理化研(和光)オープンキャンパス

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先週土曜日(421日)はRIKEN(理化研)キャンパスオープンとあって和光市駅前から無料バスを待つ市民が長い行列。親子連れ、中高校生の団体などが解放された研究設備やセミナー聴講を楽しむ和光市あげての恒例行事。バスを利用しない場合は和光市駅から徒歩で行くのも楽しみの一つ。舗道にはH、He、Li、Be・・・周期律表の元素プレートが埋め込まれていて、辿って行くと理研に到着する仕掛けができている。ニホニウム道路と称する。途中にニホニウム発見を記念したモニュメントが当方も関係した企業の寄付により建立されてい

産業総合研究所、材料研究所と並んで国立研究所の一つである。平穏なキャンパスも、この日は若い学生・子供の流れが交錯する活気溢れる場に変貌する。木漏れ日の下や池の周辺でお弁当を拡げる風景に学生がサイエンスに興味を持って育ってくれると良いですねと案内役と話す。

最近ブームの脳科学研究棟には長い行列。一番キャンパスの遠い地区にある仁科RIBFに脚を伸ばす人も多かった。日本で初めて発見・確認された元素番号113ニホニウムの誕生現場を一目見たいのがその理由。地上2階、地下3階を貫く巨大な装置に驚く(写真注90度回転して下さい)。

自分の知っている周期律は精々4行目までであとは飛び跳び状態。自然界での発見はフランス、ドイツなど当時の化学先進国がリード。ウラン以後の超重元素は合成によるので大規模な加速器(サイクロトロン)・検出器を所有する国が占めている。米国、旧ソビエト、ドイツが競っている。日本は所有していた加速器が占領政策で東京湾に投げ捨てられるなど基礎研究するにも装置も予算もない状態からのスタート。よくぞここまでと感慨にふけるが説明員も力が入っていた。さぞ関係者全員が多くの苦労したのであろう。異なる元素の一方の原子核を1秒間に10兆個を片方の元素に当てて融合させようとしても、なかなか当たらない。100日、200日昼夜連続しても結果がでないこともあると説明されいたことが印象的。万々一の何乗かの確率で当たって融合し中性子を順次放出し崩壊して既知の元素に到達したことを確認することを数回実績をつまないと認められない気の遠くなる仕事である。

非常に高度なサイエンスを分かり易くするための工夫、簡単な模型などが容易されており、説明員の語り方も平易な言葉を使うなどキャンパスオープンに慣れている。市民からはニホニウムの発見で医療・新材料への展開はどうなりますか?と素直で直球質問があったが「分かりません」と。面白かったのは原子核を強く当ててはどうですか?との質問には、いやソフトに優しく当てるのがコツです。強いと相手が融合しないで弾き飛ばされるのでダメと。なにやら人間関係と似ていますねと笑い。成果の結論がでるのはきっと100年後。楽しみにしましょう。今後は119番に狙いを定め仁科RIBFの予算を集中させるとか期待しましょう

当方がかねてから興味をもっているのは中性子発生装置の小型化。橋梁、ビル、トンネルなど経年劣化を現在は超音波やX線の非破壊試験装置で実施しているものの、測定可能の厚みに限界がある。一方、中性子はコンクリート30cm奥の鉄筋の状態、水たまりの状態を鮮明に撮影することができる。問題は中性子発生装置と中性子を受け止める装置の小型化。2013年に大竹教授を中心とするチームは長さがおよそ10mまで小型化することに成功している。水から水素イオンを発生させ7MeVまで加速させBeに衝突させて中性子を発生させる。発生した中性子を受け止めるには鉛、炭素、高密度ポリエチレンの塊が採用されているが、それだけで20トンもある。なのでトラックに搭載して実用化するには更なる小型化と軽量化が求められる。5年経過した現在の状況は非開示研究棟で組立てをしているとのこと。建造物60年寿命問題までには間に合うことを期待している。 

理研は形式上縦割りの組織ではあるが、垣根がなく水平展開し易いダイナミック性を持っている。先端アカデミック、サイエンスの成果を民営化するDNAを昔の理研コンツエルンにみるように潜在的に持っている。この動きは今後大いに注目される。

 

 

 

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