ガラスは液体?。樹脂高速切削とガラス転移点

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

いきなり、ガラスは固体ですか?それとも液体ですか? と問われると「硬いので固体」「いや、そのような質問されるからには逆の液体だろう」と両方の返事が返ってくる。

 以前なら、ガラスは液体!これが正解だった。ガラスは酸化ケイ素が結合した化合物であり、溶融状態から冷却されてガラス板やガラス瓶になる。冷却過程で溶融ガラスの粘度が極端に高くなって分子がちょっとやそっとでは動かない状態になって“留まっているような状態”。

 酸化ケイ素自身が剛直で、そのネットワークなので液体といえども剛直で透明な性質を利用して、製品として利用している。 ガラス本人にとっては何万年の間にジワジワと流動を継続するつもりなので、その意味ではガラスは液体である。 

ガラスに限らず、金属や樹脂にも溶融状態から冷却によりあたかもガラスのように分子の動きが制約されて硬くなる温度領域があり、その温度をガラス転移点と言う。PET容器に熱水を注がないように注意書きがあるが、一般的にガラス転移温度が65℃付近にあり、この温度以上のPET分子はあたかも液体のような動きになる(ゴム領域)ので容器として形状維持ができないことを示している。 

ポリカーボネート樹脂は自動車ヘッドライトやDVDなど寸法精度がよく透明性があるが、それもガラス転移点温度が145℃と高く、通常の温度領域ではガラスのように硬く、透明性が維持できることを利用している。

因みに、ポリカーボネートの成形温度は280~300℃近傍であるが、極端に380~400℃で長期間溶融状態をキープすると、分子が規則正しい結晶構造をとり、白色となることが知られている。

本来は結晶性樹脂であるが、分子鎖が剛直なために、結晶のような規則性折り畳みが出来ないので、通常の成形では分子はランダムになった状態で冷却されてガラス状態になる。 通常の成形温度、冷却条件では結晶化しない“非晶性樹脂”として、ポリスチレンや歯科材料に採用されているPMMA(ポリメチルメタアクリレート)がある。PMMAのガラス転移温度が90℃近傍なので、体温や熱い食事をしたとしても歯と利用するに十分な剛性を維持できる。

 一方、ガラス転移点温度以下の温度(普通は室温)でかかる製品を切削しようとすると、射出成形、金型内での流動ムラなどの履歴があり、製品中に残留応力があるために、極めて低速で長時間をかけて切削することを余儀なくされる。

今後、フルデンチャー入れ歯を樹脂化するには、口腔サイズをLL,L M Sのニアネットシェイプでモデル型を成形し、そこから切削するアイデアがある。ニアネットとすることで、顎と接触する凹部は切削する必要がない。しかしながら、成形の残留応力と切削時に発生する応力で樹脂は応力解放すべく、クラックを生ずる。これが厄介である。 筆者は材料の分子運動、流動パターン、型内配向、残留応力発生を解析して、高速切削可能なソリューションを提供している。(特許登録済み)

 話を戻して、最近、ガラスは液体にあらず、固体にあらず説が出てきた。(文献:池田昌司氏現代化学2019年10月号P52) 詳細はチェックされたい。

液体にしてはランダムと思われている形態に、やや規則的に凝集しているドメインの存在が確認され、コンピューターで変位を与えることで、本来は液体であれば応力が伝搬しないはずだが、そのドメインからある距離のところに伝搬することが示唆されている。(同紙・図参照)

 

著書らはマヨネーズやシェービングクリープ中の空気泡の構造との関連にメスを入れて追求するとのこと大いに期待しましょう。 

 

 

 

 

 

筆者は最近大ブームのナタデココはデンプンの水和凝集体であるが、これはゲルなのか液体なのか、秋ともなれば栗と白玉のぜんざいの白玉もゲルなのか液体なのか、そちらの方が食いしん坊の筆者として興味がある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。