バイオプラスチックには次の2種類があることを始めに紹介します。
① 植物由来原料を重合したプラスチック(バイオマスプラスチック)
② 植物由来原料を重合したプラスチックスが微生物により分解し最終的に水と二酸化炭素に分解される プラスチック(生分解性プラスチック・グリーンプラスチック)
<はじめに>
近くのスーパーでエコバッグ持参の客には2円値引きサービスがあったが、。先日エコバッグ持参の割合が70%に達したので環境への理解を得られたとして値引きサービスは止め、ポリ袋が欲しい場合は1枚2円頂戴しますのビラ。 逞しい商魂にアッパレなのか渇!なのか皆さんのご判断にお任せします。何だか落語の壺算の逆パターン。
経産省などが推進しているバイオプラスチック。バイオ率100%のレジ袋では2円/枚より更に高価になり直接消費者に反映させるとバッグ持参が増加し、バイオプラスチックはレジ袋市場には浸透しなくなる。なのでバイオ率、価格をどうするか、それとも従来材料にない機能を発揮させて、価格に見合った市場を開拓するかがポイントとなる。
<バイオプラスチック>
企業がバイオプラスチックスの事業に着手するには地球愛だけでなく、利益を通じての社会貢献が動機である。数年前まではブラジルや米国ではサトウキビやトウモロコシ由来のアルコールが自動車ガソリン代替か混合用(ガソホールE10,E20)として原油価格暴騰の期間ブームになったが原油価格の低下、シェールガスが現実化すると沈静化した。米国のイラン核合意離脱により5月16日のWTI価格71ドルと高騰気味であるが、採算ラインになるかどうか注目される。ただ、高燃費車や脱ガソリン車の増加もあり、ガソホール復活可能性は少ないとみる。ブラジルBraskemではアルコールをエチレンに転換しバイオマス・ポリエチレンの生産をしている。日本でも2商社が取り扱い、包材メーカーも商品化に努力している。パッケージ展でみると歩みは当初の狙いより遅いが確実に浸透していることは分かる。原油(ナフサ)由来のポリエチレンと物性が略同じなので、材料設計、成形加工技術、製品設計は従来技術の範囲内で対応できる強みがある。しかしながら価格差はナフサ由来とはある。
バイオマス・ポリエチレンはイオングループが有料レジ袋に、東京ディズニーリゾートがお土産用袋に、またセブン-イレブンが一部店舗で無料レジ袋に、 今後バイオプラスチックス認定を見える化する経産省・環境省の動きを先取りしての企業活動だろうが、バイオマスの割合については価格見合いだろう。京都市はバイオマス・ポリエチレンを10%配合した家庭ゴミ袋を7月から有料指定袋として本格実施する。従来と同価格。これで年間500トンCO2が削減されるとのこと。京都議定書20年の節目のアクションとしては理解できる。たかが10%されど10%。従来通りだと単純に価格は上がる。物流コストの上昇環境もあり、インフレーションフィルム成形速度、シール速度、裁断刃寿命改善、パッケージ袋の印刷、検査方法、段ボール材質見直しなど細かいところまで合理化しないと採算に合わない。ご苦労された様子が想像できる。改善導入初期はポカミスが起こり易い。検品にコストが掛かる。なので導入期間は相当とる必要がある。
バイオマスプラスチックスの中でも注目を浴びているのがバイオポリカーボネートである。糖・グルコースから誘導されるイソソルバイドを成分とするポリカーボネート(補注参考)で既存のポリカーボネート樹脂の透明性、衝撃強度、寸法精度特性を有しておりながら、光学特性に優れ表面硬度が高い(鉛筆硬度は既存がBに対して1Hと高い)開発品の中には2Hとアクリルに迫る硬度がある。特徴は表面鮮鋭性である。自動車の内装材(インパネ)は傷が付きやすい。なので、傷がついても戻り易いウレタンかポリプロピレンの場合は種々の無機フィラーの種類、配合エラストマーなどを変えてグレード開発をして更に成形時にはエンボス加工(小さな凸凹)するのが一般的である。
自動車は単なる移動手段だけでなく個室的な意匠性が要求される。なのでインパネは軽自動車とは言え硬度と鮮鋭性を付与するために塗装がなされることがある。自動車に長く携わってきた開発者がバイオポリカーボネート樹脂のテストピースを見た瞬間、これを着色ペレットとして販売すれば塗装しなくても商品価値はあると直感。塗装費用に見合うとの計算もあり、しかも、塗装表面は硬化樹脂のコーティングにおける非平衡系の自己組織化散逸構造により表面は微少の凸凹パターンが発生する。これが光散乱の原因となる。一方、射出成形で表面が平滑なバイオポリカーボネートは鮮鋭性・深みのある意匠性が発揮できる。
軽自動車への採用を切っ掛けに乗用車まで拡大している。塗装は溶剤系が主流で溶剤回収など環境に課題が、水系塗装は乾燥が長くタクトタイムに課題がそれぞれあり、塗装レスは非常に意味がある。内装材で実績を出した材料は外装材にも適用されている。塗装レスがキイワードである。現在、三菱ケミカルがDurabioの商品名で製造販売をしている。製造プロセスは溶媒を使用しない溶融法を採用していることから材料及び製造法の両面で地球フレンドリーと言える。帝人も研究を進めており新聞発表をしている。
バイオプラスチックスではその他、展示会・新聞報道によると次の各社が発表している。
*三菱ガス化学(セバシン酸原料)高弾性率・低吸水ナイロン(Lexter)を市場展開中。
*ユニチカ も同様に「ゼコット」を準備している。
いずれも高価格・高機能が許されるスーパーエンプラ分野への参入。
*東洋紡・三井物産・Synvina(ポリエチレンフラノエート)PEF(ガスバリア、透明性、耐熱)推進中。PET代替。ポリエチレングリコールと、2,5-ジフランカルボン酸の重縮合体
*米ジェノマティカ、伊アクアフィル(ナイロンメーカー)は原料のカプロラクタム(CPL)の商業化に乗り出す 。
*三菱ケミカル・東レ 三菱ケミカルはトウモロコシなどバイオマス原料由来のポリエステル(ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)や ポリエチレンテレフタレート(PET)に関する基本特許について 東レとライセンス契約を結んだと発表。 市場拡大の為の三菱ケミカルのKAITEKI戦略の一つだろう。
次週はバイオプラスチック(2)生分解プラスチックスを採り上げる予定