1 ×体重+γ1 ×身長2 +δ1 ×性別+ε1

数式中係数: α1=-0.036、β1=0.261、γ1=10.361、δ1=5.845、ε1=-1.135 性別:男性=1、女性=0

  • 筋肉量=α2 ×年齢+β2 ×体重+γ2 ×身長2 +δ2 ×性別+ε2 数式中係数: α2=-0.033、β2=0.245、γ2=9.600、δ2=5.708、ε2=-1.548 性別: 男性=1、女性=0

< 特願2025-051139 体組成推定プログラム及び情報処理装置 >

  • 四肢骨格筋量=α1 ×年齢+β1 ×体重+γ1 ×身長2 +δ1 ×性別+ε1

数式中係数:α1=-0.037、β1=0.132、γ1=6.308、δ1=1.785、ε1=-3.782 性別:男性=1、女性=0

エクセルに年齢、体重、性別をインプットし算出することをお勧めします。

次に東北大発表の「武士の日々の所作で脚力が強化する 1日わずか5分で高齢期の筋力低下を防ぐ効果に期待」2025.09.01 の要旨を紹介する。

武士の礼法を基にした「反動をつけずにゆっくりとしゃがんで立つ動作」を 3 か月間続けることで、1 日わずか 5 分でも脚の筋力が大きく向上することを明らかにしました。 お茶の作法でも同様だと聞いたことがある。昔から日毎の所作の中で脚力がつくよう工夫されていることに改めて驚いた。今や欧米化で椅子生活になった。今回の文献が見直しの機会になれば良いと思うが如何でしょうか。

礼法トレーニングの動作 (a)礼法のしゃがむ・立ち上がり動作、(c)礼法の椅子への着座・立ち上がり動作

一般的な動作の例 (b)一般的なスクワットトレーニング動作の例、(d)一般的な椅子への着座・立ち上がり動作の例

 

 

 

 

 

 

 

PM2.5関連2つの文献から

PM2.5に関する文献を見たので紹介する。

1つは「PM2.5が日本の労働供給量を低下させていることを統計・観測データから実証 ~大気汚染削減が経済的便益をもたらす可能性~ 2025.07.28 広島大学、東京大学」

要旨は次のとおり

  • 微小粒子状物質(PM2.5)による大気汚染が、日本において労働供給量や出勤日数を低下させていることを統計データ分析することにより実証。
  • 仮に月間平均PM2.5濃度が1μg(マイクログラム)/m3上昇すれば、月間労働時間が一人当たり0.5時間減少(研究対象期間の日本の平均は13.5μg/m3)、これは全国年間あたりで7,600億円の損失に相当。
  • 先進国における比較的低水準の大気汚染であっても顕著な経済的損失が発生しており、さらなる大気汚染削減によって顕著な経済的便益が発生しうることを示唆。

なるほど経済面からのアプローチは斬新に映った。

だが、具体的な健康被害の内容を知りたくなった。一般的には長期、短期による曝露により疾病は変わるようだ。

・長期曝露による影響: 死亡率、特に呼吸器系や循環器系の疾患による死亡率が増加

・短期曝露による影響: PM2.5濃度の急激な上昇が、喘息の発作、心臓発作、脳卒中のリスクを高めることも確認されている。

労働者及びこれらの疾病をもつ介護は労働時間を短縮せざるを得ない。それが労働供給量として評価される時、PM2.5濃度と統計的実証されたとのこと。

  • WHOの2021年のガイドライン: 年平均5µg/m³、24時間平均15µg/m³。 閾値はなく低ければ低いほど良いとのこと。
  • 各国のPM2.5実績。カナダ: 約6 日本: 約9 アメリカ: 約7 イギリス: 約9 フランス: 約10 ドイツ: 約10 イタリア: 約14 G7でもWHOガイドラインを超えている。BRICS諸国は、中国: 約38(近年大幅に改善) インド: 約50 ロシア: 約9 南アフリカ: 約20 ブラジル: 約11である。
  • 最近便利な衛星観測では次の通り。

これらの数値は平均であり、工業地域、都市部、農村などにより異なり、かつ都市部匂いても自動車走行量の多い道路に面した居住では高いだろうと推察できる。因みに自室を測定したところ1〜2μg/m3  でAQI(大気質指数)では良好なので安心していた。

ところが、PM2.5の数値だけでは健康被害は整理されないとの文献が出た。この文献は最初の文献を見た時から具体的に何が作用しているのか知りたかった内容でもある。

PM2.5の構成成分であるブラックカーボンが 急性心筋梗塞のリスクを高める可能性 ~全国7都道府県・4万件超を対象とした疫学研究の成果~ 2025.09.05 東邦大学、国立環境研究所、熊本大学

PM2.5を構成するブラックカーボン、水溶性有機化合物、硫酸イオン、硝酸イオンの濃度を 7 都道府県(北海道、新潟、東京、愛知、大阪、兵庫、福岡)を対象とし、2017 年 4 月から 2019年 12 月までに急性心筋梗塞と診断された 44,232 例 を解析。(構成成分ごとの平均濃度と全体に占める割合は、ブラックカーボン 0.2μg/m³(3.1%)、水溶性有機化合物 0.7μg/m³(6.6%)、硝酸イオン 1.0μg/m³(8.9%)、硫酸イオン2.9μg/m³(23.7%)

  その結果

総 PM2.5 濃度の上昇に伴い急性心筋梗塞による入院件数が有意に増加することを明らかにしました。さらに、PM2.5 の主要構成成分の一つであるブラックカーボン(黒色炭素)(※1)についても同様の関連が認められ、心筋梗塞発症の新たな環境リスク因子となる可能性を初めて示しました。

(図 1:総 PM2.5 および構成成分の IQR 濃度上昇と急性心筋梗塞リスクの関連)

 

 

(図 2:ブラックカーボン濃度の IQR 上昇と急性心筋梗塞リスクの関連)

 

 

 

 

 

著者らは

「ブラックカーボンが心筋梗塞に関与する可能性のある仕組みとして、肺での炎症や酸化ストレスの誘発、血液中への微粒子移行の促進、腸内細菌叢(さいきんそう:細菌の集合体)の乱れ、自律神経や副腎機能の不均衡など、複数の経路が推測されています。」 と述べている。

この図は非常に示唆に富んでいると思う。

 高齢より若い人の方が。 性別では男子が、体格指数は低い方が、糖尿病を併発しているほど、脂質異常性(中性脂肪や悪玉コレステロール)がない方が(??)、喫煙歴がある方が、ブラックカーボンの増加率に対して心筋梗塞リスクが高くなる。

最初の文献において世界のPM2.5の数値と二番目の文献 心筋梗塞リスクを対比することにより、日本より過酷な環境で多くの人の労働力供給量も減少の負のスパイラルにあることを想像することができる。もちろん心筋梗塞以外の疾病も含まれるであろうことは推察できる。課題はわかった。化学技術者の出番だ。期待している。

植物性タンパク質 増加技術

1日に摂るべきタンパク質は体重の1.2倍。日本人は平均10%不足しているのが現状。シニアになるほど肉を摂るべきとは言うが簡単なことではない。年金生活では限度がある一方で畜産国においても地球温暖化影響で飼育を止めるところも出てきた。

タンパク摂取において需要供給両面で黄色信号が続く中、ノーベル賞相当の研究発表があった。

牛の飼料として利用されているトウモロコシ。 1年間飼育した場合のタンパク質はトータル餌のトウモロコシ1kg換算で5g。 それに対してトウモロコシを麹菌で発酵させると124g。発酵時間処理は4日と非常に驚くべき報告があった。お米も同様とあって、昨今の飼料米(古古古米)問題も貴重なタンパク源となるのではないか。

文献を紹介しよう。「日本の伝統食品”麹”を応用したタンパク質増産技術の開発 – 穀物を発酵させることで簡便にタンパク質を倍増 – 」2025.08.01 農業・食品産業技術総合研究機構

超要旨を引用する米およびトウモロコシにアンモニアや尿素等の安価な窒素化合物、その他の無機塩類、麹菌の胞子を混合して30°Cで静置し、4日後に培養物に含まれるタンパク質の量を評価しました。その結果、発酵前の米およびトウモロコシに比べ、タンパク質の量がそれぞれ2.3倍、1.6倍に増加しました。また、米やトウモロコシのタンパク質は、構成するアミノ酸のうち、必須アミノ酸であるリジンの比率が低いことが知られていますが、麹菌の発酵によってリジンの比率が高まり、タンパク質の質が向上することも明らかになりました。」

メカニズム及び効果は下図の通り

 

 

スケールアップが待ち遠しい。 日本のみならず、米国、中南米などの穀倉・牧畜産業に寄与することで人口ネックの地球を救う役目を麹菌が働く実の有益なことではなかろうか。

ところで、麹菌は日本酒(ついでお酢作り)、漬物などに古くから利用されている。筆者は毎朝の味噌汁には酒粕を配合。これにワカメや豆腐その他を入れている。酒粕に含まれるタンパク質の量は100gあたり15g前後とタンパク源サポート役としては十分に活用している。炊飯の白米の6倍に相当で良質な植物性タンパク質である。酒粕にはレジスタントプロティンという体内で消化されにくいタンパク質も含まれており、腸内を通過する際に余分なコレステロールを吸着する作用があると知られている。 この生活を少なくとも5年は継続している。久々にお会いする人からはお腹の出っ張りがやや小さくなったと言われることもある。“やや”にはお世辞のニュアンスも窺われるが、当の本人は気に入っている。酒粕には美肌効果があるようだが、そもそも荒れ果てた元が悪いので効果は不明(笑)。

EU自動車ルール

EUの自動車を巡る新ルールはEUに輸出する自動車メーカーおよびバックアップの研究機関にとって非常に多忙な夏を送っている。EUは次世代環境に良いエンジンはディーゼルだとしたものの、排気ガスデータが嘘と米国から指摘された。そこでCO2排出ゼロの電気自動車なら文句は言わせないとして、ガソリン車(ハイブリッドを含む)を1930~35年には廃止すると宣言し、BEV車を製造し補助金付きで市場に流した。

やがてEU各国の資金が底をつきそうになると補助金廃止。そこに安価な中国製BEVが登場するとあっという間に市場を席巻。補助金がなくても購入できる車体価格。欧州自動車メーカは二つの対策を出してきた。ここでは非関税障壁を取り上げる

・関税 対中国 従来の10%を最大45%に(対日本は現在10% 7年かけ0%、対EU,米国への関税0)

・EUのグリーン・ディール政策(イコール非関税障壁)

これらの影響を大きく受けるのは日本、中国。そしてEU国民。日本・中国はわかるが、なぜ理想的な環境を作るための規制がEU国民を苦しめるのか? それはとどのつまり、これらの諸政策が実現した時の車両価格を想像するだけで納得できるだろう。

 BEV新車価格及び電気料金維持費で家庭の可処分所得をオーバーしており、さらにリサイクル費用・クルマ設計・新ライン償却費 が価格に転嫁される。長期にそれまでのエンジン車やハイブリッド車を保持していると「リサイクル社会に適さない人だ」と言われかねない。やがてEU域内の自動車工場停止、社員リストラ 社会貧困化につながる懸念もある。

米国車はEU市場では販売量がごく僅かなので対策は何もしない。それどころか米国トランプ大統領はCAFÉ(自動車メーカーの平均燃費を規制する制度)GHG(温室効果ガス)規制の今後の計画は見直し(廃止の方向)で動いている。BEVのカーボンクレジットで巨大な利益を獲得したテスラは今後クルマを製造するより、溜め込んだ100兆円を自動運転などのソフトに注ぎ込む模様。

クルマメーカーは種々の規制を設けられてもパスできる技術・資金・経営方針を十分活かしてクリヤーできるか、それともクルマ製造をやめソフト開発企業に転身するかのどちらかに絞られるであろう。 もっともEU国民は冬場のBEVに閉口し、日本勢のハイブリッド車の販売量が増加。さらに日本の軽自動車が紹介されると、これだ!と一種のブームとなっている。

クルマに限らず、理想実現には衣食住(+医職)を満足してからの話だろうと思う。 地球温暖化は確かにある。中国、日本、インド諸国は猛暑に襲われている、但し欧州は逆に冷夏。温暖化の原因は単なるCO2のみではないが、無理やり自国の都合に良いようにルール変更するのはアングロサクソンの特徴といえば言い過ぎだろうか。

脚の筋肉量の観察と維持には

酷暑となれば男子たるものビジネス以外ではショートパンツも致し方ない。昔はスネ毛モウモウが今は脱毛処理を若い人はしている。一方、中高年となるとそれがないだけに不潔感あり状態。電車でその人がいたら空いていても横には座ることを躊躇する。超高齢者となるとまるで身欠ニシン状態か骨皮筋右衛門状態の人もおられる。心配なのは超高齢者の脚だ。脚だけでなく腕、肩も筋肉が少なく、血管が浮き出ているので、点滴するには便利だなぁと眺めているほど。点滴の前にフレイルとなりいずれ歩行も具合が悪い状態になるだろう。

ふくらはぎが細くなったら筋量減少のサイン —世界初!ふくらはぎ周囲長の変化と筋量の変化の関係性を縦断的に検討— の文献がある。2025.06.26 明治安田厚生事業団、早稲田大学、上智大学、桜美林大学

 

 

 

 

 

(補註:DXA法(デキサ法)は、骨粗鬆症の診断に用いられる骨密度測定法の一つで、X線を用いて骨の密度を測定)

ふくらはぎ周囲長さの変化で筋量変化がわかるというもの。多くの人は「そりゃそうだろう」と思う。骨粗鬆症の診断に病院に行くまでもなく、脚を見れば筋肉の有無はわかる。調査するならば相関が取れたあとの解析として変化が少ないか増えた人はスポーツとか食事の特徴は何か、減少している人の生活状態とはどのような関係があるのなど追求があって欲しかった。

本年が戦後80年だけに少し真面目な話。思うのは南方の戦線で降伏捕虜となった男の痩せた写真だ。見た目、筋肉は限界まで削ぎ落とされている。食・医薬品の兵站(供給路)が立たれ、精神的に追い詰められた環境の結果だ。良い過去のデータがある。 戦後の食(タンパク質)の改善があり身長体重が増加した。筋肉量維持には食ファースト。二番目がスポーツだろう。

 

高齢者でもふくらはぎ部がハリがある人に出会うと、初対面にも関わらず質問してみる。毎日10kmジョギング、階段を何往復などトレーニングしていることを認めてもらったとあって嬉しそうに教えてくれる。 それに対してウオーキングは人並みにしているものの、我がふくらはぎは皮下脂肪膨潤状態。 なんとかならないか調べた。

ものの本には「ふくらはぎの筋肉量を増やすためには、ふくらはぎの主要な筋肉である「腓腹筋(ひふくきん)」と「ヒラメ筋」を効果的に鍛えることが重要です。」とある。 ご参考まで。 ちなみに You tubeには多く紹介されている。https://www.youtube.com/watch?v=VJ0evXb_J7w

ふくらはぎを鍛える筋トレメニューを以下にまとめた。まとめたら自分も行動しないといけない。でも一人ではしない言い訳でいつか止める。ただ、このブログをお読みの方がやっておられると想像すると続きそうな気がする。

  1. カーフレイズ (Calf raise:「ふくらはぎを持ち上げる運動」)

立った状態で行う「スタンディングカーフレイズ」と、座った状態で行う「シーテッドカーフレイズ」がある。

  • スタンディングカーフレイズ: 主に腓腹筋に効果がある。
    1. 壁や椅子の背もたれに手を添え、足を肩幅に開いて立つ。
    2. ゆっくりとかかとを上げてつま先立ちになる。
    3. かかとを上げきったら、1〜2秒キープする。
    4. ゆっくりとかかとを元の位置に戻す。
    • 回数の目安:10〜20回を3セット。
  • シーテッドカーフレイズ: 主にヒラメ筋に効果がある。
    1. 椅子に浅く座り、膝を直角に曲げる。太ももにペットボトルやダンベルなどの重りを乗せるとより効果的。
    2. かかとをゆっくりと上げてつま先立ちになる。
    3. かかとを上げきったら、1〜2秒キープする。
    4. ゆっくりとかかとを元の位置に戻す。
    • 回数の目安:20回を3セット。
  1. ドンキーカーフレイズ

上体を前傾させることで、より腓腹筋に強い刺激を与えることができる。

  1. 膝の高さ程度の椅子や台に両手をついて前傾する。
  2. 背筋を伸ばしたまま、かかとをゆっくりと上げる。
  3. かかとを上げきったら、1〜2秒キープする。
  4. ゆっくりとかかとを元の位置に戻す。
  • 回数の目安:10回を3セット。
  1. アンクルホップ

ジャンプを繰り返すことで、ふくらはぎの瞬発力を鍛えることができる。

  1. 足幅を拳1つ分ほど開けて立つ。
  2. かかとを浮かせたまま、膝を軽く曲げてつま先で地面を蹴るようにジャンプする。
  3. かかとは浮かせたまま、つま先で着地する。
  4. この動作を連続して繰り返す。
  • 回数の目安:10回を3セット。