昭和初期の歌手は直立不動。昭和中期では簡単な振り付けとバックダンサー。昭和後期から平成初期ではジャニーズを初めとしてダンスができないと歌手にはなれない。ついに平成30年になると歌手かダンサーのどちらが主役か分からなくなってきた。大阪府立登美丘高校ダンス部のキレッキレッ超ハードバブリーダンスが国内外の話題と高い評判をさらった感がある。あの高校生たちは母親の当時の服を纏い、ケバい化粧でメイクアップしてバブル時代(1986年から約5年間)を彷彿させていた。
でも化粧品は当時の物では無いとTVを観ながら気づいた。メイクアップとメイク落としは当時より大きく変化している。アイシャドウ、口紅、アイライン、ファウンデーションなどメイクアップは汗や飲み物でも落ちない新素材研究が進み、一方メイク落としは何がなんでも落とす機能が要求され研究されている。まるで盾と矛の関係である。最近のメイクアップには汗や水に対して親和性のない(疎水性・撥水性のある)シリコーンやフッ素系材料が配合されている。顔料はメイクアップ中のオイルに分散して光沢などを強化するために顔料表面を疎水性コーティングがなされている。なおさら従来のメイク落としでは取れない
小生はこの分野は素人だが面白いので文献を捜していたら山形大学の野々村美宗教授の分かり易いペーパーが見つかった(化学vol73.No.1 2018)。特にメイク落としの記載がなされている。結論から言えば界面活性剤の種類と形態の進歩で、シリコーンやフッ素系配合がなされていても拭き取ることができる。
身近な界面活性剤として食器洗剤、洗濯洗剤などがあるが、洗剤メーカーのCMでよく観るように界面活性剤が汚れの表面に付着して、やがて汚れを界面活性剤の内部(ミセル)に取り込むメカニズムになっている。(図-1)
最近のメイクアップを除去するには。まず界面活性剤成分中のオイル量を高めシリコーンやフッ素系成分が多く取り込まれるように形態にも工夫がなされている。その形態として界面活性剤が液晶のように揃っている(液晶型メイク落とし)か、オイル成分と親水成分の両成分が同時に存在する形態(バイコンティニュアス型メイク落とし)を利用している。そのため、少量の水、泡で拭き落とすことが可能となった。(図-2)
界面活性剤の世界に疎い小生にとって液晶型、バイコンティニュアス型があるとは知らなかった。しかしながら、高分子材料の高付加価値化手段としてはポリマーアロイがあり、通常利用される手法である。バイコンティニュアスとは言わずスピノーダル型と表現している。材料設計の考え方としては似ていると思われる――――――――――――――――――――――――――――――――――
(参考)界面活性剤 特徴を超要約すると以下の通り。
アニオン系 石鹸、合成洗剤 →植物由来原料へ転換
カチオン系 生体がマイナス帯電なのでプラス帯電のカチオンは毛髪リンスなどに利用 抗菌性もあるので院内感染防止にも利用
両性 アニオンもカチオンにもなれる 広いpHで利用可能。洗顔、シャンプーなど
ノニオン どんなタイプとも一緒に利用できる。化粧品、食品など
シリコーン系 サラサラ化粧品を支える
フッ素系 水にも油にも強い→歯の成分ヒドロキシアパタイトの表面に吸着するので
撥水・撥油性を利用した歯科向けに展開
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(日刊工業新聞 界面活性剤 抜粋)