この1週間、京都の家内の実家にいた。当方は毎日の朝食に納豆を摂っているので、普段は納豆を摂らない家族が気を利かせて納豆を用意してくれた。小粒でやや硬めの豆で撹拌してもネバネバ糸曳きが少ない。一方でやや甘い。

原料は同じく大豆には間違いがないが、まず5ミリほどの小粒が目に入る。なぜ小粒か?と聞けば小粒ほど表面積が大きいので納豆菌が多く付着する。なるほど。なぜ硬いのか? 大豆を蒸す時間を豆の弾力を見ながら調整するとのこと。蒸す時間が長く、発酵温度が高いとアンモニア風味がする(風味がボケる)らしい。知らなかった。水戸藩納豆と京公家納豆の違いとも言えそうだ。尤も公家が食していたのは大徳寺納豆だと思われるが、やや苦味が強く味噌に近い。一度京都を訪れたなら小粒納豆と大徳寺納豆をトライされたら文化の一端に触れるかも。

ここから、巷間言われていることにやや疑問に思っていることを取り上げる。

納豆を「100回、極端に500回混ぜると納豆キナーゼが増える」と宣う人がyou tubeなどで多く見かける。以前このブログで少し触れたが、

1)納豆キナーゼ量は工場での発酵処理工程でほぼ決定され、撹拌で増加することはない。物理化学で整理され、納豆キナーゼが増えるのは俗説。

2)糸引きはγポリグルタミン酸がメインでこの分子の間に擬似架橋成分の多糖類の一種であるフラクタンとの水素結合やイオン相互作用で架橋したように絡むことによる。納豆キナーゼではない。

3)それでは納豆キナーゼとは何か? AIに聞いた。

 

 

 

これでスッキリした。 そこで遊び心で 糸引きについて実験をしてみた。

・多糖類の代表である砂糖を配合。結果 強い糸引きが簡単に得られた

・お酢(りんご酢)を配合すると撹拌により空気を巻き込み、太い糸引きが得られた。

面白いので皆様その他をトライしてはいかがでしょうか。

糸引きの撹拌工程は食感改良にあるのだが、擬似架橋や架橋は工業材料に多く利用されているのは熟知の通り。納豆を撹拌しながら手応え(弾性率G‘変化)を想像するだけでも面白い。

擬似架橋を生成するには温度が重要な因子となることから、当方は冷蔵庫から納豆パックを取り出したら、約30〜40度程度の温水の上に浮かべる。その後に撹拌すると10回程度で強い糸引きが完成する。冷蔵庫から取り出し直後だと100回に相当する。これも皆様 本当かと試してみては如何でしょうか。

物理化学的にいえば、γポリグルタミン酸の分子間距離を広げ、フラクタン分子がその間に浸透し擬似反応する図が浮かんでくる。

γポリグルタミン酸のガラス転移温度は20度。この温度以下ではガラスのように分子が動かず硬い状態、20度以上では分子がクネクネと動きやすくなる。分子間距離も温度が高くなるほど広くなる。フラクタンが入りやすくなる。当方の実験温度と概ね一致する。但し、65度以上では納豆キナーゼが分解するので要注意。

自然は凄いことを実にサラッと(否ネバリ強く)教えてくれる。実に愉快ではないか。