コント「やさしいズ」から。友人から寿司を奢ってもらう約束をしているAはBさんから職場で助けられたので牛丼を奢らせてくれと言われる。Aは寿司を断り牛丼を選ぶ。普通なら寿司を選ぶでしょと首を傾げるBに向かってAは「エッ!?牛丼選ぶでしょ」と答える。
テンポよく会話が進むが、ポイントは 「寿司の値段3万円、牛丼の値段380円でも両方美味しいから等価である。即ち牛丼は3万円である。差し引き30,000―380=29,620円も牛丼の方が得しているのである」聴衆は意表を突かれて笑いがどっと起こる。このコントはあらぬ方向に展開するのであるが、この段階でも非常に面白い。
と言うのは等価ならの前提条件で商品をユーザーが選択するという視点を我々が商品企画をする際意識しているか?との鋭い指摘をしているのだ。世の中、付加価値、付加価値としてユーザーにとって使用頻度の多くない機能をつけて価格を積み上げていないだろうか。使用頻度が少ない機能はこのコントの等価論から言えば価格0になる。アイリスオーヤマが汎用家電商品で成功しているのは機能の引き算をしているなぁと商品を見て思うことがある。話は飛躍するが、アイリスオーヤマは大山ブローと言って灯油缶、工業薬品缶を中空成形で製造していた。この事業をスパッと始末(引き算)して新展開した。その変わり身は見事だ。
買い物上手の主婦は割り算が得意だ。瞬時の暗算が凄い一例をあげる。健康ブームでリコピン含有トマトジュースが店頭に並んでいる。まず価格➗容量を計算し、価格➗リコピン含有量を算出。その次にボトルを逆さまにしてジュースの粘性が高いか低いかをみる。粘性が低いとトマト何個分の謳い文句に疑問符をつけるのだ。さぞジュースメーカーも真っ青だろう。
再びコント「やさしいズの外食」から。今度の計算は積分。自炊が安くつくとのBに対して外食が安いとしてBを説得するA。自炊には原料買い物、調理時間、食器洗い、食器片付けを20年続けると人件費は3億円にも上ると説明。数値が莫大だがなぜか納得してしまう。
逆にいえば、ここにも新商品、新システムを企画開発するネタがありそうだ。
調理済みの宅配は既に軌道に乗っている。介護ビジネスも大きく括ると該当する。アイロンフリー衣服も多くなってきた。クリーニング業も絶対自分では不可能なものに特化することになろう。
逆に弱いのが微分。コロナ報道では感染者数は強調するが、微積を駆使して収束する時期を言うことはしない。できないのが本当だろう。統計数学者の高橋教授はワクチン接種条件前の前提付きで見事に当てていた。だが、マスコミは取り上げなかったのは理解できない他に別の理由もあったのだろうが、数学大好き子供を育成する機会を奪った。残念なことだ。
元北大・現京大の教授の最初の計算(42万人死亡説)はこの条件でしたと今からでも遅くないから明言することだろう。科学において修正は前進するに必要なのだから。
なぜ、このブログにコント「やさしいズ」の話題を取り上げた理由は、小学校に上がる前の頃 兄弟での硬貨交換の件を思い出したからである。5円相当のものを持っている自分が10円相当品を持っている姉に屁理屈をつけて交換をせしめたことがあった。自分は原則無理を承知していたが、今で言う黒を白と主張するディベートの類といえば格好が良さげだ。だが、就職して最初の上司はこの黒白が得意技だった。判事のご家系もあり論旨は理路整然。相手が首を傾げているうちに納得させる名人であった。子供の頃の硬貨交換経験者としては運命的な上司を戴いたものだ。
開発において一方的な視点で突っ走ると落とし穴がある。そんなはずはない。なぜなら。。。。と反論を受けることで、複眼的なアプローチで技術完成への確度をあげることの重要性を教えられた。当方の屁理屈を上司は受けて投げ返すことの繰り返しは実に面倒くさいが、人間関係を強くすることの効果があった。その後新入社員がグループにやってきた。大学院では研究より教授とのディベートが実社会では役に立つとして鍛えられてきただけにレベルが普通の社員とは違う。筆者は上下にサンドイッチされた格好だが、筆者が異動する機会に同行させることを願い出た。筆者が同行させたい理由を言わなかったが上司は何も言わず笑顔を返してきた。これは大変ありがたかった。あの当時のディベートはいい思い出だ。