床屋談義といえば江戸時代のノンビリした風景を想像する。江戸は地名に水道橋があるように上下水道あり、リサイクルも進んでおり環境に配慮していた巨大都市だったと聞く。 床屋が今は理容店か美容院。最近は環境問題がとかく話題になることがある。こんなことは日本だからだと思う。かの国とは大変な違いだ。環境省は海マイクロプラスチックス問題からレジ袋廃止か有料化を計画している。しかしいろんなお客様との床屋談義で情報をもっている理容師さんと客のやりとりは一般庶民の見方ではあるが傾聴に値することがある。
理容師
「ウミガメの鼻にストローが刺さった程度でレジ袋云々は大げさではないか?」
「レジ袋はゴミ袋としても利用しているし、レジ袋そのものを海洋投棄はしない」
客
「確かに、ストロー(ポリプロピレン)やレジ袋(ポリエチレン)の比重は0.900~0.95 で水より軽く、海では浮くので目立つことはありますね」。
「レジ袋やゴミ袋はポリエチレンで焼却用の燃料として役立っている。水物が多い食品廃棄物では燃焼温度が上がらずダイオキシン発生の原因になる。なのでプラゴミを配合して燃焼温度を制御している。」 ダイオキシンの方がよほど問題。日本の焼却炉は技術レベルも管理能力も世界トップだからできるのだけど。
理容師
「でもレジ袋を止めたらどうなるのですか?」
客
「石油化学は原油を分解してナフサとガソリンを作る。ナフサは炭素数で2(エチレン)、3(プロピレン),4(ブタン),それ以上と芳香族、ピッチ残渣」に分類される。この割合は基本変えられない」 なので、炭素数2(エチレン)の量が少なくなると全体のナフサの生産量を削減することになる。」
理容師
「長い説明を聞いてもピンと来ないが、何か生活に困ることがありますか?」
客
「炭素数2はポリエチ以外に洗剤、容器、化粧品、パイプ、電線、通信ケーブルなどに、炭素数3は自動車内外装で軽量化に貢献、炭素数4はタイヤ原料、芳香族はポリエステル繊維や電子機器、基板、製薬の原料、ピッチ残渣は道路など、要するに身の回りからインフラまで深く関係しているので、ナフサ生産を抑えると、プラント稼働率が低下して製造価格が上昇する」
「女性活用に伴い食品もデリカテッサンの利用と食品包装も対応している。これとの折り合いはどうするのか、この視点も重要。それに農業・酪農への影響もある。」
「原油の量を削減しないとなると、ナフサと同じ成分のガソリン生産を上げ、EV車よりガソリン車を後押しすることになる。まして原油輸入大国の中国が輸出に回っていて石油化学は混沌とするだろうね」
理容師
「それって大変な問題でないですか。環境省のお役人に教える省庁がないのですか?」
客
「経産省及び傘下のエネルギー庁、農水省及び民間の経団連や労組も声を上げるべきなんでしょうね。大学もこんな時は知能を集約しての提案があってもよいのかも」
理容師
「よ~く分かりました。なんとなくオカシイとは思っていた」
客
「でも民間は環境にシビアですよ。50年前まで船にへばりつくフジツボが船の燃費を悪化するとして鉛配合の塗料を使用していたが、貝毒の原因となるので鉛を含まないフジツボ付着防止塗料を開発した。またポリエチレンの袋も厚みが20~30ミクロンあったのを成形法を開発してレジ袋だと6ミクロンで重い品物にも耐えるようにした。気がつかないところで、頑張っている」
理容師
「それに日本人は廃棄問題の意識が高いですからね。輸出すべきは教育・マナーなど急がば回れでしょうかね。」
客
「なかなか良いこと言うね。ところで薄い頭髪ではカットする髪がないので、料金もカットできない?」
理容師
「それはマナー違反です!」(笑)
客
「この問題のきっかけになったストロー問題。紙製に切り替えたら、風味が紙っぽくなるのでサッサと飲むのがお勧めのようですよ。お店の回転率アップ狙いだとしたら大した知恵者だ」
理容師
「床屋談義だからといってテキトーなことを言っちゃダメですよ」
「でもボケーッと生きているんじゃねーヨ!とんでもないことになるぞ」とチコちゃんに怒られそうですね。
客
「その通り、昨日の延長が明日と思わない方が良さそうですね。レジ袋は以前は中国で生産していたが、人件費高騰もあり今はベトナムなどにシフト。レジ袋だけの集中生産している現地会社もある。レジ袋販売不振となると東南アジアは中国不景気+環境でのしわ寄せと大変なことになるね。日本にとっては小さなことも、影響を受ける国や人々がいることは忘れてはいけないね。チコちゃんに怒られないように。」