香りと発毛センサー

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アロマテラピーは副作用が少なく、ストレス抑制効果、殺菌効果あるいは認知症の改善効果等、幅広い効果が報告されている。富山大学 第二外科講師・長田氏はヒバ精油の揮発成分中に食道がん、胃癌、大腸癌、乳癌に対する抗腫瘍効果効果が存在することを確認し、ヒバ精油を用いた新しい治療法の確立をめざした研究を行なっている。昨年秋に発表し、その一部をブログに取り上げ紹介した。檜の香りはリラックス効果があるのは経験しているが、まさか檜葉油の揮発成分が癌に抗体効果があるとは想像もしていなかった。

 ところが、同じタイミングでドイツから白檀の香り成分が薄毛抑制効果があると発表された。こちらの論文をわかり易く解説した抄録が現代化学3月号に新村氏が紹介している。メカニズムの完全解明一歩手前とはいえ、人間、いや哺乳類、魚に至る生物の精巧緻密なセンサー及び制御システムに驚いた。

気が早い人は白檀となれば、お線香の原料だとして、浅草寺や成田不動尊の参拝客が常香炉の煙を頭や体に掛けているのはその為か??。。と考えるか、それとも日本香堂の株を買うか。しかし天然の白檀は効果がないと論文は冷静である。白檀と同じ香りのするサンダロアという化合物である。天然には存在せず、スイスの会社が合成し香水に利用されているらしい。 サンダロアと白檀の香り成分サンタロールの分子式を記した。 

 

 

サンダロアは毛根細胞にあるOR2AT4という嗅覚受容体の一種によって受取られ. OR2AT4はサンダロアと結合し,活性化されることもわかったサンダロアを振りかけることによって,毛髪の成長を促進するIGF_1の発現量と分泌量が増大した。とのこと。

 この記事で知らなかったことは「鼻腔の天丼部分には,嗅上皮とよばれる,嗅神経細胞がびっしりと並んだ組織がある。嗅覚受容体は,嗅神経細胞の膜上で発現してぃる。嗅覚受容体

に匂い分子が結合すると,受容体が活性化し,その情報は脳へと伝えられる。ヒトでは,嗅覚受容体は約400種類存在する。それぞれの受容体はさまざまな匂い分子に結合でき,1種類の

匂い分子は複数の受容体と結合できる。私たちは,400種類の受容体のうち どの受容体が活性化されたかとぃう組合わせによって,数万種類ともいわれる多様な匂いを認識してぃるのだ。」 臭いの分析装置がない理由がこれだ。

 熱分解ガスクロマトグラフで揮発成分を分析しても臭い成分を特定できない。そこで研究室は違うが友人が発明したのは熱分解ガスクロと自分の鼻を並列につなぎ、官能検知した瞬間の熱分解ガスクロマトグラフに現れたピークを臭い成分と決定した。発表した時はサイエンスに遠いと評論する人がいた。だが、これが精一杯の正解に近いやり方だったのだ。精一杯と書いたのは、臭いは単一成分だけではないからだ。

嗅神経細胞が鼻の天井以外に皮膚表面にあることも知らなかった。,角膜,心臓,,肝臓,,精巣,卵巣にもあることも。香り成分が皮膚の特に毛根のあるところのOR2AT4と結合することで、化膿が早く治癒することが知られている。 

この記事を見ての個人的感想であるが、脱毛美容はどうなんだろうか? 暴論・妄想の誹りを免れないが、魚は目だけでなく臭いを皮膚で感じて餌と判断する。とすれば、今問題の海プラは魚が餌ではないと判断する臭い成分を配合することもありか??とも考えた。

 さて、話は飛び、自動車の衝突防止センサー。前走行車に一定の距離を保ち走行する。停止も自動。横に併走する車の存在も知らせてくれる。とても便利である。カメラ、ミリ波レーダー、及びLiDAR(赤外線レーザー光)を利用している。しかしながら、土砂降りの雨となると性能が低下することが知られている。そこで、三菱電機では、それなら3つの手法で測定し、最も確からしい数値に変換することで回避できると悪天候に対応可能な車載向けセンシング技術」発表した。 臭い成分を400のセンサーの組み合わせで特定する生物に比較するには小さい歩みであるが、理にかなっている。 図は三菱電機発表資料抜粋。

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