原電とそよ風発電

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東北大学が12月12日にリリースした内容はインパクトがあった。 「福島原発事故後に周辺地区で捕獲された野生猿の血液・骨髄細胞の結果―血液・骨髄細胞数が内部被曝線量と逆相関を示す。」逆相関とは被曝量が増えると血液・骨髄細胞数が減少。捕獲した猿の生活地域別、個体別の区分けを慎重に実施し対象となる猿を95匹抽出。「内部被曝線量が最小1.9μG/日~最大219μGy/日)中央値が76μGy/日だった。その結果、末梢血液中の白血球と血小板数、骨髄中でこれらの血球の元となる骨髄系細胞と巨核球が内部被曝線量と逆相関にある」と発表した。なにより図のように血液中の核の数とサイズの変化に驚かざるを得ない。猿の動きや外観からは健康状態に異常を認められないとしつつも、低被爆線量であっても長期間浴びた場合の生物への影響を解析する上で貴重な研究報告。

しかしながら研究チームは低線量を常時浴びているイラン・ラムサールでは平均10mGy/年被爆の環境下でも顕著な放射線影響は報告されていないことから、馴化や適応もあり複雑であるとして慎重な研究継続をするとのこと。研究者の姿勢として凄く立派である。

科学に謙虚に真正面から向き合うことが人類・成獣・植物、大きくは環境に対して必要であることを改めて認識した。原子力発電は科学に基づいて稼働している。ただ、周辺インフラ整備には科学を軽視してコストを重視をした。科学的根拠に基づく勧告に従って津波対策・非常用電源など措置を採っておれば、これほどの結果にならなかった。科学に依存する一方で科学を無視した。言っても聞かない東電経営者連中にはお天道様が差配したのかも知れないが多くの尊い命を失い、日本中を混乱させた。村の鎮守の場所は過去津波の被害がない場所に建立されていることを、誰か一人でも関心があり、何故だろうと考え行動していればと悔やまれる。日本特有の組織の同調圧力とか空気もあるかも知れないが、経営者のトップの仕事は同調空気を作らない風通しの良い組織をつくることにある。

あれは原電の話。もう過去の話。。。と片付けるには貴重すぎる結果。これから些細なことでも人間にとって健康・快適なテーマに結びつけるために、何があり、どうすれば良いかの5W2Hを考えるのは意味がある。歯科関連において線量が圧倒的に低いコーンビームCTによる歯列顎形状の特定技術の開発、海外を飛び回るビジネスマンの飛行中被爆する線量対策としての航空機材料の開発などが挙げられる。

 週末になってポーランドで開催されていたCOP24の報道があった。京都議定書、パリ協定と名前は浸透。先進国のみ実施の京都議定書から、途上国も取り組むと変遷。CO2削減を産業革命時点+2℃以内(1.5℃以内がゴール)。詳細がこれから明らかになるので、論評は差し控えるが素人の直感では(自国ファースト政治などもあり)相当厳しいと想像する。

今後迎えるMaaS (Mobility as a service)や5G世代社会を支えるのは電力。その発電を脱炭素で賄えるのか。太陽光、風力など供給量変動の大きい自然エネルギー利用に対して火力、原電がベースロードとしてミックス構成を変える必要がある。北海道地震による長期停電、ソフトバンクの通信トラブルのようなことが電力において発生したら国は持たない。つい最近、京成線内の夜間電気工事の遅れで、接続している翌朝の京急は運休や部分運行と混乱。僅かな時間でも電力が停止するととんでもない混乱を招く。大きい技術開発は政府・公的機関・民間企業にお任せして大いにお手並み拝見をしよう。

 ただ個人レベルでも意識を持ってそよ風程度だが環境への試みをするのもありか。ポリシリコン価格暴落で太陽光発電メーカーが不振になったり、電力買い取り制度問題で個人的にも影響をうけている太陽光発電。投資コストが少なく発電が確保できる風力に着目。(最も効率が良いのは地熱発電だが観光産業との兼ね合いで進展していない。) 約10年前に仲間で日曜に集まって「そよ風風力発電」を合い言葉に風力発電用ローター(羽)の形状検討をした。ローターは剛直な紙を折り紙で製作した。出力には換気扇を利用して起電力を測定した。手先の器用な人、電気に精通している人、デザインが得意な人、発想が人とは違う人の四人が集まった。ローターの回る周速と発電量の関係はローターのデザインに依存する。理論値があり、当時の市販されているローターは得意領域の風速に合わせて製品化されていた。そよ風領域はなかった。

会議室を日曜限定の臨時工作室に転用していろんなデザインのローターを折り紙でトライする内に次第に風洞実験で確認価値がありそうだとの運びとなり、風力発電で有名な足利工大でテストをした。その結果、ローターの回転(周速)と発電量の理論値ラインに乗ることが分かった。(ループウイン社公開の発電効率の図上にプロットした)

ビル風は勿論、人が通り過ぎる時の風でも発電する。この10年の間に風力発電から撤退した企業がある一方で羽を巨大化して海洋風力発電に力を入れる企業と2極化している。当時の折り紙形状のアイデアを製造するには厄介な点があったが、現在、当方も関係する3Dプリンターを利用すれば可能だと考える。 原電と規模では比べものにはならないが、そよ風発電が大きな風を起こす時がくることを。

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