レアメタルから見たBEV vs.エンジン

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岡田真澄という容姿端麗なフランス生まれの俳優がいた。駐車場がなかなか見つからない時に子供に言った。「あの歩いている人は駐車場が見つかった人なんだよ」と。クルマ保有率が今ほどでない時代の話。何を言わんとするかはお分かりの通り。

これを現在に置き換えてみると「EVに乗っているのは、戸建で自動車を2台所有している人なんだよ」となる。遠出や降雪時にはガソリン車かハイブリッド車とし、近くの買い物など近距離にはBEV(バッテリー電気自動車)と2台を持つことでBEVが巷間言われる充電設備不足、充電時間が長い、運転距離が短いなど指摘されるような短所とは関係がないクルマの使い方となる。(全個体電池の充電時間は1/3の見込みで開発中)。

遠出は滅多にないのでガソリン燃焼によるCO2は無視できるほどであり使用頻度の多い近距離ではBEV使用で(運転時の)環境に貢献だ。となる。筆者には2台おけるスペースも200V電源がないが、散歩がてらに近くの日産のショールームで話題のサクラを見た。受注再開のお知らせとともにリチウム値上げによる価格改定がなされていた。軽自動車のサクラ(上級クラス)は300万円越え。隣に展示してあるリーフは100万円値上げで580万円。

驚くか驚かないかは読者の懐事情にあるので、ここでは言及しない。EV先駆の日産のみならず後発BEVメーカーは押し並べてそうなのだろう。先の定義に付け加えるなら「経済的に余裕があるか、補助金を地方より多く出せる東京都の住人」であることになる。

リチウムの場合は灌水から 塩化カリウムを生産する際の副産物として生産される場合と, リチア輝石から主産物として生産される。前者がチリ、後者が中国である。携帯などのリチウム電池対応には200年の埋蔵量があると言われていたが、さて爆食いのBEVとなるとどうなるかわからない。 理由の一つが埋蔵地=生産地とはならない。図参照(表面技術 東大・野瀬、阿部 2012)。政治的、環境意識レベルによりサプライチェーン及び量は変わることに留意する必要がある

リチウムより一緒に使用されるコバルトの方が先に枯渇するかも知れない。だったら両方とも市中鉱山(携帯やBEV)からリサイクル回収すれば良いではないかと思われるが、電池の使用量増加率がリサイクル率を圧倒している場合は、それも寄与しない。

それで思い出したのがインジウム(In)である。スマホの表面を指でなぞらえると画面が動いたり、拡大するのはスマホの画面に導電性のインジウムが塗布されているからである。

液晶TV画面が大きくなるにつれ、このインジウムは枯渇するのではないかとして、業界がざわついたことがあった。対策としてCNT(カーボンナノチューブ)を配合した導電フィルムで代替できるとして新規ビジネスを謳った企業があった。目には見えないナノサイズなので透視できる。でもインジウムに比較するとやや暗い印象はあった。

やがてインジウムは鉱石として亜鉛と一緒に採掘されるので、亜鉛を精錬すると副産物として得られるとわかって、価格も一段落したことがあった。鉱山に精通していないと少しの情報で右往左往するのが実体経済だと筆者もCNTの分散に少し関係しただけに、思い知った次第。

 

極めて楽天的に言えばリチウム埋蔵量の多くは海水にあるので、そこから取る技術・経済的に成立すれば安泰であるが現実は遠い先の話。

イーロンマスクはテスラを大幅に値下げしたのは、まさか海水をあてにしてはいない。利益が出過ぎている段階で雨後の筍のように輩出するBEVメーカーを脱落させ、逆にリチウムを独占できることを狙ったのではないかと筆者は推定している。どの業界でも3位までは利益確保できるが、4番目は踊り場、5番目以下は余程の技術的優位がないと厳しい。技術がなければ地獄。モーターと電池さえつければBEV的なメーカーはいずれ姿を消すであろう。

BEV反対派の人は採掘からバッテリー製造時までのCO2発生はガソリン車より多い説を言われるが、その採掘における環境破壊分を算入できているかどうか公開されていない。更に上回ることもあり得る。なんとなくBEVが環境に良さそう的なオーラを振り撒きながら補助金政策でEVを(本音は別にありそうだが)推進してきた欧州メーカー。

その一方で最近は欧州のユーザーはハイブリッド購入比率が高くなり、日本ではなんとなく水素エンジンが良さそう的な動きが出てきた。このブログでも掲載したが、トヨタの水素エンジン搭載カローラ(ヤリスエンジン)のレーシング走行や、川重、ホンダ、ヤマハ、スズキのバイクメーカーも水素利用の共同研究歩調を取り始めたことも大きい。話は飛躍するが製鉄におけるコークス+水素で実質CO2ゼロの製法を開発した神戸製鋼はスゥエーデンから受注。いずれ火力発電にも水素が利用されると、石炭+水素発電→送電→BEV となり火力発電の電力使用のBEVは少し負担が少なくなる。だが、水素直噴エンジンがトータルのエネルギー効率は高いので有利には変わらない。

今回はレアメタルの面から眺めているので、BEV,HEV,エンジン車に利用されているレアメタルを超アバウトで纏めると以下の通り。

 

 

 

 

 

冒頭の岡田真澄は何かのTV番組でアイロン掛けを披露したことがあった。霧吹きが良いのか、腕が良いのかわからないが、見事な出来栄えだった。あの手順は非常に参考になり筆者も真似をしているが、イケメンだからサマになるが、当方は全く当てはまらない。フランス時代の家族経済事情の経験からモノを楽しく大事にされていることだとは思う。日本のエンジンであれば20年楽勝〜40年は稼働する。水素エンジン車が普及した時を想像すると40年モノビンテージ車をカッコ良く乗りこなす、モノと環境を大事にする日本。それが美しいとは思いませんか。

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