2022年 4月 の投稿一覧

人肌スペクトル

地下鉄有楽町線にご老人夫婦と娘と子供の4人が乗車してきた。お婆さんは車椅子。一眼でウクライナから避難されてこられた家族だろうと高い確率で思った。ルーシー・コサック系の風貌。子供を除いて深く刻まれたシワ。母親も年齢見合いで疲労感ある肌。日本に以前から留学などでおられる人の透明感のある肌と比べると随分違う。そのことに大変な経験・ご苦労をされたことを物語っている。

車内の行く先表示に目を凝らして見ている。言葉少ない会話。日本語がわからず、かろうじて短く流れる英語表示を頼りにしている。現在コロナ禍にあって電車では幾つかの窓を少し開けている。地下鉄では騒音レベルが地上走行時より高い。防空壕で身を寄せていたことをフラッシュバックするのではないか?など心配になった。日本に到着したら仮住まいなど事務処理があるが、それより真っ先に温泉に浸かって欲しいものだと感じた。肌の荒れも滋養ある食事を摂って疲れを癒すことで復活する気力回復が何よりだ。

日本人は人肌の違いで差別をしない。ホワイトだから優れていると思わない、肌色に関係なく賢い人はいる。身体的能力は抜群であることも知っている。スポーツはいうに及ばず、音楽におけるリズム感覚には圧倒される。ペリー来航に黒人が乗船していたかどうかは知らないが、たとえいたとしても“大きいなぁ”と驚くだけだったと思う。 横浜地下鉄の壁に企業CMパネルがある。そこには浦賀に来た外国人より負けない体格(すなわち相撲取り)にて出迎えた風景が描かれている。なかなか洒落たことをしたものだ。

話を戻して、人肌の反射スペクトル(波長スペクトルのパターン)は白人、黄色、黒人は皆同じ。養老先生のYou tubeでそのようなことを話しておられた。WEBで調べると、元の文献から引用されたスペクトル図が他の人の投稿で記載されていた。(人肌スペクトルで検索して下さい)。

このブログでも印刷の何たるかを紹介した。色についてはそれなりにわかっているつもりでいた。ところが、先生の話されたのは「黒人もホワイトも肌から発する光スペクトルは同じだ」。言われれば納得。でも長い間、気がついていなかった。黒体はあらゆる光を吸収してしまうから黒いと思っていた。だがスペクトルが同じであるとするならば明度だけの違いになる。

色彩の表現方法にはいくつかあるが、その一つがLab である(L値、a値、b値)

+a は赤み、-aは緑、+bが黄色、-bが青みであり、明度L値(100になるほど明るく0は暗い)の3次元直行座標で表現する。 ここで先生の言われた“黒い”のではなく“暗い”。これが意味するところは非常に大きい。

日本人の多くは気高く、まして根拠のない肌の色で優劣を判断したことはない。このことを世界の人が知れば無用な人種差別トラブルはないと思う。是非 伝わることを願う。

 

フレキシタリアンは地球を救う?

Flexitarian これからの世界の標準食だそうだ。Flexible+食の造語であることはわかる。まさか柔軟な食べ物ではないこともわかるがさて? 末尾に**anがつく食習慣はある。ベジタリアンは古くからのお馴染みワード。ビーガンも最近はよく耳にする。恥ずかしながらベジタリアンは野菜のベジタブル由来だと長年思っていたが、vegetus(ラテン語:新鮮・健全)とwebで知った。ビーガンとは元は同じでベジタリアンは乳製品を摂るが、ビーガンは全く摂らない違いらしい。

で、今回話題のFlexitarianとは何ぞや。そこには人にも地球にも「ヘルシー」な食生活を指すようだ。気になるので、このタイトルの文献を探した。(nature 3月号P28 2022)。見つけたのは良いが結論を実行するには覚悟が要る。読まずに引き返すならばここだ。だが、地球を救いたくない人は少なくとも日本人にはいないはずなので、おそらく早く結論を言ってほしいとお望みだろう。そこで要旨を記載。

要旨はこうだ。食糧生産により極めて大規模な温室効果ガス汚染が発生している。このままだと、食糧生産以外の工業・物流・生活で排出する温室効果ガスをゼロにしても目標1.5℃に抑えることはできない。

食糧生産における温室ガスは全体の40〜50%を占めるからだという。ご存じのように牛は反芻動物でゲップするたびにメタンガスを放出する。また、牛は餌をエネルギーに変換する効率が低い(約30%)こともあって、植物野菜を直接人間が摂った方が高い効率である。タンパクは僅かな肉や魚で補填するとして。これをなんだかんだと計算すると、30歳平均体重の人の1日必要2500カロリーの食物で1週間中摂る肉は100g。そうすれば1,100万人の命が救われ、地球も救われると記載されている。具体的数字は図参照。Flexitarianのイメージが具体的になった。

経済的に恵まれない国ではとうもろこしの粉をお湯で希釈して食事としているところもあり栄養不足の子供の映像を目にする。まして戦争で農業が破壊された場合はどうなるのか。為政により多くの餓死者が出たことは欧州でも過去に発生した。それが今のウクライナ。決して開発途上国の貧困国だけの話だけではない。健康を維持するための最低限食糧に今一度注目しても良い。戦争で小麦粉、調味料など値上がりした。これを良い機会として見直しするのも間接的に地球に貢献する。としよう。

この記事には卵や乳製品バター、チーズなどが記載されていないが、100gは衝撃的数字だ。過去の日本人なら耐えられる数字だと思うが、欧米化により、この2〜3倍の肉を消費していると思う。これからハンバーガーショップの看板を見ても我慢・我慢。ステーキ屋から漂う香りに誘惑されないか? これは大丈夫。筆者の場合、財布が強いキーパーなのでブロックしてくれる。冗談はこれくらいにしてこの文献が推奨する食事とはを図―1に紹介する。ついで図―2に各地域の食物摂取パターンを示す。

図―3は環境コストと食糧の負担・増加を示している。衝撃的であるが決して無視はできない。大食いタレントとして糧を得ている人がいるので軽々には言えないが、ぼちぼち大食い番組はやめては如何だろうか。その代わりに、Flextarian生活をしている人のエネルギー効率、栄養バランスをコンペするような番組もあっても良いのかも。

ただし、この文献は地球環境面からの記事であり、個人の健康との関係まで深く言及してはいないことに留意する必要がある。炭水化物の過剰摂取は糖尿・高血圧の原因になり、乳製品を摂らないとタンパク質欠如となり骨粗しょう症の原因にもなりかねない。タンパク源として大豆由来、魚などのへの変更も必要だ。要はバランスの良い食事と地球のバランスの両方への意識。個人ではコントロールが困難だけに新規なビジネスが出現するきっかけになるかも。それが何かFlexibleに考えることにしよう。(上から図−3、図ー2、図ー1)

身近なAI、DX

ビックサイトでAI,DXを中心にした展示会が開催された(4月6日〜8日)。縁がないなぁと思いつつ東京都産業技術研究センターで打ち合わせの後に立ち寄った。

会場は芋の子を洗うような大混雑に、AI、DXを縁遠いと考えるようでは時代遅れとレッテル貼られそうだと気がついた。名前を知っている会社は少なく、多くのベンチャー企業が軒を連ねて呼び込みの連呼・パンフ・販促品渡しと賑やかなこと。RPA・RPA・RPA・DX・DX・RPAとお祭り囃子のごとく。

東大西垣名誉教授の言われる「うわついたAIブーム」の雰囲気。久々に戻ってきた活気だからまぁいいか。AIといえば、顔認証による改札かな?それとも自動運転、医療関係の画像解析診断、翻訳などの深層機械学習だろうとの予想は綺麗に裏切られた。

AIで目立ったのはチャットボット。確かに身近なAI。従来であれば0120の電話で始まるコールセンターを呼び出し、#ボタンを押して目的の問い合わせ箇所につながる。だが、後でかけ直して下さいと機械音声。この繰り返しで疲れること度々あった。

チャットポットであれば、あやふやな問いかけでも大凡の答えを直ぐに返してくる。以前の機械学習では“あやふや”は拒絶され完全一致検索だった。たが今はそれが解消されている。今はそれがどうした?と不思議がる方が不思議なほどに進歩している。管理する方は何の質問・問い合わせが多いのか、その時間帯は、回答への満足度などチェックすることができ、改善点につながる。もとより窓口業務の合理化が大きい。問い合わせる方の疲労感も低減する。HPの問い合わせコーナーから投稿しても返信がない企業もあるだけにこれは良い。

ただ、問い合わせを予想して回答をあらかじめ作成しておく必要があるのは当然で、異なる問い合わせがあれば学習して追加しておく作業が必要だ。実はここが肝心なところ。冗談でチャットポットの説明員に「貴社には○○は何人いますか?」と質問があったら、どうするのか?」と聞いた。答えは「経年変化する人もしない人もいます。する場合は補充採用します」と。お見事!(注○○のところは読者の方が埋めて下さい)。

不真面目ついでにもう一件。部下の報告書を上司が添削するソフトの紹介がありDXだという。どこかオカシイ! 上司の時間を部下の添削に使うより、そのような人を採用するなと言いたいところだ。

だが、現実にはそんなレベルになっていると教えてくれたブースだった。筆者が入社したとき目撃したのは先輩社員が室長に書類を提出。すると室長は何も言わずに紙飛行機を作って窓から飛ばした。今ではパワハラとして訴えられるだろうが、あの時は身が引き締まる思いをした。上司による添削より自己更新が好ましい。

真面目な話をすると、これから電子契約が増加する。筆者も契約書の形式をどうするか問い合わせがあって、申し訳ないが紙媒体でお願いした。現在で3%前後の普及率なのだが、いつまでも紙媒体は許されないだろう。その時も含めてセキュリティが担保される必要がある。さすがにセキュリティとなると、国全体の安全問題もあるだけにしかるべき大企業の出番となる。セキュリティ会社のブースには大勢が押しかけてはいないが、説明を聞いて基本の基で支えていることに安心をした。

命に関わるAIと言えば医療分野における画像解析である。これについて国立がん研究センターの浜本氏が総説を発表されている。(アレルギー71(2) 107-111 2022令4)を参照されたい。AIの歴史に始まって医療分野の現状と将来に向けた戦略を述べられている。

筆者がなるほど納得したのは機械学習の使い分け(4パターン)である “教師あり学習” (回帰、分類)“教師なし学習” (クラスタリング次元圧縮) “半教師あり学習”(クラスタリング分類) “強化学習” (最適化)。文献のコピペでは詳細が判読しないところがあるので是非本文をお読み下さい。この文献の最後に薬事で承認されているAI搭載医療機器・プログラムがある。日本が誇れる実力を示している。

ところで、自宅近くのマンションの一角にウクライナ国旗がはためいている。避難された人だろうか支援者だろうか。あの惨状は筆者の資料作成作業にも影響している。例えばパワーポイントで資料作成ではBrand Color番号を探したり、ひまわりを想起するBGMをかけたり。この文作成においてはマッコイ・タイナーや田辺らのT-SAXと数原のフリューゲルフォンによる“ひまわり”をループしながら書いている。広いウクライナをひまわりが埋め尽くされた映画の風景を想起させる。戦争で引き裂かれた夫婦を描いた。

それが今、映画よりも悲惨な状況になっている。過去の戦争・争いの結果において人間が成長したであろうか、そうでないとするならば本来あるべきAIのソリューションは完全No! だ。分類で言えば “ありとあらゆる数多の過去の教師ありの学習”だから。

顧問のお手本

人事異動のシーズン。めでたく役員を卒業してあがりポストの顧問に就任される人。お疲れ様でした。俯瞰的な立場からのアドバイスを適宜する、でも出しゃばらないようにと。一方で現役時代より実力バージョンアップして本当に頼りにされている顧問がおられる。今回はこの人にスポットライトを当てる。皆さんの周りにもきっとおられるはずだ。

筆者が出入りしている企業の一つに中規模製造会社がある。国内外に複数事業所を持って手広く事業をされている。社長の懐刀で働いている方は80歳の顧問。背筋がスッと伸びた姿勢と張りのある顔に加え人当たりも良く若い社員からも慕われている。今般、ある案件で某都市に事業所を設置し事業展開をすることになった。その手続はこの顧問。補助金申請にあたって約50ページに及ぶ書類をパソコン駆使して3日で仕上げたのもこの顧問。いやはや若輩の筆者には到底できない仕上がりに驚いた。本来は次期社運を担う若手中堅がすべきだ。しかし日本の企業はおおよそどこもリーマンショック、グローバル化による海外拠点、そこに来てコロナショック、社員には手厚いベースアップもしないといけないとあって要員についてはギリギリのところで踏ん張っているのが実情。そこで非定常の飛び込み案件は時間が勝負のところがあるだけに、即行性のある顧問が代行して対応する。有能な顧問であれば、“非定常な瞬間”が次々と来るたびに対応することから定年を遙かに超えて「終身顧問」のようになっている。

さすがにプロジェクトが重なると特定顧問に集中するのはまずいとあって社員募集をかけているが、タスキに帯だという。そうかも知れない。有名企業で役職経験者であってもスキルの幅は非常に狭い。貫禄はあるが腰が重い。あれこれ異業種に対応するには一からの勉強とあって速攻戦力にはならない。むしろ役員にはならなかったが、地上の星として何でもござれ的にアイテムをこなしてきた人材はどこでも、いつまでも活躍できる。でもこのような人材は目立たないし、たまたま見つけた企業は離さない。

長年の経験はこの企業に新規案件を持ち込む人の人物査定を通じて怪しい案件を排除することにも活かされている。決して守りに入ってはいない。理由を聞いた。元々は金融商品営業マンだとのこと。世間の多種多様の人と交流してきて得た何かが基本にあると納得した。持ち込まれる案件も元を正せば取り扱う会社及び人だから過去の営業で得たセンスでフレキシブルに対応できるのだと。てっきり製造現場から叩き上げた人だと勘違いをしていたのを心地よく裏切られた。そして改めて凄い人だと感心。だが、時折筆者にあるべき顧問はどうなんだろうかと相談をされる。自戒・反省・そして向上したいとの気持ちを持ち続けるには年齢は関係がない。

ある日、当方が無理難題をこの会社にお願いすることになった。社長と顧問はその場で了解し、即あれこれ指示を出された。そのスピード感に驚いた。一般にはこちらが稟議書を作成しプレゼンをし、採算面を厳しく問われ、そしてご判断を頂くのが普通。

ビジネスであれば当然の見返りを計算し社業にどれだけのメリット、デメリットかを判断するのが通常だが、この案件については伸びる、伸びないは別の尺度で見ていることに気がついた。この案件に乗るのなら応援しようではないか、例え見返りが小さくても、それでいいではないか。今まで経験しなかったことが会得できる。社員にとっても良い機会だろうとの判断をされたと推察した。 社長も顧問も正に「粋」「鯔背;いなせ」な男の見本のようだ。今の日本に忘れかけている言葉を思い出させて頂いた。短期株主還元ありきのグローバル化で抜本的基本技術に取り組まなくなった日本。「粋でいなせな男気」を見せてほしい。今は女性に見ることが多いようだが、それも大いによし。突き上げるエネルギーがあれば。