ワクチン接種を65歳以上優先にした理由は、罹病したら重症化して医療設備が圧迫するからである。地方自治体によって接種率がまばらであるが、対象年齢を低い層にシフトするところも出てきた。7月末までに少なくとも65歳以上は接種を終えるとの政府目標が予定通り進むことを期待する。
優先接種で重症化を回避できた“恩”を“経済で返す”ことが好ましい。寿命50年時代の論語曰くの40にして迷わず、、、を現代の寿命にあてはめると「64にして惑わず」だそうだ。今の定年に相当する。シニア層は(平均ではあるが)若い人より余裕ある生活を送られているはずだ。経済を廻す主役を演じて欲しい。
シニア層に相応しいアイテムの一つは温泉。
温泉地の選択は、①非日常の土地 ②風光明媚 ③山海珍味 ④温泉の質 ⑤プチ贅沢のなどではなかろうか。今ならインスタ映え。④の温泉の質については、温泉の脱衣場に掲げているパネルで初めて水質を見るのが普通だ。それでは実に勿体ない。
筆者も不勉強で知らなかったが、「温泉科学」のジャーナルが発行されており、日本温泉科学会全国大会が開催されている。その学会で公開されている講演文献を手に入れた。タイトルは「温泉の医学的効果とその科学的根拠」とある。温泉科学J. Hot Spring Sci.70 197 (2021)
タイトルから想像するのはは、昔の白黒写真にみる逗留湯治のイメージ。転地療法兼温泉による効能による治癒を目的として自炊していた風景が漂ってくる。その昔は武将の傷を治癒するための秘湯があったことからしても休養・保養・治療として温泉は利用されていた。サイエンスの根拠があるはずだとして、タイトルの科学的根拠を期待して文献をみた。
狭義の温泉療法として、温熱作用 物理作用(浮力・水圧・粘性抵抗)、化学・薬理作用及び飲泉があり、特にこの文献では温熱作用を特筆している。
温熱作用は①疼痛緩和 ②筋・関節拘縮改善 ③血行促進 ④免疫力増強 ⑤タンパク修復機能 が挙げられている。 ①~③までは常識だが、④⑤はへぇ~だ。
文献図-2 全身浴中と出浴後の深部体温変化。塩化ナトリウム>二酸化炭素>炭酸水素ナトリウム>>水道水
文献図-3 塩化ナトリウムの濃度との関係。濃厚な程 効果ある。
文献図-5 免疫機能(NK細胞活性)変化。塩化ナトリウム 効果あり
文献図-6 蛋白質修復機能 塩化ナトリウム 効果あり
測定方法を知らないので文献をコピペしたが、望むらくはデータ-数を多くした方が説得力は増すのではないかと思う。
話は転じて、水道水であろうが、日本人はお風呂でないと体力回復した気がしない。シャワーでも体の表面は洗い流せても気分は回復したとは感じない。西洋医学主流の現代において温泉科学学会が活動継続する中で、何故だろうかと新しいメスを入れることで新らしいサイエンス・テクノロジーが見つかる可能性はあるだろう。
温泉と医学では草津にベルツ記念館がある。ドイツから明治政府が招聘した医者。温泉の効用を(皮膚病治療)発表している。ただし、彼は欧州の先進的サイエンスを日本に植え付けるミッションでありながら、「日本は表面だけを刈り取る。その根本を追究しない」と批評もしている。この言葉があてはまる発展途上国は当然だが、先進国のつもりの勘違いの国もある。今の日本は産官学しないと大学維持ができない状態であり、基礎研究は甚だお寒い状況にあるのでベルツの指摘は今も残念ながら当てはまる。
基礎研究と大上段に振りかぶらなくてもネタは幾らでもある。例えば、温泉が免疫に効果的だと分かったならば、日本の温泉地で働く人のコロナ感染状況を調査してみる。何か特異性はあるのかないのか。温泉従業員のコロナ発生確率(人口比)を纏めることで、何か見えないか?と仮説をおいて検討するなどは如何であろうか。3密ではないところが温泉だ、、、など初めから決めつけないことが肝心。
シニアは退職した人も、まだまだ現役並以上の能力があり、時間がある分、このような仮説から新事業を生むことで経済を廻すことも希有ではない。
そうだ、温泉に行こう! そして自分に相応しい経済を廻し方をを考えよう。