営業職にとってアルコールはお客様との関係構築をはじめ重要である。また、社内でも“飲みニケーション”は出世にも大きな影響があるので、理系・文系関係なく重要である。古今東西の常識で疑いようがない。筆者の経験で言えば農業関係資材販売担当で健康診断の再検査の紙を貰わない人はいなかった。むしろ勲章でもある。農協相手にアルコール飲めない人は通用しない。
ところが、4月25日に“飲める人が稼ぐって本当? アルコール耐性と所得の関係を研究した文献が発表された。
結論を先に言えばアルコール耐性があるから所得が多いとは言えない。詳しくは文献Health Economics題名Is Asian Flushing Syndrome a Disadvantage in the Labor Market? を参照されたい。
東京大学、ソウル大、台湾大、一橋大の研究者による東アジア地域における解析結果を発表。よく知られているように、アルコールを摂取すると、肝臓はアルコール脱水酵素(ADH)によりアセトアルデヒドに分解し、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)により酢酸に分解する。東アジア地域ではアルデヒド分解酵素を持たない人が約4~5割で、一見飲めそうな人でも赤ら顔になる人は持っていないので、健康面から言えば飲んではイケナイのだ。
そんな人が飲める(顔色が変わらない)人に伍して所得を得るとしたら、(私見だが)赤ら顔は陽気にみえ、また会話の饒舌さも加わって魅力があるように見えるのだろう。逆に顔色一つ変えないで無口で飲み続ける孤高の人には楽しく無いのかなぁ?こちらに何か落ち度があるのかなぁ?と気遣いをさせることもある。そうなると飲めるのは逆効果になる。
新入学生歓迎コンパでの煽り一気飲みのニュースは最近少なくなったが、一気でなくとも継続飲酒は金属疲労に似て個人差はあるが器官の劣化を生ずる。肝硬変や脳溢血・麻痺などになる可能性が高い。アルコール耐性のない人は特に配慮が必要だ。酒の肴や締めのラーメンとの複合により糖尿病の危険もある。まだ若いシニアの方が杖をついて不自由に歩く姿を多く見る。昭和に無理をされた企業戦士のように見え同情することもある。トータルすると酒税より医療費の方が上回るのではなかろうか。飲食の経済的効果を見ない味気ない偏狭視野の見方であるが。
なお、単にアルコール耐性の有無で所得が決まるわけではない。この文献は遺伝的特性(身長・体重・顔つき)、学歴などと経済的成果も要因に入れて計算処理されている。さて、エビデンスを見てみよう。調査した対象は国別では日本、台湾、韓国の解析前提の人の属性が別の意味で面白い。それを先に紹介する(表)
日本(男)は52%が耐性あり、48%は耐性がない。意外なのは韓国。イメージでは100%耐性あるようだが60%とは。年齢は40歳台と同じゾーンながら、大学(院も含む)学歴では日本の66%に対して、台湾85、韓国92%は本当か? 女性は日本では48%に対して韓国の28%にお国柄を想像させる。親の学歴まで要因に入れていることから、親が大学を出ていると子供も大学に進学し、結果として所得が多いのか?を解く鍵になるとしているのだろう。いかにも東大の先生が取り上げる要因。
職業の多様化が国柄(文化を含め)としては好ましいのであるが、把握しにくいのであろうか。最近のインバウンド状況を見るまでもなく、日本の文化を経験したくて来日されている。その職業は短期的な所得ではなく、継続的(孫・ひ孫まで代々続く)所得とみるのが普通だと思う。如何でしょうか。この表では自由業の割合は韓国が圧倒的に高い。起業精神が旺盛とみるか、財閥企業に入社できずにチキン屋を開業せざるを得ないニュースもあるので、一概に言えない。
この文献では解析が記述されているが、端折って結論の表を示す。
アルコール耐性のある日本人は週3.5回(耐性無い人の2倍)、アルコール量も同比例(アルコール濃度換算処理)。Binge drinking(酒浸り)は耐性の無い人の3倍。で所得は統計誤差を入れても同等。
韓国の事情は違うようだ。アルコール耐性があろうがなかろうが飲酒の機会は似ている。酒量はやや違うがBinge drinkingはほぼ同じ。所得も略同等。日本よりやや多めの給与所得。韓国の人は飲めなくても儒教の社会であるから、上司が飲むならば飲まざるを得ない。または、辛い食事にアルコールは必須なのか。この表は多くを想像させる。面白い。
社内の飲みニケーションは若い人からは敬遠されている。パソコンができない・クリエイティブとは縁がない上司にアルコールが入れば説教か自慢話、過去何度も同じ話。そんな時間ロスは勘弁して欲しいが若者の本音。今や上司からの話があれば、そっとスマホでChatGPTに上司の意見はどう思うか質問するだろう。ChatGPTの回答は上司には言わないのが得策。大人の対応っていうやつだ。
日本には酒は百薬の長と言われており、少量ならむしろ健康にも良いとされてきた。つい最近もその文献を見た。だが多くの文献はごく少量でも“毒”だとのこと。薬を毒と言われてはそれこそ気の毒。アルコール1滴で脳細胞がいくつか死滅の文献もある。私見だが、昔の酒と今の酒は違いがあるのでは無いかと思う。
昔はいわゆるドブロクで酒粕が混合した濁り酒。酒税法もさることながら今は精米度合いと濾過技術によりクリーンなお酒に仕上がっている。酒粕に栄養素が移行しているとしたら昔のお酒が体に良いと言われると納得感はある。 現在はアルコール飲むなら酒粕併用のアテが常態になるかも知れない。酒粕にもアルコールが残存しているのでBinge drinkingは歓迎か。ささやかなビジネスになるような気がする。と囁くとテーブルの端から「その講釈より仕事がないんだぁ〜」と呻く声。「作り話や揚げ足取りで政党助成金を貰っている人に言いなよ」と見知らぬ人が返す。そのワイワイが活性元気化の触媒になればアルコールは少なくとも役に立っている。若い人、酒席が苦手な人 なんだかんだ言っても 飲み会雰囲気共有は得るものがあるので大いに参加してはいかがでしょうか。