先日、MeditecのWebinarで岡山大医歯薬学総合科の平木教授のCT透視ガイド下針穿刺ロボット紹介講演を聴講した。素人なので言われてみて分かったのは、生針検査や針穿刺治療において、手術医は常にCT装置横で施術しており、毎回、CT装置からの放射線を被曝していることに驚いた。患者は術後経過観察でCTスキャンするとしても頻度は少ない。岡山大ではCT装置から距離を置いて(ガイド下IVR画像下治療)画像を観ながら施術するロボットを開発している様子の発表だった。肋骨の間をくぐり抜け、ターゲット器官に途中で針の方向を変えて狙った箇所に到達。その精度は医者とほぼ変わらないとの報告であった。医者が要する時間が30分に対して支援ロボットでは1分程度の事例発表があった。患者の負担は減少することが期待できる。実用化にはまだ課題があるようだが、遠隔治療や医者水準の底上げには有用だと思われる。
手術ロボットの代名詞であったダビンチは特許が切れており、欧米日の企業がこれを機会とし市場参画を開始している。米国TransEnterixの手術支援ロボットは既に埼玉医科大学国際医療センターに納入されている。手術支援ロボットには開腹から縫合するまでの過程をフォローするが、糸で臓器を縫う場合のテンションを医者は手で感じながら調節できるが、果たしてロボットにはそれが可能か。日本の産業ロボットでは握る対象物が固い、柔軟かをセンサーで微妙に感じとり作動している。手術支援ロボットにおいては操作者が縫合時の力感覚を感じるシステムを搭載することになる。日本得意な技術の一つであろう。
川崎重工は産業ロボットで成功している企業である。かねてから開発を進めていることは公知であったが、満を持して昨年11月に国産初の手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」を販売開始した。
製造販売を手掛けるのはメディカロイド社(川崎重工出資)写真で見る限り非常にコンパクトな作りだ。
このサイズなら普通の病院の手術室内にセットが可能だ。
薬事製造販売承認を取得し保険適用が認めらており、まずは泌尿器科領域を対象に販売するとのこと、米国では前立腺癌手術の97%はダビンチであることから、真っ向勝負にでたのか。
日本のロボットはロボットの腕が隣の人に接触しないような微妙な寸止め機構が組み込まれているなど手術支援ロボも数本のアームからなるだけに、精緻な制御が日本製は可能だろうと思われる。
ただ、機械・装置販売と違い、医療支援ロボットの範囲拡大には、AI蓄積量がモノを言う。市場からの症例を装置への是正措置、予防措置に組み込む品質マニュアル、安全マニュアル(QMS,GVP)の充実と実行が必要だ。川重(メディカロイド)は先行品にはない特徴として遠隔リアルタイムサポートをあげており、IoTプラットフォームサービスを手がけるオプティムと共同開発したシステムMedicaroid Intelligent Network System(MINS)を活用するとのこと。それも大きな拡販ツールとなるだろう。
今、テレワークブーム。地方に居住しても仕事は可能。だが、万一病気になった場合、その地方に充実した医療体制がないと命取りになる。そのような時に5G、6Gの通信で遅延時間無く支援ロボットが現地で作動対応することが必要だろう。それには医学界、PMDAなど克服する課題はあるが、頻度の少ない地方で重装な設備負担は厳しいことを考えると、いつまでも放置できる問題ではなかろう。
手術ではないが筆者が苦手としているのに採血がある。健康診断では看護師が厄介な人に当たってしまったのではないかと、こちらが恐縮している。血管がなかなか見つからないのだ。腕を温めたり、叩いてみたりと看護師さんの奮闘に申し訳ない気持ち。それをカバーする採血ロボットが弘前大学で開発されている。赤外線を照射すると血管が見えやすくなるのは知られており、たしか高知大学も民間企業と共同開発をしていた。弘前大学では一歩進めて採血ロボを作成したとヨコハマテクニカルショー(WEB)で発表している。この実用化を節に希望するものの一人だ。