2021年 2月 の投稿一覧

手術支援ロボット

先日、MeditecのWebinarで岡山大医歯薬学総合科の平木教授のCT透視ガイド下針穿刺ロボット紹介講演を聴講した。素人なので言われてみて分かったのは、生針検査や針穿刺治療において、手術医は常にCT装置横で施術しており、毎回、CT装置からの放射線を被曝していることに驚いた。患者は術後経過観察でCTスキャンするとしても頻度は少ない。岡山大ではCT装置から距離を置いて(ガイド下IVR画像下治療)画像を観ながら施術するロボットを開発している様子の発表だった。肋骨の間をくぐり抜け、ターゲット器官に途中で針の方向を変えて狙った箇所に到達。その精度は医者とほぼ変わらないとの報告であった。医者が要する時間が30分に対して支援ロボットでは1分程度の事例発表があった。患者の負担は減少することが期待できる。実用化にはまだ課題があるようだが、遠隔治療や医者水準の底上げには有用だと思われる。

手術ロボットの代名詞であったダビンチは特許が切れており、欧米日の企業がこれを機会とし市場参画を開始している。米国TransEnterixの手術支援ロボットは既に埼玉医科大学国際医療センターに納入されている。手術支援ロボットには開腹から縫合するまでの過程をフォローするが、糸で臓器を縫う場合のテンションを医者は手で感じながら調節できるが、果たしてロボットにはそれが可能か。日本の産業ロボットでは握る対象物が固い、柔軟かをセンサーで微妙に感じとり作動している。手術支援ロボットにおいては操作者が縫合時の力感覚を感じるシステムを搭載することになる。日本得意な技術の一つであろう。

川崎重工は産業ロボットで成功している企業である。かねてから開発を進めていることは公知であったが、満を持して昨年11月に国産初の手術支援ロボット「hinotori サージカルロボットシステム」を販売開始した。

製造販売を手掛けるのはメディカロイド社(川崎重工出資)写真で見る限り非常にコンパクトな作りだ。

このサイズなら普通の病院の手術室内にセットが可能だ。

 

薬事製造販売承認を取得し保険適用が認めらており、まずは泌尿器科領域を対象に販売するとのこと、米国では前立腺癌手術の97%はダビンチであることから、真っ向勝負にでたのか。

日本のロボットはロボットの腕が隣の人に接触しないような微妙な寸止め機構が組み込まれているなど手術支援ロボも数本のアームからなるだけに、精緻な制御が日本製は可能だろうと思われる。

ただ、機械・装置販売と違い、医療支援ロボットの範囲拡大には、AI蓄積量がモノを言う。市場からの症例を装置への是正措置、予防措置に組み込む品質マニュアル、安全マニュアル(QMS,GVP)の充実と実行が必要だ。川重(メディカロイド)は先行品にはない特徴として遠隔リアルタイムサポートをあげており、IoTプラットフォームサービスを手がけるオプティムと共同開発したシステムMedicaroid Intelligent Network System(MINS)を活用するとのこと。それも大きな拡販ツールとなるだろう。

今、テレワークブーム。地方に居住しても仕事は可能。だが、万一病気になった場合、その地方に充実した医療体制がないと命取りになる。そのような時に5G、6Gの通信で遅延時間無く支援ロボットが現地で作動対応することが必要だろう。それには医学界、PMDAなど克服する課題はあるが、頻度の少ない地方で重装な設備負担は厳しいことを考えると、いつまでも放置できる問題ではなかろう。

手術ではないが筆者が苦手としているのに採血がある。健康診断では看護師が厄介な人に当たってしまったのではないかと、こちらが恐縮している。血管がなかなか見つからないのだ。腕を温めたり、叩いてみたりと看護師さんの奮闘に申し訳ない気持ち。それをカバーする採血ロボットが弘前大学で開発されている。赤外線を照射すると血管が見えやすくなるのは知られており、たしか高知大学も民間企業と共同開発をしていた。弘前大学では一歩進めて採血ロボを作成したとヨコハマテクニカルショー(WEB)で発表している。この実用化を節に希望するものの一人だ。

たまご

物価の優等生である卵の値段が最近値上がりが大きい。こちらは理由は明快で鳥インフル流行による鶏卵生産量が減少していることが主原因。需要の方は専門家から聞いた情報によると家庭消費が50%、中食関係が30%、加工食品向けが残り20%。中食の減少分を家庭調理分でカバーしていることから全体として値上がりになっている。値上がりを見るとスーパーによって値上げ幅が相当違う。購買能力(生産業者にとっては迷惑パワー)を判断することになる。消費者にとっては実に悩ましい。卵サイズはS~Lまである。買うなら大きい方がお得なのか?分からない。たまご関係者(上記の専門家)から聞いたところでは、1kgいくらの重量制なので、重量あたりの個数はSサイズが多いことになる。名古屋地区ではモーニングに使用する卵は個数勝負なのでSサイズが選択され、残りのLサイズは北陸地区に販売していると業界の内情を教えて貰った。北陸の人はそれを聞いてどう思うだろうか。得なのか損なのか? 筆者にも分からない。

kg当たりでは同じか。売り場には多くの卵パッケージが並んでいる。平場飼卵が増加している。アニマルフリーとかでブームなのか。狭いゲージ個室でいるより広場で運動できることは鶏にとっても良いだろうとの仮説になっているが、鶏の気持ちは誰も確認していない。

一ヶ月ほど前NHK番組「チコちゃんに叱られる」で鶏はなぜ朝に鳴くのか?との設問があった。答えは *鳴くのは雄 *鳴く雄には順番があり平場でマウントをとっているNo.1が先に鳴き,続いてNo.2。。。の順だとのこと。負けた鶏は鳴くことができないこともあるようだ。マウント取り合いでは壮絶な戦いがあるとのこと。上述の専門家によると戦いの中には鋭いクチバシで相手の内蔵をついて致命傷を与えることもあるのだそうだ。そうなると個室の方が安心できる鶏もいるだろう。雌鶏も一夫多妻制なので弱い鶏から乗り換える必要があるので平場ではオチオチできない。鶏の本音は聞いていないが。 鶏の声をずーっと昔は町中でも鶏を飼っている家があり聞いたものだ。それを今は聞いたことがない。昭和45年当時は150万の養鶏業者が今は2000まで減少している。鶏卵数はほぼ同じだけに、今稼働している養鶏場は自動生産システムでロボット化も進んでいる大型工場だ。

さて、話題を戻して、卵はS,Lどちらを選ぶ、平場飼い卵を選ぶか?の答えは栄養でしょう。関西では昆布出汁で卵を溶いて「だし巻き卵」が定番になっている。大根おろしを載せて絶妙な味が好まれている。筆者の家でもよく食する。関西は(特に京都は)昆布文化である。関東になると砂糖配合の固めの卵焼きで昆布出汁が使われていない。

横浜にいる筆者は昆布に入っているヨウ素を餌として取り入れている「ヨード卵」をその代替として利用している。千葉の海岸で採れる昆布を餌にしているとのこと。値段は高いが血中コレステロールなど効用が多いなどは会社のCMになるので多くは記載しない。

聖マリアンナ医科大の研究によるとin vitro ではヨード卵抽出物質について報告。発毛・育毛に関しても記載がある。「男性型脱毛症(AGA)の最大の原因物質ジヒドロテストステロン(DHT)の生成を抑制し、発毛促進を期待できる」としたとある。筆者にとって「早く言ってヨ」気分。

余談だが、電力事情が相当厳しいらしい。経済産業省は「節電のお願い」とは明確に言わないが、発電能力が96~100%と瀬戸際で停電を食い止める運転を強いられていることを極めて婉曲的に表現している。燃料の液化天然ガスの調達問題にあるようだが、ベース電源には原子力、石炭火力が如何に生活に重要であるか政府は堂々と主張しても良いのではないだろうか。コロナで生活に影響を与え、その上 節電を強いるのは為政者としては言いたくないことではあろう。

そのせいかどうか?最近、街でエスカレーター修理をよく目にする。通常は半日程度の点検・補修であるが、昇降2系合わせて3ヶ月と長い。「強風により動く歩道は停止します」の表示も昨年より多いような気がする。独断偏見を言えば電気に関連する業界は直接指示されてピーク電力カットへ協力しているのでは?と考えた。終電ももっと繰り上げて、夜更かししないでさっさと寝るとするか。鶏のように。

 

珈琲と私

テレワークが続く。パソコン作業も時々立ち上がって気分転換するが、考えに詰まったときは、珈琲豆を挽く。こう言うときは手回しが適している。さて、どの豆にするか?粉砕粒度はどれぐらいにするか? だが、目開きピッチを覚えていないので再現性がない。なので同じ豆でも味が異なる。これが素人の味だと開き直る。ガラガラガラと挽ハンドルを廻す。豆の種類(サイズと焙煎度)によりハンドルへの抵抗が違うが、やがて粉粒体となり空回転となると挽き終わり。ここで仕事の気分転換は40%達成。お湯の温度を確認して全体の20%程を注いで30秒ほど静置する。この時に立ち上る香りで20%ストレス解消だ。豆の産地を認識するのはこのとき。手許にある豆はブラジル、キリマンジャロ、エチオピア、コロンビア、ウガンダ、ルワンダ。スペシャル扱いがブルーマウンテン、特別はゲイシャだが相当な腕が必要なので遠い目標にしてある。

素人の勝手な順番で電車でいう普通、準急、急行、特急、快特の如きでその時の必要とする味を選択しているのであって産地の方にはお断りしておきます。

筆者は珈琲通でもなんでもない。それでも、この立ち上がる香りで(特に焙煎度が低いときは)その土地の雰囲気が想像できる。そんなことないと読者は言われるだろう。上で挙げた珈琲豆産地の多くは内戦が長く続き一次産業に女性が従事して支えてきた歴史がある。ルワンダの豆の香りはブラジルとは違い荒々しい。焦土と強烈な太陽の下で熟したのではと焙煎度が低いときは特に感ずる。お試しあれ。

さて、残りを二分割してお湯を注ぐ様子をYou Tuberで見る。その真似をする。筆者は現在の仕事のなかで某先端材料の濾過プロセスを開発する必要に迫られていることもあり、珈琲を淹れる工程を抽出・濾過プロセスとして見てしまう癖がでる。折角の気分転換ではあるが、粒子の差により濾過速度が異なる様はナルホドと再認識することがある。

抽出濾過した液体は芳醇な珈琲となってカップに注がれる。それをゆっくり味あえばよいものを、7割程度いただくと、気分回復度が100%になっていることから、つい仕事に舞い戻っている。飲み残しは産地の人に申し訳ないので後ほど温めてのむ。こんな調子を一日に少なくとも3回は繰り返す。

そんなに回数が多くて健康に問題ないのか?は昭和の頃の話で、今は寧ろ好ましいが通説となっている。

日本の研究.com (2020.11.09) 京大及び長浜バイオ研発表によると、「習慣的なコーヒー摂取が健康に良い影響を与える場合が多いことが分かってきました。コーヒーをよく飲んでいる人の方が、糖尿病や心血管疾患、肝硬変、いくつかの癌や認知症になりにくく、死亡率も低いという結果が出たのです。NewEngland Journal of Medicine に掲載された最近の記事では、1 日 3 から 5 杯のコーヒーを習慣的に飲むのがよいのではと記載されています」

今回発表された研究内容は「コーヒーをよく飲んでいる人ほど眼圧が低いことを発見しました。ただし、コーヒーを飲むことによって眼圧が下がるのかは分かっていませんので、緑内障の治療や予防の目的でコーヒーを摂取することを推奨するものではありません。くれぐれもご注意ください。」とある。

 

 

 

 

 

 

皮膚科専門でTVでお馴染み女性医師によるとクロロゲン酸はシミ防止によいとか、保水性補助として有用だとの情報をYou tubeで語っている。また、珈琲研究家で東京薬科大学名誉教授の岡希太郎氏は以前からブログで珈琲成分効果を取り上げていたが、論文がネイチャーに掲載されたことを報道で知った。論文査読が厳しい雑誌なので本当だろう。タイトルは「珈琲習慣は健康寿命の援軍 注目のニコチン酸」

健康といえばポリフェノール。CMでもお馴染みで珈琲にもクロロゲン酸が含まれているとされ多く報告があるとのこと、これに加えてニコチン酸(たばこのニコチンとは全くちがいます!)。記事のなかで「一般には善玉コレステロールを増やす効果や、皮膚・粘膜の健康を保つ美肌効果などが注目されていますが、医療の現場では、様々な病気の治療にも使われ始めています」その1つが、先天的なNAD不足による筋無力症で難病に指定されている「ミトコンドリア・ミオパチー」。昨年にはヘルシンキ大の研究チームが、ニコチン酸の投与で患者の筋肉中のNAD濃度が高まり、副作用もなく運動機能が回復したと発表した。また中国の医師団からは、やはり難病の潰瘍性大腸炎をニコチン酸の追加投与で治癒させたとの論文も発表されている。筆者はこの分野は全く知見がないので、コメントなしで引用した。ご判断は読者に任せたい。

クロロゲン酸(左)とニコチン酸(右)の分子構造。

 

 

 

 

 

 

この記事では

「珈琲豆を深く煎ると、このクロロゲン酸は失われてしまう。そこで岡さんは、ニコチン酸が豊富に含まれる深煎りの豆と、クロロゲン酸が豊富に含まれる浅煎りの豆をブレンドした珈琲を飲むことを勧めている。」。そうか豆が同じでも焙煎状態(浅・深)を組み合わせか、経験が深い人とフレッシュな見方をする人の組み合わせがクリエイティブな仕事をできるのだ。。。。と教えられたようなものだ。

ここで、少しだけ化学屋らしいことを言えば、抽出にはお湯の通過速度と温度が重要。粉砕した粒子径が細かく、かつ揃っている場合(正規分布で分布幅が狭い)は、お湯の通過速度が遅くなる。始めと後の通過・濾過速度は低下して、お湯と接触時間が長いと苦みが抽出されてくる。そこでの対策として粒子径分布を変える(広く、または粗粒子を配合する)ことも対策として挙げられるのではないかと考えている。

そんな多くのことを考えさせてくれる珈琲。淹れ立ての珈琲をいただく。産地で働く人の様子を想像しながら。写真は焙煎前の生珈琲豆。目の前で焙煎工程を見ることができる戸越銀座Caffe la Costaの豆の特徴図

組織潜在力とDX

電通ビルが売却のニュースは流石に驚いた。売り上げ1兆円を軽く超える企業がまさかの損失補填に自社ビル売却。オリンピックの当てが外れた、斜陽マスコミの影響など原因は専門家にお任せして、テレワークで仕事は可能なので3割程度のフロアを賃貸するとのこと。

これを聞いて、本当にテレワークで可能なのか? 不思議に思った。自分の専門スキルの売買で会社と契約している分には可能だが、日本の会社の多くは専門職での採用は限定的であり、多くは総合職としての採用が多い。出身は技術者であっても短くて3年、長くても20年するとジェネラリストとして事業企画などの職に就く。例え20年が研究職で入社しても基礎分析、材料開発、成形開発、テクニカルサービス、品質管理及び製造現場など多岐の経験を積む人が多いのが日本企業の特徴。技術職で採用が営業に転ずる人の割合いが多いと言うか普通。海外支店勤務で技術営業兼マネージャーも経験する。

では、次から次へと受け持ちする仕事が変わっても円滑に組織として活動できるかと言えば、境界が重なりあっており、例えば材料開発を推進しようと思ってもその他関係業務との連携・相互の理解がないと進まないから、相手の仕事も知らず知らずに代替しうるレベルまでになっている。

外資系企業の場合は個人―企業の契約で成立しており、個人のスキルが必要とするところにジグソーパズルのように当てはまる人材が採用され、使命が終われば雇用は解除される。オフィスの風景も個室が与えられているか、隔絶パネルで区切られた空間で仕事をしているのを良くみる。実に格好が良いように見える。日本の企業の多くは大部屋。今は大部屋でもパソコンのキイタッチの音しか聞こえないが、以前であれば電話で話す内容が聞こえてくると、“あの案件だったら,情報を持っているので教えてあげよう”としたものだ。人には情報は教えない頑なな人は陽が当たるところから距離を置くようになった。

いつでも仕事が変われる状態はコストセンターからみれば「遊んでいる=余裕=無駄」とみられることもあり、不況になると目を付けられる危険もある。だが、今流行の“デジタルトランスフォーメーションDX”となるとどうか。デジタルは単なるツールだが、問題はトランスフォーメーションDXに便利なのは大部屋的相互業務一部浸透型組織ではないかと考えている。材料屋の表現ではIPN構造(Inter Penetrate Network Morphology)。超簡単にいえば融通無碍の組み替え。マルチタレントでないとDX時代は円滑に進まないと思われる。会社も社員をマルチタレント養成し、個人においてもマルチ分野に専門家顔負けに通用するような技量と見識をもつ必要があるのだろう。

その意味で、専門一本足打法で会社内で生活できても、転職は厳しく、定年後に通用するには時代が求めていない限り厳しい。会社訪問して事務所風景が大部屋になっていて、電話の声が聞こえていると“この会社は変化にも強いだろう”と判断する。大部屋でもパソコンの音だけでシーンとしている会社は“チョット心配な会社”と思う。皆様の会社は如何でしょうか?

筆者が経験してきたことを記述した“経験則”であるが、理論的な取り扱いをした記事が日経に掲載されている。慶応・菊澤教授の“危ない「働き方改革」、実は変革に向いた日本の組織”を参考にして下さい。

日本、ドイツ、米国の企業組織形態の特徴を論じています。ダイナミック・ケイパビリティ(感知、捕捉、変容する変革能力)が変革競争力に重要であると説いておられる。全く同感だ。

続きは(日経ビジネス2021年1月22日)をお読み下さい。

図表を引用(筆者作成)