日本の研究・COMは大学・公的研究機関が発表する最新の文献・情報発信のWEBである。
大雑把に我々の税金がどのような研究に投入されているのかリアルでみることもできる。
昨年の研究費及び論文数はピーク時の10%ダウンであり、巷間言われている日本の技術停滞を如実に表わしている。因みに研究費総額6,530億円 論文数81,403件。過去5年間トータルの研究費は3.4兆円。医歯薬関係は8,000億円(内歯関係435億円)となっている。この数字をどうみるか。ご専門の方々のご判断にお任せしたい。
究機関別 推定研究費TOP10
研究機関 推定研究費 登録課題数
東京大学 762.01億円 5,231
大阪大学 553.24億円 3,909
京都大学 531.89億円 3,889
東北大学 303.49億円 3,167
慶應義塾大学 286.92億円 1,906
九州大学 257.12億円 2,701
国立がん研究センター 236.61億円 647
理化学研究所 214.60億円 1,192
東京医科歯科大学 190.30億円 1,710
名古屋大学 167.00億円 2,119
ところで、論文についてアクセスランキングも随時行われており、2週間前までトップを維持していたのはなんと「八つ当たりする魚の発見」である。総合研究大学院大学の院生が同種固体サイズの異なる魚を水槽にいれLサイズがMサイズを攻撃するとMサイズは5秒以内にSサイズに八つ当たりする事例2800を観測、指導教官沓掛講師と共に纏めて発表した。霊長類以外に魚といえども高度な社会的情報処理と意思決定を行っていることを示していると説明している。 なるほど面白い。だが、発見である。社会・心理学分野での貢献が大であろうことを期待はするが、工業会に棲息している我が身としては、折角の科研費を有効に利用して発見から発明への展開できるのか否か興味がある。それともビックデーター、AIを駆使する人物もしくはコンピューターロボットがCDO(Chief Digital Officer)として的確な判断ができるボスとなり、疎い者がイジメの対象になるとでも想像させるのか・・・。
そんなもやもやしていたところ龍谷大と京都大学では舞鶴湾に棲息する15種類の魚について「海に生息する魚種間にはたらく複雑な関係性を捉えることに成功 ~緩い種間関係と種の多様性が生態系を安定化~」を発表。
ポイントとして(原文引用)
- 非線形力学理論を利用して開発した新しい数理的データ解析手法により、舞鶴湾での過去12年間の生物個体数変動データを分析。
- 15種の生物の間に働く複雑な関係性(目には見えない力)が刻々と時間変化する様子を捉えることに成功。
- 生態系の安定化には、出現する生物種が多いことや、種間に及ぼし合う影響が緩やかになることが大きな役割を果たしていることを新たに発見。
- 生態系観測によって「自然のバランス」の変化を捉える新技術の開発につながると期待
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図1 本研究の対象となった舞鶴湾の15種の生物と、個体数変動データから明らかになった生物種間の14の関係性(種間相互作用)
· 矢印は影響を与える種から、影響を受ける種に向かって引かれている。色は影響の符号(正負)で、青色(正)は平均的には相手を増やす作用、赤色(負)は平均的には相手を減らす作用を表している。
新い数理論的データ解析により「新技術開発のヒント」になれば発見から発明になる。尚発明の要件とは産業上の利用可能性*新規性*進歩性である。例えば鰻の稚魚がなぜ絶滅するのか、この論文では絶滅しないバランスがある筈だとすれば、何を制御すれば良いのか。この研究によれば絶滅種を回避して共存することが可能であるとして、上記のAI音痴の社員がイジメにあうのではなく、共存への裏方的価値があるとも示唆しており興味深い。
研究の最終ゴールが何を目指して実施しているのか、この「日本の研究.COM」は教えており、オオッと感心するテーマあり、日本も捨てたモノではないと感ずる時もあるが、地方国立大学の1講座予算平均60万円とあっては、この先が思いやられるのも事実。