欧州車CO2規制ドタバタ劇

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菅義偉政権が発足した。このブログは政治にはタッチしない。だが、内閣や党役員の地味な風景に5G(爺)と名付けたマスコミがある。面白い。だが、それがどうした? 5Gどころか身元調査を何回もクリヤーした留任・再登板18Gの布陣。官房長官には失言をしない人が充てられた。隙がなさ過ぎるが、荒治療で多少の血を見ることは覚悟の上の場所には相応しい人材を配置した。

頭に血が上って口を滑らせて失敗したのが自動車生産台数首位のVW。言わずとしれたディーゼル燃費不正問題「ディーゼルゲート」事件である。バレたのが米国。巨額の賠償金を支払う羽目になった。VWはディーゼルは止め!これからEVにする!と宣言してしまった。

誠に威勢がよいが目算があるわけではなかった。ドイツ市場でもSUV人気があり車重からみて走行できるのはエンジン車。アウトバーン300km走行は当たり前。2年前の欧州のEV実績は0.2%のみ。2019年では“なんちゃってPHEV”を入れても1%。2020年にはトータルコストはEVがお得とのCM戦略にでたが、実態は政府補助金増額を要請し、それをテコにした販売で、米国から賠償金を逃れるためには売値を下げてでもEV比率を上げることに躍起となっている。“なんちゃってPHEV”の最新車でも59kmまではモーター、その後はエンジンとなってアウトバーン300km走行の炭酸ガス発生量は、今後予定の2021欧州炭酸ガス規制値の95g/kmを遙かに超えてしまう。新基準に合格するのはトヨタHEV。ヤリスが代表的。トヨタはHEVに関する膨大な数の特許を自由に利用できるよう発表した。しかし“ストロングHEV”技術はベールに隠したままである。“なんちゃって“とは筆者の表現で一般的にはマイルドPHEVと言われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

この図から2021年に欧州車が新基準をクリヤーできると考えられない。そこで、なにやら複雑な式を開発して「マイルドPHEV」は環境適合車にしようとの動きがあるようだ。VWグループのアウディは507馬力ガソリンターボSQ7をこれから欧州で発売。マイルドPHEV搭載車が解釈規制に合格することを見越して発売に踏み切ったのであろう。それだけでは市場は動かないとみて数年前に発表していたe-TRONも同時発売した。確かにアウディのQ2,Q5,Q7シリーズは人気がある。その市場の声には逆らえない事情があり、少しだけでもの埋め合わせのつもりであろう。

ゼロ排出にはEVのみ。トヨタのストロングHEVやPHEVは対象に入れないと欧州は強調したものの、実態はマイルドPHEVが落としどころ運動をしている。市場ユーザーは恐らく勝手にしてくれ!ではないだろうか。同じことを言っていたのが中国。でも、EVは当面ダメだと気がつくと、さっさとHEVに切り替えた。この決断には驚いた。EV補助金に300万円を政府は出していたが、輸出減退もあり補助金は極僅かとなると、たちまち販売は滞った。VWは中国頼みの生産販売台数だけに二重の大きな失敗をしたことになる。

日本では現場を知りすぎて大きな改革が遅くなることはあるが、首脳が現場を知らずに方針を決定することは希である。欧州の自動車メーカーは階層社会なのか? 専門領域外なので何とも判断できないが、現場知らずの首脳が下した様にはそれらしさがある。今回のミスはあまりにもお粗末。日本における輸入車は長らくVWがトップだったが、今はメルセデス・ベンツにとって代わられた。筆者はVWを乗り続けたが止めた。一旦信用が落ちると回復は難しいのは会社も人も同じ。偉そうなことを言わずに自分も胸に手を当てて考えてみよう。

先駆的な技術者はドタバタ劇をみて、市場の要求に対して現在のEVでは満足することが出来ないギャップに開発の狙いがあるとして、虎視眈々と狙っているはず。日本人技術者の得意なところだけに期待したい。 水素燃料は有力技術になると思われる。

 

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