平成から令和にバトンタッチ。 ブラックホールの観察や探査機はやぶさ2が小惑星りゅうぐうにクレーターをつくり確認撮影に成功。iPS細胞が医療現場に応用がなされ始めた。3Dプリンターは歯科技工にあっという間に浸透してきた。遠隔医療に5G利用が始まるなど平成のラストスパートに素晴らしい科学の成果を見ることができた。
何れも技術を綿密に積み上げての成果ではあるが、大きな成功の基は何かと言えば「夢」をもって情熱を傾けた人間にある。
アインシュタインの計算でブラックホールが予言された。しかしながら観えない。観ることが夢として与えられた。地球・銀河系誕生の謎を解明したいとの夢があれば、資金、知恵者の協力が得られる。
先日、研究仲間のセミナーで金属塑性加工技術開発50年で時代を切り開く技術を開発した人の話を聴くことができた。纏めとして、以下の様に述べている。 全くの同感なので少しだけモディファイして引用すると
① 知恵のある者は力のある人を使う
② 金のある者は知恵のある人を使う
③ 夢のある者は金のある人を使う。
トドのつまり、夢が必要。 夢があれば金のある人を動かし、知恵のある人を動かし、力を結集する。しかしながら綿密な夢の実現に向けて設計・企画・行動・説得などがことさら重要である。単なるパイプドリームではいけない。全体スケッチを描き、幾重にも色を重ねていく画家の作業と同じだろう。
思いつきに近い夢での起業や、人を動かせない事業では大成しないことを示唆するのだろう。
このブログでも何回も記載しているが、とかく技術者は機能性価値の向上があれば商品は売れると勘違いする。ある機能性で飛び抜けた技術を開発をしたから起業すると多くは失敗する。一方、営業はひと昔流行ったマーケットインを過信していては、今の製品開発の流れでは置いてきぼりを食いかねない。 製品・事業の意味的価値との複視線で見通した夢を描き提案することが重要であろう。それが出来ないと企業では使われる立場に押しやられてしまう。勿体ない人生でもある。
大きな夢は単一企業だけでは成立しないことが普通である。 1980年代の半導体LSIでは日本が最先端を走っていた。ほぼ世界を独占していた。これにはNEC、日立、富士通など四強がチーム一丸となって当時の米国一強からの次世代半導体戦争に備え、凌駕することで一致して当たった。
高分子材料の分野でも同時期は欧米の巨大ケミカルカンパニーの開発力に対して日本のケミカル会社は規模が小さく、多数の会社が競争している状態であったが、先行き欧米の会社に市場を獲られることを懸念した有志がTPC研究会をセットし、各社の強者を集めセミナーを開催し、相互のレベルアップを図った。現在ポリマーアロイ化、ナノアロイ、複合材料などは世界の先端を走っている。応用として自動車、航空機、電子部品など多岐にわたって浸透している。
半導体の事例は経産省(当時は通産省)が仕掛け人に、高分子化学の事例はカリスマ研究者の夢が各社の研究者の共感を呼んで成立した。現在、半導体も高分子化学の両方で大型の夢を語る人材が枯渇している。
令和元年にあたり、心機一転、大きな夢を語ろうではないか。
夢を創出できるか、元号が新しくなった今日の記念すべき日に「夢の創造」を考えることは新元号時代へのエネルギーの素になるのではないだろうか。