量子コンピュータにかける熱意

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シニアの技術・研究者が定期的に集まって最新テクノロジーをセミナーする会がある。10人前後の小さな会である。

1年前に幹事から量子コンピュータのセミナーを依頼された渡邊氏は膨大な資料を力づくで整理し発表資料を作成。さてセミナー当日になって参加者の反応は氏の期待とは全く反対。参加者は全員が会社、大学等で活躍し今も現役並に活躍されているだけに日曜の夕方になると疲労もあり目を閉じる人もいた。当方も理解不能だが発表者とは1mの距離にいるだけに、眠ることはしないことだけに注力していた次第。誠に情けない。

参加者にIBMと特許裁判で活躍した専門家がおられ、参加者の理解にアシストになるように、短いコメントをするも、参加者の頭脳を励起することなく終了。

アナログ世界にどっぷり浸かり、30歳台からデジタルも0、1(00.01.10.11)の世界に対応してきた者にとっては無理。電子スピンは自己回転しながら方向は↑、↓でありながらその方向は2つだけでなく、中間に違う方向が数多くあり、それらの組み合わせた計算が同時になされる。化学専門家はスピンにはお馴染みだが方向は2つの意識が強い。方向は中間にいくつもあり・・・で躓き、計算結果を導くアルゴリズムが更にわからない。手法の一つアニリングは化学用語なので、なおさら理解不能の????マーク。

タイトルにある「量子コンピュータにかける熱意」はここから!

このセミナーを失意?のうちに終えた渡邊氏は凄い行動に出た。参加者がどこで躓いたのか、質問を分析して量子コンピュータの書籍を出版することに情熱を注いだのだ。原稿を書き、出版社周りをしては説明するも理解を得られずの日々が続いたとのこと。セミナー参加者は筆者を除いて国内トップクラス大学卒がメインにも関わらず反応しなかったのだから無理もない。でも量子コンピュータは世界を変えうる。その時、日本は・・・の情熱が氏の行動を支えていたと思う。

その努力が報いる日が来た。講談社サイエンティフィク社から「入門講義」として出版することを約束された。セミナーの時に参加者が理解できないところを例題として取り上げ、模範解答を記載することで理解し易い工夫がされている。編集者の力量を見る思いだ。

そして2021秋に出版。現在、増刷も進んでいる。7月の日曜日のセミナーは再チャレンジになった。参加者に書籍を無料配布。財布を取り出す人が続出したが氏の説明によると、奥様が理解できなかった人が入門書を出版するに無言の応援をしたのだから無料で受け取ってもらうべき」と言われた。凄いなぁ、この人ありて奥様も凄い。かくなる上は入門書とは言え筆者のレベルを超えて難解ではあるが、最後まで目を通すのが責任と感じた。アルゴリズの方法の一つアニリングの発明は日本。アニリング発明者の西森氏が本の帯を書いた。その通りだと思う。

高齢化の範疇に入らない=入っている意識がないから若者が到底できない活躍をやってのける。当日の出版記念に幹事の肝煎りで琉球舞踊を披露。琉球お菓子サーターアンダギーと量子コンピューターの本を手に家路に散っていった。サータアンダギーの割れ目の方向がランダムにあることに、確かにスピンの方向が多くてもありかと妙な理屈をつけながら。

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