子供の頃からずっと今まで、植物は空気中の炭酸ガスを吸収しその光合成反応の生成物として酸素を放出する。恥ずかしながら疑うことはしなかった。その“常識?”に待ったをかけることが出てきた。アマゾンの森林火災を切っ掛けに、森林破壊により地球の再生酸素の20%が喪失するとの話題があり、これに対してサイエンスの面から否定したニュースに接したからである。
このニュースによれば、確かに植物は炭酸ガスを吸収し光合成により糖を蓄積する。そこまでは正解。ただ光が当たらない夜間はどうかと疑問を投げ掛けている。答えは日中に蓄積した糖を分解するために植物は酸素を消費するとのこと。大まかに言えば、昼発生した酸素は夜間で消費するのでプラスマイナスとなって酸素増加はない。一方、大気は80%の窒素、20%の酸素、炭酸ガス0.5%、その他成分となっており、通常の植物の光合成による酸素バランスから大気中の20%もの酸素濃度になるはずがないとも指摘している。
実は海洋中の植物プランクトンも光合成をしており、全体の酸素生成量の70%を占める。この植物プランクトンも微生物により分解するために酸素を利用するのであるが、分解する前に埋設されてしまえば、生成量が蓄積されて20%になったとのこと。即ち地球が誕生以来の海の植物プランクトンによる蓄積作用によるところが大きい。
この文献にそれこそ、NHKのチコちゃんではないが「ぼーっとしてるんじゃない」と怒られたようなものである
地球の砂漠化が激しくとも、大気中の酸素濃度に変化がないのは、大きな蓄積酸素によるものである。植物の主な役目は葉から水の蒸散による地球温度調整作用と炭素固定化にある。
炭酸ガスは地球の防寒着的役目をしている。もし、炭酸ガスの層がなければ地球の平均温度はマイナス15℃以下である。過剰にあれば温暖化が進行する。なので、炭酸ガス濃度を制御するかが課題となっている。
対策として
- 炭酸ガス固定化 大型植林と植物由来のバイオマスの利用(バイオマスを焼却してもカーボン量は変わらないとの考えに基づく)
- 炭酸ガスを枯渇した油田層や深海に放出する
- 炭酸ガス固定化の派生ではあるが、炭酸ガスポリマーの合成
がある。バイオマスの利用は最近急激に成長してきた。セルロースナノファイバーは日本の期待の材料として東大が触媒による開繊技術の開発を、京大が耐熱性のある材料(コンパウンド技術を含め)で先頭を走っており、実用化面では第一工業製薬、日本製紙、王子製紙、大王、中越パルプなどが開発を競っている。また、バイオ樹脂として最近実用例が増加しているのがイソソルバイトを原料とするポリカーボネート樹脂である。非常に外観が美麗であることからペレットに顔料を分散させておけば、塗装品と変わらないとあって自動車内装材として、また耐光性の実績がつけば外装材にも応用が進んでいる。自動車にとって塗装は焼き付けのためのエネルギーがバカにならないので、塗装レスは願ってもない材料といえる。従来のバイオ材料は既存材料とよくて品質が同等狙いながらコスト高が敬遠されていた、この樹脂はコストを塗装レスと相殺できるメリットで伸びている。今後、単なる“バイオ”原料では市場は受け入れないので、この傾向は好ましい。
東京大学では炭酸ガスとブタジエンと反応させて、ポリラクトンを合成したと発表している。(2004年)このプロセスも面白い。柔軟な分子鎖と剛直な分子の組み合わせはどんな物性を有しているのか、適用しうる市場は何か、興味がある。
2004年にミカンの皮にあるリモネンと炭酸ガスを反応させた樹脂をコーネル大学が発表し6.6million$のベンチャー資金を集め起業化したが、その後の消息を知らない。市場が単なる環境によいだけでは物性(品質・コスト)が採用のポイントになるだけに、厳しいとも言える。
炭酸ガスを利用した樹脂開発は単なる出発原料としてだけでなく、リサイクルできない製品は焼却することになるが、廃棄物のもつエネルギーを利用(エクセルギー)して廃棄物をガス化させ、ついでモノマーを合成し、最終的に樹脂にする循環系を完成させるためにも必要である。
従来の3Rとの比較をした文献があるので紹介する。(CO2固定化技術マップ2005年より)
②の地球、海中、海底への埋設・拡散についてもコストと海への環境アセスメントが不十分なのであろう2005年に構想が発表されて以来、進んでいるとの情報を知らない。ここにも炭酸ガスを発生して工業を維持拡大を図る国家間の問題があるだけに容易には進まないのだろう。