IGAS (International Graphic Arts Show)2018がビックサイトで昨日まで開催されていた。近くで打ち合わせ後、帰社には時間があったので見学した。平面のデジタル印刷の延長が3Dプリンターと考えて何か関連性があるかもしれないとぼんやり考えたのもその理由。
ブース1~6まで大型デジタル印刷機械のデモ。 印刷素人の当方からすればどれも同じと思うが、精緻さについては長年の経験が織り込まれた印刷技術を3Dプリンターに応用するところがあるかもしれないとの皮膚感覚でウロウロ。歴史的には印刷方式は分類すると4種類ある。凸部にインクを載せて押印するように印刷する凸版・フレキソ印刷(子供のころの芋版年賀状がこの部類)、 段ボールへの印刷はこのフレキソ印刷が一般的で精度をさほど要求されないが、5年ほど前から急激に精密性が向上し、オフセット印刷と見間違えるポスターも出てきた。凹部にインクを充満させて印刷するグラビア印刷、親油性インクと水溶性インクを交互に重ねるオフセット印刷、そして謄写版の孔式印刷がある(謄写版:60代以上は微かに記憶。先生から渡される宿題は謄写版。下手な人は虎縞になった)。
自治体のゴミ袋や大手衣糧品メーカーの紙袋などは大量生産可能なグラビア印刷に、名刺やポスターなど精緻な印刷はオフセット印刷が利用されている。グラビア印刷では版元から文字・絵柄などが取り次ぎ商社に送られ→版下作成→版元・デザイナーと調整し微修正→銅シリンダーを削り凹部とし、図柄を転写させ印刷するが色合わせに時間がかかる。インクが凹部に入り印刷物が通過する前に表面のみ転写させるために余分なインクを掃き取ることが重要で、ドクターナイフの表面精度が要求される。ゴミ袋や紙袋の生産は中国がメインとなってしまったが、グラビア印刷機やドクターナイフは日本製でないと合格率に影響する。オフセットの代表的な対象は新聞、折り込み広告、ポスターなどであるが印刷数は多い。
それではデジタルだと何が変わるのか? メルマガなどWEBサービス、SNSもデジタル媒体だが、どう違うのか? 大きなブースをみるとHP、キャノン、リコー、富士ゼロックスなどインクジェットプリンターメーカーで超大型 インクはパソコンと同じカラーのカートリッジ。 CADから直接アウトプットできるのは普通のパソコンと同じ。BGRをCYKに変更するソフトは2年前にみたことがあるのでクリヤーしているのであろうと想像した。
印刷業界がシュリンクする傾向のなかで、この大型投資をするのか?説明員が曰く、メルマガなどWEBにユーザーの関心が薄れてきた。特定ボックスに振り分け、開封せずに消去する人が出てきた、それよりはDMの方が効率が高いとの統計的データーがある。。。。そうかも知れない。でもそれだけではないと思い見本をみると実に面白いことが分かった。それは個人宛の印刷対応ができること。お誕生日カレンダー(写真)、商談会への個人案内(写真)などは一括大量印刷ではなく、個別ユーザーへのマーケティングには従来にないインパクトがある。
個を求め始めたマーケットとデジタル印刷(紙or フィルム、金属箔など)の可能性に気づき始めたマーケターの流れだろうと思われる。斯界トップの凸版印刷では単なる新規広告だけでなく、新規ビジネスへ拡張企画を発表している。HPブースでは「紙、復活」を合い言葉に関係会社のデジタル印刷機能を発表していたが、製紙メーカーはパネルのみ参加と合い言葉と一致していない印象を受けた。それもそのはず、製紙業界は原料パルプの高騰、燃料、諸資材の高騰、物流費の上昇を受け値上げをせざるを得ない状況にある。一方でセルロースナノファイバーの新規開発も同時並行で進めていることもある。ストローの紙化は耐水性問題から樹脂ラミネート、フッ素化合物の表面塗布が技術的にはあるものの、価格で合わず世界で僅か2000トンの為に設備対応もできず空気を輸送するような製品では物流費もバカにはならないなど、諸手を挙げて紙化を歓迎出来る状況にはない。印刷機械メーカーは踊れど製紙メーカーは踊りたくても。。。