灯台方式ビジネスの行方

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9月29日から10月1日の3日間に亘ってワールドデンタルショーが横浜パシフィコ&ノースにて開催されました。コスモサイン・Aidite共催のブースにお越し頂いた皆様に厚く御礼申し上げます。加藤社長をはじめ社員、関係者一同気持ちを新たに、皆様のご要望に応えられるべく精進してまいります。従来にも増して皆様のご指導を賜りますようお願い致します。

さて、

ビジネスのやり方に“灯台方式”がある。新規ビジネスを始めたらしいが、軌道に乗りそうなのかと模様ながめを決め込む。成功した会社が出た!となると(これが航海で頼りになる灯台として)資金力に任せて猛烈後追する。それが灯台方式。現在の自動車業界の灯台はテスラのBEV。CO2クレジットを買う立場と受け取る立場を考えれば当然とばかりに欧米をはじめ日本でさえ補助金政策をテコに推進している。これら強固な地盤の上に大型灯台が設置され明るい光を発している。一方のガソリンエンジン、ハイブリッド航路の灯台はやがて撤収するか自然崩壊する運命と予想して。

だが、待てよ。クルマって何?

クルマは「いつでも、どこでも、どこまでも、人と荷物を移動することができる構造体」の要素から成り立っていて、その価値に対して人は金を払う。次に安全運転、価格(含む下取り価格)、デザインがあり環境も要素に入った。だが環境だけで残りの条件を満たさない場合は市場性が低いのが一般的自由経済の原則。

いつでも :チャージ時間ネック、レアメタル枯渇

どこまでも:移動距離はバッテリー性能見合い

電力インフラ不十分な地域は見捨てられる。

移動体  :車重量からくる積載量、道路・ブレーキ摩耗屑問題

安全性  :自動運転レベル以前の問題にバッテリー発火案件

CO2.    :トータルLCA  レアメタル採掘・処理を含めては不明。

この条件から忖度なしにいえば

鉄道>HEV・PHEV>従来エンジン>BEV

米国・欧州ではBEVの在庫がハイブリッド・エンジン車の3倍に積み増しているとの情報がある。わかりやすい市民の反応。筆者の独断と偏見で恐縮だが、一神教の欧州は一択の環境最優先政策がお好きのようだ。日頃気にしていないが日本人は良ければ受け入れるマルチ政策。前者は排他的になりがちで自分が勝つためのルール作りに固執するが、後者はどのような場面であっても柔軟に対応することで先の先までを考える。(体力と基礎開発力があることが条件ではあるが)。

HEV,PHEV,従来エンジンが規制されるとなると、水素エンジンの可能性を追求する他、BEVの中においても蓄積技術と開発力で徹底した差異化を図っている。販売量では現在圧倒されていても追い越す準備万端の雰囲気を醸し出している。全個体電池、水素エンジンなんでもあり状態。欧州勢が勝負できるのは合成ガソリン。合成ガソリンの原料はCO,CO2であり火力発電所からの回収による。風力発電に頼り原発も停止した国が量的供給を含め可能か疑問。

自動車業界も基本シェア競争。どのような業界においても汎用品の製造販売で採算が取れるのは1位と2位まで。3位以下は特異な製品で生き残りをかけるか、別の上位を狙える業界に進出するかである。

現在の自動車業界では1位トヨタ、2位VW  3位以下は2035年(英国は2030年)脱エンジン規制を灯台としてBEVで追いかけている。3位以下のメーカーにとって1位のトヨタはBEVに熱心ではなさそうだ。そこがチャンスと見た。米国IRA法案で米国内工場生産BEVに対する手厚い補助、減税に対してトヨタはもちろん日本BEV車を蚊帳の外に置いた。まさに米国内ではテスラ一強は技術以外の成果ゆえである。

米国に限らず将来の自動車がBEV絶対変更なしが前提条件ならば、諸事情あるのは承知の上で、競争レースに参加してシェア獲得をしないと負けになる。ホンダが自動車分野でBEV一本化したシナリオは分かりやすい。BEVの世界には既にBYD1位、テスラ2位。これらを押し除けて2位以内に食い込むのには時間の制約もあり相当厳しい。

開発費用の捻出にガソリン関係の断捨離を始めた。真岡のホンダエンジン工場を2025年工場閉鎖はすでに発表、その前に狭山事業を閉鎖し寄居に集中。長年付き合いのある八千代工業をTOBした後でインドの会社に売却すると発表。樹脂製ガソリンタンクや樹脂製内外装部品の製造会社である。筆者の若かりし頃は金属製ガソリンタンクを樹脂化にするために情熱を注いだだけにこのニュースには驚いた。

断捨離の速度も速い。ホンダの主戦場は海外だけに、海外のBEV風力は厳しく受け止め判断させたことと、ホンダらしい秘策があるのだろうと受け取った。昔の秘策はCVCCエンジンでカリフォルニア排気ガス規制(マスきー法案)をいち早く突破してシビックがカリフォルニアに登場した時のインパクトは印象的だった。

今回の秘策はなんだろうか? 一つはSONY・HONDA連合か。ソニーが得意とするイメージング・センシング、通信、ネットワーク エンタテインメント技術と組み合わせるとパワードライブがBEV自動車の範疇から一歩違う業界で橋頭堡を作り新しい灯台になるかも知れない。

もう一つホンダ秘策に水素燃料電池車(FCV)がある。トヨタより先にクルマを製造したが、一般向け発売はしなかった記憶がある。 水素充填時間はガソリン並と水素ステーションの設置に依存するが今後目が離せない。トヨタとホンダ良きライバルであるが新規の灯台に向けて頑張ってほしい。

英国はBEV一本槍の先頭グループにいた。多くの自動車メーカーがEU離脱に伴い撤退。トヨタだけ英国のことを考えてあえて残った。そのトヨタにも打撃を与え続けた。

だが、ここにきてガソリン車の継続使用期間を延長することが国民のためになると言い出した。トヨタやホンダの新技術がやがて現在のBEVを凌駕駆逐することを考えると引き留める方が得策と見たのかもしれない。灯台の光の光源パワーと継続性を見極める必要がある。刹那的な照るさに目が眩みがち。そこは自動車に限らずビジネスにおいて普遍的なものであるだけに他山の石ではないのだろう。

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