新価値創造展と中小企業不要論

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先週ビックサイトで開催された「新価値創造展2019」を見てきた。標語は「変える力、創る力、続ける力」で主催は中小企業基盤整備機構。約350社の中小企業が出展。産業技術(生産技術、新素材、IoT,ロボット)、健康福祉(健康、医療、予防、介護)、環境(環境、防災、地域社会)の3分野。 半日では全部みることは適わないが、約60%以上の企業は標語通りだと総括することができた。 残りの40%についても出展する目的として自社製品、サービスが他社との競合性(位置づけ)を明確にすることにあったと話す経営者もおり、次回の展示までに変える、創ることを意識していることは非常に好ましいと感じた。以下トピックスを挙げると

 【産業技術】 革新的生産技術は巨額の投下資金と人的余力が必要であることから中小企業では限界がある。但し、新素材に関しては少ない資金でありながらアイデアと度胸が差配するところから、刮目すべき素材が出展されていた。ナノポーラスシリカの医療分析用、レアメタル回収素材、高分子改質、撥水・撥油材料、5G狙いの液晶ポリマー/銅箔貼り合わせ技術などは大企業と互角に亘りあえると思われる。歯科技工に応用できる基礎技術は存在している。

 ロボットは対象を中小企業向けに絞り込み、作業の一部だけを半自動化することを狙っており、現場を熟知している企業ならではだと感じた。

IoTではスキャン装置及びソフトが注目される。歯科技工向けには精度が問題で適用できないが、簡単な5万円程度のハンディ装置で例えば全身を10秒程度で読み取り、クラウドを通じてSTLデーターを送信しデーター変換(500円/回)。衣料用など1ミリ程度の精度が許されるなら普及すると思われる。歯科業界からも熱い視線が送られているようだ。

 【健康福祉】 介護・農作業アシスト装置出展企業が目立つ。横並び。今回は出展はしていないが東京理科大ベンチャーが先行し上場を準備中であることを考えると、後発企業は差異化特徴を何に求めるか、これからが勝負になる。それが楽しみだ。

 【環境】プラから紙にの世間の流れをいち早く商品化しているのは逞しい。しかしながら、紙は本当に環境に良いのか? 伐採―輸送―粉砕―パルプ(廃液処理)―漂白ー製紙の長い工程では環境負荷はプラに比較すると大きい。まして水物包装には内面にポリエチなどプラをラミネートする必要があり、結局はリサイクルできずに燃焼処理に頼ることになる。食品包装の長期保存ではプラがあってのことだとすると 紙への熱が冷める時が何れ来ることも横目でみながらの展開になる。 が、中小企業は2面作戦をやる余裕はない。そこが問題だ。

 さて、筆者がなぜ新価値創造展を見に行ったか?

それは日経ビジネス11月12日号に「中小企業は消えていい・今や正論?」の記事があり、違和感を持ったからである。記事は元ゴールドマンサックス銀行マンから中小企業社長に転出した人の著書とインタビューを日経がとりあげている。既にお読みになられた人もおられようが、ポイントは日本経済が1%程度の経済成長(=停滞)している原因は99%を占める中小企業にあり、2060年までに半分にする必要がある。給料が低いので国内消費が伸びない。賃金を上げるべきである。OECDも日本を非難している。云々である。

 元銀行マン・現美術商では本当に日本の中小企業を論ずるだけの資格があるのか? 現場を知らないのではないか。筆者も思うだけではこの著者と同じであるから、展示会で本当の姿を見る必要があると感じたからである。

従来、このような暴論がでると、雇用の受け皿として社会に貢献しているのは中小企業である説が当然出てくる。が、それだけだろうか、中小企業には大企業にない特徴があり、社員はそれに満足している。以下がその理由。

*特にオーナー企業は決断が速い。

*オーナー企業は特に孫の後の世代まで継続繁栄するための手段・ネタを収集することに余念がない。特に重視するのはタイミング。大企業は長期事業計画立案はすれど、計画を綿密に作成するために、その間に世間が変化してしまうことがある。

*AIは過去のデーターからアルゴリズムで計算し、その延長で将来像を描くが、過去延長線にないカタストロフィ的な案件には全く役に立たない。そこは優れたカンピューターがよほど役に立つ。それには、長い経験が必要。短期で社長交代する大企業はできかねるところがある。

*中小企業では高齢者は実力があれば現役続行できる。若手と競争して新技術を習熟する意識が高い人が多い。 

*大企業で勤務した人が再就職で中小企業を選択する理由の一つが、大企業では部分のみの作業・仕事をしたが、全体の流れを視野にいれての仕事ができることを希望する人もおり、もとより実力があるだけに貴重な戦力となっている。大企業は人の使い方が不得意。

 「中小企業は半分消えていい」の著者は結果と手段をはき違えている。賃金アップすることで企業体質が悪化し会社を閉めるのは隣国で立証している。世界トップの低失業率=社会の安定化に繋がっていることを重視することが国体維持の基本。技術やサービスにて遅れをとり結果として半分が消えて行くのはありうるが、初めから半分でいいとの結論は全く筋が通らない。 筆者の結論は「暴論」である。 頑張ろう! 社員・家族・社会そして日本を発展させよう!!

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