忙中閑ありならまだしも、知恵がなくて困っているミッションに対して遅々状況のなか、分野が全く違う世界を覗く好奇心だけはあるので、横浜パシフィコで開催のバイオ・再生医療展、及び長津田すずかけ台にある東工大科学技術創成研究院に行ってみた。
バイオはまさに花盛りで熱を帯びていた。ユーグレナからジェット燃料をANAに搭載すると発表あれば、他の企業は別の種でJALにと競争意識が高い。お馴染みの糖からの誘導体から最終的に合成樹脂を製造するプロセスの紹介など。説明員の話をきいた。だが、誰一人として、この製品を得るためのトータルエネルギーについて説明できる人はいなかった。
(無理してジェット機にしなくてもプロペラ機なら80%削減でき、各駅停車も可能でエコ割引きゆっくり観光巡りも悪くないと思いつつ)
製造過程とは例えば、鉱山でマイニングや植物を栽培するための野生林を伐採するエネルギー、水を利用するためのエネルギ、運搬するエネルギー、前処理するエネルギー、そして最後の合成反応に使用するエネルギー、廃棄処分エネルギーなどの累積エネルギーが計算できていない。その計算だけでも学問になる程ではあるが、現在では環境を語るには必須ワード要項となっている。
最近ではEV車よりエンジンが速攻環境改善に貢献するとあって、エンジン改善に回帰している原因は油田から車輪までのトータルLCA(ライフサイクルアセスメント)にある。勿論EVもリチウム電池の進歩によりLCAが改善されると様子は転換することはある。但し、現在ではガソリン、HEVあたりが環境に好適である。そこはEVのブームもありながら、地道にエンジン効率アップを追求してきた日本自動車メーカーの底力が発揮できるはずであり実績もある。
政府系研究センターからは医薬向け植物工場の提案があり、投資額と変動費などを聞けば、そんなこと考えたことありません。考える必要が組織上ないのです。。。。と答えられて口があんぐり。千葉大が大型投資した植物工場が倒産したことを知っていたなら採算性は考慮するだろうに。
次に向かったのが東工大すずかけキャンパス。大隅教授がノーベル賞を受賞されたキャンパスである。今もG棟の入り口には「ノーベル賞お祝い」パネルがある。研究組織が再編され、科学技術創成研究院となって、成果の一部を講演、セミナー、パネルで紹介、さらに研究室見学が許されている。3回目の参加。すずかけ台はとにかく広いキャンパス。それも山を崩していないので、アップダウンがあり、トンネルありで、研究棟間の移動がままならない。
例年は案内が出ていたが、今回はない。そんな不親切なぁ?と思いきや、なんとスマホにアクセスすれば、現在地から次に知りたい会場、研究室へのルートが示される仕組みになっている。Z世代ならサッサと気がついて、サクサク指を動かすところだが、中高年はパンフのキャンパス図をじぃ~っと眺め、意を決して歩き始める。冗談ではなく、延々と階段を上って、会場でない場合は悲劇なのだ。
講演では本村教授のAIチップの研究動向と東工大の戦略について、及び大場教授の先進計算機科学とマテリアルズインフォマティクスがもたらす無機材料研究の新展開の2講演。
前者は全くの門外漢であるが、最近のAI翻訳に見られるようなAIチップの性能アップの限界をいかにブレークスルーするのか。について45分のご講演。講演を聞く前のイメージとは違って、ぼんやり脳にも少しだけ理解することができた。また、海外は政府丸抱えで巨額の資金で開発競争をしているのに対し、日本では東工大を中心としたグループが少ない予算で強豪と戦っていることが分かった。これを育てればノーベル賞級だと感じた。
次の講演は超大型計算機を利用して結晶格子の中に異種元素を挿入を計算上行った場合の半導体が成立するか否かの計算と実際の半導体を合成することの発表があった。当方は有機化合物での計算機科学には少しの理解と利用したことがあるので、素直に学ぶことができた。この計算における工夫と合成を実験で確認した院生・学生のレベルが高いことは勿論である。
研究室訪問では最も身近に感じたのは先進メカノデバイス。金属、セラミックの精密切削、ナノオーダーでの位置決めなど、機械加工、歯科医療など我々の関係する分野だけに親しみを感じた。
さて、東工大の講演会や研究室訪問で気がついたことは、プレゼンの仕方が上手い。洗練されていることである。比較としてJSTでの各大学での技術連絡会でのプレゼンに比べるとコアの聴衆が聴きたいことを明確にかつ、分からない人向けにでも丁寧に説明していることである。比較にあげられたJSTは発表が20分と圧倒的に短いが、それでも上手い先生がおられる。JSTでは講演の後で名刺交換と個別相談がセットになっている。上手い先生なら引き出しが多くありそうだから、直接講演された案件以外でも可能性ありそうだ。。。と考えて個別相談するケースがある。何のための講演なのかを良くわかっている先生若しくは事務局のセンスの違いだろうと思われる。 だが、パワーポイントに頼り過ぎ感があり、飽きられているのも事実。そうなると、別のタレント性が要求される。いやはや大変だ。