2017年 12月 の投稿一覧

殺菌剤・二酸化塩素が大化け?

ALWAYS三丁目の映画は東京タワー建設当時を舞台にしている。当時の町医院の待合室にはかすかな塩素臭が漂っていた。子供心にも清潔感・安心感のようなものがあった。あれは殺菌処理のための次亜塩素酸と推察、先生は手もそれで洗っていたように記憶がある。

冬の季節になると10年ほど前からTVのCMで消臭・殺菌剤として二酸化塩素含有ジェルなどの商品をみることがある。当初はインフルエンザ対策を謳っていたが薬事法抵触もありトーンを下げているようだ。二酸化塩素は不安定な化合物で塩素と酸素に分解する。この塩素は酸化剤として強く菌のDNAを破壊するのだろう。臭気も強いので健康に本当に良いの?と特に幼児をもつ家庭で疑問をもたれる方から公的衛生機関への問い合わせが今でもあるようだ。医院や家庭で二酸化塩素に代わりそうな安心な装置については末尾に紹介する

前置きが長くなったが、今回は二酸化塩素が化学合成の歴史に大きな働きをしたことを記載する。つい先日、大阪大学の大久保敬教授らの研究グループは、常温・常圧で空気とメタンからメタノールを作り出すことに世界で初めて成功したと発表。この反応に重要な働きをしたのが二酸化塩素。酸化剤として作用。図-1参照。解説を発表資料から抜粋する

 「メタンは化学的に極めて安定な物質なので、メタンを酸化するためには、非常に強力な酸化剤を必要とします。しかし、メタンに比べ生成物のメタノールの方がより簡単に酸化されるためにメタノールとして取り出すことができず、メタノールが酸化された二酸化炭素や一酸化炭素に速やかに変換されてしまいます。そこで本研究では、具体的には、図1に示すようなフルオラス溶媒と水の二相反応系を考案しました。このフルオラス溶媒は、メタンや酸素などのガスを多く溶かす性質を持っています。反応の手順は、まず、水中では亜塩素酸ソーダと酸が反応して二酸化塩素が発生します。その後、二酸化塩素はフルオラス溶媒に溶け易いのでここでメタンと反応します。生成物のメタノールやギ酸は、フルオラス溶媒に溶けにくく、速やかに水中に移動するので、これらが二酸化炭素などへ酸化されることなく生成物は次々に水中に濃縮される。」

産業界としてはノーベル賞級の発明だと思う。日本周辺の深海にあるメタンハイドレードを合理的方法で取り出すことができると、この反応を利用してエネルギー大国への変換やメタノール原料の燃料電池車の競争力が高くなることが予想される。時あたかも予算編成のタイミング、大型テーマとして予算を付けて欲しいものだ

一方、臭気を素早く分解し、ノロウイルスなどの院内感染源も死滅させる装置の開発がなされている。こちらは光と酸化チタンの組み合わせで、既に建造物の防汚、部屋の臭気対策として活躍しているが、最近になって酸化チタン成分の何が効果をもたらしているのか?の解析を通してより効果のある酸化チタンと最終製品への開発がなされた。効能については富山大学ウイルス学専門白木教授により確認されている。(図-2)

小生の研究仲間がこのプロセス開発に係わったことで関心がある。 歯科医院内のクリーン、技工所でのアクリルシロップ重合なので臭気対策にも有効だと思われる

(補注フルオラスと は、「親フルオロカーボン性」の意味で、高度にフッ素化されているゆえ、水や有機溶媒 とも混和せず、また、低表面エネルギー、耐熱性、光学あるいは電気的特性を有する。ダイキンHPより

秋から始めた自由気ままなブログをご愛読頂き有り難うございます。本年は3Dプリンターが本格実用化の扉を開けたと言えます。歯科技工はその先頭を走っています。コスモサインは皆様とご一緒に2018年も歯科技工IOTツーリングできることを期待しています。

モーターサイクル(その1)

俳句プレバトルで千原ジュニアが昇格した句

750CC(ナナハン)の タンクにしがみつく 寒夜」

ライダーならずとも上手いなぁ~と感心する。ライダースーツ、手袋、フルフェイスヘルメットで身を纏っていても寒い。タンクを介してのエンジンの温もりは冬の季節はありがたいと。でも、単にそれだけではなく、しがみつく姿勢は快調なツーリングを支えてくれた愛車への例えば乗馬に労をねぎらう様をも想像させる

二輪は排気ガス、騒音規制、及び需要の減退もあり中型・小型の生産中止が相次いだが、その一方でヤマハは前方2輪のLMW(コーナリング時にフロント二輪と車体を同調させ、リーンさせる機能)を、ホンダは、ライダーがバランスを保たなくても自立する二輪車「Honda Riding Assist-e」を発表した。渋滞や信号での発進・停止時など、低速走行時でもマシン自体がバランスを保ち、「倒れないバイク」でライダーの負担を軽減するという。いずれも、新規ユーザーが参入し易いことを意図しているのだろう

カワサキは人気のNinjaシリーズを発展させ300馬力モデルを開発しBMWを追い抜いた。カワサキは航空機エンジン技術を有しているが、BMWは自動車・二輪の前身が航空機エンジン生産しておりその共通点が面白い

カワサキ以外の二輪メーカーは自動車併産にシフトしたが、二輪ライフ・スピリッツを四輪に活かしているように感ずるのは小生だけではないだろう。ヤマハは長年エンジンをトヨタグループに供給して四輪は主に特殊作業用に限定していたが、先の東京モーターショーでは二輪ライフテイストタップリのSUVを発表し、二輪とSUVを結合すると新しいカーライフが提供できることを提案。二輪ライダーも共感すると思われる

カワサキの300馬力、時速320キロを必要とするライダーはそう多くはいないが、その技術への憧れを持たせるには充分である。カワサキスーパージャージャー部品のインペラーは13万回/分の超高速で回転する。川崎重工の航空機エンジン開発部隊が設計した遠心式スーパーチャージャーに組み込まれている。またインペラーと形状が類似している船舶のスクリューを設計製造している同社船舶部隊とのコラボもなされたと聞く。外観風貌は従来のNinjaと変わらないので乗ってみて驚くライダーをバイクが見ているように思える。乗りこなすスキルのないジョッキーを馬の方が値踏みするように

尚、インペラーの製造は金属ブロックからの5軸~6軸切削マシンであるが、将来さらに形状が複雑になると3Dプリンターが登場するのではないかと考える。 製品設計は「成形加工可能技術」を前提になされる。「高速で流体を抵抗なく移送する羽根」を前提にして、高度数学を利用したトポロジー学から得られる解は現状の成形加工技術では不可能な形状となることもあり得る。

その場合、3Dプリンターが活躍すると予想する。 

写真  カワサキZ900RS(東京モーターショー)及びインペラー

樹脂価格 ナフサリンクとシェールガス

直近の樹脂関係ビックニュースは東レがトヨタなどに自動車用材料(ナイロン、ポリフェニレンサルファイド)の価格をナフサリンクから外すよう異議申し立てをしたことである。ナフサとは原油を熱分解して採れる成分で石油化学はこれからエチレン、プロピレン、ブタン・・・のアルキル炭化水素類とベンゼン、キシレンなど芳香族類が一定の割合で精製分取している。一定の割合で生成するので芳香族化合物のみ生産することはできず、エチレンやプロピレン由来の樹脂や化成品を生産する関係にある。自動車で最も多く採用されている樹脂はプロピレンを出発原料とするポリプロであり、ほぼ価格はナフサの価格にリンクするだろうとトヨタなど自動車メーカーは世界の原油価格、ナフサ価格から樹脂価格を算出した数値で樹脂メーカーと交渉し値決めがされてきた。ところが2005年前後から米国南部を中心としてメタン・エタンが主成分で芳香族化合物を含有しないシェールガスの採掘が活発化しこれを原料とするポリエチレン、ポリプロピレンの大型プラントが順次立ち上がったこと、及び、ナフサと同成分の燃料用名称ガソリンの需要減退もありナフサ価格は低く抑えられている状態にある

一方、東レが異議申し立てした材料は芳香族化合物(脚注分子式参照)を原料とする樹脂であり、ナフサ原料からしか合成できない。東レにすれば芳香族化合物の量は増えず値上がりし、樹脂の価格は低く設定され26年間の我慢も限界に来たとセンセーショナルな見出しの新聞記事。ナイロンやポリフェニレンサルファイドの製造工程が長いので合理化にも限度があるのだろうと思われる。芳香族化合物由来の樹脂にはポリスチレン、ABS、ポリエステル、エポキシ、熱硬化性樹脂などあり機能性が余程評価されないと採算が合わない部類に入る。逆に余程の機能性向上開発がなされトヨタグループが採用した場合は開発費も考慮した値決めがなされるので二番煎じ技術は考慮対象外、一番で無ければ苦しい

ここで歯科材料として気になるのはアクリル樹脂であるアクリルモノマーの製造法を見てみよう。古典的製造法としてACH法(原料はアセトン、青酸、メタノール)戦前は化学チェーンの中で副生成物を利用して合成。次に登場したのが炭素数4のブタン・ブチレンを直接酸化する合成法(C4法)である。国内アクリルメーカーはACH法と直酸法を採用している。ところが2008年には三菱ケミカルがエチレン、メタノールから合成する方法を開発し大型プラントが稼働させた。シェールガス由来のエチレンでも対応できることからコスト競争力がある。歯科材料は工業用途よりボリュームは小さいが、光重合特性や高強度・高靱性など機能性のあるアクリル誘導体の合成能力がより強く求められる。世界の40%シェアを有する三菱ケミカルに対してクラレ、旭化成、三井化学、住友化学、三菱ガス化学等がどのような展開をするか注目される

(参考)シェールガス(頁岩の層の中に閉じ込められたガス)地上から深さ2000~3000mまで掘削し頁岩に到達すると先端ノズルが水平方向に曲り掘削を3000m続ける。次に界面活性剤を含む水を注入し頁岩層を水圧破砕してガスを回収する。掘削パイプはシームレス管、ドリルの先端は摩耗が激しいのでカーボンナノチューブ複合材が適用されている。また当初は600種類に及ぶ界面活性剤の混合品が利用されていたが、掘削地域の土壌汚染が問題となり、現在は使用後バイオ分解する材料が利用されている。いずれも日本のメーカーが活躍している。