テスラ・新クルマ組み立て法

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ものづくりには①素材 ② 加工 ③組み立てがあり、単独もしくは素材が変われば加工法も変わるなど連携して変化する。自動車で言えば単独の例が①の電池やアルミボディ。素材が変わるので加工が変わる②の例が高張力鋼板の加工法、あるいは炭素繊維複合材料の加工法や接合法が挙げられる。③はモジュールであろう。部品をいくつか統合して製品として製造し組み込む方式。それぞれの分野で合理化・脱炭素・環境面で凌ぎを競っている。

毎月購読している日経Automotiveの記事に素人ながら驚いたのがテスラの新③ともいうべき内容だった。ボディの組み立て新法。

自動車のボディはドアやボンネットがない塗装前のホワイトボディがあり、超高張力鋼板により製造される。高張力鋼板の材料は衝突など種々のモードを考慮して張力レベルの違う材料を当てている。その一方ボンネット、フェンダーなどは軽量アルミに置き換わっている。鋼板とアルミの溶接には開発時間を要した。繰り返し・繰り返しの実用試験が完成して商用化になっている。自動車の軽量化=比重の軽いアルミ、かつ強度のある炭素繊維複合材料 との着想は簡単。だが、それを実用化するには気の遠くなる検証・開発・実用試験を覚悟する必要がある。それが常識と思っていたところに、テスラからユニークな発表(日経Automotive 6月号2023)

図を見るだけでご理解されたと思うが、簡単に言えば、従来はホワイトボディを製作して、ドアを取り付けて全体を塗装。そしてドアを外して、エンジン、機構部品、電池ユニット、パネル、椅子などを組み込み、最後にドアを取り付ける。それが逆転の発想なのだ。各ユニットを入れておいてホワイトボディで包む方式。なんだか見たことがあると思った人は子供の頃にプラモデルを作った人だろう。左右のドアを含む大きな半割れボディを最後に合体させる方式のようだ。

イーロンマスクも子供の頃はプラモデルをやったのではなかろうか。プラモデルなら両方の合体はコネクターのロック方式類似かスナップフィットになるが、まさかジッパーではないだろうと今から想像満点だ。とにかく従来方式に比較して半分以下の工程で完成との由。EVの低価格には強力な武器にはなるだろう。

ただし、マーケットは遺伝子組み換えと同様に納得するには時間がかかるだろう。そして、もっとも販売する場合に注意すべきは低価格車のテスラは魅力維持に苦労するのでは?と余計な心配。テスラに乗るのは“自分は環境派”“自分はあなたと違ってお金に不自由しないの”的な気持ちが幾分かある。高い価格でいてほしい。少数であれば希少価値と充電装置の取り合いも避けられる。なんと市場は天邪鬼なんだろうか。

筆者の数少ない経験で言えば、材料メーカーでありながら、ほぼ完成車に近い形状を作りオフセット衝突、正面衝突、坂道横転3回転による破壊実験を累々実証し、当時、その記録は経典を積み上げるような風景を見て“巻物物性”と称した。自動車レーシング、パリダカの過酷テストで信頼性を積み上げていく。

それを踏まえるとテスラの取り進めスピードは速いと感ずる。トヨタから譲り受けた工場では新組み立て法を採用するには面倒なのだろう、新規に工場をメキシコに建設中で2024年工場完成するようだから、完成品を見ることを楽しみにしたい。テスラのユーザで問題になっている修理費(一体キャスト成形ボディなので部分が損傷しても全取り換えの修理費問題)が解消されるのだろうか、新法がコロンブスの卵なのかも。

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