衣料・新しい風

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漸く春めいてきた。(一部を除いてコロナ規制が解除され)抑制されていた気分もカラダも伸びをして、さぁ巻き返しだ!と街中が活気が出てきたように思える。衣服も冬から春へと模様替えの準備開始。とはいえコロナ渦で購買力は低下、ビジネスでは在宅時間が増え、ビシッと決めたスーツを買う機会は減少した。紳士服量販店の閉店ラッシュは残念だがそれが現実だ。高級品を品揃えしているデパートの紳士服売り場は土日祭日でも閑散としている。

そんな中、おやっ!と手にしたのは、超軽量カジュアルスーツ。平織りであるが経糸・緯糸の間に空間がある。織機での張力が弱い筈はないので、????と思っていたら、なんと、水溶性樹脂の繊維が織り込んであり、織った後でお湯で溶かし出していることが分かった。

医療用の膜を製造する際にナノサイズ、サブミクロンの空孔を作るには水や溶媒に溶けない樹脂と溶解する樹脂からなるブレンド、アロイを形成させて、あとで溶媒抽出することで多孔膜を作ることが行われている。人工透析などの医療機器や電池セパレーターなどの工業分野にも利用されている。コンパクトな上水道設備に多孔質チューブを利用した設備は日本の繊維産業は得意であり、世界でも日本しかできない芸当の一つとなっている。

この発想は実は通気性おむつや合成紙にも共通している。これらの場合は抽出ではないが、フィラーを樹脂に分散させてフィルムやシートを製造し、延伸することでフィラーは延伸できないので、界面にボイド(空隙)を形成する。そこが水分透過性や印刷インクのアンカーになるのだ。

化学産業の原点に石炭化学と繊維産業がある。昭和30年代からは石炭に代わって石油化学が置き換わったものの、蓄積技術の応用範囲は前者が圧倒している。石炭化学は芳香族化学と言えるものであり、染料から出発して医薬品に到達しており、繊維産業は微細加工技術を利用しての医療、工業材料に展開している。炭素繊維や芳香族高強度繊維、合成皮革などは繊維産業のなせる技である。

中国は大量生産を得意とするが、経糸が切れると半日は織機を停止して手作業で経糸を切り替える必要があるので、切れないPET繊維を経糸に利用している。衣服にした場合は限界がある。日本では平織りや綾織りなどをしている機屋さんはいない。経編機がラグビーウエアで大活躍したことを覚えておられるでしょうか? 首筋には無線で指令を受ける装置を内蔵しながら、柔軟な動きに追随できる伸縮性のある生地が要求された。これが出来たのはデザイン設計(富山)と経編をした福井の機屋さん。

日本の繊維産業は日米貿易摩擦から収縮したものの、機能性繊維で復活した。その加工技術の広がりは化学とリンクして伸びている。旭化成、帝人、東洋紡、東レは繊維メーカーとしてよりも高機能素材メーカーのイメージが強い。三菱レイヨンは三菱ケミカルと合体した。戦後解体前は同じ会社で石炭化学も経験しているだけに強い潜在ポテンシャルはある。

【新デザイン作業スーツ】

さて、昔のことを言えば、ホワイトカラーとブルーカラーと勤労者を区別する言葉があった。衣服の色、デザインを指してのことだろうが、今はそんな区別はなく、どちらも作業着。白いシャツにネクタイ・スーツ姿はもはや絶滅危惧種。その職種でも工場の現場に入ることがある。そんな時は上着や白衣が提供されて着衣するが、ズボンはスーツのままのことが多く、現場では立ち尽くすだけの“お客さん扱い”になる。危険予防の面もあるが、それでは現場の本音に迫ることはできない。多少汚れようが洗濯でき、現場の人と生で会話ができる服が欲しいと思っていた。ワーク○ンは繁盛しておりタフな服であるのは間違いがないが、絶滅危惧種の人が着衣するには気が退ける。ポケットデザインはちょっと。。。

また、在宅では何を着ていても自由であるが、気分はビジネスモードになりにくい。在宅では家事も同時にこなす必要がある。まさにビジネスの気分と家事労働の両方に通じる“作業着的スーツ”があれば。。。。と考えていた。

そんな時、東京八重洲地下街を歩いていたら、新しいショップを見つけた。WWSと看板にある。東京駅から徒歩2分のところにオフィスが昔あり、この地下街はどこに何があるかを熟知していたので、新店舗にひかれて店員さんと話をした。

WWSとはwork wear suit。コンセプトが面白いというか上述の“ちょっと。。。”& “あれば。。。”の両方を満足する可能性があると思った。横浜にもショップがあるとのことで、後日買い求めた。若者向きのパンフだったので、どうかなぁと思いつつモノは何でもテストしないと分からないとあって買い求めた。

 

結論から言えば、これが実に気に入ったのである。在宅勤務中はジーンズから切り替え使用頻度が増えた。春めいてきたので外出もしてみたが、特に違和感はない。創業者のコンセプトは水道工事の作業衣でレストランにも行けることを考えて作ったとのこと。隠れポケットは大きいが使用しないとポケットが見えない仕組みになっており、考えてあることは理解した。

コロナ渦だからと下を向いていないで、視点を変えて光明を見出しトライする。評論家や企業役員がイノベーション・イノベーションと聲高に言っている間はイノベーションをしていない。言う暇があれば実行して、愉しくてしょうが無く、食事も忘れて没頭する。その結果がイノベーションと言われても本人は“エッ!そうなの”と思うことでしょう。WWSを始めた女性はただ者ではなさそうだ。コスモサインにも通じるものがあるとみた。

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