1月末に新機能材料展があり見学した。カーボンナノファイバー、セルロースナノファイバー、バイオ生分解複合樹脂など多彩の材料が展示。 ポスト5G狙い材料や環境対応材料が目白押しのなか、古典的材料とも言える「木材」に注目した。数年前から建築展では欧州の木材が高層建築物に利用されていることは知っていたが、日本の消防法等の壁があり、そう簡単には認可されていない。だが、新国立競技場が鉄骨と木材の組み合わせで巨大な建築物が成立することを見せてくれた。
これが実現したのはCLT(Cross Laminated Timber)と言われる多層直交集成材技術。木材の繊維方向は大陽の向きに従って、概ね垂直であり、また年輪があるので、製材は長期的使用では湾曲する。そこで、炭素繊維複合材でも行われている(+90度・+45度・-45度・-90度)のように繊維を多軸方向に揃えることを転用して木材繊維を直交させ・接着させることで多軸方向への強度維持ができるようにした。
ノルウェー、スイス、カナダなど木材資源が豊富た地域では建築物が増加しているようだ。
ここからは日本技術の出番。CLTはCLTでもひと味違いを見せてくれたのが山形県天童(将棋の町)にある天童木材。
主として杉の有効利用として伐採・製材までは従来通りであるが、その先が製材をローラーで圧縮し難燃剤を含浸させ、膨張することで内部まで難燃剤が浸透する。以前にブログでも紹介した(主として)ホウ素化合物による難燃木材となる。さらに高温のロールで圧延・プレス加工を行うことで、椅子などの部品の多くが成形できることで、従来の切削、ほぞ加工、接着などの工程が省略できる。
展示会で注目あびるものとして軽飛行機のボディを製作してみせてくれた。この軽飛行機は産総研(森林)を初め東北地区の企業の先端技術を織り込んでいる。 Clay Teamとして出品
胴体 超軽量CLT
防腐・防蟻・耐候性付与
翼 改質リグニン利用複合材
コクピット フェノール含浸木材準不燃
プロペラ ナノクレイコンポジット保護塗装
高感度センサー内蔵木製操縦桿
ハイレゾスピーカーなどの技術がパッケージされている。
これらの各技術も従来より一皮剥けた技術として注目される。
かってクレイは層状構造を利用して層と層の間に有機化合物を峡雑して層間を広げ(インターカレーション)、それを樹脂とクレーをナノレベルに分散させるコンパウンド(ナノコンポジット)することで、強度やガスバリヤ-の性能を高める研究・開発が行われていた。しかしながら、ガラス繊維など安価な素材が強度は高いことから、今回は強度を謳う用途ではなく、金属の保護塗装材として活路を見いだしている。樹脂配合材料でリードしていたユニチカは樹脂着色がナノクレイ配合により鮮鋭性がでることを打ち出した。筆者はナノコンポジットが世の中で出現したときに、強度だけでは限界があると高分子学会の基調講演で話をしたことがある。強度路線を変更して新規な用途展開をしていることにホット胸をなでおろしているのが正直なところである。
今ブームのセルロースナノファイバーも強度・軽量(比強度)だけの売りでは同じことになるのではないか、セルロースナノファイバーはその特徴を引き出しての用途にこそ広がるのではないかと考えている。
バイオ・再生材として木材の利用効果は海の豊穣さに影響を与える。森林での栄養素が海に流れることで、プランクトンが成長し、魚介生産量が増加する。結果としてバランスのよい食事が摂れ健康寿命にも貢献するのではないかと期待される。ここ横浜にも昨年から木造の高層建築が着工されているとのこと。
ただし、木材を手放しで歓迎するまえに、木材は植物同様、その場所を離れることはできないので、動物などの危害を回避するための忌避成分を含むことがある。アトピー疾患の木材もある。またCLTの接着剤もホルムアルデヒドような成分は今はないが、硬化剤の動向などにも注意が必要である。健康面でも先進国である日本が果たす役目はある。
出典
新国立競技場https://www.jpnsport.go.jp/newstadium/
航空機 天童木材
圧縮プロセス 天童木材カタログ
CLT構造 日本CLT協会