デング熱と蚊の撥水・撥油性

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オリンピック開会式及び閉会式では全身オイルでテカテカの旗手が際立った。トンガの名物選手とのことで冬のオリンピックでも出場したときもオイルボディを披露。凄い肉体だと感心したと同時に、それって趣味なのかトンガで暮らすにはオイルが必要なのだろうか?と思った。思った理由は花王の研究者によるデング熱の媒体である蚊よけ技術開発の文献を読んでいたからでもある。トンガは日本でもラグビー選手を輩出する国であり、多くの選手はオイル塗りをしていない。なので、この旗手は趣味だ。花王の文献(化学Vol.76.No8 2021)によれば蚊の脚の先端は皮膚に引っ掛ける爪と水溜まりで成長するに必要な撥水性をもたらすナノ凹凸構造からなっている。シリコーンオイルを皮膚に塗布して蚊の様子を観察すると、皮膚にタッチするやいなや逃げて行くとのこと。凹凸部に親油性物質が侵入して身動きができないとのこと。例えば体重60kgの人が急に57kgの荷物を持たされたようなものと表現されている。

蓮の葉は表面のナノサイズの棘で水玉ができて濡れない。これを利用したのがヨーグルトの蓋。これが採用されてから蓋に付着することは少なくなった。約20年も前の話なので、若い人は何ら不思議とは思わないだろう。確か東洋アルミが最初に製品化した。

文献を疑う訳ではないが、ヨーグルトの蓋にオリーブオイルを垂らしてどうなるか観た。接触角を測定する術がないので、見た目で判断しかできないが「文献の通り」と言える。(左:水滴 右:オリーブオイル)いずれ人肌に優しくテカテカしない製品ができるのであろう。

話をデング熱に戻して、

WHOによれば、「世界人口の約半数が感染の脅威にさらされており。全世界では、毎年、3億9000万人(95%信頼区間:2億8400万人~5億2800万人)が感染していると推計」とある。亜熱帯・熱帯地区+水溜りがある箇所はネッタイシマカが主として発生し媒介するが、温帯で見られるヒトスジシマカも媒介する可能性があるとのこと。 温帯は日本も入る。まして地球の温度が予想より早く1.5℃高くなるとのICPP報告を受け報道が最近目立ってきたので、日本も亜熱帯・準熱帯地域になりかねないので注意が必要だ。厚労省のHPではワクチンはないとのことだが、武田薬品工業がデング熱予防ワクチンを開発しており欧州医薬品庁へ承認申請をして受理されたとある。日本の製薬会社もコロナワクチンの陰ながら、立派に仕事をしていることに感心した。

横浜ではアフリカ会議が開催されるが、その時の人気商品の一つが蚊帳である。日本では姿を消したが、住友化学のアフリカでの主力商品となっておりニーズがある。昔の蚊帳ではなく、防虫剤を糸に配合した蚊帳で、確か奈良の会社が製造していた。古いが新しい事業展開へのヒントになる。

それと、このブログでも触れたが、猫がマタタビの葉を夢中になって擦り込んでいる理由は蚊除けであるとして成分を特定した。また、花王の研究者はカバの表皮にも蚊除け成分があるのでは?と注目した。自然を観察し仮説をたて、実証する手順も非常に参考になる。コンピューターの中にソリューションがあるとは限らないと教えてくれているのは嬉しい限りだ。

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