健康番組花盛りである。TV視聴者がシニア層かその予備軍の事情もあるのだろう。赤ワインにはポリフェノールが入っているから健康によろしい、大豆のイソフラボンもポリフェノールが、緑茶にもポリフェノールのカテキンが。。。その数4,000~8,000だとするWEBもある。きっと植物の種類の数だけポリフェノールの数があるのだろう。植物は根が生えたところから動くことができない。強い紫外線を浴びようが、酷暑であろうが身を守るべく紫外線吸収剤を体内で合成し、酸化防止剤を合成している。ポリフェノールは酸化防止剤である。我々がポリフェノール含有植物を食べることで、体内で発生している活性なラジカルをトラップする役目がある。実は食品、プラスチックス、化粧品には使用条件下で酸化により分子が劣化(味、匂い、強度低下など)しないように、フェノール系酸化防止剤が配合されている場合がある。ポリフェノールの「ポリ」は「多い」を意味するので、ここでは非常に単純な形をした酸化防止剤で酸化防止のメカニズムを紹介する。
3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン
通称:BHT
フェノールOHをかさ高なターシャルブチル基が立体的に覆っている。
分子の大きさと位置を模型で示したのが右図。
酸素原子を赤で表示している。フェノールの反対側にあるCH3(メチル基)から電子をOHに向かって押していることからOHのH(水素)は外れて水素ラジカルとなり食品やプラスチックス内で劣化により生成したラジカルと反応する仕組み。一方、水素ラジカルを放出したフェノール化合物は以下のスキームで分子構造を変えて安定化していく。途中の酸素ラジカルは隣の嵩だかなターシャルブチル基で立体的に保護され他の分子への転移は免れる。
賢明な読者は、それなら保存・使用期間の劣化に対して多量の酸化防止剤を配合する必要があると考えるのは当然かと。しかしながら添加剤業界では自動修復するリン系添加剤を配合する。このリン系(フォスファイト系)添加剤との相乗反応(詳細割愛)により、ある程度は元のフェノール系酸化防止剤として作用することができる。総合すると少量の添加剤配合で性能が維持できる。プラスチックスに配合されるフェノール系酸化防止剤は用途により分子構造が異なる。電線など寿命が50年以上設定する場合にはフェノールの数が多く、雨などで抽出されない分子形状をしている酸化防止剤を利用する。使用中に発生する過酸化物を積極的にキラーするイオウ含有添加剤も併用することがある。計算機科学とAIで何年後には添加剤分子設計および配合最適化ができることを期待する。
さて、糖化。10月18日のNIKKEI STYLE 記事(老化を促進させる「糖化」 実は飲酒と密接な関係が… )。 が気になって読んだ。飲酒で赤ら顔になる人が対象で、いくら飲酒しても顔色が変わらない人は飲酒と糖化は関係がない。しかしながら「糖化」とは何?。記事中の同志社大の八木教授の発言を引用すると
「体の中で起こる糖化とは、体内の余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質を変性、劣化させていくことです。たんぱく質は、臓器、皮膚、筋肉、血管などをはじめとする体を構成する重要な成分です。つまり、糖化により体を構成するさまざまな要素が劣化していくわけです」と述べられている。「糖化が進行していくプロセスでAGEs(糖化最終生成物)という物質が生成されます。AGEsはさまざまな経路を経てつくられ、一口にAGEsと言っても、論文に報告されているだけでも数10種類あり、実際のところ100種類以上あるともいわれています。このAGEsこそ、老化を促進させてしまう厄介な物質なのです」(八木教授)
(筆者注:AGEs;Advanced Glycation Endproducts)
「AGEsの弊害の一つに、たんぱく質の硬化があります。AGEsはたんぱく質同士を結合させ、『悪玉架橋』と呼ばれる厄介者を体内につくってしまうのです。悪玉架橋ができると可動性やしなやかさが失われ、硬化してしまいます。さらに、体内には、AGEsをキャッチするレセプター(受容体)が存在し、そのレセプターがAGEsをキャッチしてしまうと炎症を起こすのです。このようにして、体内のさまざまな臓器の機能が低下していきます。これがいわゆる『老化』(八木教授)
飲酒との関係はアルコールの分解アルデヒドが存在するとこの反応が促進するとのこと。アルデヒドを酢酸まで分解仕切ってしまう酵素を有する人は関係がなさそうで、顔色が変わらない酒豪は安心して良さそうだが、元の糖の過剰摂取は避けた方がよさそうだ。
ではAGEsの測定はどうするのか? 先週、先端材料展、ロボット展がビックサイトにあり、別の企画展示ではデジタルヘルス展が開催されていた。 シャープ・ヒューレットパッカー協賛ブースにAGEs測定器があった。 原理はAGEsは微弱な蛍光を発するので受光の光量で評価する。経皮の数字と血中の濃度は相関関係があり、指の日焼けしていない部分に光をあてるだけで測定が可能。大まかに5分類。A:同年代では少ない。(全体の7%) B:やや少ない(全体の43%) C:やや多い(全体34%)、D多い(14%) E:非常に多い(2%)。 全体は加齢により数値は高くなるが、若くして高い数値は要注意のようです。年齢と数値の図を示す。
筆者も試してみた。その数値は0.36
では対策としては同社のパンフレットに代表例が記載。引用しておきます。これをみると生活習慣に依存していることがわかります。
最後に
酸化のメカニズムは分析・解析で解明されている。添加剤メーカーの改良研究のための解析や、材料メーカーの利用根拠を追求するための解析が相当進んでいる。筆者も添加剤の炭素を重炭素原子に置き換えて合成し、添加剤が酸化劣化でたどるメカニズムを追ったことがあった。
一方、今回取り上げた糖化については、記事や装置メーカーのパンフを基に記載したが、糖とタンパクの架橋体の分析した結果やマーカーとしての蛍光物質が何かなどについてエビデンスを知りたい。更なる有効性と精度アップのため、なにより健康人生を送る人のために。